めぐりあい --- ファントムと客人
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めぐりあい

ファントムと客人



!」


待ち合わせ場所でちょっとだけ待っていたら、通りの向こうから手を振り
走ってくるその人を、近くを歩いてた人達が振り返る。
ここじゃ珍しい金髪碧眼のモデルさんかと思う様なその人は私を見つけて
うっすらと微笑みを浮かべて目の前でその足を止めた。


「お待たせシテ申し訳ありまセン。」

「今着いたばかりなので走らなくても良かったのに…」

「Ladyを待たせる等、紳士とシテは許される事ではないのデス。」


そう言って私を抱き寄せて頬にキスをするから周囲の視線が凄く痛いし恥ずかしい
この人にとっては挨拶なんだろうけど、こっち(シンオウ)じゃ違うんだって
何回も言ってるんだけど、全然わかってくれないし…


「ぎゃー!何度も言ってますけどここはユノーヴァじゃないんです。
凄く目立つし、恥ずかしいのでやめてくれませんかインゴさん!」

「ワタクシの親愛の証、挨拶をは拒むのデスカ?」

「うっ…そういう事じゃないんです。でも本当に恥ずかしいんですよ。」

「本来ナラ、貴女様カラもワタクシに返して欲しいのデスガ…?」

「無理無理!そんな恥ずかしい事絶対に出来ませんってば!!」


身長差があるから伏し目がちに見下ろすその顔が綺麗すぎて直視できない。
思わず俯いてしまったんだけど、すぐに顎に手をかけられて自分の方を向かせる…
ちょっと強引なその仕草もこの人なら許されるのかもしれない。


「人と話をスル時は相手の顔を見る様ニ…よろしいデスネ?」


コミュニケーションをとる為の基本って言われて、確かにそうだと納得した
挨拶も相手の顔…ってか目を見て話をするのも基本中の基本だもんね。


「ソレデ?今日は何処に連れて行っていただけるのでゴザイマスカ?」

「昨日言っていた通り空を飛ぶが使えるポケモンはいますか?
ちょっと遠出になりますけど、素敵な場所なんで着く迄秘密です。」


こうして色々出かけてるその殆どがポケモン絡みなんだけど
嬉しそうで、もっと色んな場所に連れて行きたくなって張り切っちゃう。
考えてみれば特定の人とこんなに長い時間一緒にいるなんて初めてだ。

人通りの少ない場所で私はカイリューを、インゴさんはサザンドラって
見た事のないポケモンを出してから、それぞれ乗り込んで空を飛ぶ。
並んで飛んでいるインゴさんは、風を受け気持ちよさそうに目を細めてる。
時折バタフリーやピジョット達の群れと並走しながら飛んでいると
海が見えてきてその先に小さな島が浮かんでいる。
インゴさんにその島を指さして一緒に高度を下げてポケモンを着陸させた。


、コノ島は?」


無人島だから、お弁当やレジャーシートの入ったカバンを持ってきたけど
それをインゴさんに取り上げられちゃった。
インゴさんはお客様だし、自分の荷物だから持つって言ったのに
女性に持たせるのは紳士じゃないって、言う事を聞いてくれない。


「クレセリアのよく見かけられてる場所なんですよ。
直接会えればラッキーですけど、会えなくても羽がみつかればなぁって…」

「悪夢を醒マス効果がアルと言われテル…で、ゴザイマシタネ。」

「そうです、お土産代わりに持って行ってもらえればなぁって。
それだけじゃなくって、凄く綺麗な場所なんですよ。」

「デハ、ワタクシとの二人分探シテお揃いにいたしまショウ。」

「あ、それ良いですね!よーし、頑張って探しましょうね!」


木々の間や小高い草むらをかき分けて歩いていると急に視界が広くなって
目の前に綺麗な三日月型の湖が広がる。
この場所が生息地なんだけど…水際に向かって歩こうとした時


…」

「ぎゃ……っ!!」


いきなりインゴさんが耳元で囁くからビックリして叫びそうになったけど
それは彼の大きな手で口をふさがれて声にならなかった。


「静かにしなサイ。クレセリアでゴザイマス。」


手を放してもらってインゴさんが指さした方を見たらクレセリアが
湖のほとりにいて、どうやら水を飲んでいるみたいだった。


「うわぁ…」


向こうの世界でもゲーム機の画面を通して見てたし、ゲットもしてたけど
こっちに来てから始めて見るクレセリアはとても神秘的で綺麗だった。
画面で見るのとは違って周囲の空気っていうんだろうか?
そういうのを実際に肌で感じてるんだけど、とても感動的だなぁ…


も見るノハ初めてなのデスカ?」

「はい、何度かここに来て、羽は良く見かけてたんですけど
実際に自分の目で見るのはこれが初めてです。…凄く綺麗な子ですよね。」


雄なのか雌なのかはわからないけど、凄く優雅でたおやかで神秘的で
やがて水も飲み終わって用事が済んだのかな?クレセリアはどこかへ飛び立った。
今迄いた場所に行けば、三日月の羽と呼ばれてるクレセリアの羽が2枚
折り重なる様に落ちていたのをインゴさんが拾って1枚を渡してくれた。
不思議な色と手触りの羽は持っているだけでもワクワクする。

目的は果たしたけど、せっかくの遠出だし景色も良くてお天気なんだからと
近くにレジャーシートを敷いてからそれぞれにポケモン達を出して遊ばせる
風が水面を揺らし小さなさざ波を立てる様子をお弁当を食べながら眺める


は今の仕事に満足してマスカ?」


隣に座ってたインゴさんが私を覗き込む様にして聞いてきた。
異国文化なんだろうけど、距離が近すぎて凄く心臓に悪いんだけどな。


「そうですね、好きなバトルも時々できるし不満は無いです。」

「Hmm…でしタラ、ユノーヴァに来ませんカ?
好きなバトルのみに専念できマス。給料も今の2倍出しまショウ。」


突然の事で話が良く見えない。私をユノーヴァに?
給料2倍とかそんな事簡単に…あ、忘れてたけどこの人はお偉いさんだっけ
それでもそんな事独断で決めて良い事じゃないんでないの?


「人事をそんな簡単に決めちゃ駄目ですよ。」

「ボスがルールでゴザイマス。問題ありまセン。」


もしかして、そっちの企業ってインゴさんのワンマン経営なんだろうか?
確かに色々話を聞かせてもらったけど、全部この人が決めてる感じだし
それだけ優秀なんだろうけど、そういう問題じゃないはずだ。
なんだか喉がカラカラでポットから麦茶を注いでひとつをインゴさんに渡す
並々と注がれた麦茶を一気に飲み干して、どう返事をすれば良いか考える。


「ハッキリ言いマス。貴女様の傍は居心地が良いのデス。
もっと多くの時を共に過ごしタイ…ワタクシはが欲しい…デス。」


その言葉を聞いてフワフワ夢を見ていた様な現実が一瞬で萎んでしまった。

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