めぐりあい
ファントムと異国人
視察の人に迷惑をかけまくって、私がファントムだとバレた。
クロツグさんに平謝りをして、処罰も覚悟していたのだけれど
「をそこまで追い詰めるなんて凄いね!
バトルレコードを見せてもらったけど、あれは仕方がないっしょや。」
「でも、その後が仕方がないじゃ済まされないんでないですか?
正体はバレるわ、お客様ほっぽらかして出て行っちゃうわですよ?」
クロツグさんは相変わらずで、のほほんとして笑ってるけど
笑い事じゃないでしょうとツッコミを入れたい。
だってこんな事をしてたらバトルフロンティアの質を疑われちゃうよ。
「んー、したらには彼…インゴ君の世話を頼むかな!」
「は?」
暫くはバトルをしないで大人しくしてろと言われると思ったんだけど
どうしてそこであの人の名前が出てくるのかわからなかった。
「実はさ、彼って気難しいんだよ。こっちでおもてなしをしたけど
どれも気に入らないらしくって、正直言って困ってたのさ。」
ゲンガーを撫でる優しげな顔を思い出して、私は首を傾げた。
平謝りに謝った私に気にするなって笑ってたあの人が?信じられない。
「食事に行っても、飲みに行っても、綺麗ドコロのいる場所に行っても
つまらなさそうにするばかりで、お手上げだったのさ。
元々…ファントムに興味があって来たんだから、こうなったら最後
ファントムにおもてなしを頼みたいんだわ。」
「はぁ?!」
「連れ出した連中に聞いたんだけど、話す事ったらファントム…の事で
バトル職員じゃなければ普段はどんな仕事をしてるんだとか、手持ちの事とか?
ともかくの事ばっかりらしいんだわ。だから頼むっ!」
「バトルもしたし十分じゃないんですか?
それだけ接待しても満足しないんなら、私だって無理に決まってるっしょ!」
接待と言われてる全部をしてもつまらなさそうとか、どれだけ気難しいの?
私が会ったあの人とどうもイメージが違ってちょっと信じられなかった。
「なんだかなぁ…もう頼めるのはしないないんだわ。」
「無理です。私にそんな偉い人の相手なんてできるわけないでしょや!」
頼む!断る!って二人で押し問答をしていたら、ドアがノックされて
コクランさんとあの人が一緒に入ってきた。
綺麗な青い瞳と目があったんだけど、その瞳が弧を描いたのは見間違い?
「クロツグ様、インゴ様へのこちらの施設に関する説明が終わりました。
それに付随して、お聞きしたい事があるそうでございますのでお願いします。
わたくしはカトレア様の元へ下がらせていただきますので。」
書類をクロツグさんに手渡して、相変わらず凄く優雅な仕草で一礼すると
私にも会釈をしてからコクランさんは出て行っちゃった。
残されたインゴ様?彼はクロツグさんと話を始めちゃった。
「では、そういう事ですので。お客様とのお話の邪魔になるので失礼します。」
「ちょ、待ってや!インゴ君、これから君の滞在中は彼女が面倒みるから。」
「ソレは良かったデス。ワタクシも彼女と話をさせて欲しいと思ってたノデ
クロツグ様へお願いしようと思っていた所でゴザイマシタ。」
「え?」
「Phantomとしての動き、仕事についてお話を聞きたいデス。」
「確かに直接本人に聞くのが一番だね。良いです、許可します。」
お偉いさんの相手なんてしたこともないし、これからもするつもりはない
頼むからこれ以上目立つ様な事をさせないで欲しいのに…
そう言われてしまったら、無理とか駄目とか嫌なんて言えないよ。
こうなったら、聞きたい事に全部答えてさっさとお役御免になるしかない。
「それではお客様…「インゴデス。」…失礼しましたインゴ様
私にお聞きしたい事があるそうですが、どういった事でございましょうか?」
「…ここではクロツグ様の業務に支障をきたしてしまいマス。
よろしけレバ、どこか違う場所デゆっくりとお話を聞かせていただけますカ?」
「ファントム、君の上司には言っておくから今日はもう上がっていいよ。
明日からも普段の仕事は休みで構わないから彼を色々案内して欲しい。
視察の方に満足していただける様に頑張ってくれ。」
彼…インゴ様に背中を押されて部屋を出る瞬間
クロツグさんが私を拝む真似をしたのが見えて余計に腹が立ってきた。
こんなの体の良い押しつけと同じじゃないか!
「インゴ様、これから色々とお話をするにしてもこの格好ではなんですので
着替えてきてからでもよろしいでしょうか?」
「勿論でゴザイマス。受付前のロビーでお待ちしておりマス。」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて失礼します。」
インゴ様に深々と頭を下げて、職員ロッカーを目指す。
今頭の中はグチャグチャになって何をどうすれば良いのかわからないけど
取り敢えず着替えて、身なりを整えながら軽く化粧をする。
流石にお偉い様相手にスッピンは拙いでしょ。
「なんだかなぁ…」
ため息をついて重い足取りでロビーに向かえば、インゴ様はロビーの端にある
喫煙スペースに入っていた、タバコを吸う仕草も凄く綺麗なんだなぁ…
これから色々と話をしなきゃなんないけど、まずは友好的にしなきゃだよね。
喫煙スペースに入ると、吸いかけのタバコを消そうとするインゴ様を止めて
私も鞄からタバコを取り出す。
「お客様の前で失礼ですけど、仕事が終わった後はどうしても吸いたいんで…」
「ソノ気持ちは理解できマス。気にする必要はゴザイマセン。」
吐き出された紫煙がゆっくりと吸気口に吸い込まれるのをぼんやり見る。
これからどうすれば良いのかな?はっきり言って接待なんてした事がないから
何をすれば良いのかさっぱりわからない。
「インゴ様、私は貴方がご満足いただける様なおもてなしをしろと言われてます
ですが、お恥ずかしい話ですが初めてなので何をして良いのかわかりません。
こんな事聞くのも失礼なんですが、私に何を望みますか?」
「…わからない事を聞くノハ当前デス。
そうですネ…ちょうどLunch timeですので、まず食事デモ?」
どうしよう、お偉い様と食べる様な高級なお店なんて知らない。
あ、いっその事バカみたいに高いホテルのレストランにすれば問題ない?
料金は領収書もらっておいて後からクロツグさんからふんだくってやる
この位したってクロツグさんの財布ならちっとも痛くないはずだ。
そんな事を考えてたら、インゴ様の方から提案がきた。
「正直申し上げレバ、接待デノ食事にウンザリしていたのデス。
ですから貴女様の普段行かれる場所に行きたいデス。」
え?私の食べる場所なんてその辺の喫茶店とかラーメン屋さんとかだよ?
そんな所で良いの?後で何を食べさせるんだって怒られないかな?
そんな事を聞けばインゴ様は笑って案内を頼むって言ってくれたから
よく行くラーメン屋さんでも特にお気に入りの場所へ行った。
どうやら接待でラーメン屋にもいったみたいだけど
シンオウはあっちと同じ味噌ラーメンが有名だからそれを食べたみたい。
私は塩が好きだから、それを勧めたらこっちの方が好きだと言ってくれた。
その後、ポケモン達ものんびりさせたいと言ったので近くの公園に向かう。
ここは私もポケモン達を遊ばせてる馴染みの場所なんだけど
こんな場所ばかり連れて行ってインゴ様に満足してもらえてるのか不安だ。
並んで歩く姿をこっそり盗み見れば、なんだか機嫌がよさそう?
歩く速さも私に合わせてくれてるし、歩いている時も自然と車道側にいるし
やっぱりクロツグさんが言ってた気難しいってのは間違ってると思うな。