3章・旅は道連れ先駆け編 -誰が悪いわけじゃない-

3章・旅は道連れ先駆け編

誰が悪いわけじゃない



コーヒーの良い香りがして目を覚ますと外は明るく、カーテンを開ければ

差し込む光が眩しい程の晴天でございます。

あれから…インゴがの部屋に入ってから戻ってくる事はなかった…

それがどういう意味を持つのか…どうせあの二人の事でございます

こちらがどれだけ問いただしても答えてはくれないのでしょうね。


モヤモヤする気分のまま部屋を出ればリビングには当の本人が戻っていて

とエメットとなにやら話し込んでいる様子でございます。

その横でライブキャスターをいじっていたと目があいました。



「おっす、クダリはまだ起きてきてないぞ。

ノボリ、ちゃんと眠れたのか?なんだか疲れているみたいだぞ。」



「皆様おはようございます。ぐっすりとまでは言いませんが寝ました。

インゴ、の様子は?あれから貴方は何をしやがったんですか?」



まともな返事が期待できないのを知っていても聞かざるを得ません。

から紅茶を受け取ったインゴは私の方を見ずに何時もの様に

取り澄ました表情を崩さず無表情のままでございます。



「……オマエに言う必要はゴザイマセン。

アレが離してくれなかったダケ…ワタクシには何の落ち度もありまセン。

、こちらはエメットが動きマス。オマエはの所へ行きなサイ。」



「ったく、知恵熱出すほど考えたってどうしようもねぇだろうに」



「それだけ悩む程、あいつもこっちに馴れ合ってる証拠だろう。

以前のなら問答無用で切り捨ててただろうし大きな進歩だ。」



が熱を出したのですか?」



「あぁ、あいつも色々うだうだと考えてたみてぇだぜ。

確かに引きこもらなくなっただけでもマシっちゃあマシだがな。」



「ソレをワタクシが許すとデモ?コレ以上のムダ話は不要デス、行きなサイ。」



「へぇへぇ、確かにな!それじゃあ俺はあいつの様子を診てくる。

場合によっちゃあ今日は仕事を休ませるが、そっちは問題ねぇんだろ?」



「あぁ、昨日で大体の目処はたったからな。」



、私もご一緒させてくださいまし。」



玄関へ向かうの後を追い、の部屋へとやってきてみれば

リビングのソファーの上で毛布にくるまったがおりました。

額にそっと手を当ててみればかなり熱く、呼吸も少々荒い様でございます。

私の手の感触に目が覚めたのか、ゆっくりと開かれた瞳も潤んでおりました。



「ノボリさん?うわわ、いつのまに寝ちゃったんだろうってインゴさんは?

って、までどーしたの?」



「どうしたじゃねぇだろ。インゴがてめぇが熱を出したって来たんだぜ。

どうせロクでもねぇ事考えてたんだろ?俺の手を煩わせるんじゃねぇよ。

熱はかなり高いみてぇだが他に症状はあるか?目眩はねぇのか?」



「頭がちょっと痛い…かな?」



に色々聞いてからは部屋…こっちは彼等が泊まる時の部屋?

そちらに向かい、色々と薬を用意して戻ってまいりました。



からの伝言だ。山場は超えたから今日はてめぇは休みだと。

そんな状態なら仕事にもならねぇだろうから、さっさと治しやがれ。

ノボリ、俺はちょっとクダリの様子を見てぇから任せて良いか?」



「了解でございます。きっちり薬を飲ませて…その前に食事を摂らせて

安静にさせておきますとも!クダリの事…よろしくお願いいたします。」



が部屋を出てから、私はキッチンを借りて消化の良いリゾットを作り

の部屋を訪れれば、こちらに気付きベッドから起き上がります。

呼吸も荒く、熱が相当に高いのでしょう。



「無理に起きなくても食べさせて差し上げますよ?」



「うわーい、それなんて拷問ってやつですよー。

やっと落ち着いたとはいえ、まだまだ大変な時期なのにこんな事になって

本当にすみません…それでですね、今後の事についてなんですが

今の状態で私とクダリさんが顔をあわせるのも拙いと思うんです。

ちょうどカナワの車両基地の設備保全の計画があがってるので、これから先

暫くの間は私がそっちをメインに担当するように課長に言おうと思うんです。」



起き上がったままの状態でリゾットを食べながら言う事ではないでしょうに

つまりは私達と距離を置く…そういう事なのでしょうが、許すとでも?



、今の状況は決して良いものではないのはわかっております。

ですが貴女がそれをする必要がございますか?クダリの事についてもです。

貴女はネイティにあの様な指示を出した自分を責めているのでしょう?」



ネイティの話をすれば、スプーンをボウルに置いてゆっくり目を閉じます。

その表情から何程貴女がそれを悔やんで自分を責めてるのかがわかります

ですが、責められるのは貴女だけではないのですよ?



「無理だって事がわかってても、私はネイティを止められませんでした。

あの子の意思だと言っても、危険な状態を止めるのはトレーナーの役目です

それを私は放棄してしまったんです。私は…私はトレーナー失格です。」



震えながら白くなるまで握り締められた手の上に自分の手をそっと重ねて

を見つめれば、クダリと同じ、自分を責めているのが伺えます。

誰も彼女を責めないからこそ、自分をそうまで責め続けているのですね



「あの場にいた私はネイティの行動も貴女の指示も止めませんでした。

ネイティの事を考えずにクダリを助けて欲しいと願った私を責めますか?」



違う…そう小さく呟いて首を横に振るに尚も私は聞きました



「もしあの場に私がいなければ、ネイティはもっと違う方法で…

例えば車両内にテレポートして、クダリを脱出させていたかもしれません

あの場に私が飛び出していた、ネイティは力を出さざるを得なかったのでは?」



「そんな、あの状態なら仕方が無い事でしょう!ノボリさんは悪くない!!」



「ネイティが死んでしまって、クダリがあの状態になってから思うのです。

全ては私が私情に走った結果招いた事なのではないかとね…。

でもいくら悔やんでも過去に戻ってやり直す事はできないのです。

、貴女が自分を責める気持ちを私にもわけてくださいまし。」



俯いたまま尚も首を横に振って私を拒もうとしても無駄でございます。

貴女が自分を責める気持ちも、クダリが自分を責める気持ちもわかります。

それはあの場にいた私にしかわからない事なのではないでしょうか。

皆が自分を責めても結局誰も悪くないのです。



「ネイティオだってこんな状態が続いていれば悲しむでしょう。

あの子の為にも、忘れる事はなくても乗り越えなければなりません。」



「でも…っ、あれは私がプラズマ団と余計な関わりを持ったからで

私がいなかったら、あんな事にはならなかったんです。

私は…私がいたからノボリさんとクダリさんだけじゃないギアステまで

巻き込んじゃって…こんな事になるくらいなら…「言わせません!」…っ!」



その後に続く言葉など、自分を否定して私達から離れる事でしょう?

そんな事を許すものですか。貴女の存在は自分が考えるよりもずっと

大きくて、とても大切なのです。それだけはわかって欲しいのです。



「貴女のミッションにここでの環境が足枷になってるのは気付いてました。

でも、はそれでも私達と一緒にいる様に努力して下さったでしょう?

私はそれが嬉しかった、貴女の心の中に私達の居場所があるのを喜びました。

ミッションをクリアして、共に在りたいと願うのは私達だけじゃないでしょう?

貴女もそう思っているから、私達との接触を避けなかったのでしょう?」



「でも…でもミッションが成功するとは限らないんです。

大切な人がいなくなる事がどれだけ辛いか…そんな思いを誰にもして欲しくない

だけど…だけどここが好きになっちゃったんです。ずっとここに居たいって…

でも、でも絶対に成功するって保証はどこにもなくって…それでも私は…っ!」



俯いたまま振り絞るように紡がれる言葉に見ていられなくて抱き寄せれば

ゆっくりとですが背中にの腕が回るのを感じました。

あぁ、貴女はやっと私達がそばに居ても良いと認めてくださったのですね。



「そんな保証がなくたって、私は貴女のそばにおります。

離せと言われても絶対に離しはしないと誓いましょう。貴女の隣に私はおります

今まで独りでよく頑張りましたね、もうこれからはそんな事しなくても大丈夫

私がおります。クダリもインゴもエメットも…そしても、です。」



「ノボリさん…ノボリさん、ノボリさ…んっ!」



「えぇ、ノボリはここにおります。もう独りで苦しまないでくださいまし。」



まるで子供の様に泣きじゃくる、普段のからは想像できない事ですが

お互いの距離が縮まったのだと思えて嬉しさがこみ上げてきます。

誰の支えも受け付けずに泣くあの仕草など、もう二度とさせませんとも
















が熱を出すのなんざ何時ぶりだろうな?あいつの場合はいつもそうなんだ

こうやって誰かと関わってトラブルが起きて、それで自分を責めて…ってな

てめぇの責任じゃねぇだろうって時でもだから始末に負えねぇ。

あの場に俺がいたって何時もの様に大丈夫だび一点張りだろうから任せたが

正直、俺はノボリが心配だった。クダリが先に参っちまったがあいつも相当だ

それだからクダリに強く言う事もできず、自分を責めてたみてぇだしな。

悪いのはあいつらじゃねぇっていくら言っても聞かねぇのは似た者同士ってか?

まぁ、あっちはあっちでなんとかなるだろうから良い。問題はこっち、だ。


ノボリの部屋に戻ってみれば、クダリが起きていた。

の具合を聞いたんだろう、俺を見るなり何か言いたそうにこっちを見た。

ここで先に俺が何か言えば良いんだろうが、それじゃ何にもならねぇんだよ。



「……熱出したって聞いた。大丈夫?病院つれてく?」



「あいつのは知恵熱みてぇなモンだ。原因が解決すりゃ治る。

その為にも、クダリ…てめぇはどうしたいんだ?と関わり合いたくねぇ

それならそうする事もできるぜ?職場を変えても良いし、そうだろ?」



「あぁ、カナワの車輌基地の大掛かりな補修工事を予定してるからな。

実際からもそっちに行きたいって希望が出てるところだ。

クダリ、お前が望むなら俺は許可しても構わない。

人数も増えたし必要な資格は俺がとった。あいつの必要性は前程じゃない。

仕事を辞めさせたって良いんだ。お前はどうしたい?何を望む?」



「Wait!ソレっておかしいデショ!どうしてが仕事を辞めるノ?」



「ボクはそんな事望まない!」



「今の状況を引き起こしたのはちゃみすけだろう?それは事実だ。

仕事上の立場で言えば、お前を優先するのは当然だろう。

ダチとしてもそうだろう?今の状況を続ける気か?無理に決まってるだろ

クダリだけじゃない、ノボリだって参っちまう。もだ。

これは俺やが口を出せる問題じゃない。お前等の問題だろう。」



この脳筋従兄弟は直球勝負できやがるし!まぁぶっちゃければそういう事だ。

ここの規模で必要な資格はがとった。つまりの必要性はなくなった。

後はウイキョウの仲間も入った事だし、鍛え上げればの抜けた穴も

なんとかする事が出来る様になったんだ。

ダチとしてだって、てめぇが切り捨ててもインゴとエメットは違うだろうし?

わだかまりは残るだろうが今のこの状況よりはマシになるんじゃねぇか?

そもそも、あいつはミッションをクリアするならここを辞めた方が好都合だろう

余計な時間を取られる事なく好きな様に動きたいと思ってるだろうしな…

もっとも、そんな事を俺もも許す訳がねぇ。

あいつを独りにしない為ならどんな手でも使ってやるさ、動いてみせるさ

てめぇらにも関わり合うのなら覚悟しろと俺達は言っておいたはずだ


さぁ、どうするクダリ?