3章・旅は道連れ先駆け編 -放置しすぎた問題は-

3章・旅は道連れ先駆け編

放置しすぎた問題は



すっかり大所帯になって以前は閑散としていた作業場が少し狭く感じる

全員が揃った部屋の中で俺は最後の書類にサインをしてから立ち上がった。



「うし、これで急を要する作業は全部終わった。皆、よく頑張った!」



俺の言葉に新参の面子がはにかむように笑う。根が素直だから吸収も早いし

仕事に対して貪欲なのは良い事だ。



「うんうん、慣れない事ばっかりで大変だったと思うけどさー

逆に考えると、今後何かあっても皆ちゃんと対応できるスキルはついたし?

これからは基礎以外の応用とか書類関係を重点的にやってくからねー。」



「事務的な書類については俺が担当させてもらうから。

仕事が終わってからになるけど、少しの間付き合ってくれると嬉しいね。」



蜂の巣をつついたような状態の職場にど素人を大量に抱え込んじまって

どうなるかってのは俺でも不安はあったが、結果よければってヤツだ

今日はこれで終わりだと解散を告げれば連中は帰り支度を始める。

以前いた場所はアシがついてるだろうから、家庭持ちの職員住宅を使えと

言ってくれたボス達には感謝しかない。あそこは小さいけれど庭もあるから

保護されたポケモン達の世話をするのも問題ないだろうしな。


若い連中を全員帰して、いつもの面子で残ってから今後についてを話し合う

作業については別にいつも通りやりゃあ良いんだが、別方面で問題がある。



、あれから白ボスと接触したか?」



「うんにゃ、書類を届けに執務室に入るじゃない?白ボスってば私を見て

あーとか言って出て行っちゃうんだよ?完璧避けられてるっしょ…」



白ボス…クダリが手術を終えて職場に復帰してから、との接触を

尽く避けまくってるのが今の現状だ。

理由もわかってるし、あいつの気持ちもわかるから何も言わないでいたが

いい加減こんな事を繰り返していても良い事なんてなにもない。

デスクに頬杖をついてブチブチと愚痴るにココアを渡しながら

俺にもコーヒーを持ってきてくれたも苦笑いをしている。



「てめぇには何も思うところがねぇんだよな?」



「……もし私があの子だったら同じ事をしてたと思うよ。

自己犠牲、自己満足?それがどーしたって感じだね。仕方ないでしょ。

あの時はあれが最善策だったってのは誰が見てもわかりきった事なのにさ

当の本人だけ納得できないとか…まぁ、気持ちはわかるけどね。」



自棄酒みたいにココアをチビチビ飲んでるを横目に

俺とで目配せをしてから溜息をついた。

ぶっちゃけるなら、避けられてるのはだけなんだ。

俺等にはの様子を聞いてきたりしてるからな、教えないが。

そんな事がバレた日にゃ、こいつは何をしでかすかわかったモンじゃない。



「そろそろジム戦も再開しなきゃならねぇんだろ?

リグレーなら俺が預かってやる。ウダウダしてる暇なんてねぇだろうが。」



「まぁ、そうなんだけどねー。そうやって疎遠になっても仕方ないのか…

つーか、ソッチの方が私的にはやりやすいけどさ!」



デスクに突っ伏しながら、書類をパラパラとめくっているを見て

がその後ろ頭を引っ叩く、やれるモンならやってみろって事なんだろう。


仕事で上に立ってる責任上、倒れるわけにはいかないからと無理やりでも

が食わせたり寝かせたりしてるから、の方は心配していない。

クダリに関して言えば、凄ぇやつれてるのが気になってるが一応元気だし

ただ、ノボリがまるで腫れものでも触るような態度が気にはなっている。



「お前は…そうやってすぐ人との繋がりから離れたがる癖を直せ。

あいつ等はもうお前にとってダチなんだろう?簡単に切り捨てられるのか?」



「それができたら苦労はしないっての!何も出来ないのが辛い、辛すぎ!

もうさ、正面突破して胸ぐら掴む位やった方が良いのかなって思うんだけどー」



「おまっ!それはやめておけ…「誰ヲ 掴ムノ?」…エメット?!」



「Hi!色々面倒事があってコッチも大変だったヨ!遅くなってゴメンネ。

ソレで…クダリとは結局マダ話が出来てないんだネ?」



「ノボリからアレは食事も殆ど手をつけないと聞いておりマス。

オマエは食事を摂っていますカ?眠る事は出来ているのデスカ?」



ドアの前にインゴとエメットがいるのにも驚いたが、それより驚いたのは

二人のハグを受けて、当然の様に返すにだった。

出張した後から個人的にチャットをやり取りしてるってのは聞いていたが

ここまでこいつが親しげに誰かと接してるのを見るのは初めてで

それはも同じだった様で、コーヒーの入った紙コップを口元に置いたまま

目を丸くして3人の様子を見ていた。その気持ち、凄ぇわかるぞ。



「ボク達はも心配なんだからネ!」



「あははー、ありがとうございます。やっぱりクダリさんのやつれ具合は

食べてないからなんですね?そうとわかればもう黙ってる必要もないかなー

お二人はボス達の所には行ったんですか?」



「先にコッチに来た方が良いってインゴが言ったカラ、まだダヨ。」



「どうせオマエの事デス、何か企んでいるのでショウ?」



「まぁ、穏便にいければ良いんですけどねー。

折角久しぶりにお二人ともこっちにきたんですから、うちでご飯食べませんか?

ついでに、ボス達も誘って欲しいなーなんて思ってたりするんですけどー。」



「Yesって言うかわからないケド、誘ってあげても良いヨ!」



「別にワタクシはアレ等と食事を共にする義理はございませんガ

オマエが頼むと言うのナラ、引き受けて差し上げマス。」



「助かりまっす!んで、はどうする?」



あぁ、この顔は俺とがひねくれてた時によく見たな…

表面上では普通にしてるが、こういう時のは腹の中にでかい爆弾を

抱えてて、それがいつ爆発するかわからないんだ…つまり、かなりヤバイ。



「てめぇを放置してたらロクな事やらねぇだろ。」



「だな、お前のストッパーとして参加させてもらうぞ。」



私をなんだと思ってる!と、がプリプリ怒っているのを

面倒事に首をつっこもうとするモノ好き!と言うインゴとエメットには笑った

二人はそのままボス達の所へ行って、一度二人の家に荷物を置いてから

合流するからと言って部屋を出て行った。

俺達も仕事は全部終わらせてたから、そのままの家に向かう。


家に帰ってから、先にシャワーを浴びたはキッチンに向かって

食事をまともにとってないらしい(それは俺も初耳だった)クダリの為にと

あいつの好きそうな物で消化の良い物を色々作り始める。

と俺がシャワーを浴び終わった頃には飯の支度はほとんど終わっていて

あとは連中が来るのを待つだけ…と、思っていたらチャイムが鳴った。

がドアを開けると、そこにいるのはインゴとエメットだけだった。



、アレ等に構う必要はありまセン、放っておきなサイ。」



「ゴメン、二人を連れてこれなかったヨ……」



インゴはいつも以上に眉間に皺を寄せて不機嫌丸出しでいるし

エメットはそんなインゴを窘めながら、困った様にお手上げのポーズをとる。

こいつは思った以上に面倒な事になってるのかもしれない。

クダリだけじゃない、ノボリまで来ないってのはそういう事なんだろう。

もっと早くに俺かが動いてやれば良かったと後悔したって遅い。

仕事に追われてたってのは言い訳にならないだろうが、とクダリ

二人の問題だからと傍観しすぎてたのは不味かった。


当の本人…はそれを聞いても特に表情は変えなかった。

ただ黙々と出来上がった料理をテーブルにセッティングするから何も言えずに

俺達はそのまま適当に座ったんだが、は立ったままだった。

全部の料理を運び終わるとそのまま俺等の横を通って玄関へ向かう



「皆は先に食べててー、私はちょっくら最上階に住んでるセレブな友人と

ゆっくり、じーっくり話し合いでもしてくるわー。」



「おい、行くなら俺達も…って、行っちまいやがった。」



ヤバイ、マジでこいつはヤバイ。あの顔は絶対何かやらかそうとしてる

腹が減ってるし酒も飲みたいってのが本音だが、そんな事言ってられないぞ!

慌てて立ち上がった俺等を見て、インごとエメットは不思議そうな顔をしている



「二人共、ココは三人で話をさせた方がボクは良いと思うんだケド?」



「えぇ、拗らせてる馬鹿にコノ辺でしっかりと言うべきデス。

ソレをオマエ達が出ていけば余計に馬鹿を増長サセ、拗らせるデショウ。」



話し合いだけで何をそんなに慌ててるんだと呆れてる所悪いんだがな



「二人は知らないから仕方がないんだがなぁ…そういう訳にもいかないんだ。」



「だな。…あいつの話し合いっつうのは、拳で語るってのも含まれるんだぜ?」



俺等とインゴ達の間に微妙な無言空間が出来上がる。

何かの解決方法を考える時に、手足がでるって選択肢が上位にくるってのは

例の大掃除の時でこいつ等だってわかったモンだと思ってたんだがな。

更に呼吸二つ分の沈黙の後、ようやくソレを思い出した様に二人も立ち上がる



「Wow…ソレは駄目ダヨ、…」



「……ニハLadyノ自覚が無さ過ぎでゴザイマス。」



を止めるのは至難の技だが手段なんて選んでいられない。

いくらダチだからって職場のトップに手を出すなんざ許されないだろう!



ブン殴ってでも、それだけは阻止しなくちゃ直属の上司としては駄目だよな?