3章・旅は道連れ先駆け編 -奇跡と抱擁と-

3章・旅は道連れ先駆け編

奇跡と抱擁と



ボク達とは着替えてすぐにポケモンセンターに向かった。

ネイティがポケモンセンターに運ばれたって…危ないって…

そんな、ちょっと待って、嘘だって言って。



「すみません、ギアステからネイティが来たと思うんですが

様態はどうなんでしょうか?トレーナーも一緒に来てるはずなんですが…」



受付カウンターにいったらなんだか凄くビックリされたんだけど

サブウェイマスターが来てるからなのかな?周囲のトレーナーさん達も

ボク達を見てなんだかザワザワとしちゃってる。



「ネイティはマスターさんが連れてご自宅へ帰られましたよ。」



「え?」



受付のジョーイさんはすぐに仕事の顔に戻って教えてくれた。

家に帰ったって事は大丈夫だったのかな?

それならどーしてのメールにでなかったんだろう。

そんな事を考えてたらジョーイさんは凄く悲しそうな顔をしてから

ボク達にだけ聞こえるような小さな声で話してくれた。



「仲間のポケモン達が家にいるから、きちんとお別れをさせたいと…

ここで出来る事は全てやりつくして、もう何もしてあげる事がないので

ドクターの許可もおりたので、お戻りになりました。」



嘘だって言って欲しいけど、ジョーイさんがそんな嘘を言うはずがない。

ボク達は急いで家に…の部屋に向かった。

誰も何も言わない。ううん、言えないんだと思う。ボクもそうだもん。


マンションのエレベーターを降りて、の部屋のインターフォンを押す。

外から見たら明かりがついてるから居るはずだけど玄関は開かない。

がポケットから鍵を取り出すと振り返った。



「ノボリとクダリはこれから何があっても絶対に泣かないってできるか?

泣きそうな顔も涙も駄目だ。いつも通りちゃんと笑えるか?」



それってどういう意味なのかボクにはわからないんだけど……

泣いちゃダメどころか泣きそうになってもダメ?こんな時に何を言ってるの?



「…その理由を聞いてもよろしいでしょうか?」



「最期に見せるなら、泣き顔より笑顔の方が良いに決まってるじゃねぇか。」



予感はあった。どれだけ違う、違って欲しいと思ってもそれは消えなかった。

やっぱり…やっぱりそういう事なんだ。



「クダリっ!」



体の力が一気に抜けたボクをノボリが抱きしめる。

嫌だ、そんなの嫌だって言っても、きっとどうにもならないのもわかってる。

ボクを支えてくれてるノボリの手が震えてる。うん、ノボリも辛いよね。

だけど、一番辛いのは。これ以上に辛い事をしちゃダメ。

その手に自分の手を重ねて、ちょっと強く力を込める。



「ノボリありがと。大丈夫、一番辛いのはボクじゃない。

が出来る事なら、ボクだってしなくちゃなんない。そうでしょ?

ボクはできるけどノボリは?ダメだと思うなら部屋で待ってても良い。」



「…私もできます。心穏やかに、安らかに……ネイティを送りましょう。」



「…開けるぞ……」



凄く重い音がしたような気がする。ドアが開いてもは出てこない。

そのまま中に入れば、リビングのソファーのいつもの場所に座っていて

その周りをポケモン達が囲んでいた。



「連絡しなくてごめんなさい。ネイティ、聞こえる?皆来たよ。

クダリさんも大丈夫、いっぱい頑張ったもんね…流石うちの子偉い偉い!」



の腕の中にネイティはいた。凄く息が荒い。

目は閉じられてないんだけど焦点が合ってない。きっと見えてない。

ボクもノボリもポケモンを見送った事があるからわかる。

ネイティに残された時間は…もうほとんど残ってない。


がネイティに柔らかく笑いながらその耳元で話すとネイティが動いた。

何か言おうとしてるんだけど…もう声が出せなくなってる。

笑ったまま何度も優しく頭を撫でてたの手にノボリの手が重なった。



「ネイティ、聞こえますか?ノボリでございます。

あなたのおかげでクダリが助かりました。ありがとうございます。」



ネイティの荒い呼吸がちょっと落ち着いて、目が細くなる。

そうだったね、ノボリに撫でられるといつもこんな顔をしてたね。

満足するまで撫でられるとボクの頭の上に乗ってよく歌ってたよね。



「ネイティ、クダリだよ?助けてくれてありがと!

いっぱい力を使わせちゃってゴメン。疲れちゃったね…ゴメン…ね…」



いつもとおんなじスマイルなんてできないけど、それでもボクは笑った。

声が震えそうになるのを必死で我慢して、の隣に座ってネイティを撫でる

掌から命がこぼれ落ちていくのが伝わってくる様な気がした。



「ボクのせいだ…ゴメンって言うのも変だし、許してもらえないよね。

ボクはキミをこんな風にしちゃったボクを、ボクは許せない…」



「やめてクダリさん。ネイティはそんな事思わない!

大好きな人を守れた事を誇りに思いこそすれ、責めるなんてしません。

ネイティはクダリさんが大好きだもんね?守れて嬉しかったよね?」



父様も母様も、インゴもエメットも、みんな…みんな行ってしまった。

キミもおんなじ、ボクを残して遠くへ行ってしまうんだね。悲しい、悲しい。

どんなに嫌だって言っても変えられない事実が悲しくて哀しくて仕方がない

でも、出会わなければ良かったなんて思わない。思えるわけがないよ。

ボクのポケモンじゃないけど、キミはボクにとってすっごく大切で

すっごく大好きな友達だったんだ。君と過ごした日はボクの宝物。

だけど、それを壊したのはボクだ。


一番辛いはずのが泣かないからボクも泣かないけど

心の中は泣きたくて叫び出したくて、そんな気持ちが暴れてる。

いっそ責めてくれれば良いのにはボクの背中を優しく撫でてくれる。



「クダリさん、笑ってください。ネイティがほら、心配そうにしてますよ?

私もクダリさんもノボリさんも皆そばにいるよ。大丈夫、大丈夫だからね。

他の子達もそばにいるよ。寂しい思いなんてさせないよ、大丈夫だよ。」



いつの間にかムウマもノボリのホルダーについてたボールから出ていて

ボク達を取り囲むようにポケモン達がネイティを見守っている。


ネイティの呼吸が乱れる。開いてる目が閉じそうになるけどそれを我慢して

一生懸命動こうとしてるその体をとボク達は何度も撫でる。

凄く辛そうなのに、それでもネイティは動こうとするのをやめなかった。


痙攣するみたいに体が何度か大きく動く、もう終わりかと覚悟を決めた

その瞬間、ネイティの体が光り出して、その光はすごい勢いで強くなった。

そしていきなりの事で目を閉じちゃったボクの膝の上に重みがかかる。

撫でていた掌からは今までと違う触り心地を感じた。

光が消えた瞬間にボクだけじゃない、も一緒に何かに包まれた。



「嘘…これって…こんな時に進化とか、どうして?」



「ネイティ…ううん、ネイティオって言わなくちゃだね。

やっと、やっと進化してくれたんだね。おめでとう…ありがとう…っ!」



目の前にはネイティオがその翼をボクとを抱きしめる様に広げてた。

それだけじゃない、頭の中にネイティだった頃の楽しかった毎日が浮かぶ。

その他にも、傷だらけになったが寝てるベッドに擦り寄る様にいる

ネイティの姿だとか、ポケモン達が楽しそうにしてる姿が次々に浮かび上がる。


あぁ、これはテレパシー。ネイティオがボク達に見せてくれてるんだ。

そのどれもこれも、全部が楽しかった、嬉しかったって気持ちとその後に

ありがとうって気持ちと、幸せだよって気持ちが流れ込んでくる。

は私も幸せだよって抱きしめてる。ボクもおんなじ気持ちだよ。

ネイティに出会えて良かった、すっごく楽しくて幸せだったよ。

徐々に力が抜けていくその体をギュって抱きしめる。



「ネイティオになっても友達なのは変わんない……っ、大好きだよっ!!」



「ずっとあなたは私の大切な子だよ。ずっと…ずっと大好きだからね。」



どの位抱きしめてたんだろう。その間、ボク達はずっと笑顔を忘れなかった。

ゆっくりとボク達を抱きしめていた翼が離れる。









ネイティオの顔はすっごく幸せそうで、笑ってるみたいだった。