3章・旅は道連れ先駆け編
悪夢の代償
目が覚めたときには病院のベッドの中。ボクは……生きてるの?
起き上がろうとしたけど、左肩が凄く痛くて思わず大きな声を出しちゃった。
「いきなり起きるんじゃねぇ、どこか痛い所は?目眩は?吐き気は?」
横でライブキャスターをいじってたがボクをゆっくり起こしてくれた。
何度か深呼吸を繰り返してたらちょっとは痛みがマシになったかも
「左肩がすっごく痛いだけ、あとは大丈夫。
、ノボリは?トレインはどーなったの?一体何が起こったの?」
「順番に話してやるから、そう一気に聞くんじゃねぇ
ノボリがトレインの前に立ったのを俺達は執務室のモニターで見てた。
そん時、一緒に見てたネイティがごとテレポートしたんだ。
その後はテレキネシスを使って車両を浮かせて止めた。」
「ネイティが?!」
「持ち主に似て、やる事がぶっ飛んでるのは洒落にならねぇがな。」
その後はおじいちゃんが来て、トレインからボクを出してくれた事
あの現場の指揮をノボリがやった事、もうが来てるだろう事
今頃これからの事を皆で話し合ってるんじゃないかって話してくれた。
ボクはそれを聞いて嫌な予感がした。ノボリ、自分を責めてるかもしんない。
サブウェイマスターとしてじゃなく、個人的な感情で行動しちゃった事を
生真面目が服着て歩いてる様なノボリがそれを許すわけがない。
きっと責任を取るって、サブウェイマスターを辞めるって言うに決まってる。
「そんな事絶対にさせない!」
「…何がそんな事ってのは聞かないでやるが、クダリは何をするつもりだ?」
ベッドから出て、そばに置いてあったコートを着ようとしたんだけど
右手だけじゃうまく着込めなくてまごついてたら、が手伝ってくれた。
きっとボクのする事なんてわかってるはずなのに聞いちゃうんだね。
「ギアステに戻る。ノボリきっと今回の事を自分のせいにして辞めようとする。
そんなの絶対させない、ボクがとめる。」
「他の職員が全員責任を追求しての結果でもか?」
「その時はノボリだけの責任じゃない、ノボリが辞めさせられるってなら
ボクも一緒に辞める。ボクだって当然処罰をうけなきゃなんない。」
元々はボクのせいなんだ、ノボリだけが悪いわけじゃない。
はボクがそう言った後に、眉間に皺をよせてからボクの左肩をトンと押した
それだけなのに、そこが10万ボルトを受けたみたいに痺れる様に痛い。
悶絶してる横で、鎖骨が折れてるんだと言ったの声は絶対零度だった。
「ふざけんじゃねぇ、てめぇらが辞めたら誰がバトルサブウェイを動かす?
下っ端の替えはいても、トップの替えなんざ早々見つかるわけねぇんだよ。
それがサブウェイマスターなら尚更だ。てめぇらは自分の立ち位置ってモンを
もっと自覚してから口を開きやがれ。」
に言われなくたってわかってる。それにサブウェイマスターは天職だ。
ポケモンが好き、バトルが好き、電車が好きなボク達の理想の仕事。
その他に運営とかもついてくるけど、好きな仕事ができるんだから平気。
散々達には甘ちゃんだとか言われてるけど、いつまでも同じじゃない。
「ボク達だってちゃんと前進してるんだよ。」
ももも凄い人過ぎるから、追いつけないだけ。
3人ともちゃんとボク達の頑張りを認めてくれてるのはわかってる。
でも、今回はそんな悠長な事を言ってる場合じゃない。
「あのね、ボク達がトップとして全然甘いのはわかってる。
でも今回の事はただ報告するだけじゃ本部は納得なんてしてくんない。
ウィルスの発症を食い止められなかったジャッキー達が悪いの?
トレインへの影響を食い止められなかったおじいちゃん達が悪いの?
違うよね、問題はそこじゃない。ボク達の行動こそ処罰対象なんだ。
何もしませんでしたで通じる程、本部は甘くないよ。」
「つまりクダリは本部から部下を庇うために辞めるって言ってんのか?」
さっきまでの絶対零度な雰囲気もちょっとは和らいだ感じがするから
ボクがちゃんと考えてるってわかってくれたみたい。
「辞める事は簡単だけどそれは逃げる事、ボクとノボリが大嫌いな事。
そんな事をするくらいなら、地面を這いつくばってでも前に進む。
でも…でもね、それが許されない事もあるってボク達は知ってる。
だからボクはこれから戻って皆に話をしなくちゃなんないから行かせて。
ドクターはボクの怪我がどうだって言ってるの?」
「頭を打った形跡はなし。無意識に庇ってたんだろうな
だが左鎖骨は単純骨折じゃねぇ、手術した方が回復は早いだろうとよ。」
「それは順番でいったら後、今やらなきゃならない事は他にある。」
早く、早くノボリの所へ…皆の所へ行きたい。そしてちゃんとしなくちゃ。
床頭台に置かれた帽子を被るとは溜息をついてナースコールを押す。
ボクが気がついたことをナースセンターに知らせた。
やってきたドクターにもう大丈夫だから職場に戻るっていったら驚かれた。
観察入院ってのをした方が良いって言われたけど、やってらんない。
ボクとドクターが帰る帰らせられないってちょっと押し問答になったけど
が自分が経過観察して今晩も傍で看ますからって言ってくれた。
がドクターなのを知ってるから、ドクターは渋々納得したみたい。
「てめぇの無事を報告しようと思ったら本人がついてきたってか?
俺は連中に何を言われるかわかったモンじゃねぇんだがな…
クダリ、今晩はてめぇの家に泊まらせてもらうからな。それは譲らねぇぞ。」
「それは全然オッケー!どうせノボリもそばにいるって言うだろうし
リビングで雑魚寝になっちゃうけどいいよね?
それよりも問題はノボリをどーやって説得するかって事と
ボクがこんな風になっちゃったからこれからトレインをどーするかって事と
一番頭が痛いのは本部にどーやって説明するかって事だと思う。」
全部の手続きが終わってギアステに戻る途中にの質問に答える。
早足で歩くと骨折した場所が痛いけどそんな事を言ってらんない。
ホントに問題は山積みで今からグッタリしちゃいそうだなんて考えてたら
隣を歩いていたがボクを見てニヤリと笑う。あ、これはもしかして
もう色々と考えちゃってるって事なのかな?
「ノボリの事はがなんとかする。てめぇは大人しく治療に専念しやがれ
俺を誰だと思ってやがる、こんなモンどうにでもしてやるよ。」
「あはは、やっぱり!でも頼りっぱなしにはしないよ?
ボク達もちゃんと考えるから、の考えは参考として聞かせてもらう。」
は…ううん、ももボク達の為にきっと動くと思う。
でもそれに甘えてちゃダメ。ボクもノボリもサブウェイマスターで
企業のトップとしてちゃんと動かなきゃいけないんだから!
ギアステに着けば皆驚いてたけど、無事だった事を喜んでくれた。
中には泣いちゃってる人もいて、凄く大切に思われてるんだなって
今更ながらに自覚した。ボクも同じ、皆が凄く大切だよ!
ノボリの事を聞いたら、役員達と一緒にミーティングルームにいるみたい
バカな事を言ってるんじゃないかすっごく心配でと急いで向かった。
「皆、ボク達はもうあんな事をしない!ノボリを許して!」
「クダリっ?!」
思い切りドアを開けたせいで左肩が痛いけど、気にしてなんかいられない。
ボクを見てビックリしてるノボリの所まで行って、皆の前に向き直る。
皆もノボリに負けない位ビックリした顔でボクを見てた。
ボクが最初にやらなきゃいけない事はノボリに注意する事だ。
振り返って、自由な右手でノボリを抱きしめる。
あったかい…あぁ、ボクもノボリも生きている。それが嬉しい。
この暖かさを失わなくてホントに良かった。生きてて良かった。
後でネイティにありがとうって言わなきゃ、きっとネイティも心配してる。
「ノボリ、キミに辛い選択をさせてゴメン。
キミの気持ちはクダリとしてはすっごく嬉しかった。でもここじゃダメ。」
「えぇ、それは重々承知しております。すみませんでしたね、クダリ。」
ボクの肩に顔を埋めて話す声が震えてるけど、口調はしっかりしてる。
良かった、ノボリはちゃんとわかってくれてた。
「わかってくれたならそれで良い。これからどーするかを考えなきゃ。
辞めるなんて言わないでね?それって逃げる事、ボク達が一番嫌いな事。
そんな事言うんならボクすっごい本気でノボリを怒るから!」
「…ふふっ、それは既に皆様に怒られましたので勘弁してくださいまし。
えぇ、私達にはやらねばならない事が山積みでございます。逃げませんとも!」
二人で笑い合ってたら、皆もなんだか笑ってた。
あんな事があったばかりだけど、最悪な事態は免れたからラッキーだと思う。
ボクが手術を勧められてる事も話してこれからの事を皆で話し合った。
が色々提案してくれて、大体それで良いんじゃないかってなったのは
やっぱり流石だなーって感心しちゃった。
多分本部の方も大丈夫だろうって話してから、今日はここまでにした。
明日からすっごく忙しくなりそうだけど、そんな事言ってらんない。
役員の人達がそれぞれの部署に戻った後、これからの事を話す。
「ノボリ、ボク本当は観察入院?してなきゃなんなかったんだけど
が付き添う事を条件に退院してきた。だから今日はが泊まるから。」
「えぇ、それは問題ございません。明日から忙しくなりますから今日は帰って
食事もデリですませてゆっくりするといたしましょうか。」
「どーせならもも一緒で良いよね!そー言えばは?」
「おや、言われてみればあの場所で見て以来見かけておりませんでした。
!はどちらに?…なんだか急いでる様ですがどうしました?」
の方を見たら、なんだか凄く難しい顔をしてどこかに行こうとしてた。
そばにいたもおんなじ顔をしる。二人がそんな顔をするのは珍しいから
何か問題が起きてるんだなってのが、ボクもノボリにもすぐわかった。
近づくとお互いの顔を見合わせてからすっごく真剣な顔をしてこっちを見て
がゆっくりと話し始める。
「は今ポケモンセンターに行ってる。俺ももこれから行く。」
「え?ポケモンセンターってどーいう事?って、ちょっと待ってそれって…
ねぇ、ネイティがボク達を助けてくれたんだよね?ネイティなの?
ネイティの為にはポケモンセンターに行ったの?どーして?」
「7輌ものトレインを一時とはいえ単体で止めたから…でございますか?
それで体に負担が掛かってしまったのですか?」
詰め寄るボク達には何か迷ってる様な顔をしてから一度目を閉じて
それからゆっくり目を開けると落ち着いて聞けよと言って言葉を続けた。
「……かなりヤバイ状態らしいって会議が始まる前にメールがきて
その後何度かメールを送ってるんだが全く返信してこないんだ。」
「嘘…でしょ……?」
「あぁ…なんて事に…っ!」
頭を何かで思い切り殴られた様な感覚に、ボクもノボリもその後の言葉が出ない。
夢だったら良かったのにって思った事が無くなったと思って喜んでたのに
もっと酷い夢がボクを捕まえて頭からバリバリと食べてしまおうっていうの?
ちょっと待って、そんな夢なんていらない。現実だったらもっと要らないよ!