3章・旅は道連れ先駆け編
愚行とけじめ
取り付けられてるカメラの映像はクダリの泣き笑いを最後に途切れ
その後私は執務室を飛び出し走りました。目指す場所は決まっております。
その場所に到着して、線路の上に立っていると走行音が近づいてまいります
トレインのライトが線路の真ん中に立ってる私を映し
運転席で目を見開いて私に向かって何か叫んでいるクダリは泣いておりました
貴方は本当は私に『助けて』そう言いたかったのでしょう?
ひとりにはいたしません、両親が死んだ時にお互いに誓ったでしょう!
私を置いて逝くなんてさせません、どんな時も共に……でございます
両手を広げたまま、クダリ…そう口を動かせば泣き崩れるように顔を歪ませ
口を大きく開いたその声は聞こえずとも言葉は私にちゃんと伝わりましたよ。
迫り来るライトが眩しくて…そのまま目を閉じ、その時を待ちました。
「ティ───ッ!!」
「なっ…ネイティ?!までっ!!」
背後には体を淡く光らせたネイティと、背後から私を抱きしめている
先程まではいなかったはずの存在に驚いて目を見張れば、泣きそうな顔で
はボールからリグレーを出しました。
「ネイティ、もうちょっと頑張って!リグレー、ネイティをサポートして!
誰かっ、テレキネシス持ちのポケモンを大至急連れてきてくださいっ!
ノボリさんは急いでクダリさんを外へっ!お願い、急いで!!」
車体を浮かせ、車輪が空回りを続ける列車の中にいるクダリの姿が見えず
私は急いで非常扉に手をかけますが一向に扉が開きません。
「そこをどかんかっ!!」
肩を掴まれ後ろに体が引っ張られ、その人をみればグランパでございました。
その後工具を使って非常扉のロックを破壊すると、無理やりドアをこじ開けます
そして、中に入ると操作パネルを色々と触り出しはじめました。
「ゴチルゼル、そのままテレキネシスを続けてくれ!
一応頭を打ってるかもしれないからあまり動かさないで!ゆっくり出すよ。」
救護班を引き連れたがやってきて、クダリを迅速に担架に移動させます。
駆け寄って声をかけても返事は無く、クダリはぐったりとしたままです。
「クダリっ!、クダリは?!クダリは無事なのですか?!」
「目に見える外傷はなさそうだけど、検査をしないとね。
病院には俺が付き添います。状態がわかり次第連絡をいれますから。」
「私も、私も一緒にまいります!クダリ、クダリっ!!」
気を失ってるのがわかっていても、クダリの名を呼ばずにはいられません。
その時、が私の目の前で手を打ったと同時に我に返りました。
「この大馬鹿野郎っ!!しっかりしろ!!」
「ですがクダリがっ…クダリが…っ!!」
「お前はサブウェイマスターだろ!今やらなきゃならない事はなんだ?!」
両方を掴まれ、思い切り揺さぶられて体がガクガクと動くその横を
後から駆けつけた職員の皆様が通りすぎ、それぞれに迅速に動きます。
あぁ、私はなんという事をしようとしていたのでございましょうかっ!!
クダリは最後までサブウェイマスターであろうとしていたのに、自分は…っ!!
「ヤミラミ、テレキネシスでフォローだ。」
「総務部長、私は…私は……」
がの方へ向かい、その代わりに隣に立った総務部長が
私の肩に手をかけますが、視線はこちらを見てはおりません。
「黒ボス、皆それぞれに動いている。今すべき君の仕事は?」
「……、クダリを連れてドクターと一緒に行ってくださいまし!
トレインの臨時運休の連絡とお客様の対応はラムセスに一任いたします。
トレインの事はシンゲンとグランパにお任せ致します。」
最悪の状態を免れたのです。今は早急に状況を終わらせるべきで
その後の事はそれら全てが終わってからでございます。
後から来たドクターがテレポートでクダリを連れて行き、その後私は
自分の…サブウェイマスターとして出来るだけの事を全て終わらせました。
途中、がイッシュの警察官と共にやってきて、現場検証を行い
車輌も応急的な修理を終え、グランパ、シンゲンと共にカナワタウンへ向かい
場所を執務室に変更して、へ今回の出来事の報告をいたしました。
「今日はノボリも大変だったし、クダリの事も心配だろ?
まぁ、詳しい話はが後から書類でくれるって言ってるからな。
マスコミへの箝口令はちと難しいが、大騒ぎにはならないようにしてやる。」
「いつも色々とすみません。」
「公私混同はしねぇ主義だけど、この場合はそういう問題でも無いし?
まぁ、めんどくさい事はに任せておけばなんとかなるって!」
だから心配するなとでも言いたげに私の肩を軽く叩いては執務室から
出て行かれました。なんとかなる…今回もしがそばにいなかったら…
公私混同とは、私がしようとした様な事を言うんですよ。…
病院へ行きクダリの様子を知りたいけれど、今はそれをすべきではない
やってしまった事を悔やんでも仕方がありません。これからどうするか?
失った信用を取り戻す事は困難でも、動かなければ意味がないのです…
散々サブウェイマスターとしてとこの唇で言っておきながら
最終的にはそれを否定した私の罪は重いのです。
全てはこの事態を終わらせた後で…で、ございます。
「黒ボス、ちょっとミーティングルームまでご一緒してください。」
「わかりました。、先程は愚かな真似をしてすみませんでした。
あの時私はサブウェイマスターという立場を放棄しておりました。」
ノックと共に執務室に入ってきたに謝罪の言葉を言えば
彼は片眉をあげてチラリと私を見た後で表情の読み取れない顔をしました。
これは…きっと怒っているのでしょうね、当然でございましょう。
「…それは俺に言う言葉じゃないと思います。
次にやる事、すべき事はわかるでしょう。けじめはつけるべきです。」
「えぇ……わかっております。」
執務室を出て向かいまでの間、は一言も話さず前を歩いていました。
ミーティングルームのドアを開け中に入れば主要ポストの面々が揃っており
これは今回の事を糾弾するのでしょうね。
空いている席に座ると、総務部長が私の前に書類を起きました。
「今回の件について、本部にはこれを報告書類としてもらいます。」
「お待ちくださいまし、これは…これには私の処分がございません。」
書類の内容はウィルスの発症から今までの経緯が細かに書かれている他には
今後、トレインに乗車する職員達は全員テレポートを覚えているポケモンを
必ず携行する事で、人命の危険を回避するとしか書いておりませんでした。
「何を以て処分と言っているのかね?」
「私はサブウェイマスターという立場を放棄し、あの様な行為をとりました。
身内と職場を天秤にかけて、結果身内を…クダリを優先したのでございます。
そんな私がサブウェイマスターを名乗り続ける事など、どうしてできますか!」
「…そんな事で簡単に解決できると?それは逃げにしかならない。」
いつものストレートな口調を一層強め、部長の口から出た言葉に
私は何も言う事ができなくなってしまいました。ではどうしろというのです
愚行ととられるあの行動は私の本心からだったのですから。
重苦しい沈黙が空間を満たし、息をするのも苦しく感じた時に
「ちょっと発言させてもらっても良いですかね。」
が挙手をして席を立ちました。総務部長が頷くと彼はそのまま私を見て
ゆっくりと口を開きました。
「委託業者の俺が言うことじゃないけれど、だからこそこの状況について
一番客観的に見れるから言わせていただきます。
まず、ボスの行動はここにいる全員が咎めるものではないと判断しての事
一人しかいない身内の危機に冷静になれと言う人はここにはいません。
ボスはその後の処理を迅速に且つ的確にやってのけたでしょう?
今だって病院に白ボスの様子を確かめに行きたいだろうにここに居続けてる
全員が貴方の気持ちをきちんと理解しての処置なんですよ?」
「ですが、皆様の心配りはありがたいですが公私混同はいけません。」
「誰が公私混同してると?勘違いしないでいただきたいですね。
いいですか、起こってしまった事を色々言ったって状況が変わりますか?
誰だって過ちは起こします、肝心なのはその後でしょう?
これからどうするんですか?ボスは自分の立ち位置を見直した方が良い
貴方の代わりをできる人物なんてここには誰もいないんです。」
「ですが…」
「石頭なトップなんて勘弁してください。これはさっき皆に聞いたんですが
例えば、断崖絶壁にかかる陸橋で作業をしていたら列車が向かって来た。
レールの軌道を変えれば列車と乗客は助かるが、その先で作業してる連中が
犠牲になってしまう。作業している仲間を助けるとその逆になってしまう。
その作業員の中には大切な人がいる、作業員を避難させる猶予はありません。
……ボスならどうしますか?」
「軌道を修正して列車と乗客の安全を第一にとります。
ですが、その様な事が起こらない様に注意をするのが一番でございます。」
なぜはこんな例え話を?お客様を優先するのは当然でございます。
私の出した結論にここにいる全員がどこかホッとした表情で頷きました。
も同様に頷いて、言葉を続けます。
「皆さんも同じ選択でしたよ。ちゃんと自分のすべき事がわかってる。
どれだけ気をつけても事故る時は事故るんです。今回の事も同じですよ。
それでも黒ボスのとった行動は褒められたモンじゃない。
そこはきっちりとけじめをつけて、この件をさっさと終わらせましょう。」
「私達はこの件にあらゆる手を尽くした、だからこそこの程度で済んだ
そう思うべきではないのかね?糾弾すべきはプラズマ団だろう。」
「デスネ。、ウイキョウト彼ノ仲間ハ大丈夫デショウカ?」
シンゲンの発言に首をかしげていると
今回のウィルスに関係してた人物の一人をウイキョウが探し出して
彼の仲間達が捕らえて、吐き出させたそうです。
ですが、その様な事をすれば彼等はただでさえプラズマ団を抜けた身
今のプラズマ団がそのような裏切り行為を許すとは到底思えないのですが…
「ウイキョウ達はそんな事承知の上ですよ。
正直彼等がいなければこれだけ早くウィルスを駆除できてなかった。
俺はその恩を返したい。そうしなければ筋が通りませんからね。」
「彼らの保護が必要なら協力は惜しみません。」
沢山の方々の行動があってこそ、事態が最悪の状況にならなかった。
今改めて考えればそれは奇跡と言っても過言ではないでしょう。
私の言葉に、が笑ってありがとうございますと言いますが
それはこっちのセリフでございます。
私への処遇に関する話が終わり、今後の事について話し合っていると
部屋の外がなんだか騒がしく、何事かと総務部長が席をたった時
「皆、ボク達はもうあんな事をしない!ノボリを許して!!」
「クダリっ?!」
ドアを壊しそうな勢いで入ってくるなりの言葉に全員が驚きましたが
何より一番驚いたのは、左手を三角巾で吊ってはおりますがそれ以外に
特に目立った怪我もなかったクダリのその姿にでございました。