3章・旅は道連れ先駆け編 -立ってる者は上司でも使え-

3章・旅は道連れ先駆け編

立ってる者は上司でも使え



就業時間もあとわずか、私もクダリも今手にしている書類を仕上げれば

本日の業務が終わるという時に総務部長がやってまいりました。



「失礼するよ。ボス達、ホドモエシティのヤーコン氏から

なんだか要請したい事がある様で、その書類を持ってきたよ。」



差し出された書類を見れば、以前行われたエキシビジョンマッチの大会会場で

定期的にトーナメント大会をするので1回目の解説者をに頼みたいという

主催者のヤーコン様からの要請書だったのでございます。



「前みたいな大会が定期的に行われるの?それってすっごく面白そう!」



「白ボス、そんな呑気な事を言ってても良いのかね。

もしこの大会が定期的に行われるのなら、当然トレーナーはそちらに流れる

つまり、バトルサブウェイの集客率が下がってしまう事になるんだが?」



「確かに一個人としましては、トレーナーのレベルアップの場が増える事は

非常に嬉しく思いますが、企業側としては死活問題になりかねませんね…。」



なによりこの要請をが受けるとは考えられません。

彼女は公の場所に出る事を避け続けてるので、今回も嫌だと言うでしょう。

しかし、街の発展を目指すというヤーコン様の気持ちに応えたいのも確かで…

これは困りましたね…クダリを見れば、私と同じ様に考え込んでおります。



「そこで、ひとつ提案があるんだがね。

そういう噂を聞きつけたうちの職員の提案を受けて考えた企画なのだが…」



いつもの悪タイプの様な笑みをした総務部長から受け取った書類を見れば

ヤーコン様の所もバトル勝利時にはBPポイント制を使うらしいので

同じくBPポイント制をとっている私達のバトルサブウェイと連携をする。

つまりBPポイントの共用をしたら良いのではないか、というものでした。



「あのね、確かにそーなればどっちもお客様を取り合う必要もなくなる。

うちは別にそうなっても良いけど、あっち…ヤーコンさんがうんって言う?」



「それを言うかはの返事次第じゃないのかね?

彼は恩義に厚い人物だと聞くからね、この要請をこちらが受ければ…」



「確かに…私達側には全くリスクもございません。

むしろ、これが実行されない場合の方が色々不都合がでるでしょうね。」



「うーん、ここで色々言ってても埒があかない。

この件はを呼んで聞かなきゃ話が進まないから呼ぶ。」



インカムでを呼び出せば仕事の手を休めて来たのでしょう。

少々不機嫌な様子でございましたが、事の仔細を説明すると



「つまり、ヤーコンさんを頷かせるには私がこの件を承諾しなきゃ

そーいう事なんですよね?私はあまりそういうのは好きじゃないんですが

お世話になってるバトルサブウェイの一大事にもなりかねないですし?」



「ホントにやってくれる?一応ボク達も挨拶には行こうと思うから

フォローはできるけど、に一番頑張ってもらわないと駄目。」



「えぇ、この様な事は貴女の仕事とは無関係なので心苦しいのですが

どうか私達を助けると思って受けてくださいまし。」



何度も頷いてから、こちらが拍子抜けするくらいあっさりと了承しました。

どうやらこちらの件は大丈夫な様でございますね。


あちら様へ返事をする為と、こちらからの提案を切り出すため

私とクダリとはホドモエシティにやってまいりました。

本来なら企画した部署からも来るべきなのでございましょうが

ヤーコン様はあまり大人数で押しかけられるのを好まないだろうという事で

少数精鋭…私がその中にはいるのも心苦しいのですが、でまいります!


既に迎えの車が来ていて、乗り物酔いの酷いが心配だったのですが

外の荷台(迎えの車が大型のダンプカーだったのでございます)なら平気らしく

そちらにポケモン達と一緒に乗り込んで、外の景色を楽しんでる様ですね。

乗り物全般の好きなクダリも、始めて乗るダンプカーに少々興奮気味です。

会社に到着すれば、ヤーコン様はすでに外に出て私達を待っておられました。



「よく来たな!お偉いさんを連れてきたって事は

この前の話、受けてもらえる…そう思って良いんだろうな。」



「こんにちは、ヤーコンさん!そーですね。

でも受けるにあたってちょっとお願いというか、提案があるんですよー。

んで、それは私と話す事じゃ無いので上司を引っ張り出しちゃいました。」



がヤーコン様と握手をして笑ってるのですが

その顔がまるでバトルをしているような、挑戦的な表情になっておりました。



「フン!どうせ何か見返りを要求するのだろう?

こっちも無理な願いをしたんだ、話によっては聞いてやらない事もない。」



「えっと、なんだかもう話が始まってる?

こんにちは!ボク、クダリ。ノボリと一緒にサブウェイマスターしてる。」



「先日のエキシビジョンマッチ以来、お久しぶりでございます。

私ノボリとこちらのクダリでバトルサブウェイの経営に携わっております。

素晴らしい計画を実行に移されるそうでございますね。おめでとうございます。」



「フン…この大会が成功するかどうかで、このホドモエシティ全体が

今後大きく発展するかがかかってるからな。絶対に失敗は許されんのだ。」



歩きながら、まずはさわりの話をしつつお互い牽制しあってる…でしょうか

応接室に通されて、私達はヤーコン様の反対側のソファーに座ってから

手にしていた書類をテーブルに開いて説明を始めさせていただきました。



「あのね、そーいう事ならボク達は喜んで協力する。

もうんって言ってくれた!それでね、ボク達からも提案したい事がある。」



「私どものバトルサブウェイでは勝利トレーナーに対しBP制度をとっております

そちらでは勝利者への報酬制度をどの様にするのでございますか?」



「わしらもお前さん達の所と同じ様にBP制を導入するつもりだ。」



秘書の方なのでしょうか?が持ってきたコーヒーを飲みながら

私達の方をジロリと見るヤーコン様はこちらの出方を見ている様でございますね。

クダリの瞳がスっと細まり、その後いつもどおりの笑みに戻りました。

さぁ、ここからバトル開始でございますっ!



「あのね、どーせならホドモエの大会ならではって特色を付けた方が良いと思う

例えば、ボク達のBP交換の景品はこんな感じになってるけど

こっちでは全く違うものを景品にするとか?そーしてうちとヤーコンさんの所の

BPを共有っていうか、どっちでも使えるよっていう風にするのはどーかなって」



「フン…お互いバトル施設だからな。

最初は物珍しさで客も来るだろうが、その客足を途絶えさせるわけにはいかん

バトルが好きな連中なら、どっちでもバトルをしたいと思うだろうしな。」



つかみは良好な様でございますね。それではこのままひた走りましょうとも!

書類をめくり、当バトル施設の特徴と客層と年間の集客率のページを開き



「私どもの施設は特殊なフィールド…地下鉄でのバトルでございます。

限られた空間、出すポケモンによってはトレーナーの視界も悪い状況で

お互いを信じ合い、いかに自分達のバトルを勝利に導くかを売りにしており、

そちらは一般のフィールドでのバトルで、ローテーションやトリプル等

多彩なバトルが出来る、この相違点を利用すれば集客も見込めましょう。」



「つまり、客に互いの施設を行き来すれば客の取り合いにもならん…

むしろ互いの客を回す事で集客率も上がるという事か?

フン…だが、これだけで本当にそれが可能か?あぁ、景品に特色をつけるか…

だが、それだけでうまくいく程甘くはないぞ。」



「バトルに特典はつけられない。そんなバトルはつまんない!

でもね、それ以外で特典みたいなのをつける方法ならいくらでもある。

うちなら、ギアステの食堂の割引券とか、地下鉄使うときの運賃割引とか

ホドモエシティはマーケットが有名だから、そこで使えるクーポンとか?

そーいうのをうまく使えば、お客さんに来てもらえるかもしんない。」



「フ…ン…互いが相手先で使える特典をつけるとすれば、それは可能か…

同等額の負担をすれば、不公平にもならん。会場に互いのポスターを貼って

宣伝をしても良いだろう。それで?他には何か提案が無いのか?」



どうやら私達の提案に興味を持っていただけた様でございます。

ヤーコン様はテーブルに身を乗り出すようにして話を聞いておられます。

ですが私達が考えたのはここまでで、他にと言われても困りましたね…

クダリと二人で顔を見合わせて、何か他に提案できるかを考えていた時

今迄腕組みをして黙って話を聞いていたが口を開きました。



「お客の立場で言わせてもらって良いですか?ポイントにしても勝者だけで

せっかく参加しても負けてしまったら何も無いのが普通ですよね?

確かにバトルは勝利する事が大事だけど、それだけじゃないでしょう?

負けた人にも特典があれば嬉しいし、頑張ろうって思うんですけどねー。」



「そーいう発想はなかったかもしんない。どこのバトル施設でも

勝たなきゃダメって感じで負けた人に何かするなんてのは無かった。」



「前例がなきゃ作れば良いんですよ。企業なんてモンは他と同じ事をしたって

利益なんて上がりませんからね、逆転の発想もありなんじゃないですか?」



「…フン、その通りだ。連携の話はうちにもメリットが大きそうだからな

この話受けても構わん。今後早急に煮詰めていく必要があるだろう。」



すぐにでも互いの企画営業課を交えて話を進めようという事になり

どうやら、私達の提案は飲んでいただける様でよろしゅうございました!

ヤーコン様は私達の提出した書類を呼び出した部下に手渡してから

の方を見て、なんだかニヤリと笑われました。



「上司に悪い返事はさせないと言ったのはこの事だったのか?

あの話の後にはすでにお前さんの頭の中にこの筋書きが出来てたんだろう?」



「私はバトルサブウェイの職員ですからね。それに私のモットーは

立ってるものはカビゴンでも使え!ですし?でも悪い話じゃないでしょう?」



、私達は企画営業課からの提案と聞いていたのですが…?」



ヤーコン様の口調を聞けば、この提案はが考えた様に聞こえますが

その様な事、総務部長は一言も申しておりませんでした。

しかしクダリが隣であ、と声を上げてそれから苦笑いをいたしました。



「あのね、は職員っていっても委託職員。つまりはそーいう事でしょ?」



クダリの質問にはただ笑うだけで、何も申しませんがそうなのでしょう。

成程、確かに企画営業課の存在を無視してする内容ではございませんものね

しかし、つくづく作業員にしておくのが勿体のうございます!

すぐにでも正職員にしたい所でございますが、にはミッションがあり

それが終わるまでは首を縦には振っていただけないでしょうね…。



「フン、どうせならサブウェイマスターも参加せんか?

エキシビジョンマッチの優勝者が参加するなら、より一層箔が付くだろう。」



「うわー、それってすっごく魅力的なお誘い!

でもね、ボク達はバトルトレインの仕事を優先しなくちゃなんない。」



「当日はこちらに人が集まるでしょうが、こちらは平常運行でございます。

を解説者として参加させるという事でご了承くださいまし。」



「参加するにはバトルサブウェイの宣伝もしっかりさせてもらいますよー。

客寄せポケモンになるんですから、その位させてもらっても良いですよね?」



「フン!…程々ならな。」



そこは全力で!と言って笑うを見るヤーコン様はどこか楽しそうで

気難しいと言われているこの方にも動じないはある意味大物ですね。



「なんだか結局はの思惑どーりにボク達動かされた?」



「で、ございますねぇ…ホラ、立ってるものはカビゴンでも使えですし?

それでバトルサブウェイが一層発展できるのなら安いものでございます。」



人を上手く使えとは良くおっしゃいます。細かな説明をせずに

こうやって教えていただけるのは私達にとってもありがたい事ですが

いつかは私達がを上手く使いたいものでございますね。