3章・旅は道連れ先駆け編 -平社員と新入り-

3章・旅は道連れ先駆け編

平社員と新入り



ホドモエシティから自分の家に帰ってすぐにに連絡を入れた。

予定より早く私が帰ってきた事に驚きながらも、なんだか安心した様な

そんな表情を見せたその顔はいつも通りで逆に不安になったぞー。

んで、例の元プラズマ団の彼がどうなったかを聞けば



『俺が全面的に責任を取るって事で了承してもらったぞ。

色々と聞かれまくったんだが、あいつ…ウイキョウって言うんだが

今の現状や心境だとか、自分と手持ちのポケモンの事なんかも話したんだよ。

んで、明日から来てもらう事に決まったから手土産持たせて帰したぞ。』



「手土産?」



『あぁ、トレーナーに引き取られてないポケモンの世話をしてる事を聞いて

こっちの連中が木の実やらポケモンフーズやら山の様に持って来てな

ポケモン達に罪はないんだから、腹いっぱい食わせてやれだとよ。

ウイキョウの奴すっかり感激しちまって、ガキみたいに泣いちまってなぁ…』



ポケモン達が絡んでるから許可したって…あの職場なら言いそうだよねー。

明日は仕事に出る事を言って、ライブキャスターの通信を切った。

さぁ、新入りさんも入った事だし明日に備えてさっさと寝なきゃ。



んで、目を開けたら朝でした?どんだけ爆睡したんだ私!

いつもよりちょっと早めに職場に来たんだけど、既に私以外は出勤してた。



「おはようですよー。皆こんなに早くにご出勤とか明日は雪が降る?」



「そういうてめぇも早いじゃねぇか。ちゃんと寝たのか?」



うわーい、ドクターの恐怖のチェックが入りましたー!

前だったら2徹したってお肌はピチピチだったのに、今は違うんだよねー

畜生、曲がり角を過ぎるとこうも違うのか?若さをプリーズ!



「今日迄有休だったんだから休んでもよかったんだぞ?

あぁ、知ってると思うが紹介しておく。今日からここで働くウイキョウだ。

ウイキョウ、作業員のだ。役職はついてないが熱絶縁に関しては

俺より上の職人だ。お前もこれから色々世話になるからな。」



「おはようございますっ!頑張りますのでよろしくお願いしますっ!」



「熱絶縁…保温を主に担当してるです。

うちはこの人数でまわってるから色々な作業をやらなきゃならないけど

ここで仕事ができるなら、どこででも仕事が出来る様になるはずだから。

色々覚える事も多いけど、一緒に頑張りましょうね!」



ホドモエシティで会った時も思ったけど、すごく感じの良い人だ。

どーしてこんな人がプラズマ団に入ってたのかが不思議だよ。

だけど、他の職員さん達にはそれは中々通じないだろうねー…


朝礼に出るからって、ウイキョウさんはに連れられて部屋を出た。

きっと噂はあちこちに広まってるはずだからなーと心配してたんだけど

特にざわめいたりする事もなく、紹介が終わって私とはホッと息を吐く。



「今言う事じゃないんだろうけどさー、ホントに彼の事を考えたら

いっその事ユノーヴァのゲンナイ君の所に預けた方が、波風たたなくて

彼の精神面でも良いと思うんだけどなー。」



「そんなんとっくに俺が言ってるんだよ。

ウイキョウ曰く、仲間のいるあの場所を離れたくねぇんだと。

自分が仕事をするのはあの場所にいる連中の為だからってな。」



上司の居ぬ間にコーヒータイムって感じで二人でそんな事を話す。

が仕事前に食えって出してくれたマフィンが美味すぎるぞー!

本人がそー言うんなら仕方がないけど、職場の雰囲気が悪くなるのは嫌だなー。


朝礼が終わってが戻ってきたんだけど彼がいない。

どーしたのかなと思ったら、そのまま総務に連れてって研修開始らしい。

ここで仕事をする条件に、職場での移動はうちらの誰かが一緒な事ってのが

当面義務付けされてるらしい…やっぱり普通はそういう対応するよねー。



「終わってからの迎えは私が行くよ。丁度ちょっと提案したい事があるから

それを今から書類に起こして総務に持って行こうと思ってたし?」



「それじゃ頼む。研修は俺等の様には終わらないだろうからな。

俺はこれから現場に行くから何かあったらインカムに連絡を入れてくれ。」



「りょーかい。んじゃ今日は私はデスクワークに徹するわ。」



んで、午前中の仕事が終わりそうな時間に出来上がった書類を持って

総務部に行ってみれば、部長さんが私をみて手招きをした。



「失礼しまっす、そろそろ午前中の研修が終わると思って迎えに来ました。

…もしかしてまだ終わってませんでしたか?」



「あぁ、君達程じゃないが飲み込みは早いからね。

少々詰め込ませてもらってる。ところで、その手に持ってる書類は?」



うわーい、流石は総務部長さんだよ目敏いったらありゃしない。

まぁ、どっちみち見せて相談しようと思ってたから良いんだけどさ!



「えっとですね、以前私とボス達がエキシビジョンマッチをした会場が

これから定期的にポケモンバトルのトーナメント大会を開催するらしんです。

あちらさんは各地方のジムリーダーさんとか有名ドコロを呼んで

街をあげて、大々的にやっちゃおうって感じみたいですよ?」



「…こっちのお客が向こうに流れてしまうって事かね。」



「物珍しさもありますからね。そこで提案なんですが…」



持ってきた書類を見て、部長さんは何度も頷いてる。

このままだとバトルサブウェイの集客率が下がるのは時間の問題だもんね

決して悪い話じゃないと思うんだけどなー。



「恐らくボス達は賛成するだろう。だが問題は向こうだ。

主催者のヤーコン氏がこの提案に頷くとは到底思えないんだが。」



「実はですね、それを頷かせる事が出来る方法があるんですよ。」



そう言って部長さんに私の計画を耳打ちしたら、すっごい良い笑顔になったよ!

怖い、そこまで満面の悪タイプの微笑みとか怖すぎるっ!



「ククッ…面白い、その提案ならこちらに何のリスクも無いだろう。

わかった、向こうから話が来る前にこの件は企画課に至急やらせよう。」



そう言って部長さんは企画課長さんを手招きして話し始めたから

私の用事は…お、丁度終わったみたいでウイキョウさんが出てきた。

その顔がすっごく疲れてる…総務部長さんだけじゃなく、人事部長さんも

見込みのある人はビシビシやる人だから、やられちゃったのかもねー。



「お疲れ様です、丁度私も話が終わったので一緒に戻りましょう。」



「は、はいっ!」



二人で並んで歩いてると視線がちょっと痛い。それは仕方がないんだけど

それにこの人が耐えられるかだよね…こればかりは手助けできないし。

仕事場に戻って、昼ご飯の事を聞いたらお弁当を持ってきたらしいんだけど



「えっと、ちょっとごめん…お弁当を持ってきたんだよね?」



「はい、今日は初出勤だから奮発してジャム入りにしてもらいました!」



コーヒーを美味しそうに飲んでニコニコしてるウイキョウさんのデスクには

ジャムを塗った一枚の食パンを折りたたんだ物。

それを嬉しそうに食べてるのをみると、奮発してもらったってのは本当らしい。

渡る世間はオニゴーリってよく言うけど、これはちょっと駄目でしょう!

食べ終わったウイキョウさんを引っ張って食堂に向かってカウンターに立つ



「あれ、は今日休みじゃなかったのか?」



「予定より早くジム戦の方が片付いたから、来たんですよー。

これお願いしまっす!あと持ち帰り用の容器があればそれもください。」



食券を渡して出てきたのは特Aランチふたつと持ち帰りの容器がひとつ。

不思議そうな顔してるウイキョウさんにプレートをひとつ持たせて席を探す。

あ、整備班の人達が手を振ってるから、あそこにしようかな。



「おう、ジム戦は順調みたいだな!そっちは…あぁ、例の…」



「ウイキョウさんって言うんだ、私もやっと下っ端から解放されたよ!」



「よ、よろしくお願いしますっ!あのさん、これは…?」



流石にちょっと雰囲気が良くないけど、今はそんな事をいってらんないよ。

隣に無理やり座らせてから、行儀は悪いけどスプーンで指差しちゃった。



「あのね、この仕事は体力勝負なの。それなのにお昼が食パン1枚?

そっちの家計が大変そうなのはわかったけど、そんなのしてたらもたないの!

これは新入りさんへ先輩からの奢りだから、しっかり食べて頑張ってよ?」



「昼飯が食パン1枚?!おい、あんた…そんなに生活が苦しいのか?」



「ジャムもついてます!生活は…確かに苦しいけど仕方がないんです。

仕事を紹介してもらえた事が奇跡なのに、私だけこんな贅沢できません。」



残した分を持ち帰って食べなよってつもりで容器を渡したんだけど

皆驚くだろうな、なんて嬉しそうに殆どをそれに入れちゃってるし…



「ウイキョウだったか?それはがお前の為によこしたモンだろ

それを食わねぇとか、ちょっと筋が違うんじゃないのか?…そこで、だ。」



ダブルトレインの整備班の人がウイキョウさんの前に食券を出す。

それは持ち帰り用の特製弁当ので、それを指差してから



「この前仲間と賭けをした時の戦利品なんだ。作業員ってのは、体力勝負なんだ

あんた、なまっ白いからもっと食わなきゃ…これをやるから、それは食え。」



そう言い終わると他の人達も次々にウイキョウさんの前に食券を出す。



「確か仲間達がいるんだろ?そいつらだってまともに食ってないんだろ?

あんた達が倒れたらポケモン達の世話はどうするんだ?」



「で、でもっ!こんな事していただくのは…「あ、いたいた!」…っ!!」



後ろから声がして、皆でそっちを見ればボス達も食事に来てたみたい。

二人がセットのプレート(特Aランチ大人気だね!)を持って、やってきた。



「お疲れ様っす!」



皆の声に笑いながらボス達は答えて席に着く、んでウイキョウさんを見て

その前に出された食券をみて首を傾げたから、今迄の話を説明する。



「……あのね、君達がそんなんならポケモン達はどーしてるの?

ちゃんと食べさせてあげてるの?お腹空かせてるとか言わないよね?」



「ポケモン達にひもじい思いはさせてませんっ!あの子たちは私達のせいで

悲しい思いをさせてしまったんです。せめてその位の事はしなくちゃ…」



「……ウイキョウ…でしたね?帰りに執務室へいらしてくださいまし。

ロッカーに置いてあるポケモンフーズの賞味期限が近づいておりまして

このままでは捨ててしまう事になるのでもらってくださいませんか?」



「後、キミはこれで明日からご飯食べる事。この食券はあげるんじゃない。

貸すだけ、お給料がでたら返してくれれば良い。ここの仕事は体力勝負。

ちゃんと食べて、ちゃんとした仕事をしてもらわないと困る。」



「私は…こんな事をしてもらえる立場じゃありません。私は…私はっ…!」



白ボスが置いた食券の束(前にやった賭けの戦利品だね!)を目の前にして

ウイキョウさんはどうして良いのかわからないって感じで

ボス達を見てから俯いて、元プラズマ団なんですよって消えそうな声で呟いた。

そんなの私やボス達だけじゃなく、ここにいる皆は知ってるよ。

そんなの知ってるけど、ううん、知っててもボス達は普段通りのままで

ウイキョウさんを見て、食事をしながらその合間に笑いながら声をかける。



「貴方という人間を私達は知りませんが、私達の仲間のが貴方という人を

認めて信じて、ここに連れてきたのです。もう貴方もここの仲間なのですよ?」



「君はボク達皆の前で、自分が間違ってた事をしたからやり直すって言った。

ボク達だって人を見る目は持ってる。と同じ、信じてみようと思ってる。」



とうとうウイキョウさんは泣き出しちゃった。

それをみて白ボスがウイキョウって泣き虫!とか言って皆も笑ってる。



「おい、いい加減に食わないと休憩時間が終わっちまうぞ。」



「ったく、聞いたぜ?昨日もお偉いさん達の前で泣いたとか言うじゃねぇか。

渡る世間はツンベアーだけど、ここがそうなるかはあんた次第だ、頑張れ。」



「……は、はいぃ…っ!」



泣きながらご飯を食べて返事をするって芸当を見せるウイキョウさんを見て

皆が一層笑ったけど、その顔はさっきまでの身構えた感じじゃなくなっていた。