3章・旅は道連れ先駆け編
船の帆と渦巻く水の場所で
は新入りさん(多分そうなると思う)を連れてギアステに戻ったけど
大丈夫かな…がかっ飛ばしそうで怖い。
だって冷静沈着でクールな策士なんて言われてるけど
ぶっちゃけちゃえば流石はの従兄弟、似たり寄ったりだもんね。
二人は確かに仲は良いけど、考え方が違うからよくぶつかる。
んで、どっちも口で言ってわからない奴には実力行使だからなぁ…
あの二人がマジでぶつかり合ったら、止めれる人なんてギアステにはいない。
ボス達ならどーにかできそうかもだけど、それでも無傷じゃ済まないだろうし?
やっぱり一緒に帰ってた方が良かったかな…
「あ、着いた?……うわーい!実物見ると凄い大きさだわー。」
ラルトスから順調に進化しキルリアが振り返って私を見て小さく鳴いた。
少し歩けば目の前には海が広がり、まるで隠れる様に一隻の船が停まってる。
凄く古そうな大きな帆船が、なんでこんな所にって、皆不思議に思わないのかな?
船体に普通なら書いてあるはずの船名も無いし、凄く怪しいのになー…
人の気配はあるんだけど姿は見えないし、中がどうなってるかはわからない。
ま、今は様子見って事で来たんだし、どんな船かわかれば良いか。
この場所に近づくにつれて、さっきからボールの中であの子が騒いでる。
今も、コートをめくって確認したらボールが赤く点滅しながら揺れてる。
ダメだよ、あなたの出番は今じゃない。必ず助けるから、今は静かにしてて
「気持ちはわかるけど、あなたのマスターを信じて欲しいな…」
コート越しに優しくボールを撫でれば少しは落ち着いたのかな?
点滅の間隔が長くなって、揺れはなくなった。
この船にこっちの世界のこの子がいる…主人公達が出会うのはまだ先だけど
その時が来るまでずっと苦しんでいなきゃいけないんだろうか?
「ただ見てるだけなら誰でも出来る…か……」
近くの木の下で座って膝を抱えて帆船を見てたら、この前の事を思い出した。
『どうしてそんな事が出来るのか、俺には信じられねーよっ!』
っちは言う。これから先何が起きるかわかっているなら
どうして動かないのかって…何をしても同じ結末になるのなら
今すぐに動いても良いだろう…被害が最小限になるならそうすべきだって…
でもさ、っちだってシンオウの時はそうだったでしょう?
『くだらない争い事に子供が巻き込まれる。
そっちのほうが不自然で、全否定しなくちゃならないと思わないのか?』
…だってカントーの時はそうだったじゃないか。
レッドさんとグリーンさんの達の邪魔は出来ないって言ってたじゃないか。
あの時はうちらも子供だったから今の状況と違うのかもしれないけど…
なんだか座ってるのもダルくなってきた…コートを脱いで下に敷いて
ゴロンと横になって、隣に座ってるキルリアを撫でれば気持ちよさそうにしてる
「結局…また私は取り残されてるのかな?」
それこそ、何をしたって同じ結末になるっていうなら、ストーリーなんて
無視してやってやろうか…その後どうなるかなんて私が気にする事じゃない
今も苦しんでるあの子の為にもなるし、世界も救われて良い事だらけだよね。
『……』
キルリアが心配そうに私を覗き込んだ。いけない、この子の特性はシンクロだ。
こんな気持ちをシンクロさせちゃうなんてトレーナーとしては失格だ。
頬にあてた手に擦り寄って目を閉じるこの子を悲しませちゃ駄目じゃん。
「ごめんごめん、心配しないで。」
きっと徹夜明けだからこんな事考えるんだ。
ちゃんと前を見るって決めたでしょう?取り残されるって思っちゃうのは
私のミッションが皆の後…最後だからでしょう?
過去は変えられないけど未来は変えられる…いつも自分で言ってるでしょう。
視界がだんだん滲んで来た…こんな事で泣きそうになるとか馬鹿みたい。
もう考えるはやめて、ちょっと寝よう。これは相当疲れてるんだよ、うん。
………いくら暖かったからってここで寝るのはまずかったかもしんない。
肌寒さにかけてたコートを引っ張る…あれ?コートは下に敷いてたよね?
まだ寝起きでぼーっとしてる頭でそんな事を考えながらゆっくり目を開ける。
日差しの強さはそれほど変わってないからそんなに時間が経ってないのかな?
手にしたのは…コートだと思ってたら白衣で、凄く嫌な予感がするぞー。
「お目覚めになりましたか?またお会い出来て嬉しいですよ、。」
「げっ…」
ラルトスと並んで座って私を見下ろしていたのはアクロマさんだった。
どーしてこんな所にいるの?!…いや、別にいてもおかしくはないのか。
「……わたくしにその様な態度をとるのは貴女位です。
相変わらず辛辣な方ですねっ!本当に貴女という女性は変わってます。」
「うわーい、変人に変人って言われた!…じゃなくって、なんでここに?
ここには貴方の興味対象になる様なものなんて…あ、あれですか?」
そう言って海の上の例の船を指差した。うん、わざとだよ?
だってこの人が船に乗ってるのなんて知ってるし?
「……わたくしは、ポケモンワールドトーナメントに参加する為にきました。
あ!貴女も参加するのですか?是非わたくしと再戦してくださいっ!!」
「ちょっと待て!勝手に決めて話を進めんなってんですよ。
私はジム戦の帰りで、エキシビジョンマッチの会場がどうなってるのか
それを知りたかったのと、ポケモン達を回復させてる間暇だから来ただけです。
んで、船が見えたから何なのかな?って思ってここまで来たんですよ。」
「そうでしたかっ!エキシビジョンマッチが好評だったので
ここの名士の方が、参加型の大会を定期的に開催する事にしたそうです。
参加者には各地方で有名なトレーナーもいるとかいないとか…
わたくしの研究の為にも良い事例が得られますので、今から楽しみですっ!」
「そりゃー良かったですね。沢山事例を集めれば良いと思いますよー。
これ…白衣ありがとうございました。寒かったので助かりました。
こんだけ日差しがあるのに、どーしてここは寒いんだろ…
これって異常気象とか異常現象ってやつですかね、科学者さん?」
「……わたくしは気象現象については専門外です。」
私から受け取った白衣を着込むと、アクロマさんはちらっと船を見て
すぐに私の方に向き直す、その顔からは何も読み取れないなー。
まぁここでボロをだす様な人じゃないよね。
そういう面では中々にくえない人なんだろうな…専門馬鹿だけど。
「そう言えばそうですね、ちょっと流石に寒くなったので帰ります。
貴方も風邪をひいて研究に響いたら大変でしょう?帰った方が良いですよ。」
送りますとか言われたけど、超丁重に拒否しましたが?
これ以上一緒にいたら、また色々と聞かれるだろうしね。めんどくさいもん。
そのままポケモンセンターに戻ったらメイちゃん達も戻ってきていた。
「皆おかえり、ヤーコンさんと一緒だったみたいだけど、どこに行ってたの?」
「あ、さん!えっと前にさんが出てた大会の会場なんですよ。」
「うん、そこでなんだかいろんなバトルが出来る大会をするみたいで
ぼく達にも参加しないかって言われたんです。」
「強くなるには丁度良い場所だからな!オレは参加するぜ!
でもその前にもうちょっとポケモン達を鍛えなきゃ駄目だよな。」
うーん、この調子だと大会はすぐに開催されるってわけじゃあなさそうだ。
それならこれ以上ここにいる必要はなくなるな。
大会開催当日、なんとかしてこっちに来たいんだけど…どうしようか。
「ライモンシティのさん、いらっしゃいますか?面会の方が来てます。」
いきなり名前を呼ばれて驚いたけど、面会人を見て更にびっくりしたよ。
そこにはヤーコンさんがいて、私を見ると軽く手をあげた。
「あんたがまだここにいるって聞いてな。
すまんが、ちょっと頼みたい事があるんだが、きいてもらえんか?」
「私にですか?えっと内容によりますけど、どの様な事でしょうか?」
「実はな…」
ヤーコンさんの話は第1回のポケモンワールドトーナメントの大会で
私に解説者として参加してくれないだろうかと言う話だった。
この大会を定期的に開催して、ホドモエシティの活性化に繋げたいんだとか…
んで、初回にネームバリューもインパクトもある人間を探してたらしい。
「お前さんはあの大会でぶっ倒れてもバトルをしようとして目立ってたしな。
順位も同率2位だったし、今の職場は優勝者のいるバトルサブウェイだろう?」
「ぶっちゃけると、私に客寄せポケモンになれと?
うーん、前回の大会でヤーコンさんには無理を聞いてもらってますからねぇ…
ただ、私個人でお受けする事は出来ないと思います。
職場にその様に要請してもらっても良いですか?悪い返事はさせませんから。」
「本当かっ!?確かに職場に筋道通すのは当然だな。
フン…そういう事ならさっそくバトルサブウェイに要請の書類を出そう。」
「バトル狂を自負してる私自身、この大会に興味がありますからねぇ…
むしろ、願ったり叶ったりって感じですのでお願いします。」
なんだか凄い話になっちゃったけど、当面の問題は解決したかもしんない。
後はボス達にどーやって首を縦に振らせるかだよねー。
そっちの方は良い考えがあるから、それを提案してみるかな。
企業のトップとして、かなり貫禄の出てきた二人だから、きっと承諾するはず
私も伊達にシンオウで色々やってたわけじゃないからね!
受付に今日の宿泊をキャンセルして、外にでてリザードンを出す。
「リザードン帰るよー。目指すは我が家、出発進行!」
眼下に広がる街の灯りを見ていたら、なんだか無性に早く帰りたくなった。
早く家に帰って、ゆっくりお風呂に入って寝ちゃおう。
夕ご飯は食べてないけど、それよりもあったかい布団で早く寝たいぞー。
あ、その前にからどーなったかだけでも聞かなきゃなんないなー。
寝る前に皆の声を聞けば、さっきの馬鹿な考えも消えるよね。