3章・旅は道連れ先駆け編
課長のスカウトと仲間作り
ゾロアークが見せたイリュージョンを見た後
がロットさんに向かって話しかけたんだけど…嫌な予感がするぞー。
「これだけのポケモンと人間がいるなら生活は厳しいでしょう?
でもまだマシだ。この街の住人は嫌々でも受け入れてくれてる。
確かに世間は厳しいが、そういう風になって当然の事をやったんです。」
「お恥ずかしい話だが、本当にその通りだ。だが仕方がない事。
我々はそれも受け止めねばならないのだ。」
ロットさんもここの人達も現実の厳しさをちゃんと受け止めてるんだな。
黙って話を聞いてたも同じ事を思ったのかな?何度も頷いてる。
「成程ね…それだけの覚悟があるのなら、誰か俺の所に寄越しませんか?
俺は今バトルサブウェイで人を使って仕事をしています。
あの規模の現場を俺とこいつの実質二人でまわってるんですよ。
おまけにどっちもジム巡りもやってるから、もう少し人手が欲しいんです。」
うわーい、嫌な予感的中!って全然嬉しくないよ、勘弁して欲しいってば!
大体この状況とか見たらがどーするかなんてわかってたんだから
私ももっと早くストップさせるべきだったよ。後悔しても、もう遅いけどさ!
「バトルサブウェイか……我々のした事はきっと許してはもらえないだろう。」
「それは貴方達が決める事じゃない。本当に贖罪をする気があるのなら
向こうの連中が何をいってもやり通す気があるのならって話ですよ。」
「、今だって色々あってピリピリしてるのに拙いよ。」
すっかり勧誘モードになってるの袖を引っ張って諌めたんだけど
は私に向かってピッピの様に指を振った。
「本当に今の状況を少しでも良くしたいと思ってるなら話は別だろ?
過去は変えられないが未来は変えられる、そしてそれは本人次第だ。」
……駄目だこりゃ、こーなったは誰にも止められない。
昔から旅の途中で、いつも困ってる人達に声をかけてたからわかってたけど
今回の旅で最初に声をかけたのが元プラズマ団だとか勘弁して!
「あの…本当に私みたいな人間でも雇ってもらえるんでしょうか?」
おずおずと傍にいた元プラズマ団の人が手を挙げて聞いてきた。
はその人をじっと見て何かを考え込んでたんだけど
「本当に色々言われるかもしれない、誰にも信じてもらえないし
誰も話しかけてもくれないし、話を聞いてもくれないかもしれない。
真面目になっても、最初は世間が冷たいのは当然だろう?
それでも歯を食いしばって踏ん張れるって言うなら俺は歓迎するぞ?」
そう言ってから一息つくとはポケットから名刺を取り出して
その裏に自分のライブキャスターのアドレスを書いてからロットさんに渡した。
「…若いの、あんたは……」
「マイナスからプラスに…人に信用される事の難しさを俺も知ってます。
職場の方には話をしておくので、その気になったら連絡してください。」
そう言ってはそのまま外に出てったから慌てて後を追いかける。
丘を降りてメインストリートに入ってから、街頭のそばで一服する事にしたけど
「ボス達や皆にどー言ってこの状況を説明する気?
今までとは違う、あそこはここの人達のせいで大変な事になってたんだよ?」
「そのまんまを話すしかないだろう?何かあっても俺が責任を取る。
今までだってそうやってきたんだ。これからだってそれを変える気は無い。」
「…全く、事前に私の意見を聞けってんだよ!
聞いてもどーせやる事は変わんないんだろうけど?それがだしね!」
「そうだ、これが俺のやり方だから諦めてくれ。」
そう言って紫煙を吐き出しながら親指を立てて笑うはいつも通りで
そのマイペースっぷりが相変わらず過ぎてブン殴りたくなったなんて言えない。
携帯灰皿に吸殻を入れてジムに向かえば、入口前にヒュウ君が立っていた。
「ヒュウ君、ジム戦は終わったの?」
「俺を振り切って行ったんだ、勿論ジムリーダーには勝ったんだよな?」
がからかう様に言うと、ムッとしてからヒュウ君はバッジを見せた。
それを見てニヤリと笑ってからヒュウ君の頭を乱暴に撫でた。
「さん、オレはそんな子供じゃない!ヒュウとメイから聞いたけど
二人は今まであんな場所で何を話してたんだ?」
「あ?中々生活が厳しそうだからな、仕事をする気があるなら俺の所へ来い
そう言って連絡先を書いて名刺を渡してきただけだ。」
「はぁ?!なぁ、それマジで言ってんのか?
ギアステはポケモン達を大切に扱ってるんだろ?そんな所にあいつらを?!」
やっぱり子供でも驚くよね、普通の人はこんな事思いつきもしないと思うけど
はそーいう面では普通じゃないからなー…
ヒュウ君が驚いてるを不思議そうに見ながらは一言ずつゆっくりと話す。
「確かに最初は信用されないかもしれないが、話のわからない連中じゃない。
なぁ、自分が間違った事をしてたのに気がついて悪かったって思ってたら
謝って、これから正しい事をしようって、ヒュウ君は思わないのか?」
「…それは思うけど……。」
「最初から仲良しになんざ大人同士でもなれない。むしろ大人の方が難しい
それでもやり直したいって思う連中に、頑張って欲しいと俺は思ってる。」
「………」
ヒュウくんがとうとう黙り込んじゃった。
顔はの方を向いてるけど、瞳が揺らいでて視線は下を向いている。
「妹にされた事を許せないって気持ちもわかるがな、もっと周囲を見ろよ。」
そう言ってはジムの中に入っていった。
その姿を追いかける様に見つめてるヒュウ君の肩を叩いて私も中に入る。
ジムリーダー挑戦の受付をして、フィールドに案内されてバトルを開始するけど
ライモンジムから結構時間をかけて育ててきたうちらの子達が負けるわけがない
短時間でジムリーダーのフィールドのある場所に向かえばまだバトル中だった。
「キョウヘイ君は終わったんだな。…メイちゃんはバトルは得意じゃないのか?
ポケモンのなつき度は凄ぇが、技構成も指示も問題がありすぎだぞ。」
「でもさ、ポケモン達がちゃんとそれをフォローしてるのは凄いよ。
旅はまだまだ続くんだから、今後の成長に期待はできるんじゃないのかな?
あ、バトルが終わったみたいだね。メイちゃんが勝ったよ。」
ヤーコンさんがメイちゃんにバッジと技マシンを渡してから何か話してる。
二人がなんだか困ってる様に見えるのは気のせいなのかな?
ちょっと待ってろって感じでヤーコンさんが二人に出口を指差してから
私との前にやって来た。
「ヤーコンさん、エキシビジョンマッチの時はお世話になりました。」
「お久しぶりです。エキシビジョンマッチが終わった後
無理なお願いを聞いていただけて助かりました。」
「フン!二人共他の地方出身だったか?イッシュのジムでも暴れとると
他のジムリーダー達からも話はきいておる。
マスターランクのトレーナーでもやはりバッジは欲しいものか?
…まぁ良いだろう、その実力、お手並み拝見させていただくか!」
先に私がって事になったんだけど、2徹の状態でもなんとか勝てたよ!
んで、同じ2徹なのには私以上の早さでヤーコンさんに勝っちゃった。
「やれやれ……本気で戦って負けると清々しいな!」
「バトルは真剣じゃなきゃつまらない…これは俺のダチで上司の言葉ですけど
その通りだと思います。勝っても負けても爽快感はありますね。」
「フンッ!こいつを持っていけ!」
そう言ってうちらにもバッジと技マシンをくれた。
それをバッグにしまってから、がヤーコンさんに話しかける。
「この街に元プラズマ団がいる事を許してるのはヤーコンさんですよね?
なぜ彼等に職も提供しないんですか?貴方にはそれができるでしょう?」
「あんな事が起こって2年…もう2年と思っとる者もいるが、まだ2年…
そう思ってる者も少なくはない。そんな連中の中に入れてうまくやれるか?」
これはヤーコンさんの言う通りだと思う。もしかしたらヤーコンさんは
もうちょっと時間が経つのを待ってるのかもしれない。
だけどうちのは、そんなまどろっこしい事はしないんだよねー。
「それはあの連中次第でしょう?さっき中心人物だろうロットさんに
俺の名刺を渡してきました。覚悟があるのなら俺の所に来いとね。」
「フン…バトルサブウェイは2年前に被害が大きかった場所だ。
そんな中にあの連中を入れればどうなるかわからんのか、若造が。」
「それを決めるのは俺じゃない。連中の事を見て皆が決める事です。
どん底まで落ちたら後はどうすれば?穴をほって更に落ちるのか
それともそこから這い上がるのか…貴方は這い上がって欲しいんでしょう?
だから連中をこの街に住まわせてるんですよね?」
理想論をぶつけてるだけだと思ってたんだと思う。だけどの話を聞いて
ちょっと小馬鹿にしたような態度を今までとっていたヤーコンさんの顔が
真剣な顔つきに変わって、眉間に皺を寄せながら溜息をついた。
「何にだって受け皿は必要よ…それに正しきばかりを求めると
自分達以外の全ての意見、考えを否定しかねない。それがどんなに危ない事か…」
「そうですね、そういう事なら受け皿は多い方が良いでしょう?
俺がやろうとしている事は貴方がやった事に少々付け足しを入れただけです。」
「フン!…連中を、頼むぞ。
そうだ、二人ともこの後時間があるのならつきあわんか?
あの後、正式に競技としてあの大会を定着させようと思っててな…」
参加資格はトレーナーであれば誰でも良いらしい。
それを聞いての顔つきが勝負師ってか、バトル狂のそれに変わったけど
すぐに戻って、首を横に振って苦笑いをした。
「凄ぇ魅力的なお誘いなんですが、今も職場から有休もらってきてるんです。
ここに来る前に2日間徹夜してるんで、体調を整えて明日仕事に行かないと…」
「お前さん、そんな無茶を…まぁ若いからそういう芸当ができるのか
そういう事なら仕方がない。だが興味があるならいつでも歓迎はしてやる。」
ヤーコンさんは人を…キョウヘイ君とメイちゃんを待たせてるからと言って
私との肩を叩いた後、片手をあげて出て行った。
「口では色々いってるがいい人だな。器のデカさを感じたぞ。」
少し遅れてジムを出るとがボソッと呟いた。
それはも同じなのに自覚無し?まぁ、そういう所がなんだけどね!
そんな事を考えながらポケモン達を回復させる為にポケセンに向かってたら
後ろからうちらを呼び止める声が聞こえて振り返った。
「君はさっきの…」
「はい、元プラズマ団員です。ロット様には話をしてきました。
あの…どうか私を…私を貴方の所で雇ってください!お願いしますっ!!」
声の主はさっきがロットさんと話をしていた時に傍にいた人だった。
さっきの今でもう来ちゃったとか、それだけ生活が苦しいんだろうか?
「言い忘れてたが、俺の仕事は徹夜もあるし、重労働も結構ある。
それにさっき言った通り、職場の連中は辛い言葉を言うかもしれない。」
「私達はそういう事をしてしまったんですから、それは当たり前です。
私達はいいけれど、ポケモン達に満足な食事をあげたいんです。
徹夜でも重労働でも全然構わないんです、お願いしますっ!」
そう言って、深々と何度も必死になってにこの人は頭を下げてる。
そりゃあ生活かかってれば、必死にもなるよねー。
んで、そう言う人達を見過ごさないの、次に言う事なんて決まってる。
「…わかった、絶対最後まで挫けないで諦めないでついてこいよ?」
「!!…はいっ!」
こういう目をした人をうちらは今迄何人も見てきてる
一緒にの所で仕事をして独立していった人達の顔を思い出した。
「うし!今から戻れば向こうはまだ就業時間だから、話はできるな。
空を飛ぶポケモンを持ってるか?…あぁ、俺のポケモンを使えば良い。
向こうで色々言われるかもしれないが、今の気持ちを正直に話してくれれば良い
その後の事は全部俺が引き受ける…その気持ちを無駄にしない、心配するな。」
「…っ…ありがとうございますっ…よろしくお願いします…っ!」
あーあ、とうとう泣き出しちゃったよ。は笑ってその背中を叩いてから
トゲキッスをボールから出して乗せると、自分もカイリューに乗り込む。
残った私をみて、ちょっと心配そうにしてるけど今はそっちが大事でしょ!
「早速連中と話をつけてくる。お前にもこれから色々頼むと思うが…」
「わかってる!私には、すまんもありがとうも無しだよ?」
「そうだったな…うし、それじゃあ行くぞ。」
一陣の風を残して達は飛び立っていった。
向こうでどうなるかはわからないけど、悪い方向に行かないと信じたい。
雲ひとつない真っ青な空を見上げてたら、痛いくらいに眩しくて
出てきた涙を袖口で拭ってから、ポケモンセンターの中に入った。