3章・旅は道連れ先駆け編 -刑事の愚痴を聞かされる友人達-

3章・旅は道連れ先駆け編

刑事の愚痴を聞かされる友人達



プラズマ団のゴタゴタが落ち着き、ライモンシティに平穏が訪れました。

はポケモンの育成と仕事に忙しい様で

次のホドモエジムへチャレンジする話はこちらにはまだ来ておりません。


そんな時に、ふらりとがギアステにやってまいりました。



「おや、がギアステに来られるとは珍しいですね。」



「おーっす!ずっと警察署で缶詰状態からやっと解放されたぜ。

家に帰っても食うモンもないから、に飯食わせてもらおうと思ってよ!」



目の下に隈がうっすらと見られる様子は以前の私達を見てる様で

その疲労感、私達もよくわかります。

応接スペースのソファーに座りぐったりしているを見て

クダリが何度も頷きながらコーヒーを手渡します。



「そーいう時って寝ようと思っても寝らんないし困る。

身体は疲れてるのに神経が疲れすぎて逆にハイになってる!」



「そーなんだよ!おまけに飯も全部デリとかケータリングだろ?

温め直したって出来たての味じゃねぇし、いい加減飽きちまったし?

あいつはブチブチ文句を言っても作ってくれるし、美味いしな!」



文句を言いながら料理を作っているが簡単に想像できて

私もクダリも思わず吹き出してしまいました。



「ふふっ、そして残すんじゃねぇ!とか言うんですよ?」



「うおー、あるある!でも俺、出されたモンは全量摂取がもっとーだし?

その挑戦受けてやるぜ?かかってこいやーってな!

んじゃ早速頼みに行くか!二人とも仕事が終わったら来れば良いんじゃね?

アイツ、更に張り切って飯を作ると思うぜ?」



「あ、それ良いかもしんない!」



大概私かクダリの部屋に集まっておりましたが、たまはよろしいかもしれません

ならいきなり私達が押しかけても拒みはしないでしょう。

それをも存じ上げてるから提案してくれるのでしょうね



「おーし、んじゃ言っておくから絶対来いよ!それじゃまた後でな!」



飲み終わった紙コップをゴミ箱に入れて、は出て行きました。


仕事が終わり、へメールを入れればアパートに来いと返信があり

クダリと二人で途中ビールを買って訪れれば3人とも揃っておりました。



「丁度出来上がった所だから適当に座ってくれ。

、起きやがれ!着いた早々寝やがって、ここはテメェの家じゃねぇ!」



「んー、メシ出来た?おー、すげー美味そう!」



「二人共ビールで良いか?、グラス持ってきてくれ。」



料理の入った大皿をテーブルに置き、寝ていたを蹴りつける

平然とスルーするがおかしくて笑ってしまいます

それぞれに座ってビールを飲みながら、食事をしながら話す事は先日の件で



「そういえば、プラズマ団はライモンシティで何をしてたんだ?」



「んー、何か探してるってのはゲロったんだけどな、それが何かは知らね。」



「おい、それを吐かせるのがテメェの仕事じゃねぇのか?」



おや?と思い料理を食べる手を止めれば、横でクダリも同じ様にしております

何かを探している…それは私達が対峙した連中も言っていた様な…

がチキンの煮物(みぞれ煮という物らしく美味しゅうございます)を頬張り

目を閉じてなんだか思案顔をしながら



「どいつもこいつも知らねーの一点張りで、マジで知らねーっぽくてな

俺も妙に引っかかってさー。のミッションに関係するかもってんで

アイツに知らねーか?って聞いたんだけど教えられねーって言われた。」



「それって知ってるって事だよね?」



クダリが聞きながら、空になってるのグラスへビールを注げば

それを受け取ってさらに難しい顔をしてが愚痴をこぼしました。



「知ってるってアイツもハッキリ言ったしな。教えても意味がねーんだと。

これから先、どんなに俺が先回りしたって変えられねー事らしいぜ?

だけどよ、変えられねーからって黙って見てられっか?オレは出来ねーぞ。

この世界の平和と秩序を守るのが俺の仕事、何か起きるとわかってんのに

動かねーってのは俺には絶対に無理!出来るアイツが信じられねーよ。」



「まぁお前は昔から正義感が強かったからな。でも少し言い過ぎだ。」



「テメェはもうちょっと考えてからモノを言いやがれってんだ。

あいつはミッションがかかってんだから仕方がねぇだろうが。」



を非難する様なの物言いを、が諌めますが

は首を横に振った後に、テーブルに頬杖をついてそんな二人を睨みます



「そーいう気持ちもわかるけどな、そもそもそれが変だと思わねーか?

なぁ、ノボリとクダリはこれから昔あった地下鉄ジャックみてーな事が

起こるって知ってる奴がいたら教えて欲しいって思わね?

も、事前にわかれば回避しようとかって思わねーのかよ。」



「それは…うん、ボクも教えてってお願いするかもしんない。」



「あの事件での施設、車両及びお客様や職員への被害は大きゅうございました。

それが事前に回避できるかも知れないなら、お願いするでしょう。」



そう思うのが当然でございましょう。ですが、何かが引っかかるのです。

を見ればどうやら私達と同じ意見の様でございます。

私は思い切って、関わった連中の話していたことを伝えてみました。



、私達が対峙したプラズマ団の連中は子供達に向かってですが

同じ様に探し物をしていると言いました。それさえあればあいつは真の力を

発揮できるのだ…そうも言っておりました。それが何か…でございますよね?」



「うおっ、その情報はマジで助かる!って、あいつって誰だ?」



「あのね、それが何かはボク達も聞いてないからわかんない。

でも真の力を発揮できるとか、ちょっと怖い事なのかもしんない?」



漏れた情報があまりにも曖昧でもどかしくてなりません。

のミッションに関わるもので、何かを探しているプラズマ団…

そう考えた時、ふと以前が話した内容を思い出しました。



、貴方はミッションに関して何かが必要になると言いませんでしたか?」



「あ?」



突然話が自分に向いた為驚いたのかビールを飲む手を止めて私を見つめた後

しばらく考え込んだはそのまま首を横に振りました。

それを見て、クダリも思い出したのでしょう。



「あのね、がユノーヴァの出向から帰ってきた夜に教えてくれた。

プラズマ団がミッションに関係する事、重要なものをゲットする必要があるって

それはジム巡りしてれば良かったって言ってた!」



「そんな事を言ったか?…すまん、今の俺にはそれが何を意味するかも

あいつのミッションに関わる事も、もう殆ど記憶に残ってないんだ。」



「…嘘……」



記憶力に絶対の自信があると言っていたがその時言った事も忘れている。

その異常な現象に私もクダリもただ驚くしかできません。

はテーブルに肘をつけ、その手で額を押さえたまま黙ってしまい

その横で、静かにビールを飲んでいたが彼の肩を叩いています。



「それでもそんだけ覚えてたってのが奇跡なんだ。

俺達はテメェ等に言ったぞ、ミッションが終わってからはこの先の事に関して

覚えていた事を次々忘れてる…世界に淘汰されてるんじゃねぇかってな。」



そうでした、もこれから起こる事全てを知っていたのに

その記憶があやふやになり、消えてしまうのだと言っておりました。

これでは完全に手詰まりになってしまう…

部屋全体を思い空気が支配しようとした時、が指を振りながら



「俺はそれが当然だと思ってるぜ?俺達はミッションをクリアしてる。

こっちの世界の人間として生きてるんだからそんな記憶はいらねーだろ?」



「だが、は違うんだぞ?少しでも手助けしたいなら

それは無くなるべき事じゃないだろう。お前だってあいつを救いたいだろう?」



「救うとか大袈裟な意味じゃねーけど、こっちで自由に生きれって思うぜ?

あっちの世界じゃアイツは生きにくかったと思うしな。

だがそれとこれとは別問題だ。未来を知ってるなら教えたって良いだろ。

未来が変わって捻じ曲がる?結果的にやる事は同じなんだぜ?

どーして傍観者でいようとしてるのか、俺にはさっぱりわかんねーよ。」



の言葉を聞いて、また違和感が私を包みました。

彼の言っている事は決して間違ってはいないのです、ですが…納得も出来ない。

その理由は何なのでしょうか、何故私はそう思うのでしょうか。



「あのね、ちょっと教えて欲しい。

ミッションをクリアする前とクリアした後って3人は何か変わってたりする?」



「あ?俺はこっちで国際警察として働いてるからな。

悪人を黙って見過ごせねーし、それは昔から変わってねーよ。」



「昔のテメェはもっと慎重だったろ、自分が動く事でこっちに影響が出ねぇか

そういうのを考えて動いてやがったのを忘れたってのか?

俺はこっちで得たものも亡くしたものもある。でもそれは向こうでも同じだ。

変わった事なんざ特にねぇんじゃねぇか?」



「俺はあるかもしれない。

最初の…チェレン君のジムに行った時にが言ってたんだよ。

子供達に俺の目の前で危険が迫ってたら手助けするって言ったら

主人公の出番を取るなってな。主人公ってなんだ?ってその時思ったんだ。」



そう言ってその時を思い出してるのでしょうか?はビールを一口飲んでから

私達に向かって更に話し始めました。



「子供に世界を背負わせるのが間違いだと言えば、全世界を否定するってな…

それが変だと思ったんだ。凄く不自然じゃないだろうかって…

だがあいつはごく当たり前の様に受け止めてたんだ。

言ってから気付いたんだが、俺も昔はそういう風に考えてたはずなんだ。

でも今はあいつの物言いと態度に、凄ぇ違和感を感じてる。」



あれほど優しい彼女が言う事だとは私には到底信じる事ができません。

ですが、クダリは違った様でございます。何度も頷いてから



「そっか、その違和感がクリアした皆との違いかもしんない。

あのね、はこれから起こる事を知ってる。

でもそれは小説を読んでるみたいで、現実味がないんだと思う。」



そう言ってから、胸のあたりを両手で押さえて目を閉じましたが

その表情がとても苦しそうで、そしてとても悲しそうに見えます。



「3人ともボク達とおんなじ、この世界でちゃんと生きてる。

もそうなんだけど、向こうの世界?の感覚のまんまなんだと思う。

この世界ってゲームだったんでしょ?それが抜けきれてないのかも…

ボク達はちゃんと生きてるのに、の目の前にいるのに

自分で線を引いてそこから出てこないし、入らせてもくれないんだ。」


それが寂しいし悲しいと言って、クダリは黙ってしまいました。

でも本当にそうなのでしょうか、クダリの考えに納得する部分もありますが

私にはもうひとつ納得しきれないのです。



「ではなぜ自分の危険を考えず動くのでしょう。

クダリの言う通りなら、見ているだけで自分から動く必要はないでしょう?

どうやっても未来は変えられず、ある結末に向かっているのだとしたら

はここまであの子達に介入する必要もないで…あ、……」



「ノボリ?」



そこまで言って、わかりました。

どうして今までこんな簡単な事がわからなかったのでしょう。

そうです、は優しすぎるほど優しいのです。だからこそ、それだからこそ



「それでも、何が起きるかわかっていても動いてしまうのでしょう。

頭ではわかっていても、現実として起きる事に目を背けられないからこそ

口ではその様に色々言っていても結果は皆が思ってる通りなのでは?

それは私よりも3人が一番わかっているのではございませんか?」



私の言葉を受け、皆が納得したように頷きました。



「ボク達は未来を知らない。は知ってるから、それを皆がどう思うか

そこまでわかってるんだと思う。だから全部一人で背負っちゃってる?」



「えぇ、私達に何ができるか?それすらわかりませんが、黙っていられません。

私達は少しでも負担を減らす様に動きましょう。それしかできません。」



「そーだな。結局俺達もやる事は変わんねーってか?」



「そうするしかねぇだろ。」



「だな、俺等はをもう独りには絶対にしない。

向こうの世界で独り取り残された時と同じ思いは二度とさせる気は無い。」



は自分と彼等の考え方の違いにも気付いているでしょう。

その原因が何かも、とっくにわかっているのだと思います。

そして戸惑い、自分が異質なのだと思い、苦しんでるのではないでしょうか?


こちらの世界で生きる事に前向きになるまで沢山傷つき悩んだのです。

そんなを支えたい、守りたい、共に在り、前を向いて歩みたい。

私達と違っていても、それが彼女であるなら私にはそれが全てなのですから。