3章・旅は道連れ先駆け編
平社員 VS 研究員
クダリさんの先導で着いたお店は港の見える小洒落たレストランで
ドレスコードは大丈夫なのか心配になったけど、普通に中に入れた。
「こっち、こっちだよー」
先に席についてたアーティさんがうちらを見つけて手を振る。
有名な画家さんで、ジムリーダーさんなのに気取ったところが無いよねー
ノボリさんとクダリさんと話してるのを聞いてたらわりと仲良しさん?
だけどノボリさんはうちらの時とは違って敬称をつけて呼ぶんだね。
それを話したら、アーティさんが今初めて気がついたみたいな顔をした。
「むう、そうだよね。ボクはノボリって呼んでるのに不公平だよね。
ノボリ、次にボクを呼ぶときは様なんてつけないで呼んで欲しいなあ。」
「…このまま通常運行にしてくださいまし。」
「ノボリが敬称なしで呼ぶのは部下位。それは難しいと思う。」
生真面目というのかなんというのか…この人だったら下手したら
結婚しても相手を様付で読んじゃうんじゃないだろうか?
そう思いながらノボリさんを見ればすっかり困ってるみたいだった。
料理がきて、それぞれをしっかり堪能しつつ(ローストビーフ美味し!)
ポケモン談義に花を咲かせた。特には虫ポケモン好きだからかな
アーティさんと虫ポケ談義に夢中になっててうちらをドン引かせたよ!
あー、クダリさんもバチュルとかアイアント持ってるからそうなのかな?
二人の話に平気で入り込んじゃってさらに白熱してるし、凄いなぁ…。
「あのね、ホントに一人で大丈夫?」
「、遠慮は不要でございますよ?」
「いやいや遠慮もしてないし!今度はラルトスと一緒だから大丈夫でっす!」
食事が終わって、明日も仕事が休みで今日はポケセンに泊まるだけだから
この後飲みに行くって流れになったんだけど、飲めない私はパスした。
ポケセンに戻ってのんびりしたいからと言えば、とは納得したけど
ノボリさんとクダリさんがねぇ…前科持ちだから仕方がないんだけどねぇ…
「うちのラルトスの優秀なのはご存知でしょう?大丈夫ですってば!
ここは私を信じるんじゃなくて、ラルトスを信じてください。」
「うーん、確かにラルトスならオッケーかもしんない。」
「えぇ、大変優秀でございますし?では、気をつけてくださいましね?」
「ほいほーい、んじゃ皆さんいってらっしゃいですよー。
アーティさんも夕食をご馳走してくださってありがとうございました!」
「むう?そんな事気にしちゃだめだよお。また機会があればよろしくねえ!」
手を振って皆を見送ってから、ラルトスを抱っこしたまま回れ右をして歩く。
このまま真っ直ぐ帰るのもつまんないなー。
「お、こんな時間にまだやってるとか…これは入れって事でしょう!」
帰り道の途中でまだ営業してるカフェ…つーかバーも兼ねてるのかな?があって
恐る恐る中に入ったんだけど、雰囲気は明るめだから大丈夫そう。
テーブル席に案内されて、メニューを見ればスイーツが結構充実してるなー。
「すみません、このヒウンパフェと…あとはミルクティーください。」
ウェイターのおじさまに注文をして待ってたら、出てきたパフェは凄かった!
そーいえば、こっちのメニューって量がハンパないのを忘れてたよ!
自分の顔くらいあるだろうかってそれを食べるのに必死になってたら
「あぁ、やはり貴女でしたか!わたくしは運が良い!!」
いきなり目の前に壁が出来たんで、ビックリして顔を上げたけど
…私は何も見てません、私服はまともだけど、髪型がまともじゃないとか
そんなの見えないもんねー。あー…このパフェ、量が多いけど美味しいなー
「失礼、同席させていただきます。」
「私は許可してませんけど?アクロマさん…でしたっけ?」
うわーい、私も白々しいよね。でも名前を実際に聞いたのはさっきが初めてだし
こういう風に言うしかないよね…ってか、なんで会うかな、勘弁して欲しい。
「名前を覚えていただけたとは光栄ですっ!…でよろしいですね?
こんな時間に女性がひとりとは感心いたしませんが、わたくしには好都合です。」
「…あなたに言われる筋合いじゃないです。」
好都合とか恐ろしい事言った?いやいやガン無視させてもらうぞー。
つーか、このままダッシュで帰りたい!でもパフェが残ってるから出来ないぞー
「実はわたくし、トレーナーとしてポケモンバトルを始めました。
見るだけではなく、実際にバトルをさせてわかる部分が非常に多いっ!
わたくしにトレーナーになる事を勧めてくださった貴女に感謝いたしますっ!」
「そりゃどーも。頑張って沢山のデーターを集めてくださいね。っと。」
「興味を引かれるトレーナーも数多く、それらの方々とバトルもしてますが
やはりバトル毎にこちらのポケモン達も意気込み等が違うのは新鮮です!
ですが、データー採取はもう良いと思ってます。
絆でポケモンの能力がより引き出される…ですが、それ以外の方法の方が
より確実に、強力に引き出せるのです。これ以上は時間の無駄ですからね。」
「はぁ?それ、本気で言ってるんですか?」
例のアクロママシーンの事を言ってるんだろうけどさ
バトルが時間の無駄とか何ふざけた事言ってるんだ。この人は馬鹿?専門馬鹿?
「わたくしは嘘は嫌いです。」
「…馬鹿じゃないの?たかが数十回、数百回のバトルで何が言えるの?
どーせ生温いバトルしかしてないんでしょう?負けても別に良いんでしょう?
それならバトルをこれ以上する意味も必要もない、やめて正解ですよ。」
「ほう、非常に興味深い発言ですね。その意図は?」
いつの間に頼んだのか知らないけど、ウェイターさんが持ってきたコーヒーを
優雅な仕草で飲みながら、アクロマさんは片眉を器用にあげてこっちを見た。
「どんな時でもバトルは千差万別で同じ内容なんてひとつもありません。
力が拮抗した状態だったり、持てる力全てを出しても勝敗がつかない…
そんな状況でバトルをした事がありますか?
単なる力試し位のバトルでポケモン達を推し量れると思ってるの?
それは彼等に対する侮辱以外の何物でもないでしょう!」
「…素晴らしい…非常に素晴らしい意見ですっ!
確かにわたくしは同レベルかそれ以下のトレーナーとしか対峙してません
それではポケモンの能力を把握したとは言い切れない…確かにそうですねっ!
では、わたくしは貴女にバトルを申し込みますっ!
わたくしの意見と、貴女の意見、どちらがが正しいのか判断したいと思いますっ!」
「はぁ?!」
最後の一口だったミルクティーをもう少しで吹き出すところだったよ!
今何て言った?ってか、どうしてそっちの方向へ話が飛ぶのかわかんないって!
「トレーナーとしての全てにおいて、貴女はわたくしより上です。
ですがポケモン達はレベルもさほど開きがありません。そこに差が生じるのか
また、生じた場合はどの様なものなのか?この目で確かめたいと思いますっ!」
やっぱりこういうタイプは大嫌いだ。ポケモンバトルじゃなくって
リアルバトルでこの人を戦闘不能にしたいぞー、こーなったらヤケだよ!
「…目と目が合えばポケモン勝負…それは子供も大人も関係ないですからね。
良いでしょう…早速移動してやっちゃいましょうか。えーっと…」
「無理やり同席したお詫びに、ここの料金はわたくしが払いました。
さぁ、時間が勿体無いですっ!この近くに丁度良い場所がありますのでっ!」
「うわわわわ、ちょ…っ!!」
前と同じく問答無用で手を掴まれて半分引き摺られる様な形で着いた場所は
円形広場の近くの緑地帯だった。確かにここならバトルに丁度良いね。
「使用ポケモンは2体、アイテム、道具の使用は自由!それでは行きますよっ!」
アクロマさんが出したのはコイル、私はチャオブーだから相性はこっちに有利
問題は素早さが向こうが上だからどうしてもマヒ技をくらっちゃうんだよねー。
「チャオブー、気合だよ!あなたのド本気をへなちょこ科学者に見せたげて!」
「へなちょことは失礼ですねっ!コイル、スパークですっ!!」
やっぱりマヒ技出すよねー。だけどうちの子はそうそう簡単にマヒらないよ!
70%の確率の方をひいてチャオブーはマヒにはならなかった。
「チャオブー、じならし!後はヒートスタンプで押し切るよ!!」
「なっ、じならしですって?!」
「レベルアップで技を覚えるのを待つのも良いですけど
弱点を補えるような技を覚えさせてあげるのもトレーナーの役目でっす!」
何度かスパークをくらったけど、奇跡的にマヒにならないうちの子天才!
こっちの攻撃はタイプ一致で威力が上がってるし、向こうには効果があるから
そんなに手間取らないで1体目のコイルを倒す事が出来た。
「コイル戻りなさい。ギアル、出たらすぐにしめつけるですっ!」
「そんなダメージじゃ、うちのチャオブーは倒せません。
交代させる気なんて更々ないんでその選択はミスなんですよっと!
チャオブー気合の入ったのをお見舞いしてあげな!つっぱり!!」
鋼に格闘技は効果あるもんね、そこを攻めないわけないでしょー!
ぶっちゃけ私は他のポケモンを出す気はないし?チャオブーで十分だよ
だけど相手のポケモンも最後の底力を見せつけてきた。
この攻撃で落ちると思ったんだけど、気合で耐え抜いたよ!
「なんとっ!…素晴らしい…素晴らしいですギアル、よく耐えましたっ!
ギアソーサーで貴方の力を見せつけてあげましょう!!」
「ノボリさんの育成中のギアルのギアソーサーを思い出して!大丈夫だよ!!
さぁ、こっちも全力でお返しだよ、だいもんじ!」
命中率が85%でちょっと低いけど、普段からバトル慣れしてるチャオブーは
ここ一番って時は絶対必中させる。これは理屈じゃない、この子の気合だ。
どんな時でも負けたくない、勝ちたいんだってこの子の気持ちがそうさせるんだ
それはまさにアクロマさん、貴方が突き詰めようとしてる現象じゃないの?
「ギアル戦闘不能。この勝負わたくしの完全敗北です。
ですがっ、素晴らしい!個体もさる事ながらトレーナーでこうも変わるとは!!
非常に興味深くかつ、好奇心を刺激されました。感謝しますっ!」
「いえいえー、わかれば良いんですよ。
なんでも結論を出そうと急いだって良い事ばかりじゃないんです。
っと、これ…げんきのかけらと回復の薬です。その子達に使ってあげて。」
「なんとっ、回復の薬は…あぁ、貴女はマスターランクのトレーナーでしたね。
ですがこの様な高価で貴重な品をいただくわけには…」
「勘違いしないで、その子達の痛みとか苦しいのを早くとってあげたいだけ。
どんなにバトルに慣れてたって、痛みや苦痛は普通に感じてるんですよ?
そういうのを早くに取り除いて楽にしてあげたいって、貴方は思わないの?」
これだから研究者ってのは好きじゃないんだよ!
一度渡したそれをアクロマさんからブン取ってコイルとギアルに使ってあげれば
最初は驚いていたけど、私が撫でてあげると気持ちよさそうにしてくれる。
うわーい、マスターはともかくこの子達ってとっても素直で可愛いぞー。
「貴女は…いえ、それは追々わかれば良い事ですね。ありがとうございます。
貴女の言う通り、結論を少々急ぎ過ぎていた様です。かくなる上はより高みへ!
全力を出せる場にてもっとデーターを収集しようと思いますっ!」
「…好きにすれば良いんじゃないですか?私は別に関係ないんですから。」
言いたい事も言ったからもう用事はないからさっさと退散しましょうかね
回れ右をしてポケモンセンターへ向かおうとしたらいきなり手を掴まれた
「うおっ?!なにすんですかっ!」
海老反って倒れそうになったのを支えてくれたのは助かったけど嬉しくない。
アクロマさんはまた同じ様にそのまま歩き出した。
「ちょ、離してください…っつーか、離せ!」
「この時間に女性を一人で歩かせる様な真似はできません。
ポケモンセンター近くまで送らせていただきます!それとですね、あの時…」
うわーい、マシンガントークきたー!ずっと質問攻めとかマジで勘弁して!
確かに研究を続けろとは言ったけど、私で研究をしろとは言ってないぞー!
こんな目にあうんなら、飲めなくても皆に付き合えば良かった。
バトルには勝ったけど、何か違う部分で負けた気がするぞー…畜生!