3章・旅は道連れ先駆け編
悪戯の言い訳と本音
『にちゃんから目を離さない様に言ってちょ!』
からのメールを受け取り、どういう事かと返信すれば
ちょっと面倒事に関わるかもしれないとが呟いたとか。
はにはこうやって色々とおっしゃってるのですね…
仲間とは言え、やはりやには言えない事もあるのですから
私達に何も話してくださらないのは当然なのかもしれません。
付き合いの長さ、深さ、どれをとっても私は彼らには敵わない。
わかっていても鉛を飲み込んだ様な心の重さは独占欲…なのでしょうか。
「やっぱりってば色々貧乏くじ引いてる?
ってか、この場合は自分から選んで引いちゃってる感じがするんだけど。」
「前回手助けをした子供達が関係するのでしょう。
ジムに挑戦するだけの実力を持つトレーナーだというのを忘れているのか
見てられないからなのか…恐らく見てられないからでしょうねぇ。」
風呂上りの濡れた髪を拭きながらクダリが苦笑いしております。
クダリが眉間に指を当ててこちらを見ていたので、自分のそこに手を当てれば
はっきりとわかるほどの皺、最近の私は感情を隠すのが下手になってますね。
「私、最近ここの皺が通常運行になった様な気がいたします。」
「あはは、でもその気持ちわかるかもしんない。すっごく心配だもん。」
ジム戦を始めた彼等は単にジムでバトルをするわけではないのです。
他人と関わり合いたくないと言ってますが実際は関わりまくっており、
そういうところが彼女らしさで私達が好ましく思う部分でもあるのですが
相手がプラズマ団となれば話は別、見ている方の身にもなれと!
あ、今回は見ているだけじゃなくても…いや、ですが…
「気づかれなければ問題は…ない?」
「ノボリ?」
ふと思い浮かんだ事を思わず口走ってしまい、隣でクダリが首を傾げます。
未だうまくまとまらない考えですが、話せば何か良い方法が見つかるかも?
「実は以前からのシングルバトルを見てみたいと思っていたのです。
丁度次のジムはアーティ様の所、ヒウンジムでございますよね?」
「そーいえばのシングルバトルって見た事ないから見たい!
でもそれって次のジム戦に達と一緒に行く事になっちゃうよね?
ってか、ノボリ…目的は他にもあるんでしょ?」
「…それは察してくださいまし。」
クダリは腕組みをしてこめかみあたりを叩き始めました。
に言っても恥ずかしいと言われて断られるのがわかっているので
彼女を納得させるだけの言い分が何かあれば良いのですが…。
「えっと次のジム戦の有給休暇の届けは受けてたはず。
確かボク達の休みと何日かぶつかってたからそれは問題ない…
それなら達に内緒でって感じの方が良いかも…ってかそれしかない。」
「ですよねぇ…ですが二人に見つかった時はどうしましょう?
それなりの理由がなければの警戒を一層強めてしまいます。」
それでは意味がないのです、彼女の警戒を強めず自然な方法での接触で
尚且つ彼女が納得出来るだけの理由でなくてはならないのでございます。
「うーん、そのまんまの理由で良いかもしんない。
だってのバトルを見てみたいってのはホントの事。それで良い。
驚かそうと思ってって言えば良いと思う。これなら達の後をつけて
見つかった時でも今のボク達との付き合いなら納得してくれそう。」
「確かにこういう悪戯めいたサプライズをする位には親しいですしね。」
「うん、もいるし、フォローしてくれると思うからオッケーでしょ?
それじゃボク部屋に戻って、アーティに連絡してから寝る。」
「よろしくお願いいたします。おやすみなさいまし。」
「おやすみー!」
リビングのドアが閉まり、一人になってからバルコニーに出て
タバコに火をつけながらこれからの事を取り留めなく考えます。
のミッションに関わる子供達はどうやらプラズマ団との接触が
以前のトウヤ様と同じく避けられない状況にあるのでございましょう。
これから起こる事を知っている彼女がそれを放っておくか?答えは否。
呆れる程に優しすぎる彼女は自分の危険を顧みず渦中へ飛び込むでしょう。
出来る事なら、すべての危険から遠ざけたい、守りたい。
「…大人しく守られるような女性でもないのですけどね。」
バルコニーの柵にもたれ掛かり階下の部屋を見れば明かりは消えており
どうやら既におやすみになっているのでしょう。
何かあると食事も睡眠もとらないとが愚痴をこぼされた事がありますが
ここ最近はそんな様子も無いようなのがまだ救いでございます。
明日になれば、クダリからアーティ様のご返事も聞けるので
今日は私もこのまま休む事にいたしましょう。
日が明けて、朝食を摂りにクダリの部屋に入ればコーヒーの良い香りがして
キッチンではエプロン姿のクダリが丁度食事を盛り付けておりました。
「ノボリおはよー!あのね、アーティからオッケーもらった!」
「おはようございます、それはよろしゅうございました。
それでアーティ様は何かおっしゃっておりましたでしょうか?」
「あのね、とがチャレンジするよって言ったら喜んでた!
は虫ポケモンが好きなんだよって教えたらもっと喜んだ!」
そういえばは仕事中はいつもイトマルを連れ歩いておりますし
以前見せていただいたテッカニンとヌケニンも大変素晴らしかったですね。
「お二人が虫談義に花を咲かせる様子が今から目に浮かびますね。」
「だよねー!でね?ジムの人に話をしておくから着いたら裏口に来てって
フィールドフロアには入れないけど、アーティの控え室から見せてくれるって
のバトルも見たいけど、バトルも楽しみかもしんない。
ジムバトルとトレインでのバトルの違い?そんなのがあるかもだし。」
そう言ってサラダを食べながら笑うクダリに私も笑って頷きます。
トレインで使用しているポケモン達は彼のメインポケモンではないので
イッシュでのメインポケモンに選ばれた子達と共にどの様に戦われるのか
同じシングルバトルを得意とする者としても興味深いですね。
「いずれにせよ、今から楽しみでございますね。」
「うん!自分がチャレンジするわけじゃないけどワクワクする!
さーてと、のメールの話に言っておかなきゃなんない。」
「えぇ、朝礼前に執務室に来ていただいて話をしましょうか。」
ギアステに向かい、朝礼前にが執務室に入ってまいりましたので
のメールの件を話せば、やはり私達と同じように苦笑いを浮かべました。
「あいつらしいといえばそれまでなんでしょうね…わかりました。」
「うん、お願い。次のジムはアーティの所だよね?
と同じ虫ポケモン好きだから、きっととも話が合うと思う。」
「そういえばそうでしたね。でもまずはバトルが先…ですけどね。」
ニヤリと笑う顔がバトル前の表情で、普段の柔和な彼からは想像もつかない
好戦的な一面の見えるこの顔が私は好きです。
それからは特に変わりばえもなく、業務に追われる毎日を過ごし
今日はとが2度目のジム巡りに向かう日。
「それじゃあ行ってくる。」
「ノボリさん、クダリさん、この子達をお願いします。
ネイティ、リグレー、良い子にして待っててね、行ってきます!」
前回と同様にからそれぞれにネイティとリグレーを受け取りました。
どちらも目に涙を浮かべているのを優しく撫でれば、私達の胸に顔を埋めます。
本当にあなた達は彼女が大好きなのでございますね。
「うん、すっごいバトルしてきてね!」
「お気をつけて、行ってらっしゃいまし!」
カイリューとリザードンが飛び立った後、共に見送っていたが振り返り
「二人共、ちょいと提案があるから乗る気はねぇか?」
そう言ってボールからゴチルゼルを出して私達を見てニヤリとされました。
クダリと二人顔を見合わせてしまいましたが、どうやらも同じ事…
二人のあとを付いて行こうとされてる様でございますね。
「あのね、多分ボク達とおんなじ事を考えてるんだと思う。
二人の後をついて行っちゃうって事でしょ?」
「実は私達も休みでございますので、コッソリ後をつけて驚かそうかと…」
「成程ねぇ…それじゃあ話が早ぇな。どうせ準備オッケーなんだろ?」
そう言うとエントランスの片隅から荷物を持って戻ってまいりました。
えぇ、私達も同様に反対側のエントランスの片隅に荷物を置いていたのです。
それぞれに荷物を持ったあと、顔を見合わせて笑ってしまいました。
「あのね、はが後をつけるって知ってるの?」
「あぁ?んなモン俺が教えると思ってんのか?それじゃ悪戯にならねぇだろ?
それに目的は別…ソッチの方が本命だしな。」
「ふふっ、私達もでございます。」
「うん、と一緒なら百人力だね!」
三人でそれぞれにハイタッチをしてからもう一度お互いを見て笑いました。
クダリの言葉通り、が一緒なら心強いですね。
「うし、それじゃあゴチルゼル、ヒウンシティへテレポート!」
が指示を出した後、一瞬の浮遊感が私達を包みます。
がどう動くのか、がそれから更にどの様にするのかはわかりませんが
私達ももただ見てるだけにはいたしませんとも!