3章・旅は道連れ先駆け編 -人妻への説得と提案-

3章・旅は道連れ先駆け編

人妻への説得と提案



仕事が終わって家に帰って、ノボリの部屋でご飯を食べてから

リビングでボクはノートパソコンを開いて立ち上げる。

片付けの終わったノボリも隣に座って準備オッケー!



『やほーい、どーしたの?…って、とぼけちゃっても通用しないっぽ?』



先にメールしておいたから、は直ぐにライブチャットに出た。

画面に映るはいつもギアステに来ている時のとは違って

どこか大人びて見える。



『さっきの話の事でそ?でも何を言っても私はそっちにつかないですよん。』



頬杖をついてこっちに向かって手をヒラヒラさせて言うの瞳を見る。

この瞳をボクは何度も見た事がある。

どんな時でも自分を曲げない、自分の意思を貫こうとする人がする瞳だ。

こんなをボクは、ううん、隣でビックリした顔してるノボリも知らない。



「…それはボクの話を聞いてから言って欲しい。」



なんだろう、すっごく緊張する。まるですっごいバトルをする時みたいで

それもいつものトレインでのバトルって意味じゃなくて…なんていうのかな

そう、チャンピオンとバトルをした時みたいな感じだ。



『お話位は聞きますお、でも私も言いたい事は言わせてもらうっぽ。

あんまりちゃんを追い詰めないで、みなさんの好意はパワーにもなるけど

ちゃんを縛り付けて動けなくしちゃう鎖にもなっちゃうんだお?

好意も押し付けちゃうと悪意に変わっちゃうんですよん。』



「ボク達を追い詰められるほど動けてないよ?」



『ノンノーン、実際のじゃなく気持ちの事を言ってるんですよん。

今の皆さんってば一人歩きをしようと頑張ってる赤ん坊の手を掴んで

危ないからやめなさいって言う様なモンスターペアレントと変わんない。

大事だからって何もさせないのは無知で愚かな馬鹿のする事ですよん。』



「…ボク達がその馬鹿だって言うの?」



この言い方には流石にむっとした。ボク達はの意思を尊重してるよ?

本当なら、今何をしようとしてるのか、これから何をするのかって聞きたい。

でもそれじゃがミッションをクリアした事にならないと思うから

そんな事になっちゃってがいなくなるとか嫌だから我慢してるのに



「ボクもノボリもが大事。大切だって思ってる。

ミッションクリアには危険な事もあるかもしれないから仕方ない?

違うよね、危険を避ける方法だってあるんじゃないかな?

一番大事なのはがミッションをクリアする事、こっちに残ってくれる事

根本的な部分を忘れてなんていない。それでも馬鹿だって言うの?」



「クダリ、言い過ぎでございます!すみません…。」



ノボリに肩を叩かれたけど、別にボクは熱くなんかなってない。

その位にはわかってるのだってちゃんと知ってるから大丈夫!



『別に気にしてないからおk!でもすぐ熱くなっちゃダメですお。

根本を忘れてないのは良いですけど、ちゃんの性格無視しちゃ駄目でそ。

皆さん関わりたいとか言うけど、危ない目にあわせちゃうかもなんですお?

それをさせると思ってるっぽ?そんな事になったら自分のミッション放り投げて

ちゃんは皆さんを守ろうとしちゃう、ミッションクリアした後なら

すっごい変化で私も大喜びしちゃうんだけど、今じゃ拙いんだお。』



その可能性もあるから、余計にボク達は動けなくて困ってる。

飲みかけのサイコソーダが入ったコップがテーブルにあったから

手を伸ばして一口飲む。気の抜けた甘さが口に広がって顔を顰めてれば



ちゃんが気づいてないとでも?甘い!ヒウンアイスより激甘でしょー!

アイスじゃないけどちゃん舐めんなよ?ですかんね。』



ノボリがビックリした様に目を見開いて驚いてるけど、ボクは違う。

だって最近のの態度を見てたら、そんな事すぐにわかると思うんだけど

こーいう所がノボリは単純…ってか、騙されやすい位に素直なんだよね。



こそボク達を舐めないで、が気づいてるなんてとっくに知ってる。

ボク達、本当はもっとうまく立ち回れる。それをしないのはが気づいて

危ない事をしない様に、何かをする時にボク達を思い出して欲しいから。

リグレーの時みたいに、飛び出すのを止めるのには一番良い方法じゃないの?

優しいには効果があるんじゃないの?」



はボク達が心配して色々言ってもきいてくんない。

それじゃあどうすれば良いかって考えた結果がこの方法なんだ。

マルチの得意なダブルのサブウェイマスターってのは伊達じゃないよ!



がタバコでバルコニーに出るのを知っててバルコニーで集まったり

ポケモン協会との揉め事にインゴ達を呼び出したのも全部ブレーキをかける為。

に手札を晒したのだってボク達の存在をストッパーにする為なんだ。

皆の気持ちを利用するみたいで後ろめたいけど、手段を選んでらんない。」



『…そっか…たんもだけど、ダブルバトルが得意な人は侮れないっぽ。

んで?単刀直入に聞くんでハッキリ言ってちょ、私に何をさせたいん?』



「その前にの気持ちが知りたい。は辛くないの?

ホントならが一番の手助けをしたいんじゃないの?

の隣で見てるだけなんて立場にいたくないんじゃないの?」



ボクの言葉に一瞬顔を顰めて泣きそうになったけど、すぐに笑った。

だけどその笑い方はと同じ、全部諦めちゃったあの嫌いな笑い方だった。



『私の気持ちなんて今はどーでも良いっぽ。』



「それは違うのではありませんか?を幸せに…貴女はそう言いましたね?

ではの幸せとは?それは私達が幸せでいる事でもあると思います。

貴女も幸せにならなければは本当に幸せにはなれないのですよ?」



やっぱりノボリもボクとおんなじ事考えてた。

うん、はボク達が幸せそうに笑ってるのを見てる時が一番良い顔をする。

そんな事だってとっくに気がついてるんじゃないかな?



『…でも私がそれをしちゃうとちゃんが一人になっちゃう。

自分から一人になろうとするけど、ホントはすっごく寂しがり屋さん!』



「そんな事とうに存じ上げております。」



「何となくそうじゃないかなって思ってた。」



『わかってるなら、このまま放っておいてちょ。』



うーん、もだけどもすっごく頑固!だけど言われてそーですかなんて

ボクはするつもりはない。すっごい説得っていうか提案始める!



「あのね、別にの傍にいても構わない。ってか、そのまま居て欲しい。

ただ、が何をしようとするのかをボク達にも教えて欲しいんだけど?」



『それってちゃんを裏切れと?』



一瞬での顔つきが変わった。ホントにが大好きなんだね。

そー言えば、を引っ叩いた事もあったんだっけ、結構過激だよね!



「違う違う!が絶対そんな事をしないってのはわかってる。

だけど、が危ない事をするってわかってても動けないのは辛いよね?

だから代わりにボク達が動いてあげる。そういう意味で言ってるだけ。」



ボクの本音を探ろうとする様に睨みつけてるんだけど、これが本音。

が一番をわかってると思ったけど、の方がわかってる。

そんながそばにいればもきっと色々と心強いからそのままで良い。



がこんな事言ってたとか、こんな事をしようとしてるとかを

ボク達に教えてくれるだけで良い。こっちにはがいる。

だから後の事はボク達が考えて動くからはそのままでいれば良い。」



『……ホントに…ちゃんを助けてくれる?守ってくれる?』



画面に映ってるの瞳からポロリと涙が溢れた。

あぁ、やっぱりもすっごく辛かったんだね、苦しかったんだね。

涙は後から後から溢れて、はとうとう泣きじゃくり始めた。



ちゃんがね、すっごく幸せなんだって言うの…

今までも大好きなポケモン達と一緒で幸せだったけど、今はもっと幸せだって

私やたん、っちだけじゃなく、大切な人達が出来たって…

自分を大好きだ、大切だって言ってくれる人達が出来たよって言うの。

それって当たり前の事のはずなのに、あの子ってばそんな事すら幸せだって…』



「うん…」



「…はもっと幸せを望んでも良いのですけどね。」



『でしょう?私もそう言ったけど、それは望み過ぎだよって笑うんだよ!

それもいつもの諦めた様な笑い方じゃなく、満足した感じで…幸せそうにさ!

それって変でしょ?そんな事で満足なんておかしいよね?』



ボク達はの過去を知ってるからそんなの態度をわかってた。

愛情をしらないからって、自分が愛されなかったのは自分が悪いからって

自分を責めまくって他人を遠ざけ続けてたは最近変わり始めた。

自分を好きだ、大切だって言うボク達の気持ちをちゃんと受け止めだんた。

それだけでもすっごい進歩だって、も凄く喜んでたっけ。

でも、はその先を望んでるんだね?ボク達もおんなじ気持ち。



「うん、…ボク達もにはいっぱい幸せになってもらいたい。

ボク達が大好きって気持ちを受け止めてくれて凄く嬉しい、ボクも幸せ。

だからもっともっとが好きになる、大事にしたいなって思う。」



「…私もクダリと同じ気持ちでございます。

今迄のは捨てられ傷ついたポケモンの様でございました。

今は私達を信じ、私達の気持ちを受け止めてくださるまでになりました。

では次は?勿論手を取りいつまでも共に歩んで行く…そうでございましょう?」



『うん…うん、ありがと…っ、ちゃんを…っ…』



泣きじゃくりながらも何度もは頷いてくれた。

もすっごく辛かったんだって思ってたら、の横に手が伸びてきた

手の持ち主はギーマさんでそのままを抱きしめる。

もそのままギーマさんに抱きついて、本格的に泣き出しちゃった。



『オレのハニーを泣かすなんて許さない…と、言いたいところだけど

嬉し涙だし、相手がなら仕方がないから許してあげるよ。』



「うん、泣かせてゴメンネ?でもを悲しませる事はしないから。」



『ハニーだけじゃなく、もだぜ?あの子はオレにとっては妹分で

ハニーの大切な親友なんだから、その辺はわかってるだろうね?』



そう言ってを優しく抱きしめるギーマさんはいつもの四天王じゃなく

の旦那さんって感じで、もいつものって感じと違ってる。

多分これがホントのギーマさんとなんだろうな、すっごく仲良し!



「勿論でございます、ギーマ様からもにおっしゃってくださいまし

一人で苦しまないでと、私達を頼ってくださいと、お願いいたします。」



『当然、オレはが幸せになるならなんでもするぜ?』



『ギーマさん…ありがとっ…!二人も…ちゃんを…お願いね?』



抱き合いながら画面に映る二人にボク達は頷いた。

ボク達の話は終わったし、はまだ泣き続けちゃってるし時間も時間だから

今回はここまでって事で、チャットを閉じでパソコンの電源を落とす。

真っ暗になった画面を見て、ノボリが溜息をついたのをボクは聞き逃さなかった。



「ノボリ?」



「あぁ、すみません。はとても幸せなのだなと思ったのです。

もミッションをクリアして、あの様に幸せになって欲しいものですね。」



「うん、そうだね。」



チャットが終わって、無意識のうちに身体に力が入ってたんだって痛感した。

だってなんだか肩とか首がすっごく重苦しくなってる、バキバキだよ!

そのまま大きく伸びをしてソファーに深く座り直して肩とか首を回せば

ノボリも大きく息を吐いて肩を上下に動かしたんで、疲れたねって笑い合った。


皆が幸せな世界なんて有りっこないと思うけど、自分の大切な人達が幸せだって

そう思うのは当たり前の事のはず、だからボクのやった事も間違いじゃない。

今も幸せだけど、これからももっと幸せ…ハッピーになれば良いな。