三章・旅は道連れ先駆け編
幸せを望む
より遅れてが戻ってきた時
お疲れ様の意味も込め私の部屋で皆一緒に食事を摂ったのですが
その表情が固いことに気がつきました。
恐らく原因はがこちらに…それも彼女の下の階に拠点を置いた事
それが原因のひとつなのかもしれません。
「、お願いだから危ない事しないで?
からプラズマ団とやりあったって聞いた。それって必要な事?」
「クダリ、に言っても無駄だぜ?
こいつってば、そーいうの見てらんない性格で突っ走るからなー。」
見てられなくて…と言って他の皆から相変わらずだとツッコミが入り
笑い合っておりますがそれでも雰囲気が張り詰めてる様でございます。
ですが、それを指摘すれば彼女はもっと狡猾に立ち回ってしまう。
全てを隠し通されるつもりなのでしょうが、それを許したくないのです。
それからのとはポケモン達の育成も順調で
はじまりのポケモン達は次の進化を終えて、その他のポケモン達も
それぞれに進化し、ブラボーな成長を遂げております。
仕事の方も各ホームの点検を始め、修繕に忙しく、充実した毎日を送り
一見全てが順調に思えるのに、なぜ私は不安になっているのでしょうか?
「失礼しますですよん、ジャッキーたんからの愛のこもった書類っぽ。
例のウィルスに、もーちょっとでケリがつきそうだお!」
分厚い書類の束を持ってが執務室に入ってまいりました。
書類に目を通していれば、その横で補足の説明をしてくださります。
「うーん…後は車両の方の調整だけど、うまくいってない?」
「うまくいってないって言うより、システム全部取り替えるらしいっぽ。
今のシステムだと手動の時のブレーキ系統に問題がでちゃうらしいですよん?
ATOシステムからの切り替えもスムーズじゃないのが気に入らないらしいっぽ。」
「そっかー、各車両で年式も型式も違うしね。
でも目処はつきそうなんだよね?次の車両点検には間に合いそう?」
「多分?この前カナワに行ったら、SEの皆さんが死屍累々してたっぽ。
危険因子をこれ以上置いときたくないからみたいだけどー
自分が危険因子抱えちゃだめでそ、そー言ってはおきましたよん。」
一歩間違えば大惨事を招きかねないものでございますから
あの方々がそれを呑気に見ているわけはありませんでしたね。
ですが、それは別な意味で問題だと思います。
「職人気質の強い彼らは全てに置いて完璧を求めますからねぇ…
それでも、お体にはくれぐれも気をつけていただきとうございます。」
「体力が資本だから、普通の職場よりはそーいう無理できるかもだけど
だからといってやって良いわけじゃない。多少の遅れは構わないから
交代で休みが取れるように調整してもらうように話しておく!」
そこで話が終わって、私とクダリが書類を見続けておりましたが
は部屋から出る様子を見せません。どうしたのかと顔を上げれば
「んー、ボスさん達はどの辺までちゃんの話を聞いてるっぽ?」
「話って?」
「ちゃんの過去…はこの際おいといてー、これからの事ですよん。」
これはミッションの事を言ってるのでしょうか?
口調はいつも通りでございますが、その表情は真剣そのもので
私達との距離をどうとるべきか悩んでいる様にも見えました。
「…私達は彼女のミッションが始まった事と、全て一人で背負おうとしてる
それしか把握しておりません。ですが、黙って見ているつもりもございません。」
「後手後手になってるのが辛いけど、ジム巡り中の動きも掴んでる。
ボク達だけじゃない、インゴ達、、、も黙ってない。」
「つまりは全力でお節介焼いちゃうって事でおk?」
私達の話を聞いて、が泣きそうに顔を歪めました。
の親友である彼女が何故その様な表情をする必要があるでしょうか?
むしろ、全力でこちらと共にのミッションクリアに関わるのでは?
「あのね、はボク達のやってる事に反対なの?
ボクはならボク達が言わなくても、ボク達と同じ事すると思ってた。」
「出来るならとっくにやってるっぽ。でも、ちゃんはそれを望んでない。」
「以前のはミッションに乗り気じゃなかったと思いますが、今は違います。
全力でクリアしようと、こちらの世界に残りたいと望んでいるのですよ?」
「それはわかってますよん?ちゃんってば本気もど本気だし?
最後まで頑張ってくれるって、凄い良い顔して言ってくれたし。」
「うんうん、それならも協力して欲しい。
が殻に篭るをしちゃわない様にするにはどーしたら良い?
ボク達で何か出来る事があるなら、の負担を減らせる事があるなら
こうした方が良いよって教えて欲しい。」
「、貴女が知ってる事を私達にも教えていただけませんか?」
クダリは気付かなかったのでしょうか?
の笑顔が、私達の嫌いなの笑い方と同じだったのです。
「私が知ってる事は皆とそんなに変わりは無いですよん。
でも、皆にして欲しい事は…ちゃんを幸せにしてあげて欲しいっぽ。
これからの日々、毎日笑って過ごせるようにしてあげて欲しいお。」
「え?それだけ?」
「それだけって、それがちゃんの一番のパワーの元になるっぽ。
沢山の幸せに囲まれる事、自分はもう一人なんかじゃないって事が
ちゃんにとっては一番大事なんだお?」
そう言うとはうんうんと一人納得したように頷くと溜息をついて
「サブウェイボスさん達にも同じ事聞かれて、同じ事を言ったよん。
にもたんにもこれはずーっと言ってるお。
だからお二人にも同じ事言うけど、…ちゃんを笑顔にして欲しい。
沢山の幸せとか楽しい事、嬉しい事をあげて欲しいの。お願い。」
最後の部分はいつもの口調ではありませんでした。
彼女を幸せに…彼女が幸せだと思える様にする事がそれ程重要なのでしょうか?
は本当に私達と同じ事しか知らないのでしょうか?
クダリもの異変に気がついた様で、彼女の顔を覗き込んで聞きました。
「あのね、は本当にボク達と同じ事しか知らないの?
それならどーしてそんな風にを幸せにって強調して言うの?
もしかして、ボク達の知らない事をは知ってるんじゃないの?
知ってるから、そんな事をボク達にお願いしているんじゃないの?」
「…きゃーん、そんなに質問ばっかりしちゃいやん!
でも、ホントに知ってる事は同じだお?キュレムたんを開放する事でそ?
私もちゃんからそーいう風にしか聞いてないですよん。」
そう言って、すっかり元の口調と表情を取り戻すと
仕事が残ってるから、そう言ってその後は部屋を出て行きました。
彼女が部屋から出た後、私とクダリはお互いに顔を見合わせて考えます。
「ノボリ、は本当にそれしか知らないのかな?」
「…あの言葉に嘘はないと思いますが、本当にそれだけなのでしょうか?」
「うーん…あ、そうか!」
私と同じ疑問を持っていたクダリは何かわかったのでしょうか?
一瞬表情を明るくしてポンと手を打った後、困った様に笑います。
「あのね、の手伝いをしたいってのはとかの思ってる事。
はどう思ってるのか?それをは知ってるんだと思う。」
「つまりは私達を巻き込みたくないというの意思を尊重してると?」
「うん、だってはいつもの味方だって言ってる。
の手助けをしたいと思ってても、の気持ちがわかってるから
はの方について、側の考え方をしてるんじゃないかな?」
あぁ、それであんな表情をされたのですね。
本当はだっての手助けをしたいでしょうに…。
「全員が私達と同じになってしまえば、結果的にを追い込んでしまう。
だから自分も手助けしたいのを我慢して、彼女の傍にいると言うのですね。」
「うん、それってボク達には考えつかなかった事だよね。
案外にはそれが凄く心の支えになってるのかもしんない。
でもさ、は凄く辛いと思う。だからボクはも巻き込もうと思う。」
「クダリ?」
「はと同じ位色々と考える人、だけどボクだって負けてらんない。
には皆がハッピーな事が大事で必要だっては言った。
だからこの交渉、絶対成功させてにもハッピーになってもらう!」
皆が幸せに、それは簡単な様でとても難しい事でございますが
それでもクダリの表情をみればやるしかないのだと語っております。
全ての人の幸せは無理でも、友人達の幸せを望む事は可能なはず。
達と知り合えた事がひとつの幸せなら、もうひとつの幸せである
彼等の幸せを願う事も許されるのでしょう。
それは欲張りな事では無いのです…そうですよね?。