三章・旅は道連れ先駆け編 -先見の明なんてありません-

三章・旅は道連れ先駆け編

先見の明なんてありません



がパソコンの電源を入れてファイルの確認をしてる横で

私とはデスクの移動や棚の整理をしてたんだけどそれも終わって



「「「終わったー!!」」」



満面の笑みで三人それぞれにハイタッチを交わした。


ユノーヴァに出向した時、向こうの部署のレイアウトを見て

がこっちも同じ様にした方が効率的だと提案して

隣同士だった作業部屋と材料置き場の間の壁をぶち抜いて

事務スペースや、休憩場所なんかも作っちゃったりして

施設設備保全管理課(長い名称だよね!)の移動が完了した。


ホントは私一人の方が良かったんだけど、そんな事を言っちゃえば

勘の良い二人は絶対探りをいれてくるからね。

ただでさえが一緒にジム巡りするから動きにくいのにさー。



「うし、今日はこの後在庫整理をして材料の加工で終わりだ。

その前に、有休届は書いたのか?」



「ほいほい、バッチリだよー。

部署移転して最初に持って行く書類がこれだとか、うちららしい?」



「まぁ、長期休暇じゃねぇんだから文句は言われねぇだろうよ。

テメェらが休暇中は、俺で出来る事はやっておくし、それ以外の事も

段取りはわかってるから材料なんかを揃えておくから問題ねぇ。

もう少しで午後休憩に入るから、その前にさっさと行きやがれ。」



に叩き出される様にして部屋を出て、と二人で

ボス達の執務室へ向かう。

ノックして、部屋に入ってみればちょうどバトルが終わったのかな?

ボス達がコートと制帽を壁にかけていた。



「二人揃ってどーしたの?部屋の移動とかで問題があったりした?」



「本来三部屋欲しいと言われておりましたのに、結局は二部屋分のスペース、

色々と手狭だったりいたしておりませんか?」



ワイシャツの袖を捲りながらクダリさんが、コーヒーの用意をしてノボリさんが

気遣わしげにうちらに向かって聞いてきた。

ホント、トップなんだからそこまで部下に気を使う事ないのになぁ。

これが二人の性格なんだろうし、そういうところが部下に好かれてる部分だし

うちらも気に入ってる部分だから仕方がないんだろうけどね。


ノボリさんからココアを受け取って飲みながらそんな事を考えていたら

が肘打ちして目配せをしてきた。そうそう、目的を忘れちゃダメじゃん!



「えっと、総務部長さんの許可はいただきましたんで。

後はボスの認証サインをいただければ嬉しいなーと…お願いしまっす!」



「なんでございましょう?…あぁ、とうとう始められるのですね!

えぇえぇ、いくらでもサインいたしますとも!」



「んー?うわー有休届って事は出発進行するんだ!

あれ?じゃ届け出てる日数が違うんだけど、どーして?」



うわーい、やっぱり気づいちゃうよね。

私の方がより1日多いのは、向こうに行ってやる事があるから。

はジム戦終わらせたらすぐに戻れるけど、私はそうはいかない。



「まぁ色々と下準備をしたいんです。やらないよりはマシかなぁって思いまして…」



「…ボク達が理由を聞いても教えてはくれないんだよね?」



「えぇ、何も言わずに許可していただけると嬉しいですね。」



「クダリ、こちらの規約に何ら触れてはおりません。

私達はこのままサインをすべきでしょうが…無理はしないでくださいましね?」



「…頑張ります。」



はい!って返事をしたいけどちょっとねー。

まぁ序盤だからそんなに危ない事にはならないからオッケーにして欲しいな。


二人の許可サインの入った書類をノボリさんが手渡してくれたんだけど

その顔は何をする気なのかって凄く気にしてるのがわかる。

多分私が何かをまだ隠してるってわかってるんだろうね。

シルバーグレーの心の底まで見透かそうとする瞳、それが私は苦手だ。

インゴさんもそうだけど、彼以上にこの瞳は嘘もごまかしも通用しない。



「黒ボス、俺もついてますので無理はさせませんから。」



見かねてが助け舟を出してくれた。

肩を叩かれてそうだよなって感じでこっちを見てるから笑って応える。

それを見て白ボスが溜息をつきながら笑った。



「二人が揃うとリニア並に突っ走るってわかってるから余計に心配!

初バッチゲットの知らせを待ってるから…早く帰って来てね?」



「戻って来た日はお疲れでございましょう?食事の用意をしておきます。

友人として出来る事がこれだけというのも情けなくはございますが

せめてこの位はさせてくださいまし。」



「わかりました。黒ボスの飯、楽しみにしてます。」



「初バッチのお祝いとか言って大盤振る舞いしないでくださいね?」



こうやって釘を刺しとかないと何気に金銭感覚のおかしい二人は

散財しまくりそうだから言っておかなくちゃ。

サイン済みの書類を手に部屋に戻って、私は自分の仕事の材料を作る。

単純作業で退屈そうに見えるけど、私はこの時間が結構好きだ。


まずはからもらったラルトスと一緒にリザードンで空を飛んで

向こうのポケモンセンターについたらラルトスをパソコンにしまって…

メンバーを揃えてからジム戦して、タチワキシティのポケセンまで行って

テレポートでライモンシティに戻って…いや、ポケウッドも行けるかな?


丸ダクトのソフトエルボーにALGCテープを貼りつけながら

少ない日数で最大限に動ける様に、効率的なルートをあれこれ考える。

自分の立ち位置、動く範囲、介入するならどこまでなのか…

出来る事なら自分の事だけやっちゃいたいけど、そうもいかない。

だから顔見知り程度にはなっておかなきゃならないんだよね。

貼り付けたテープの凹凸を取って微調整をして、出来上がった材料を

それぞれの大きさに分けて箱に入れる。



「随分沢山作ったじゃねぇか。これじゃ俺が手伝う必要はなさそうだな。」



「どうせジム巡りの事で色々考えてんだろう?お前の癖だ。

2番目のジムリーダーのいる町までは俺も一緒に行くぞ。

他に行かなきゃならない場所があるなら連れてってやるからな。」



が手招きしてるから、なんじゃらほいと行ってみたら

デスクの上にはBW2バージョンのタウンマップが広げられていた。



「このタウンマップどうしたの?」



「お前なぁ、ここをどこだと思ってるんだ。泣く子も黙る廃人施設だぞ?

俺が仕事しながら旅に出てジムリーダーに挑戦するって話を聞いたらしい

トツカさんが、色々必要になるからってくれたんだよ。」



持つべきものは廃人の知り合いってか?

は私の分ももらってくれてたんで、ありがたく受け取らせてもらうよ!



「ヒオウギシティか、俺がジム巡りしてた時は通らなかった場所だしな

どれ…ライモンシティからはちょっと離れてるな…」



、ジム以外も寄るんだろう?どこに行きたいんだ?」



方向音痴な私と違っては地図いらずの人だから助かるんだけど

それを言っちゃうと私の行動が全部筒抜けになっちゃうじゃん!

でも序盤だからそれ程危険じゃないし、今回は予定変更で甘えちゃおうか。



「えっとね、ヒオウギシティが…どこだ?あぁ、ここだね。

まずは近場のポケウッドに行って、2番目のバッジをくれるタチワキシティ

その下にあるタチワキコンビナートでしょー、それからサンギタウンを通って

最後にヒオウギシティに到着!…うん、こんな感じでお願いできる?」



マップを指差しながら説明する。実際に地図を使っての移動は迷うけど

地図が読めないわけじゃないんだよ。じゃあ何で迷うのかは謎だけどね!



「わかった。で、どうする?2番目のバッジまでゲットするのか?」



「てめぇはバトル慣れしてるだろうが、進化前ポケモン…それもまだ小さい子を

連戦させても良い事は無いからな。せめて次の日まで休ませてやれ。」



「先に色々話を聞いて、次に来た時すぐチャレンジ出来る様にしても良いし

その辺は時間を見てで良いんじゃないかな?」



「どっちみち俺等は主人公達より先に動かなきゃならないから

進められる場所はどんどん進めておけよ。職場の迷惑になるからな。」



ぶっちゃけても良いかな?そういう縛りが出てくるから心配なんだよ!

今はまだ良いけど、これから先結構な日数の有休を取らなくちゃだしねー。

無事に両立出来るのかな…一応には先に進んでもらおうかな?



はミッションに関係なくどんどん先に進んでおいてくれる?

私の方は主人公の子達の動きに合わせなくちゃなんないからさー

最悪有休の延長もあるかもだし、二人でそれは拙いっしょ?」



「確かにそうかもしれないな。だが道案内は譲らないぞ?」



「…うん、それで良いよ。つーか、私一人だとジムに到着できないし?」



いつだってジム巡りはジムリーダーとのバトルができるから楽しみにしてたけど

いざ自分がミッションをクリアする立場になると不安の方が大きくなる。

負ける気はないし、負けないつもりでいるけどやっぱり楽しみにはできないな。

ホワイトボードのスケジュール欄に書かれたジム挑戦開始の文字を見て

今更ながらに事の重大さを感じちゃう。


これから先に起きる事を知ってるからって有利に事が動くわけじゃない。

むしろ知らない方が良かった部分もきっと出てくるだろうし

本編とは関係ない出来事だってきっとあるはずなんだ。

それが私にとって吉となるのか凶となるのか…出たとこ勝負なんだろうな。