三章・指差確認準備中!編
あくむとあれやこれ
協会絡みのゴタゴタがこれで終わった。
シンオウにいる時からずっと続いていた問題もこれで解決して
うちらは誰からも干渉される事が無くなったんだ。
ももミッションをクリアしてるんだから、これで本当に自由だ。
だからこっちの世界で、自由にそれぞれの道を進んで欲しいなって思う。
ギアステを出て、皆で私の家に向かう途中で
トウヤ君とトウコちゃんは妙にはしゃいでるし、シロナさんは
さっきからモーションをかけまくってるエメットさんで遊んでて
アララギ博士とクダリさんはそれを見て大笑いしてる。
アデクさんはシンオウ地方のお酒についてと盛り上がってて
インゴさんとノボリさんとはメニューについて色々相談して
それぞれの分担を決めてるみたいだ。
こんな感じで誰かと一緒に笑い合える時が来るなんて思わなかった。
今目の前にある光景は私が望むのを諦めてたモノ…。
現実にこうやって手にする事が出来たのは奇跡かもしんない。
この喜びが、幸せがずっと続いて欲しいって思う様になった私は
昔に比べると随分欲張りになっちゃったんだろうな。
先を歩いている集団を一歩後ろから眺めて笑ってたんだけど
神様はやっぱりドSだわー、なんで次から次へと問題を叩きつけるかな?!
あぁ、やっぱり私の望むものはこの手を簡単にすり抜けちゃう
そうだよね…ミッションも終わらせていない私には自由なんて無いんだ。
そんな状態で幸せとか望む方が間違いなんだよね。
現実をつきつけられて、違う意味で笑いたくなってきたよ。
「さん、皆先に行っちゃいますよ?」
「何か忘れ物でもしたんですか?」
トウヤ君とトウコちゃんがそんな私に気がついて首を傾げた。
良かった、この二人なら何とか誤魔化せそうかな?
「うん、家でやろうと思ってた書類を忘れたのを思い出したんだよね。
ちょっと取りに戻るから、二人は皆と一緒に先に家に行ってて!」
そう言って、私は来た道を逆走した。
暫く走ってから通りを1本横に入って乱れた息を整える。
後ろからコツコツと足音を響かせて近づく人影を見れば
エキシビジョンマッチの時に出会っちゃったアクロマさんだった。
「…私に関わるのはやめてくれって、前にも言いましたよね?
私には話す事がないから会いたくないって、迷惑だとも言いましたよ?」
不機嫌全開で言ったんだけど返事が無い。あれ?っと思って下を向いてる
アクロマさんを覗き込んだんだけど、息が切れ過ぎて話せないとか…
「運動不足過ぎにも程があるでしょう…オッサン…。」
「し…つれい…ですねっ!貴女の…逃げ足が早すぎるん…っ!!」
無理して喋るなって意味も含めて、咳き込んでる背中を摩った。
うわー、近くで見ると背が高いんだな…人種の違いを痛感するよ!
っと、こんな事してる暇は私には無いんだった。
「そんな事知りませんよー、今後こんなストーカー地味た真似しやがったら
問答無用でジュンサーさんに通報しますからね!
私が言いたかったのはそれだけなんで失礼しまっす。」
ともかくあんまり関わりたくないから逃げようとしたんだけど
コートの裾を思いっきり掴まれてのけぞったよ!
復活したらしいアクロマさんはそのまま私の手を掴んで見てるし
「…なにか?」
「ここではお話も出来ませんので、こちらへ…」
「うわわ、ちょ、離してくださいってば!って話を聞けよー!!」
問答無用で引きずられる様にして連れてこられた場所はどこかのバーで
店内には巨大な樽?が沢山あって、個室みたいになってる。
不味いよ、ここから自分の家に帰れる自信がないんだけど!
いいだけ遅くなってるから絶対皆が心配してる
さっきからライブキャスターがマナーモードのまんまだけど
着信が鳴りっぱなしなんだよ、マジで不味いよ!!
不機嫌全開でモモンのフレッシュジュースをチビチビ飲みながら
前を見ればアクロマさんがニコニコしながらこっちを見てる。
何か話があるんだろうけど、さっきからずっとこの調子とか勘弁して欲しい。
「いきなりこんな所に連れてきて、どーいうつもりですか?」
「あぁ、これは失敬!ですが、こうしなければ貴方は逃げてしまう!!
わたしはどうしても貴女と話をしたかったのです。聞きたかったのです!」
「友人達が食事を作って待ってるので、早く帰りたいんですけど。」
「では急ぎましょうっ!
優れたポケモン達が何故人間に歩み寄るのでしょうか?
神ポケモン達は何故貴女とご友人をパートナーに選んだのですか?
バトルも無しで自らボールに入る彼等が理解できません。
そもそも、ボールを破壊した時点で彼等は自由でしたでしょう?」
メモ帳片手に向かいの席から身を乗り出してとかやめて欲しい…
「私は彼等が私を好きでいてくれてるとしか解釈してません。
それ以外に理由なんて必要ないし、十分だと思ってますから。」
「精神論になるわけですね。感情がポケモンに与える影響として
貴重な実例に遭遇したという事ですねっ!非常に興味深い!!
ですがお互いの絆が強ければパートナーとして存在できるのなら
モンスターボールの存在が否定されてしまうのでは?」
「遥か昔から人とポケモンは共存してましたよね?
その遺跡からモンスターボールなんて出てきましたか?」
この人ってクールなイメージあったんだけど、テンション高くね?
ぶっちゃけそんな細かいこたぁどーだって良いってんだよ。
「貴女は考古学にも造詣が深いのですね、素晴らしい、グレートですっ!
ところで、唐突で不躾ですが貴女は本当に人間なのですか?」
「は?」
思わず目が点になった。この人は何を言おうとしてるの?
「貴女の発言はポケモン主観が多い。
あの場での言葉はポケモン達が我々人間に言いたかった言葉そのもので
それを貴女が代弁しているという印象を受けました。
貴女の事を調べたくても必ずロックがかかってしまいます。
それもかなり厳重にです。これは貴女自身に何か秘密があるのでは?」
私や、の個人情報は国際警察か管理してる。
ちゃんの作ったセキュリティーで完全防御されてるんだけど
そこまで知ってるって事はこの人ハッキングかましたの?!
って、これ以上詮索されるのもまずいよなぁ…
これはこの人の食いつく様なネタをだしとくか…
「…私はもう1体別な伝説ポケモンのマスターでもあるんです。」
「なんとっ…!!」
おー、やっぱり食いつきましたね。
ホントはこんな事したくなかったけど、この人だったらいつかは
あのちゃんの鉄壁のセキュリティーすらぶち壊しそうで怖いんだよ。
その後もポケモンとの接し方、普段の過ごし方とか聞かれまくって
いい加減めんどくさくなってきたぞー。
「私はバトルをしながら彼等に出会い、そしてパートナーになりました。
どんなポケモンでもそれは変わらないですね。最初にバトル有りきなんです。
もしも貴方が本当にポケモン達の強さの根源を知りたいと思うなら
ご自身がトレーナーとして彼等と共にバトルをしてはいかがですか?」
「わたしがトレーナーに…ですか?」
メモを取る手を止めて、すっごく驚いた様な顔でアクロマさんは私を見た。
それから口元に手をあててなんだか考え込んでから
「その発想はありませんでしたね…貴女といると探究心を刺激されます!
とても興味深い!そして試す価値はありそうです。」
「そりゃ良かったですねー。理詰めの育成をするのか、個性を尊重するのか
ポケモンは機械じゃないから貴方の指示通りには動きませんからね?
それだけはその賢そうな専門バカの脳みそに叩き込んでくださいよー。
って、うわわ!こんな時間とかマジで勘弁して!!私は帰りますからね!」
うわーい!なんだかんだで1時間近く話し込んでたとか勘弁して!
これは不味い、非常に不味い!テーブルの上にジュース代を叩きつけて
私は店を飛び出した。
「待ってください!この辺はあまり治安が良くないので送りま…
あぁ、その必要はなさそうですね。では私はこれで失礼します。」
私を追いかけて来たアクロマさんはそう言うといきなり歩き出して
夜のイッシュの街に溶け込んでいった。
いやー、そもそも研究者側にあの人を見つけて驚いたけど
こーやって捕まって話をさせられるとも思わなかったよ!
マジで今日は厄日じゃないだろうか?
つーか、ここはどこなんだろう?んで、どーやって帰ろうか…
私一人じゃ絶対家に帰れない自信だけはあるぞー!
ネイティとリグレーに聞いてみようと思ってボールホルダーに手をかけた時
凄く近くに人影が見えて、咄嗟に臨戦態勢に入ったんだけど…
「ノボリさん!…とインゴさん?!」
そばの壁に寄りかかってタバコを吸ってたインゴさんと
同じ様に壁にもたれたままライブキャスターを操作してるノボリさんがいた。
「随分と遠い場所に忘れ物をされた様でございますね?」
「アノ男は訓練所にいた学者でゴザイマスネ?
いつ知り合ったのデスカ?何を話していたのデスカ?」
揃って眉間に皺を寄せて、超絶不機嫌で怒りを隠そうともしてない
なんで、よりによってこの二人が揃ってるのかな?!
「夢なら覚めて欲しい…」
「現実逃避はおやめくださいまし。」
「自業自得デス、非常に見苦しいデスヨ?」
あぁ、今日が私の命日になるかもしんない…