三章・指差確認準備中!編 -仲間作りと未来予知とあれやこれ-

三章・指差確認準備中!編

仲間作りと未来予知とあれやこれ



から受け取った書類を見て、ボクとノボリが怒っても仕方ないと思う。



「貴方逹は…今後諸々協力しようと言った矢先にこのような事を?!」



「あのね、今更これをやる必要性がわかんない!

だけじゃなく二人も移動とかどういうつもりなの?!」



の提出した書類は保全管理課の事務スペースの移動許可で

隣同士にある作業部屋の壁を一部ぶち抜いて、中間に新設したいって内容。

はボク達の執務室で作業をするメリットを言ってたはずなのに

どーして今更こんな事を言い出したんだろ?



「理由についても記述済ですが?

まずは課長が今後ジム巡りをすると、仲間作りを始めるんでね。」



「「は?」」



「まぁ、ジム巡りの旅の途中に俺と似た様な経緯持ちで

本人にやる気があるんだったら、毎度仕事の場を提供してるんですよ。

それをこちらでもさせていただく予定なんです。

ですが、事務スペースとして使用しているこの部屋はボス達の執務室でしょう?

下っ端がそうそう出入りしてるんじゃ筋が通らなくなりますから。

そういう区別はしっかりとするべきです。」



つまりはゲンナイみたいな人逹をこっちでも雇うって事なのかな?

それだったら、執務室での仕事ってのはまずいかもしんない。

色々と機密事項がこの部屋には沢山あったりするし?

だって、そー言う意味ではホントはアウトだったりするし?

それならこれは許可しなきゃならないんだろうな。

人数が増えるって事は逹の負担が減る事にもなる

個人的な感情を抜きにしてなら、これは了承しなくちゃなんない。


ノボリを見れば、口元に手を当ててデスクを反対の手で小刻みに叩いてる。

あー、やっぱり嫌だから何か理由をつけようとしてるのかな?



「白ボスは納得してくれたみたいだけど、黒ボスは何か異論があるのかな?

ただし、個人的な感情を抜きにして言ってくれないと困るからね。」



「いえ、異論は無いのですが…それ以外に理由があるのでは?と…」



「…黒ボスも何かを感じてるって考えても良いのかな?

それについては書類には記述してないんだけど…ねぇ、課長。」



の方を見て苦笑いしてて、同じ様にも苦笑い?してる。

あー、とか言いながらはボク達に説明してくれたんだけど



「こっから先は俺の勘でしかないんです。なので言ってもどうかと思うんですが

を一人にしておいては駄目だ…そんな気がしてならないんです。」



の勘は外れないって言ってたっけ?

それがどーしてなのかわからなくても、今後の事を考えたらそうなのかな?」



「そう言う事でしたなら、の意見には私も賛成でございます。

彼女を一人にしてしまえば、どんどん私達との距離をとってしまう…

そんな気が私もしてならないのでございます。」



ノボリの勘も外れた事が無い。

二人がそうやって思うなら、これは用心しておいた方が良いかもしんない。

どっちみち、ミッションの全貌を知ってるのはだけだから

近くにいて、何か変な行動をしないか見張った方が良いと思う。



「あーもう!それじゃあこの書類を承認するしかない。

だけど約束して、絶対に自分を犠牲にするって選択をしないで!

には言っても駄目っぽいけど、二人は出来るよね?」



「良いですか、必ず自分逹の安全を確保した上で行動する事!

私達は大切な友人を失いたくありません、その為に動くのでございます。

それはお二人にも言える事なのだと理解してくださいまし。」



多分二人共、の危険を少しでも減らそうと無理をするに決まってる。

だけどさ、それで自分逹まで危険になるんじゃ駄目だと思う。

三人の誰かが欠けたってボク達はハッピーにもスマイルにもなれない

それだけは二人にもわかって欲しい。約束して欲しい。



「二人共、そんなに心配しなくても良いよ。

俺達だって自分の身が可愛いからね、無理と無茶は嫌いだし?」



「あぁ、俺等は完全勝利しか考えてない。

それは自分を犠牲にしたって意味がないだろう?

完全勝利をして、皆で笑い合ってそれから先の事…俺等の未来を創るんだ

大丈夫だ、二人を悲しませる様な事はしないって約束する。」



そう言って笑った二人の顔はバトルする時みたいで笑っちゃった。

だってさ、二人共すっごく強いトレーナー!

その二人がすっごい本気で挑むんだもん、負ける気なんかしない。

ボクもノボリもこの顔を見て安心した。大丈夫、二人は無茶をしない。

だから承認のサインをして、ボク達は二人に手渡した。



「ありがとうございます、今日は午後から特に予定を入れていないので

早速作業部屋の改修に取り掛からせてもらいます。」



「俺は総務に提出する書類の作成をここでさせてもらうかな?」



が執務室を出た後で、がキーボードを叩きながら書類を作ってる。

これが日常の風景になりつつあったのに、それも見る事が出来なくなる

ちょっと前のボクだったら、それが寂しくて嫌だって駄々をこねたと思うけど

今はそんな事にはならない、気持ちが離れ離れにさえならなきゃ良いんだって

信じる事が出来るから。うん、オッケー!大丈夫!!



「…ボクも大人になったかもしんない。」



ボソッと呟いてから慌てたけど、ノボリには聞こえなかったみたい

大人になったって、年を言えば十分に大人なんだけどね!


子供の頃はなんでもすぐに信じる事ができたけど

大人になると裏切られたりとか、目の前で掌を返されたりとか?

そんな態度を見て一時はすっごい人間不信になった事もあったから

もう一度、こうやって誰かを信じる事が出来るのが素直に嬉しい。


書類を手にしてちょっと席を外すと言ったを見送りながら考える

三人の結びつきはすっごい強固なものだってボクでもわかる。

ボクもノボリもそれが凄く羨ましかった。

支え合える相手が欲しいって望みは、この出会いで叶ったけど

その先、ボク達はどこに向かうんだろう?


は自分達の未来を創るって言ってた

ボク達は普通に生活をしてる今の状況を当たり前だと思っていたけど

逹はそうじゃなかったのかもしんない。

ミッションをクリアするまでのはっきりしない自分の立ち位置

そんな不安がいつもあったんじゃないのかなって思う。

それでも笑っていられるんだから凄いなって素直に思う。


処理済みのボックスに書類を入れた時に

インカムからマルチの待機要請が入ってボクとノボリは席を立つ。

ホルダーを装着して、制帽をかぶって、特徴のあるコートを羽織る。

いつもと同じ様に、そばにある大きな鏡で服装の乱れをチェックして

執務室を二人一緒に出る。


いつもの日常、いつもの仕事、いつものバトル…

だけど、全部が全く同じじゃない。少しずつそれぞれが違っていて

同じものなんて一つもないんだ。

トレインに乗ってから、代わり映えのしない窓の外を見ながら

取り留めなくそんな事を考える。



「クダリ、貴方は先程からずっと考え込んでおりますが

何か悩み事、心配事でもお有りですか?私が聞いてもよろしいですか?」



どっぷりと思考の海に沈み込んでいたんだけど

控えめにかけられたノボリの声に現実に引き戻される。

ボクを見る瞳がなんだか不安げに揺らめいてるから、心配させちゃった?



「ゴメン、なんだかさっきの部屋移動の話から色々と考えてた。

当たり前だと思っていた事が実は当たり前じゃない。

ちょっとしたきっかけであっという間に変わってしまうんだなーって。」



今迄考えていた事をノボリに話せば、なんだか納得したみたいに頷いた

そうして、ボクと同じ様に窓の外を眺めてからクスクスと笑いだした。



「今のこの状況を、少し前の私達は想像もしていなかったでしょうねぇ…

それも達との出会いを経て、様々な出来事を経験したからなのですが

この先も同じ様に続くという保障はどこにもございません。ですが…」



一度言葉を切ってからボクを見たノボリの顔はいつもと違った。

この顔は前にも見た事がある。

エキシビジョンマッチで各地方のチャンピオンとバトルをした時の

挑戦される側じゃなく、挑戦する側になった時の顔だ。



「ですがその変化を恐れるか、受け入れるか、はたまた楽しむのか

それは人それぞれですが、私は受け入れたいと思っております。

手を取り合って共に進みたい…未来は創るものでしょう?」



未来は創るもの…

うん、そうだねボク達は仕事では決められたレールの上にいるけど

それ以外はレールを自分で作って先に進んでるんだもん

終着駅はどこになるのか、それは今は全くわかんないけど

それも楽しみってか、醍醐味?そう考えれば楽しくなってきた。



「あの三人相手の創る未来なんてボク達には想像もできないけど

どーせなら、一緒に乗っちゃった方が楽しそうだよね!

ノボリ、ボクもこれから本気で動かせてもらう。

遠慮とかそーいう事しても意味がないってわかったかもしんない。」



「えぇ、あの三人にその様な気を使っても無駄でございます。

人生、先が見えなくて当然なのでございますから、楽しみましょう。」



今のノボリの顔はお客様には見せらんない。悪タイプも逃げ出しそうな悪人面!

冷静沈着とかクールとか言われてるけど、ノボリはホントは超アグレッシブ!

攻撃的になったノボリはボクでも止めらんない。

ってか、止めるつもりもないし?ボクもノっちゃうし??


お互いにおんなじ顔して笑い合ってたら、

インカムがチャレンジャーの来訪を告げる。

まずはバトルで楽しむ!

ボク達の本気、すっごい本気は誰にも止めらんない!

バトルでも、それ以外でもボク達は全速前進でひた走るんだ。