指差確認準備中!偏
選択の自由とあれやこれ
シングルトレインを降りて遅めの昼食を摂りに食堂へ入れば
そこにはトレイを持って席を探していたがおりました。
「が一人とは珍しいですね、ご一緒してもよろしいですか?」
「仕事が長引いて、ちょっと時間がずれちゃったんですよー。
一人で食べるご飯は美味しくないので大歓迎でっす!んで白ボスは?」
「クダリはスーパーダブルの待機中でございます。
私はスーパーが終わった後でこちらに寄らせていただきました。」
混雑する時間から外れたため、人影のまばらな状態で隣同士に座り
私達は一緒に食事をしながら仕事の話やのポケモン達の育成経過
そんな事を色々と話ながら楽しい食事の時間を過ごします。
いつも美味しそうに食べるので、見ていても気持ちが良いですね。
「そういえば、エキシビジョンマッチの時のタマゴはどうなりました?
ずっと気になってたんですけど、聞いても良いのか迷ってたんですよね…」
あぁ、やはり貴女も孵化は難しいと考えていたのですね。
実際、あの状況ではそう考えても仕方が無いでしょう。
「実は孵化しないのです。タマゴからの生体反応はポケモンセンターにて
時折チェックして確認しているのですが…。」
「え?だって普通ならとっくに孵化しててもおかしくないですよね?
確かに状態が状態だったから、無理だったらとっくに駄目になってるのに。」
驚かれても当然でしょう、私も何度となく孵化作業をしておりますが
この様なケースは初めてでございます。
タマゴ自体の生命力が弱い等、問題がある場合はすぐにわかるのですが
あのタマゴは間違いなく中でしっかりと生きているのです。
ですがどうしても孵化しない…これはクダリの方も同じだったりします。
何か別な問題があるのかもしれませんが、私達には見当すらつきません。
その様子を説明すると、はフォークの動きを止めて考え込みました。
「黒ボス、一度私にそのタマゴを見せてもらっても良いですか?」
「えぇ、是非一度見ての意見を聞かせてくださいまし。
シャンデラがずっとタマゴを温めているのでございますが
疲労の色が強く見えているので、他の子と交代させようとしたら
嫌がってずっとつきっきりで温めているのも心配なのです。」
食事が終わったその足で、二人で執務室に入れば丁度クダリが
バトルを終えて戻ってきておりました。
デスクでなにやら書類を作っていたがどうしたんだ?と
私達に聞いてきましたので、例のホドモエでのタマゴの話をすれば
クダリは自分のも是非見てもらいたいと言ったので
二人でタマゴを抱えたシャンデラを出しました。
「確かに中でしっかり生きてるっぽいけど、シャンデラたんの疲れ方?
それがちょっと異常だと思うんですよねー。
うーん、ちょっと力技やっちまいましょうかね。」
それぞれのシャンデラを撫でてから、はボールホルダーから
ルカリオ、ネイティ、リグレーを出しましました。
「ルカリオ、タマゴの中の子の様子を波動で確認して。
んで、ネイティは中の子が何を考えてるのか見てくれるかな?
リグレーはネイティの受け取った気持ちを私達にテレパシーで
伝えて欲しいんだけど、できるかな?」
それぞれのポケモンに指示を出せば元気な返事が聞かれます。
その様な技の使い方があるなど、私には考えた事もございませんでした。
確かにある意味力技と言ってもおかしくないでしょう。
ルカリオがタマゴに手をかざして、暫くしてこちらを見て頷きます。
これは中の子に特に問題なく順調に育っているという事でしょうか?
次にネイティがタマゴに触れて目を閉じます。
「うわわネイティ大丈夫?!」
しばらくするとネイティの目から大粒の涙が後から後から溢れ零れ落ち
それを見たが慌ててネイティをタマゴから話そうとした時
私達の体を淡い光が包んだ後に凄まじいまでの感情がなだれ込んで来ました。
「うわ、これって何?!痛い、胸が苦しくて息が詰まりそう!」
クダリが胸に手を当てて反対の手でデスクに手をつき身体を支えます。
そうしなくては立っていられない程の状態なのです。
それは絶望、恐怖…とでも言えばよろしいのでしょうか?
目を閉じれば暗闇に自分の姿が浮かび上がり、周囲になにやら声が聞こえます
ですがその声に助けを求めようとしても声も出せず、やがてその声も遠くなり
恐ろしいまでの静寂が私を包み込み、孤独の恐怖が全身を覆います。
そして最後に残った感情は…死を望むものそれ以外何もございません。
「これは…このタマゴの中の子の感情でございましょうか?」
「多分そうだと思うよ。このタマゴは恐らく親が温めるのを放棄した。
そしてそのまま置き去りになっていたんだろうね。
自然界ではよくある事だよ。だからこの子達も孵化を望んでいない。」
「そんなの駄目!まだ孵化してないけどこの子は生きてる。
自分から死んじゃいたいとか思っちゃ絶対に駄目!!」
「本当にそうでしょうか?私はこの子にも選ぶ権利があると思います。」
「?!」
目尻に浮かんだ涙を乱暴に拭いながらクダリはの言葉に驚いています。
未だに泣き続けるネイティをタマゴから引き離し、ルカリオ、リグレーと共に
労いの言葉をかけて抱きしめた後にボールに戻してから、タマゴを抱えたままの
シャンデラをそっと撫でながらはタマゴを見つめ
「親に捨てられた…それは生まれる事を望まれなかったんです。
親は子供を選べますけど、子供はそれが出来ない。
それなら生きるか死ぬか位はこの子の自由にさせるべきでしょう。」
「待って!はいっつも辛い事があっても生きていれば良い事がある
そうやって言ってたよね?なのにどーしてこの子には言ってあげないの?」
「望まれずに生まれてたって事を背負い続けて生きるのは辛いです。
それは普段忘れていても、ちょっとしたきっかけで思い出して苦しみます。
自分の存在理由を最初から否定されてるんです、それは辛いですよ?
そんな思いをするのがわかってても生まれておいでなんて…」
私には言えません。と、クダリに両方を掴まれた状態で視線を逸らしながら
呟いたの目から涙が一粒こぼれ落ちました。
ですがそれが正しい選択なのでしょうか?私にはそうは思えません。
あぁ、どうすれば…どの様に言えばわかっていただけるのでしょうか?
こういう時、自分の口下手さにほとほと嫌気がさしてしまいます。
タマゴの中の子は既に生まれる事を放棄している様で
本来なら既に生命反応は消えている所を、どうやらシャンデラ達が
自分の生気を分け与えて延命させ、必死に説得している。
がその様な状況判断を私達に説明してくださいました。
だからシャンデラ達が異様に疲労して、それでも温める事をやめない
そして交代する事も拒んでいたのですね。
がシャンデラ達に自分の気?を分け与え疲労回復をしてくださいました。
炎が一瞬大きく揺らめいた後、シャンデラは元気よくタマゴを抱え直して
そのまま目を閉じて再び温めはじめます。貴女逹もこのタマゴを孵化させたい
この子逹に生まれて欲しい、生きて欲しいと望んでいるのですね。
「状況はわかりました。このタマゴの望む様にいたしましょう。」
「ノボリ?!「話はそれで終わりではございませんよ?」…ゴメン。」
クダリが驚き何か言おうとしたのを遮り、私は話を続けます。
「生きていたくないと思って生まれても仕方がない?違います。
親が生まれる事を望まず放置した事実は消えませんが
それをした親はここにはおらず、生きて欲しいと願う私達しかいません。
この子達は違う意味でも生まれ変わるべきです。
そして、私達と共に歩んで欲しい。時を重ね絆を深めていきたい。」
私はタマゴを温めていたシャンデラごと抱きしめました。
何をしようとしたのかわかったのでしょう、クダリも同じ行動をとりました。
「そっか、そうだよね。ボクもノボリとおんなじ気持ち。
ねぇ、過去は変えられっこないけど今は変えられるよね?
それならボクはこの子に生まれてきて欲しいって思う。
だってホントはこの子達に生まれてきて欲しいって思ってるでしょ?」
私とクダリ、二人の視線を同時に受けたは戸惑っている様です。
クダリの視線が私に移り、私はそれに頷く事で答えます。
「いらないなんて思わない、大事だなって思う。大切にしたいって思う。
ボクは君を大好きだよ?だから大丈夫、オッケー!出ておいで?」
「大切なのは今とこれからでございます。過去を乗り越えてくださいまし。
あなたの恐怖、寂しさ、苦しみ全てを私が受け止めます。共に歩みましょう。」
私とクダリはそれぞれに腕に力を込め、目を閉じてひたすらに祈ります。
この想いがどうか届きますように、受け止めていただけますように…!
「君が大好き!」
「あなたを…愛しています。」
瞬間乾いた音と溢れんばかりの光が私達を覆い、次の瞬間腕の中に
タマゴとは全く違う重みがかかり私もクダリも尻餅をついてしまいました。
「痛っう…って、産まれた!ドッコラー、これからよろしくね!!」
「ダンゴロ…よく頑張りましたね。これからはずっと一緒でございます!」
クダリのドッコラー、私のダンゴロはそのつぶらな瞳に大粒の涙を貯めて
それでも懸命に笑いながら私達を抱きしめてくれました。
あの絶望の感情をずっと抱いていたにも関わらず、こうして私達の思いや
願いを受け止め、信じていただけた!応えていただけた!!
「あの状況を大逆転ってか?ポケモン世界は何でも有りっていっても
こりゃ奇跡というべきじゃねぇか?」
「でもさ…それでもこういう事なら大歓迎だよ。
ってか、これはポケモン世界だからって事じゃないと思う。
両ボスの強い気持ちが届いたからこその奇跡なんじゃないかな?」
温めるべき存在のなくなり、私達のそばにいたシャンデラ達を
それぞれにお疲れ様といって撫でながら、二人は言いましたが
それは違うと思います。
きっとこの子達の本心は生まれてきたいと願っていたのだと
私はそう思いたい、信じたい。
だからこそ、ちょっとしたきっかけを待っていたのではないでしょうか?
それがシャンデラにはわかっていたから、温める事をやめなかったのでは?
ポケモン達は疑う事をしません。受けた感情を素直に受け止めます。
愛には愛できちんと私達に応えてくれるのです。
その姿に私はいつも胸が震えます。彼等を愛さずにはおれません
信じてくれた彼等の思いをしっかりと受け止めて応えなければ!
「「これからよろしく(ね!)(お願いいたします!)」」