三章・指差確認準備中!編
日常業務とあれやこれ
※注意※
現地での話の為ボス達の会話も視点語りも普段の表記とは異なっております。
父さんが私達に遺した家に関しての手続きを行う傍ら
私はジェイクに連絡を取り、あの家を共同名義で所有する事を報告すれば
彼は何も言わず、ただ笑って頷いておりました。
『親子揃って迷惑をかけましたね。』
『そんな事を言う必要はない。私は自分のやりたい事をやっただけだ。
むしろ君達からすればお節介だったのではないかね?』
『…いいえ、むしろゆっくりと今までの事を振り返る事ができました。
それでジェイク、父の手紙にありましたが
お前は6Vのゾロアを受け取ったのでございますか?』
『あぁ、その件については彼女が亡くなってしまったからね。』
この父の友人に私は何かを返したいと思っていたので
丁度良い機会でございますね。父が守れなかった約束を息子の私が…
話の流れ的に、おかしな事でもないでしょう。
『では、私が父に代わってその約束を果たさせていただきます。
親しき仲にも礼儀有り、私は借りっぱなしと言うのは好きではありません。
そちらに行く事があれば、その時にお持ち致します。拒否権はありません。』
一瞬驚いたように目を見開いた元部下は、その後父と一緒に写っていた
写真同様のシニカルな笑みを浮かべました。
『…彼だけじゃなく息子の君までそんな事を言うのだから
本当によく似た親子だね、ふふっ…好きにして構わないよ。』
ライブキャスターの通信を切れば、インカムから丁度シングルトレインへの
待機要請がきましたのでそのまま立ち上がり、執務室を後にします。
ホームに向かう途中に、が先日彼女と言い合っていた男と並んで
人事課長となにやら話をしておりました。
彼らに見えない場所に移動し、話の内容を聞いてみれば
どうやら保全課の作業工程に関連する事なのでしょう。
あの男が色々と手順を課長に説明して、その補足をがしているようです。
暫く話し込んで、作業の段取りにお互いが納得できたのでしょう。
人事課長がその場を離れた後で、が笑いながら男の背中を叩きました。
『ほらね!ちゃんと真剣に話をすればこうやって返してくれるでしょう?
どうせだとか、そんな風に考えたら駄目なんだよ。
ってか、最初は信用されなくて当たり前。その程度に考えてれば良いよ。』
『…だなぁ、おれはこんなナリだろ?だから仕方ねぇって思ってたけどよぅ…
アンタの言う通り、誠意ってのはわかってくれる人には通じるもんなんだな。
考えてみりゃ、ここの連中はおれの過去とか気にしてねぇしなぁ!』
少々照れた様にヘルメットの前を押さえる男に、は書類を渡して
『過去なんて変えられっこないじゃん。大事なのはこれからでしょ?
つー事で、この書類をさっきの話を元にやりなおそうね?
いやー、書類作りが得意な人がいて良かったよ!
ゲンナイ課長ってさ、そーいうのが壊滅的にダメダメじゃん?』
『うはは!違いねぇや!!おれは書類を作るのは好きだから
そういう部分でフォローに回れば、少しはゲンナイボスの負担も減るかなぁ。』
『うんうん!それ、少しじゃなくて凄く減ると思うよ!』
『そっか…、それじゃあこの書類をこれからちょっと作ってくるぜ。
アンタはこれから他の奴の所に行くんだろう?手間かけさせちまったな…』
あの凄まじい言い争いをしたもの同士とは考えられませんね。
それ程に二人は親しげで、お互いの間にも信頼関係が存在するのがわかります。
この短期間の間に、彼等を掌握したの手腕には驚かされますね。
『…』
『うおっ?!って、凄くびっくりしちゃったじゃないですか!
インゴボスってばそんな所で何やってるんですか?』
『話し声が聞こえたので…邪魔にならないように聞かせていただいておりました。
作業効率の方も、この分ですとかなり成果が出てる様ですね。』
いきなり声をかけて驚かせてしまった様ですが…
その驚き方は余りにも色気が無いというか、らしいというか…
『部下逹については、割と順調ですねー。
後はゲンナイ課長にもうちょっと色々と自覚しーの、動きーのして欲しいです。』
『彼は作業面では大変優秀だと評価しておりますが?』
『仕事の、個人の評価はそれでも良いですけどねー。
頭はって人使っているのなら、色々と改善すべき点はまだまだあります。
でも、こればっかりは私が教えられる事じゃないんだよなぁ…』
仕事に関しては自信に溢れた行動しか見た事の無い彼女のこの様な表情は
初めて拝見しますね、それ程頭を悩ませてる…と、いう事でしょうか。
『出向期間はまだあります、お前…失礼、貴女なら成果を出せる
私もエメットもそう評価しておりますので頑張りなさい。』
『わかってますよー。それとですね、私の事はお前で良いですよ?
そっちの方がインゴボスらしいし、今迄ちょっと寂しかったりしてたし?』
寂しいと言われて、その意味が理解できずに首を傾げていれば
ちょっと照れた様な表情で私から視線を外しました。
『だって、とかとかにはお前呼ばわりじゃないですか…
同じ友人なのに私だけ…なんだか他人行儀っぽくて嫌だったんです。』
なんともその様な事を気にしていたとは可愛らしいですね。
表情が緩むのを自制できず、口角が上がるのがわかります。
『そう言う風に受け止められてるとは思いませんでした。
本来なら女性に対してその様な物言いをするのはどうかと思いますが
わかりました…特別に女性ではお前だけに使う事にしましょう。』
『うー…なんだかからかわれてるっぽい気がするけど、大歓迎でっす!
うわわ、次の現場に行く時間が過ぎてるので私はこれで!失礼しまっす!!』
そう言って、ライブキャスターを見てから慌てて一礼すると
は急ぎ足で次の現場に向かいました。
私もシングルのホームに到着しトレインに乗り込むと
程なくして車両がゆっくりと動き始めます。
車掌用のスペースに備え付けられたモニターにはチャレンジャーの姿。
あの様なお粗末な内容ではここまではたどり着けないでしょう。
車窓に映る自分の顔を見れば、相変わらずの無表情な顔。
いつも通りの私は、いつも通りの日常と業務の日々にいつも通りに戻るだけ。
今迄なら、それで十分と満足していたはずなのに
それらの日々に物足りなさを感じるのは、私の心境の変化の為でしょうか…
ふと思い浮かんだのはの姿…安寧を求めているにも関わらず
誰が見ても一番波乱万丈な生き方をしているのではないでしょうか?
は自分達の関与する意外であれば、動いて構わないと言っていました。
彼女には多大な借りがある事ですし、やられっぱなしはもってのほか。
ならば、私が何をすべきかなどは決まったも同じですね
問題はそれを本人が望んでいない…ですが、そんなのは瑣末な問題です。
『インゴ、凄く機嫌が良さそうだけど何かあった?』
『あったと言えばあったのでしょうね。丁度良い、お前も協力しなさい。』
チャレンジャーが途中下車し、執務室に戻れば
ダブルトレインに乗車していたエメットも戻っておりました。
『…ねぇ…それって、本気なの?ボクはインゴが良いなら別に構わないけどさ…』
『冗談でして良い事と悪い事の区別もわからないのですか、お前は…
もっとも動いてすぐにどうこうなる問題でもありません。
ですが、継続は力なりともいいますでしょう?そういう積み重ねが必要では?』
私の考えを話すと、最初は戸惑いを見せておりました
確かに、お前が驚くのも無理はないと思います。私も同感ですから。
『そっか、了解!だけどやり方をちゃんと考えないと逆効果?
そんな感じになりそうだからね、わかってるとは思うけど気をつけてよね。』
『わかりきった事を言うのは時間と労力の無駄です。』
『…ホント、これさえ無くなってくれればボクの苦労も半減するのに!
でも、途中で協力できなくなるかもしれないからね。
ボクだってやられっぱなしは嫌だし、借りも返したいからね。』
『宜しい、受けて立ちましょう。お前に負ける事はありません。』
『はいはい、だけど油断してると他から足元すくわれるんだからね。
まぁ、お互いに?頑張れば良いと思うよ。』
私に差し出した拳に自分の拳を合わせれば、それだけで嬉しそうな顔をする
お前はそんなキャラクターではないでしょう、勘弁して欲しいものです。
さぁ、これから先どの様になるのか?
目指すは勝利なのは当然ですが、この問題に勝ち負けはあってない様なもの
目的地はどうなるのか不明とは業務であれば許されませんが
この際目をつぶるといたしましょうか。