三章・指差確認準備中!編
過去の情景とあれやこれ
※注意※
現地での話の為ボス達の会話も視点語りも普段の表記とは異なっております。
執務室で書類の決済を行ってる時に、部下より本部から来客と連絡を受け
私と、同じ様に書類の振り分けを行っていたエメットは顔を見合わせました。
本部から誰かが来るのは大概が不祥事が起きた場合で
私達がサブウェイボスに就任してからはその様な事は皆無なのに…
他に私達の知らぬ問題でもあったのでしょうか?
来客を応接スペースに通した後、部下が退室したのを確認してから
私とエメットはスペースに入り、向かいのソファーに座りました。
彼とは初対面ではありません。以前一度お会いしておりました。
『えっと、ジェイクの息子さん…だったよね?
あのさ、本部から来たって事はここで何か問題が起きてるとか?』
『えぇ、息子のジョシュアです。
本部から来た理由は新部署設立に関しての報告を受ける事
もっともそれは建前で、本当の理由はこちらの方…
父から君達に渡して欲しいと言われた物を届けに来たんです。』
あ!とエメットが声を上げたので、報告を失念していたのでしょう。
私が睨んでいるのに気づくとゴメンと言っておりますが許すとでも?
本部からの書類の他に、ジョシュアはカバンからもう一つ封筒を取り出すと
テーブルの上に置きました。
表書きも何もされていないそれは、随分と古い物で紙が変色しております。
『中身は残念ながら僕も知りません。
ただ、父はこの封筒をとても大切に昔から持っていました。
ユノーヴァからイッシュへ母と一緒に行く際、僕に預けた時も
いつか僕に頼む日が来ると信じているから、それまで預かれと…
先日連絡を受け、渡す相手を聞いて驚きましたけど納得もしました。』
『納得…とは?』
エメットが差し出した紅茶を受け取り、一口飲んだ後にジョシュアが笑います
その顔はやはり親子ですね、ジェイクとそっくりです。
『実際にそうはならなかったのだから意味が無い話だが
もしそうなっていたら…君達は僕を兄と呼んでいただろうね。』
『は?』
『え?ちょっと待ってよ、それってどういう意味?!』
『どういう意味もない、そのままの意味だよ。
君達の境遇は大まかには聞いてるよ、父は君達を引き取りたいと
イッシュに君達が行った後、引き取られた先に申し出たそうだ。
結局は色々な問題があって実現しなかったらしいけれどね…』
先日話した時はその様な事を一切言ってはおりませんでした。
彼はそれ程までに父を、そして私達の事を案じてくれていたとは……
『さぁ、余計なおしゃべりはこれで終わりです。僕も暇じゃないんでね。
最後に、父からの伝言を…
この書類は帰宅後に見る事、ありのままを受け入れなさい…だそうです。』
エメットから新部署設立に関する書類一式を受け取った後に
ジョシュアは立ち上がり退室の言葉を私達に述べました。
お互いに握手をした後、彼は私達をゆっくりと見て微笑みます。
『ふふっ、もし…と言う仮定の言葉を使うのは好きじゃないけど
僕達が兄弟として育っていたらどうなっていたのだろうね?
これを渡しておくよ、兄になりそこなった僕だけど君達が気に入った。
何かあれば父同様に連絡をくれれば良い、ではね。』
そう言って私の手にライブキャスターのでしょうか?
アドレスの書かれたメモを置いてジョシュアは部屋を出て行きました。
『あの他人に反論をさせない様な雰囲気はジェイクそっくりだね!
ねぇ、この封筒どうする?今開けて見ちゃう?』
『ジェイクが家に帰ってから見ろと言うのですから
そうした方が良い内容が書かれていると考えたほうが良いでしょうね。
エメット、今日は残業は許可しません。にも伝えなさい。』
受け取ったアドレスをライブキャスターに入力してから、そのメモを渡せば
彼も当たり前の様に自分のライブキャスターに入力します。
短時間の面会でしたが、その内容はかなり衝撃的なものでございましたね。
封筒の中身が非常に気になりますが、今は業務を優先させましょう。
『…んで?どーしてそんな大事っぽい封筒を開けずに私に寄越すんです?』
帰宅して食事も終わり、現在リビングのソファーに座ってるは
私達から受け取った封筒を見て苦笑いをしておりました。
ジョシュアの話した内容も既に報告済なので、どう判断するのでしょうね。
『んー、なんとなく?』
『正直中身が何か、私達はそれを見ても良いのか、判断がつきませんので。』
『そんな重大な事を私に判断しろとか勘弁して下さいよー!
でも総務部長さんの息子さんかー、私もお会いしてみたかったなー。
性格とかが部長さん似ぽいんですよね?
そんな人がお兄さんだったら、違う意味でお二人がグレてた様な気がする…』
『それ、ジョシュアにもボク達にも失礼だってわかって言ってる?
ってば、最近ボク達に凄く辛辣だよね?』
『くだらない御託は結構です。、早く開けなさい。』
『はいはーい、んじゃ開けますよ…っと、これは?どこかの鍵ですかね?』
ペーパーナイフを使って封筒を開けた後に、一緒に同封されていた鍵を見つけ
それを私に手渡しました。これは…どこかの部屋の鍵でしょうか?
私とエメットはそれの意味を読み取る事が出来ず顔を見合わせてましたが
は視線は中に入っていた手紙…でしょうかに釘付けでした。
『これって…あぁ、そっか…えっとインゴさん、ここの住所わかります?』
封筒の切り口を改めて見た後で、なんだか一人で納得してから
同封されていたメモを私達に見せました。
そこには私が見た事のない筆跡で、近くの住所が書かれてます。
『ここから…そうですね歩いて10分もかからない場所でしょうか。』
『あー、確かにそうだね。ねぇ、この鍵ってその住所のもの?』
『みたいですよ?んじゃちょっとこれから行きましょう。
善は急げ!って言いますからね、この手紙はその時にお見せします。』
ボールホルダーをセットして、ハンガーからコートを取って着込むと
はそのまま玄関へ向かいました。
慌てて私達も準備をして向かいます。急ぐべき…彼女はそう言いました。
その手紙はそれ程重大な事が書かれているのでしょうか?
エメットの先導で目的地へ私達は足を運びます。
外はようやく日が暮れ始めたばかりなので、治安的にも問題は無いでしょう。
メイン通りから1本入ったその場所は、閑静な住宅街としても有名で
エメットはその中の一軒の家の玄関先で歩みを止めました。
『インゴさん、さっきの鍵を…住所に間違いがなければ開くはずです。』
が封筒を抱えたまま私を促しましたので、ポケットから鍵を取り出し
鍵口に差し込めば、簡単に開錠する音がしました。
そのままドアノブを回して中に入りますが、暗くてよく見えませんね。
『えーっとブレーカーは…っと、あった!
ちょっと待っててくださいねー、って届かないし!!』
『あー、ボクがやるよ。これをこうすれば良いんだよね?』
部屋をウロウロしていたが電気のブレーカーを見つけ
エメットがそれを上げて、電気を開通させます。私が部屋のスイッチを入れると
目の前には不思議な光景が広がっておりました。
一体どの位の間無人だったのでしょう?そこは埃が充満してはおりましたが
リビングは綺麗に飾り付けられていたのが伺えます。
そして、壁には自筆で書かれた[ようこそ、私の子供逹!!]の文字が…
ここは、これはどういう場所なのでしょうか?
隣の弟を見れば私と同じ感想なのでしょう、困惑してるのが手に取れます。
『えっと、まずはこっちの手紙を読んでから、この手紙を読んでください。』
から数枚の便箋を受け取ります。
最初に読めといわれたものは紙もまだ新しく、書かれている文字も
インクが薄れている事無く、はっきりと読めます。
『この筆跡は…』
『多分ジェイクの書いたものかな?ほら、このAの書き方が特徴的でしょ?』
─── インゴボスとエメットボスへ
君達がこれを読んでいるという事は、父親とのわだかまりを解決したい
そう考えて私になんらかのアクションを起こしたからだと信じている。
ここは生まれたばかりの君達と君達の両親が暮らすはずだった家だ。
まだ見ぬ君達の為、双子を出産する最愛の妻の為にと用意されたもので
なぜ私が持っていたかは、同封した君達の父親が私に宛てた手紙を見て欲しい
君達が父親の想いを、全てを見てありのままに受け止める事を祈るよ。
少しでも君達の心が安らかになる事を、彼の代わりに願わせてもらう。
追伸:この家の権利は当初の、君達の父親のままになっている。
売るのも相続するのも君達の自由だが、彼の友人として言わせてもらえるなら
どうか、そのまま受け取ってくれる事を願う。
君達の父親の友人:ジェイク ───
ジェイクからの手紙を読み終えて、私達は改めて部屋を見ました。
リビングにはソファーの他に子供用の小さな椅子が二つ並んでおり
背もたれには色あせてはおりますが、大きなリボンがかけられております。
二つの収納ボックスには全く同じ玩具が、それぞれに入れられております。
そして、それらにも椅子と同じ様に大きなリボンが…
父さん、貴方はどんな気持ちでこれを用意したのですか?
私達はこの部屋を見たまま、貴方の気持ちを解釈しても良いのでしょうか?
『インゴ、次の…次の手紙を読んでみようよ。
全てはそれからだよ。うん、それから考えても遅くはないよ。』
ジェイクの書いた手紙よりも明らかに古いと思われる便箋を
私は開いて見る勇気がありません。
これがジェイクの書いた手紙にある、彼に宛てた父さんの手紙なのでしょう。
私達は見ても良いのでしょうか?その権利があるのでしょうか?
手紙を持っていない手を下におろし、私は目を閉じました。
私はこの先を見るのが怖い…父さんの気持ちを知るのが怖い。
『インゴさん…』
『インゴ…』
おろした手に触れる滑らかな感触に目を開ければ、が私の手を取り
柔らかな微笑みを浮かべて頷いております。
その隣にはエメットが、私を気遣う様にしてこちらを見ておりました。
そうでしたね、こんな場所で足踏みなどしておられません。
私は前に進みたいのです。過去に向き合い乗り越える…そう決めたのです。
『二人共、心配をかけましたね。私はもう大丈夫です。
それでは、次の手紙…父さんからの手紙を読みましょう。よろしいですね?』
私の手に添えられたの手を取り、その甲に唇を落としてから
大きく息を吐いて、古い便箋を開きました。
この先に何が書かれているかはわかりませんが、私は全てを受け止めましょう
それが貴方を知る事に繋がるんですよね?父さん。