三章・指差確認準備中!編 -所見と見解とあれやこれ-

三章・指差確認準備中!編

所見と見解とあれやこれ

※注意※
 現地での話の為ボス達の会話も視点語りも普段の表記とは異なっております。



朝からゴタゴタしたおかげで、仕事中でも色々と考え込んじまう

勿論、テンキーを打つスピードを落とすなんて真似はしねぇけどな。


生真面目な奴程、精神と身体がアンバランスになりやすい

インゴも、もれなく生真面目な部類に入るんだと思う。

冷徹非情な地下の魔王…それがあいつのここでの呼ばれ方だと知って

俺達は首を傾げた。お節介でツンデレの間違いだろうよと思ったら

同じ黒の従兄弟の鉄面皮よろしく、いや、それ以上に鉄仮面で

完全にそういう素の部分をガードしてた。鉄壁の威力半端ねぇってか?


一度フラッシュバックを起こしちまうと、連鎖状態で続く事がよくある。

あんな状態を誰かに見られるのは許せねぇ…そう思って悪循環になるだろう。

一番良いのは自力でも他力でもなんでも良いから乗り越える事

口じゃあ簡単に言えるんだが、実際どうかと言われちまうと難しいだろうよ。


目の前で父親に死なれたってのはトラウマにもなるだろうし

フラッシュバック現象が起きても仕方がねぇだろう。

生真面目すぎるからこそ、色々と割り切れねぇでウダウダ悩むってか?

困った奴だと、俺は思わず溜息をついちまった。


ランチタイムになって、それぞれに職員が食事休憩に入ったんで

俺もも弁当を持って席を立つ。

執務室に入ってから、応接スペースに移動して飯を食ってるんだが

インゴの落ち着きが無い。今朝、昼飯時に話があるって言ったから

何を言われるのか不安になってるのかもしれねぇな。



『インゴ、この鍵を返しておくぞ。

使わなかったから、とんだ散財になっちまったな。』



今は休憩時間だってだけじゃなく、他の職員がいない時には

普段の口調に戻して話させてもらってる。

このめんどくせぇ脳内翻訳作業も今日で終わりだ。



『この程度でどうこうなるような資産状況ではございません。

それより、この鍵はお前に渡した…譲渡したものですので返却は不要です。

、貴女もです。その鍵は好きにして構いません。』



横目でエメットを見れば、自分も欲しいって顔してやがるし。

そんなにわかりやすくて、よくダブルのサブウェイボスが務まってるな



『インゴ、本当にこの鍵は自由にして良いんだな?』



『同じ言葉を口にするつもりはございません。』



しっかりと言質はとらせてもらったからな。後で文句を言うなよ?


飯を食い終わって、それぞれにタバコを吸いながらのんびり休憩を満喫する。

いきなり確信をつくやり方は好きじゃねぇが

余計な言葉を選んで変に解釈されてもたまらねぇからな。



『インゴ、ちょっと聞きてぇんだが、今朝のあの症状はよく起こすのか?』



『…いえ、今日が初めてです。…あの症状は今後も起きるのですか?

バトル中、職務中に起きては困ります。解決方法は無いのですか?』



『それはてめぇ次第なんだよ。あの症状は強烈な不安感が引き金になる。

その不安は個人で違うんだ、てめぇには心当たりがあるんだろう?

それでだ、どうしたいんだ?乗り越えてぇのか?薬で誤魔化して

症状を起こさない様にしてぇのか?選択肢はどっちかだ。』



『私は薬に頼りたくありません。その場合はどうすれば良いのですか?』



こいつの性格を考えれば十中八九そう言うと思ったぜ

食後のコーヒーを飲んで、もらったばかりの鍵をもてあそびながら



『ドクターとして言わせてもらうなら、自分で乗り越えたいと思うなら

同じ状況を無理にでも作って、慣れろ。

自分が一番恐れている事はもう起こらないんだと、頭と身体に叩き込め。

今日の症状は誘引はエメットが泊まった事だが、俺達と生活した事で

不安の種を蒔いちまったのかもしれねぇ…そこでだ、エメット!』



インゴからもらった鍵をエメットに向かって放り投げる。

受け取った本人も、それを見ていたインゴも同じツラで驚いていた。



、それはどういうつもりなのですか?』



『ちょっと嬉しいかも…いやいや意味はわかるよ?わかるけどさー』



『俺は自由にして良いかって確認したんだからな、取り消させねぇぞ。

エメット喜んでるところ悪いが、それは貸すだけだ。

いわゆる荒療治ってヤツだよ。期限はとりあえずが出向期間中

その後は経過を見てからまた考えれば良いだろう。』



『ですが、私は…』



『あんな醜態晒したくねぇってか?そんなくだらねぇプライドは捨てろ。

それにこいつらは今朝お前の状態を見てるだろうが、今更だ。』



あの状況になったらどうしよう、そんな不安が無いわけねぇからな。

誘引はエメットだが、克服する為のキーマンも同じだと思う。

こいつは独り取り残されるのを恐れてるんだろうよ。


ソファーに深く腰掛けながら、隣を盗み見れば

が二人の様子を心配そうに見ている。

取り残される恐怖云々ってのは、こいつも未だに克服できてねぇ

あわよくば、ふたり揃ってなにか良い方に向かえば良いんだがな。


時計を見れば、昼休憩も終わる頃だから俺達はそのまま仕事に戻る。

これ以上俺が関与するモンでもねぇし、後は二人で考えろってんだ。


それから終業時間までは、事務仕事に関する補足をしながら

今までやった事をまとめたメモと、新しくなった書類に関する

表記の見本やマニュアルを作成したものの説明に追われた。


そして就業時間が終わった。つまりは俺のユノーヴァでの出向期間も終わった。



『さて、俺は今日で終わりです。出向期間で必要な事は全て終えました。

何か困った事があったら相談には乗るけど、答えは出さないからね。

ここは皆さんの職場なんだ、皆で考えてこれからも頑張って欲しいな。』



さん、色々とありがとうございました。』



さん、お疲れっした!アニキにもよろしく言っといて下さい。』



『了解したよ。皆は手に職を持つ職人なんだから

部署としては出来たてでもやる事は変わらないからね、頑張って。』



職員の前で別れの挨拶を済ませて、荷物を持ってボス逹の執務室へ向かう。

は仕事中だから、帰ってからチャットで話せば良いだろうしな。

最後にインゴ達の所に顔を出せば、丁度二人共揃っていた。



『時間なんで俺はこれで帰らせてもらうよ。

俺の分の業務報告書を渡すけど、問題があるなら向こうで聞くからね。』



俺から書類を受け取って内容を確認したたエメットは笑いながら

その書類をインゴに渡した。



『問題って言うけどさ、何も無い様にならしてるでしょ?』



『この書類に関して言えば、私が指摘する様なものはありません。

ですがこちらの保全管理課に何かがあった場合は

再度出向を依頼する可能性もあると頭に入れておきなさい。』



二人共すっかり普段の調子を取り戻したみてぇだな。

まぁあの状態を職場に持ち込む様な真似は、こいつらならしないだろうよ。



『それじゃあ俺はイッシュに戻るけど、あっちのボス達に伝言があるかい?

あるんだったら、伝えてあげるよ。』



『アレ等に言う言葉など私にはございませんね。』



『んー、ボクはあるかな?えっとね、頑張るから!って言ってくれる?

それだけで、あの二人には通じると思うから。』



なんだそれは?と思ったが、別に俺には関係ねぇだろうから聞かねぇよ。

色々聞くと面倒事に巻き込まれるってのは、経験上嫌って程あるんでな。



『了解、二人に言っておくけど

のミッションを本人に聞こうとするのは無しだからね。

俺達から情報を欲しいんだろうけど、俺もも黙秘させてもらうよ。』



二人に釘を刺せば案の定図星みてぇな顔をしやがった。



『てめぇ等と向こうの二人がなんだが動き回ってるなんざバレバレだ。

それについちゃあ、俺達からは今の段階じゃあ何も言えねぇ。

焦るな、時期を待ちやがれ。その時がきたらちゃんと話してやる。』



『お前逹に関わらなければ好きにして構わない…そう言う事で良いですね?』



『遅すぎる説明は意味がないからね、一応頭には入れておくよ。

、ボクに鍵を渡したのはもう一つ理由があるでしょ?

君の思惑通りってのが癪だけど、わかってるから任せといて。』



頭の回転の速い奴は説明の手間が省けて楽だな。

俺はそれについては否定も肯定もしねぇぞ。それで理解しやがれ。

そのままボールからゴチルゼルを出して、イッシュへテレポートの指示を出す。

さて、帰ったら何をするかな。手持ちの子逹の毛づくろいを念入りにするか

クマシュンとヒメグマの体毛が伸びてきたからカットしねぇとな。


まぁ、まずは寮に帰って酒を飲むとするか

ユノーヴァじゃそんな暇すら無かったんだ、その位は構わねぇだろうよ。