三章・指差確認準備中!編
秘密と葛藤とあれやこれ
※注意※
現地での話の為ボス達の会話も視点語りも普段の表記とは異なっております。
真っ暗闇の底の底まで、私はやはり落ちてしまったのでしょうか?
何も見えない、感じない…
ですが、誰かの声だけは微かに聞こえます。
誰なのでしょうか?何を言ってるのでしょうか?
『インゴ、インゴ…どれだけ馬鹿にしても良い、冷たくされても構わない。
だからそばにいさせてよ。独りにしないで、ボクをおいていかないで。』
あぁ、この声はエメット…
どうしたのですか?何故それ程泣きそうな声をしているのですか?
行かなくては、行ってしっかりしなさいと言わなくては…
私はどうなってしまったのでしょう、少し前まで寒かった手足が暖かく
あれ程息苦しく胸が苦しかったのに、それも消えてしまっています。
『インゴさん大丈夫ですよ?何も心配する事はありません。
聞こえますか?貴方を不安にするものはここにはありません。
安心してください、私達はどんな貴方も好きですよ。大切ですよ?』
柔らかな声、暖かな声、私は声の主を知っている。
暖かい感触と、耳元ではトクトクと少し早めではあるけれど規則正しい鼓動
私は貴女に抱きしめられているのでしょうか?
暖かい…とてもとても暖かくて、心が満たされる
教えてください…こんな無様な醜態を晒す脆弱で愚かな私でも良いのですか?
傷つくくらいなら、誰かを傷つけた方がずっと良い…そんな傲慢な私でも
貴女は、貴女逹はそれでも好きだと、大切だと言ってくれるのですか?
確かめなくては…その言葉の意味と、私は私の価値を確かめたい
『インゴ?! 良かった、気がついた!大丈夫?苦しくない?
インゴ…この馬鹿野郎っ!君は何を抱えてるの?何が不安なの?!
こんな事してたら、君まであの人と同じになってしまうんだよ!
嫌だよ、そんな事は絶対に嫌だ。絶対にさせないんだからな!!』
目を開ければ、覗き込むように私を見つめる3人の顔が見えました。
私を抱きしめていたのはでしたか…、そして手を握っていたのは
それから…私に今、抱きついてきたエメットだったのですね。
『うぎゃー!エメットさん考えて!!潰れる、潰される!
大男二人も支える様な馬鹿力は私には無いんですよ!巻き添えにすんな!!』
『エメット落ち着きやがれ!てめぇがそんなだと、先に進めねぇだろう!!』
『でも…でもっ!インゴがっ…インゴをっ…。』
が私とエメットの間に挟まれたを引き出しても
エメットは私から離れる事をしませんでした。
『いい年をして泣くのはやめなさい。私はもう平気です。
お前に醜態を晒すなど末代までの恥…情けないですね。』
『まだそんな事言うの?!ねぇ、どうしてこんな風になったか理解してる?!
君が自分の中に何かを溜め込んでるからなんだよ!
それは…それは…あの人と関係があるんでしょう?
インゴ、教えて。あの時ボクはいなかった。
君は自分が見つけた時は死んでいたって言うけどそれは本当なの?
実は生きていて、君に何か言ったんじゃないの?
君が変わった理由、それって父親が…アイツが原因じゃないの?』
『エメット、黙りなさい。』
私の肩を掴み、見つめる瞳は一切の嘘も誤魔化しも許さないと言ってる様で
そのまま直視する事ができません。これでは肯定している様なものなのに…
いけない、この事実をエメットが知ればどうなるのか…私はそれが恐ろしい。
『黙らないよ、君がこんな感じになったのはアイツが死んでからだろう!』
『エメット、父親に向かってその様な言葉を使う事は許しません!』
『構うもんか!アイツが何をした?ボク達を引き取ったのは良いけど
結局はボク達の存在すら完全否定して、自分の世界に入って…
最後までボク達を見る事も、愛する事もしないで勝手に死んだ奴なんか
父親だなんて認められるわけないじゃないか!!』
『違います!父さんは愛していたと…一番は母さんですが、それでも!
その次に私達を愛していたのです!私達は愛されていたのです!!』
私の叫びがリビングいっぱいに広がり、エメットは目を見開いたかと思うと
今にも泣きそうな顔で私を見て微笑みました。
『ほらね、インゴの嘘つき。そっか…やっぱりあの人は生きていたんだ。
ねぇ、そこまでボクは鈍感でも馬鹿でもない、そんなのとっくに気付いてた。』
『あ…』
胸に秘めようと思っていたのに、お前には教えたくなかったのに。
こんな事実を今更知っても、傷つくだけでしかないのに。何故お前は…
『でもさ、だから何?!最期にそんな言葉を聞かされたら
君がこんな風になるに決まってるのに、どこまで自分勝手なのさ!!
勝手に愛して、勝手に死んで…ホント、不器用すぎでしょう…
不器用すぎて、凄くわかりにく過ぎるとか、ホント君と同じだよ!
どうせボクがこれを知ったら悩むとか、苦しむとか思ったんでしょ?
ハッキリ言うよ、別にそれが何?ボクはあの人よりもインゴが大事。』
『エメット、ですが…『ちょっと黙って聞いててよ!』……』
私の言葉を遮るとは良い度胸ですね。
ですが、それに逆らう事が出来ません。お前は今なんと言いました?
『イッシュを離れてユノーヴァに来て、あの人は勝手に壊れるし
ボクはそんな事もあってか食事を全く受け付けなくなっちゃうし?
あの状況を変えたのは君だよ?ボクとあの人の為にって、
ホントは自分だって辛かったはずなのに自分の事は後回しにしてさ
ボク達が人間らしい生活ができたのは、君がいたからなんだよ。』
私を抱きしめる肩が、私に話す言葉が震え、それを誤魔化すかの様に
私から身体を話すと、大げさに肩をすくめてから
『ボクがおかしくならなかったのは、君のおかげなんだ。
君がいるから、ボクもここにいる事が出来た。
ううん、独りになりたくないから、君のそばにいるんだよ。
こんなに弱くて狡い最低な奴なんだよ、ボクは。軽蔑するでしょ?』
私の顔を見つめる瞳から涙がこぼれ落ち、慌ててそれを拭います。
そんな事を私が思うとでも?
『私はお前が思うよりずっと脆弱で愚かな人間です。』
『そんな君でも、どんな君でも構わないよ?
ボクの兄はインゴだけ、ボクの家族はインゴだけ、それで良いんだ。
だからちゃんと見て、ボクの存在をあの人みたいに否定しないでよ。』
『…私は嫌いな人間をそばに留める様な事はしません。
その飾りの頭でもこの位の意味は理解できるでしょう?二度は言いません。』
『インゴ、それって…。ちょっと待って、もっとちゃんと言って!』
『私は無駄口を持ち合わせてはおりません。』
『あーもう!本当に君って失礼だよね!!
でも、うん…良いよそれで。俺様は勘弁だけど、それがインゴだし!』
知られたくない事が露見して、その後を恐れていましたが
一番危惧していた事は回避できたのでしょう。
兄として、一番見られたくない部分を晒しても、十分にその価値がありました。
良かった…エメットまで私の様に全てを拒絶する事がなくて本当に良かった!
『なんだか大団円のハッピーエンド?つーか、私、お腹が空いたんだけど?』
『んだな、時間もアレだしさっさと飯食って行くか。』
キッチンから聞こえた声に我に返れば、とがこちらを見て
ニヤニヤとしておりました。この様な場面を誰かに見られるとは…
私、今ならオーバーヒートを使えそうです…。
『うわわ、ちょっと時間的にマズイでしょ!
あの最中で余裕ぶちかまして、朝食を作ってたに腹が立ったけど
取り消させてもらうよ、さっさと食べて出かけなきゃ!』
『そこは感謝する、だろ?ついでに、昼飯の弁当も作っておいたからな。
イッシュじゃ結構応接スペースで飯食ってたから、こっちでもできるよな?』
『…それは構いませんが、お前は何を考えてるのですか?』
それぞれに席に付き、マナー的にはアウトですが凄い勢いで食事を取り
身支度を整えれば、がニヤリと笑いました。
この顔はやはりなにか企んでるのでしょうね、間違いありません。
『俺は今日イッシュに戻るからな。その件と今の事で少々話がある。
本当なら朝に言おうと思ってたんだが、そんな暇はねぇからな。
食器もシンクに置いておけ、帰ってきたら洗うから…がな。』
『うわーい、相変わらずの人使いの荒さにクラクラしそうだよ!
って、冗談は置いといてー。マジで急がなくちゃ!
トップと出向中の部下が揃って遅刻とか洒落にならないでしょうが!』
一番先に身支度を終えたが、玄関に向かいます。
『待って!』
エメットがの手を引き、そのまま抱きしめました。
『ぎゃー、締まってる!締まってますってエメットさん!!』
『せめて抱きしめてるって言ってよ!でもさ、君の言うとおりだった!
勇気を出して、ちゃんと向き合って良かったよ。ありがとう、!!』
そう言うと頬にキスをして、朝礼の準備をしておくと言い愚弟は出ました。
あぁ、私も二人には謝罪しなくてはなりませんでしょう。
『今日はとんだ醜態を晒して申し訳ありませんでした。
弱い人間だと呆れてしまったでしょう?情けないでしょう?』
『あぁ?そんなもん、人間ならあたりまえじゃねぇか。』
『うんうん、逆に完璧過ぎる方が気持ちが悪いですってば
でも、インゴさんはもうちょっとエメットさんと向き合ってくださいね。』
『…善処します。あぁ、挨拶がまだでしたね、おはようございます。
、後ほど私が倒れている間の事情を説明していただきますよ。』
ハグといつもの様に頬に口付ければ色気のない悲鳴も変わらずです。
『オレ様発言キター!!って、…もうちょっとこっちにいようよ!
なんだかインゴさんが怖いよ!危険が危ない気がするよ!』
『そんな事知るか!俺は不在中にアイツが必要だからって
余計な道具を買ってないかが一番心配なんだ、てめぇは好きにしろ!』
酷い!と言って泣き真似をするの頭を笑いながら叩くも
ボールから出てそれぞれ定位置についたネイティもリグレーも
全てが昨日と光景なのですが、とても眩しく感じます。
朝の日差しに目を細め、先を歩く風変わりな友人逹のやり取りを聞きながら
一路職場へ向かう事にいたしましょうか。