三章・指差確認準備中!編 -執務室であれやこれ-

三章・指差確認準備中!編

執務室であれやこれ

※注意※
 現地での話の為ボス達の会話も視点語りも普段の表記とは異なっております。



就業時間が終わって、執務室にが書類を持ってやって来た。

休憩時間に来るのかなって思ったけど、向こうで済ませたみたいだね。

まぁ、職人同士の交流?そう言うものも大事だったりするんでしょ。



『失礼するよ、インゴボスとエメットボスはもう仕事が終わったのかな?』



前回出張に来た時も思ったけど、の発音はネイティブみたいだよね

三人とも、さっきインゴが言ってた郷に入っては郷に従う?

それを徹底させてるんだから、拘わりもここまでくれば立派だと思う。



『インゴは終わったけど、ボクはまだだよ。

、別に執務室に入ったら言葉を戻しても良いよ?』



『あー、色々変えるのもめんどくせぇんだが口調は戻すぜ。

ちょっと聞きたいんだが、こっちの職場の事業報告書とか計画書

後は見積書とかの見本って見せてもらえんのか?』



『それをがどうするつもりです?』



ボクとのやり取りをタバコを吸いながら自分のデスクで聞いてたインゴが

片眉を上げて不思議そうな顔をして聞いてきた。

恐らく保全管理課の書式を統一する為に見たいんだろうけど

それって、じゃなくての担当じゃなかったのかな?



『いや、使うのは俺じゃねぇよ。

こんなチマチマした作業はあいつ向きで、俺の仕事じゃねぇ。

これってコピーとって持ち出すのは可能なのか?』



『うん、特に問題はないと思う…だよね、インゴ?』



一応全ての許可を出すのはインゴだから聞いたけど、黙って頷いたからOK.

ボクから受け取った書類をコピーしながら、は溜息をついていた。



『ねぇ、もしかして色々前途多難とか?』



『…それ、わかってて聞いてるだろ?気づいて無いとか言うなよ?

ゲンナイの方は向こうでもかなり直したんだが、こっちに生かしきれてねぇ

まずはその辺から始めて、効率アップ、その他をやるつもりらしいぜ?

俺の方は予定通り3日で終わりそうだが、あいつはどうだろうな…

下手をすれば、滞在期間延期を向こうに申請するかもしれねぇ。』



インゴの家が滞在先だって聞いただけであの騒ぎなのに

滞在期間延期とかになったら、どんな風になるのかな?想像したくもないね!



『ふむ…状況は芳しくないのですね。

滞在期間の延長はこちらは問題ないですが、向こうがうるさいでしょう。』



『今日もこっちに来るギリギリまで黒ボスの注意事項を聞いてたんだぜ?

途中でが爆弾投下しやがったから、静かになったがな。』



『爆弾?』



何の事だろうとインゴと顔を見合わせてたら、が悪タイプも逃げそうな

凄い笑い方をしてとんでもない事を言った。



『こっちでにナニかがあって妊娠しても構わねぇ

むしろその方があいつがこの世界に根を降ろす事になるから歓迎するってな。

それを聞いた黒ボスが思い切り固まってて笑えたぜ?』



ちょっと待って、もう少しで咥えてたタバコを落としそうになったよ!

大体そんな事言って、ノボリが本気になったらどうするんだろ?

あの従兄弟は時々とんでもなく暴走するから、が心配だよ。

正直言って、インゴよりずっと危険だと思うんだけどなー。



『…全く言われて初めて気が付く等、やはりアレの頭は飾りでしたか

そんな事、がミッションに乗り気じゃないのがわかった時点で

最初に解決法として考える事でしょうに…』



タバコを揉み消して、デスクに頬杖をついてインゴが溜息をつく

その顔には何を今更そんな事で狼狽えるのかわからないって

呆れている風にも見える。まぁ、ノボリだから仕方が無いんじゃないの?



『じゃあインゴは、とっくにそういう風に考えたって事?』



『お前の頭も飾りですか?考えてご覧なさい、望まない妊娠で

が幸せになると思ってるのですか?なるはずがありません。

あれだけの過去を持ち自分の性別すら否定をしているのに

妊娠などさせてしまったら、彼女は確実に病んでしまうでしょう。』



インゴがボクに失礼な事を言うのは何時もの事だから良いんだけど

が病むって言われて、ボクは言い返すタイミングを失った。

ボク達は病んでしまった人を知ってる…大切な人のそんな姿は見たくない。

成程ね、インゴは絶対にこの方法を選ばない、選ぶわけがない。



『てめぇらの思考がそっちにむかうのなんざ、わかりきってたぜ。

だがな、そんな事を俺やがさせると思ったら大間違いだからな。

あいつが自分の意思で望まない限りは絶対に許さねぇ。

さて、一度向こうに戻るぞ。あいつはゲンナイと色々と打ち合わせ中だが

これから色々とやる事もあるんだから、終わらせてくる。』



『それが得策でしょうね、どうせは仕事を家に持ち込むのでしょう?』



『そうじゃねぇと時間が足りないだろうからな。

まぁ、色々やる事がある方が良いんじゃねぇか?んじゃ、行ってくる。』



そう言って、コピーした書類を手には執務室を出て行った。

それと同時にインゴがタバコに火をつける。

いつもだったら定時をちょっと過ぎただけでも、凄く不機嫌なのに

今日は全然そんな素振りも見せない。



『インゴ、君は先に帰ってても良いよ。

ボクは書類が残ってるけど、君は全部終わってるでしょ?

二人を案内するのはボクがやるから、家で待ってれば良いよ。』



『…私がどうしようが勝手でしょう?

お前こそ、まさかたちと共に家に来るつもりでいるのですか?』



『当然!恐らくは家でも書類をやろうとするでしょ?

ここの書類の書式統一をしたのは誰だと思ってるのさ。』



残ってる書類のデーター入力をしながら、当然の権利を主張したよ。

そうじゃなきゃ、インゴは絶対ボクを家に入れようとしないからね。

それにしても、夕食はどうするつもりでいるんだろう?



『ねぇ、夕食とかどうするか決めてるの?

外食なんだろうけど、正直いってニンバサシティ…いやユノーヴァの食事は

何気にグルメなあの二人には勧められないよね。』



『本日の夕食は自宅で摂ります。』



『えっ?!』



うわわ、入力したデーター全部吹き飛ばす所だったよ!

なんて言ったの?ってか何を言ったの??



『こちらの食事は恐らく口に合わないかもしれませんからね

昨日、仕事帰りに食材一式購入して参りました。

既に下ごしらえを終えておりますので、時間はかからず夕食にできます。』



『嘘…だって君、父さんが死んでから料理なんて全くしてないじゃない。

一体どういう風の吹き回し?あ、気まぐれとか?ってか大丈夫なの??』



『その減らず口を閉じなさい。共同生活を送るのであれば当然でしょう?

私が外食を勧めたところで、流石に毎日とは行きませんからね。

そんな事をすれば、が作ると言い出す事はわかりきってます。』



あぁ、確かにあの二人なら言いそうだよね。

なんて言うんだろ、すっごく金銭管理とかしっかりしてるし

そういう外食にお金をあまり使わない様な雰囲気を持ってる。

この間ノボリ逹と話してた事がこんな早くに実現するなんてラッキーだね!



『それじゃあ、食後のデザートにプディング作れば良いんじゃない?

ノボリとクダリが言ってたよ、も甘い物が好きで

前にノボリが作ったプリン食べて感激してたんだって!』



ここでボクが食べたいからとは言わない。

そんな事言ったってインゴに鼻で笑われるからね。

だからインゴの引っかかりそうなってフレーズを入れて

実は負けず嫌いだから、ノボリのプリンを喜んでたって情報を入れる。



『あぁ…デザートですか、プディングなら簡単ですね。

たまにはまともな提案ですね。お前にしては上出来です。

それならば準備がありますので、私は先に帰っておきます。

お前は二人を道案内しなさい。夕食位は食べさせてあげましょう。』



『本当に君ってば失礼だよね!そんな部分をあの二人に見せて

嫌われない様にせいぜい上手く隠しておくんだね!』



ボクの言葉なんてインゴには全く効果が無いんだけどさ

それでも言わずにはいられないのは仕方がないと思うんだ。

案の定、鼻で笑ってからロッカーに行っちゃったし…マジでムカつく!


インゴが帰ってから、ひとりで執務室で仕事をしてるんだけど

今日はいつもと違って苦にはならないな。

一緒に帰る人がいて、ノボリ逹以外の誰かとご飯を一緒にするんだし

インゴはおば様直伝のプディングを作ってくれるみたいだし!


自分でも呆れるくらいワクワクしてるのがわかる。

ユノーヴァにいて、こんな気持ちになるのは初めてじゃないかな?

あの二人が戻ってくる迄には書類を終わらせて、着替えておかなくちゃ。


二人がインゴに良い影響を与えてくれればって思ってたけど

まさかこんな早くに効果が現れるとは思わなかった。

つまり、それくらいインゴはあの連中が気に入ってるって事なんだろうね。


やっぱりこっちに引き抜きたいなー…

でもそれは、ボク達が強制しても意味が無いのはわかってる。

自分からこっちに来たいって思わせる方法かぁ…

テンキーを叩く手を止めないで、あれこれと考えてみるんだけど

どの戦略も今ひとつで、効果もいまいちっぽいんだよねー。

ここはひとつインゴに頑張ってもらうしかないかもね。


最後の書類のデーターを入力し終わって、データーをバックアップしてから

パソコンの電源を落として、椅子にもたれ掛かってデスクに足をのせる

灰皿を片付ける前に、タバコに火をつけて二人が来るのを待つ事にする。



『ボクも待たされるのは大嫌いなはずなんだけどなー。』



ゆっくりと広がる紫煙を眺めながら思わず笑っちゃった

待つ事が楽しいなんて、そんな事もあるんだね…知らなかったよ。