三章・指差確認準備中!編 -白い従兄弟とあれやこれ-

三章・指差確認準備中!編

白い従兄弟とあれやこれ



ユノーヴァからの出向の書類が届いた後も業務は滞り無く進みます。

各部署の業務改善と書式統一がかなり功を奏してる賜物でしょう。


本日は定時より1時間遅れて業務を終了する事ができました。

には、今日は私用が入ったので育成の手伝いが出来ないと

あらかじめ申しておりましたので、執務室には私とクダリだけでございます。

着替えも済ませ、執務室のドアの施錠を確認もいたしました。



「クダリ、準備はよろしゅうございますか?」



「バッチリオッケー!オーベム、ユノーヴァのギアステにテレポート!」



私達の体が淡く光ると同時に視界が一転します。

何度やっても、この感覚はなれる事はありませんね

眩暈の持病のあるの気持ちが、今なら私にも理解できます。

一瞬の浮遊感の後に来る落下に備え二人で着地体制を整えます。

どうやら無事に到着した様でございますね。



「Wow!キミ達が来るなんて珍しいネ!」



周囲を見渡せば、恐らくここは二人の執務室なのでしょう。

書類が山積みにされたデスクに座って、テンキーを叩いていた

エメットが驚いた顔でこちらを見ております。

もう一方のデスクはインゴのものなのでしょうが

こちらには書類は殆ど無く、綺麗に整頓されておりますね。



「別に来たくなかったけど、直接話したかったから来ただけ。」



「えぇ、非常に不本意でございますが仕方が無かったので…

インゴは?トレイン乗車中でございますか?」



「インゴは帰ったヨ。ボクもあと少しで書類が終わるから帰るケド

先ずは二人の話、ボクが聞かせてもらおうカナ?」



応接スペースへ誘導され、私とクダリがソファに座ると

エメットは用意したコーヒーを私達に渡してから、向かいのソファに座りました。



「まずは、隠れている伝説のポケモンについての報告がございます。

それに連動するかの様にのミッションが始まりました。

現在はジム巡りの為、既に旅立ちのポケモンをゲットしておりまして

主力メンバーも含めて育成中でございます。」



の育成は時間がかかるから仕事を辞めるって言われたんだけど

それは業務と並行して出来るこっちの規約を振りかざして止めた。

後、こっちがボク達がここに来た一番の理由。

こっちへの出向の話。から連絡来てるよね?

が行く事になったのに、どーしてインゴの家に滞在させるの?」



えぇ、あの後とインゴの話し合いの結果

出向期間中はインゴの家に滞在する事が決まったのでございます。

こちらの住宅事情、治安、の方向音痴を考慮してとの事で

も当人であるも納得したようなのですが、私達はしておりません。


私達の話を聞いて、エメットはテーブルに頬杖をついて目を細めました。

いつもの人を馬鹿にした様な笑みは無く、苛立ちを顕わにしております。



「その説明はにシテル。当人も納得した事なんだけどナ。

からこの話をした後のソッチでの話は聞いてるヨ

ちょうど良いカラ、二人にハッキリ言わせてもらうからネ

キミ達ってボク達を侮辱シテルヨネ?馬鹿にスルナ、ふざけるナヨ。」



更に目を細め、眉間に皺を寄せたエメットはソファーに深く座り

胸ポケットからタバコを取り出し乱暴に火をつけました。



「愚兄の名誉の為にも言わせてもらうヨ

ニンバサシティにはワンルームタイプのフラットは殆ど無い。

土地代が凄いから、あっても高額だったり不便な場所が多いんダヨ。

ホテルでも良いケド、通勤が徒歩とかダメ。

仕事帰り夜に女の子を一人歩きさせるノハ、治安的にも絶対ダメ。

だからに頼もうと思ったケド、ゲンナイを指導したノハ?

資格を取らせるノニ頑張ったノハ?ダヨネ?

インゴは彼女の立場と意思を尊重するって決めたダケ

下衆な勘ぐりも良い加減にしろってんダヨ。

ボクの素行に文句を言うノハ良いケド、インゴまで同じ目で見るナ!」



灰皿でタバコを揉み消して、真正面から私達を睨みつけます。

彼がこの様な表情をするのを初めて見ました。

普段は愚弟と呼ばれ、捨て駒の様に使われているのを知っております。

ぞんざいな扱いを受けていようと、エメットが兄を慕ってるのなら

私達の言葉に憤りを感じるのは当然でございましょう。

何か言おうと思うのですが、その剣幕に言葉が出てきませんでした。


すっかり冷え切ったコーヒーを一気に飲み干してから

ため息をついて、エメットはライブキャスターを取り出しました。



「…あのサ、二人共インゴの家って見た事無いデショ?

ボクも泊まった事は無いし、お邪魔したのも数回ダケド

インゴの家は部屋数も有ッテ、各部屋には内鍵もついてるヨ。

そんなに心配ナラ、これから行ってその目で確かめれば良いデショ?


…Ahーインゴ?ちょっと今からキミの家に行くからネ。

執務室にノボリとクダリが揃って来てるんダヨ。

のMissionが始まったッテ、その話もあるみたいダヨ?

…OK.30分以内でそっちに行くカラ。…了解。」



ライブキャスターの通話をオフにして、私達をみたエメットは

先程までの表情が嘘の様に平常に戻っておりました。



「二人共、書類を終わらせるカラ待っててヨネ。

今の話インゴには聞かせたく無いカラ、ボクの胸の内に収めさせてモラウ。」



エメットが自分のデスクに戻るのを見て、私達もソファーから立ち上がり

クダリはインゴのデスクに座ってパソコンを起動させると

エメットのデスクにある未処理の書類を取り、データー入力を始めます。

私は処理済みと書かれたボックスから書類を、各部署の名前の書かれた

ボックスへの分配をする為に取り出して作業にかかります。



「エメット、ボクも手伝う。そっちの書類のデーター入力するから貸して?

ゴメンネ、ボク達ちょっと色々との事で神経質になってた。」



「私達の心配は以前の二人なら当然の事でございますが

今の貴方逹は違うのですね、大変失礼いたしました。

書類の各部署への配分については私に任せてくださいまし。」



「…別に謝って欲しくて言ったワケじゃ無いカラ

ボクだけが変わったわけじゃ無いヨ、インゴも変わってキテル。

少しずつ、昔の優しかった頃のインゴに戻ってきてるんダヨ。

それはと知り合えたカラ…ボクはそう思っテル。」



テンキーを叩きながら、笑うエメットは幼い頃によく見た顔をしてました。

三人との出会いは私達だけではなく、この二人にも影響を与えてるのですね

ですが、それは決して不快なものではありません。

例えるのなら、両親に見守られているような安心感…でしょうか

いい年をしてとも思いますが、その様な安らげる場所を持つ事は

私達には効果は抜群だったのでございますから

インゴとエメットにも同様であっても不思議ではないでしょう。



「それってわかるかもしんない。

色々な人間関係で拗れちゃって、他人の嫌な部分を見たりして

自分も嫌になってた感じって前はあったけど、今は違う。

ボクは今の自分は結構好き。それはあの三人に会ったからだと思ってる。」



「そうでございますねぇ、私も色々と自分の嫌な部分と直面して

自分が自分で無くなった時期もございました。

それが解消されましたので、彼等には感謝しております。」



「アノ三人と出会えた事が奇跡デショ?

普通じゃ考えられない、色々と信じられない境遇なんだしネー。

ソレを考えタラ、ボク達はLuckyじゃないカナ?」



「あはは!確かにそうかもしんない。

伝説のポケモン以上にレアでしょ?ボク達って運が良い!」



「以前の私達でしたらなら、この様な状況になるなど無かったですしねぇ…

ふふっ、こうして私達が笑いながら話をしてるのもレアでございますよ?」



エメットとクダリが同時にそうだよねー!と言ってから

お互いの顔を見て笑い合っております。

貴方逹二人は昔もそうやって笑い合っておりましたね。

そして、そんな私達をいつもインゴは隣で微笑んで見ておりました。

以前の様な仲の良い兄弟…いえ、今は従兄弟でございましたね。

そんな関係に戻れるのであれば、私も嬉しゅうございます。



「ウン、ノボリの言う通りダヨ。

なんだか懐かしいヨネ。ボク達がイッシュにいた時はこうだったデショ?

くだらない事で喧嘩したりトカ、笑い合ったりトカ…楽しかったヨネ

…こうして話をする事が出来る位ニハ、ボクも変われてるんだネ…

マタこうしてキミ達とそんな風に出来るなんて思わなかったヨ。」



全ての書類の処理を終えたようで、エメットは笑いながら立ち上がりました。



「さて、手伝ってくれてThank You!助かったヨ。

これからインゴの家に行くけどビックリしないでネ?

ビジネスホテルなんかよりもずっと殺風景ダヨ。生活感なんて全く無し!」



「うわー、ボクその部屋の雰囲気?想像できるかもしんない…。」



「そうでございますねぇ…」



「だからが滞在して、少しでも人間らしい生活?

そんなのをして欲しいって思ってるんダヨネー。

昔は結構料理とか得意だったデショ?ボク、インゴのプディング食べたいヨ。」



「あー、母様直伝のだよね?ノボリもよく作る!」



「二人は喧嘩をしても、あのプリンが出されると仲直りしてましたから

母様は私とインゴにも作れる様にと教えてくださったのですよ?

その他にもインゴは母様の手伝いで、よく台所に立っておりましたねぇ」



「今じゃ自炊なんてしてないカラ、時間が勿体無いッテ…

そんなの絶対おかしいッテ思うケド、インゴにボクの声は届かないンダ。

にソノ話をしたら困ったチャンって言うカラ、笑っちゃったケドネ。

…Ahー、今のインゴには内緒ダヨ?ボク殴られるとか嫌だからネ。

ソレじゃ着替えてから、テレポートで行くから二人は準備しててヨネ。」



更衣室に着替えに向かったエメットの背中を見ながら

私とクダリは顔を見合わせてしまいました。

エメットとインゴの仲は私達と違い良好とは言えないのでしょう

その関係を改善したいとエメットは考えてるのでございますね。

そして、インゴを困ったちゃんと言うとは…らしいですね。



「ノボリ、ボクちょっとエメット達の事考え直さなきゃって思う。

なんだか色々と、前のボク達みたいな感じがあるって事だよね?

それがボク達と同じで逹と会って変わってきてる…」



「えぇ、私達はたまたま先にと出会いましたが

先にインゴ達が彼と出会っていたのなら、彼等を引き抜きたいと思うでしょう

…こう考えると罪作りな連中でございますねぇ…。」



「あはは、確かにそうかもしんない!絶対にさせないけどね。

でも達が行きたいって言うなら、それを止める事は出来ない。」



ソファーに置いたカバンを手にして、クダリが苦笑いをしております。

友人だからといって、そこまで縛り付ける事はできません。

それは重々に分かってる事でございます…では私達に出来る事は?



逹が私達の側にいたいと思うようにしなくては…でしょうねぇ…」



「ノボリ言葉が足りない。でも言いたい事はわかる。ボクもそう思う。

友達だもん、守られっぱなしじゃダメ。今のボク達ならそれができるよね?」



「えぇ、以前の私達とは違います。クダリ、頑張りましょうね。」



これから険しい道に踏み込もうとする友人を守る為、全力をつくしましょう。

私とクダリはお互いの拳を合わせて頷き合いました。


私達だけではありません、インゴとエメットも同様に思ってるでしょう。

あの暴走列車を止めるには頭数は多い方が宜しいでしょうからねぇ…

それでもブレーキになれるのか?正直申しまして、自信はございませんよ?