二章・強者達の夢の競演編
平社員、出会う。
夕食の時間まであと少しって時に、とが部屋に来た。
二人共明日は普通に仕事だから、これから帰るって事らしい。
例の卵が心配だったみたいで、どうなったかって聞かれたから
ノボリさんとクダリさんが育てるって言うから、渡したよって言えば
首を傾げちゃったんで、理由を言えば納得したみたい。
何事も初心に戻るのは結構大事だったりするしねー。
夕食の時も、誰も近づくなオーラを出したかったんだけど
トウヤ君が隣に座っちゃったからそれは出来なくなっちゃった。
そしたら、他の人逹から色々と話しかけられまくったよ!
ずっと色々と話してみたかったとか、コレなんのフラグ?
今更チョロネコをスタンバイする事も出来ないし、ワタワタしてたら
ノボリさんとクダリさんがそれを見て笑ってるし…畜生…。
疲労困憊の夕食を終わらせて、部屋に戻ってベッドに倒れ込んだんだけど
次に目を開けたら朝でした…うわーい、化粧落とすの忘れてたー!
慌ててシャワーを浴びて、化粧を落としてから
ちょっとお肌を休ませる感じで目元と口元に化粧水でコットンパック。
急いで髪を乾かしてからセットして、またまたメイク。
めんどくせぇえええ!って叫びそうになった私は間違ってないぞー。
身支度を整えて、荷物を1階のカウンターで預かってもらう。
閉会式が終わったら職場にまっしぐらだから仕方がないわー。
会場に到着して(道案内はもちろんネイティさっ!)控え室に入れば
朝食に来なかった私をノボリさんとクダリさんが心配してた。
実は…ってぶっちゃければ、疲れてたんだねと暖かい言葉をもらったよ!
そんな感じで和やかな雰囲気?で閉会式も無事終わり
私とノボリさん、クダリさんはホテルから荷物を持って猛ダッシュ!
んで、今現在ここ…ホドモエの駅前だったりする…って、前置き長すぎ!
「、お一人で大丈夫でございますか?
もしよろしけれ、私達も空を飛ぶを使ってギアステまでご案内しますよ?」
「ノボリ、空を飛ぶがつかえるポケモンいない。
でも、ボクにはアーケオスがいる。、ボクと一緒に行く?」
「子供じゃないから大丈夫ですって。
私には素敵なナビが出来る子がついてますし?
だから、お二人は先に戻って仕事に出発進行しちゃってください。」
…私の方向音痴っぷりを知ってるから心配してるんだろうけど
ネイティは超優秀なんですから!ホント、うちの子マジ天才!
私がそう言えば、納得してくれたみたいでホームに向かって歩き出した。
その姿が見えなくなったのを確認して、私も駅を出てちょっと裏手に回る
ボールから、リザードンを出して地図を見せて帰り道の説明をすれば
任せろ!って感じで親指を立ててくれたし。男前だよね!雌だけど…。
「見つけました!そこのあなたっ!シンオウのチャンピオン代理ですよね?」
指差し確認(方向的意味で)をしてたら、いきなり後ろから大きな声がした。
うわーい、マスコミとか勘弁してよ!って振り向いた瞬間。
私は相手を見て、固まってしまった。
「さしつかえなければ、あなたのポケモンを見せてもらいたいのです。」
私が驚いてるのを、いきなり知らない人から声をかけられたからだと
勘違いしたその人は、にこやかに私に近づいてきた。
「私ちょっと急いでますんで…」
「お時間は取らせません、おや…このリザードンはバトルメンバーでは
ありませんでしたよね?少々拝見いたします。」
私の戸惑いなんかを全部まるっと無視して、その人はリザードンの周りを
グルッと回ったあとに、目をキラキラさせ始めた。
「あなたのリザードンはとても自信にあふれていますね!
いい!すばらしくいい!グレートですっ!」
そう言うとその人はポケットから手帳を出して何かを書き始める。
それだけでも十分怪しい人確定だから、私は早々に立ち去る事を決めた。
「すみません、これから仕事に行かなきゃなので…これで失礼します。」
そう言ってリザードンの背に乗ろうとした私の腕を、その人は引っ張った。
ちょっと待て!バランスが崩れるでしょー!!
リザードンの背中から落ちそうになった私を、慌ててその人は支える。
「いや、失敬!わたくしは…科学者なのです。
研究テーマは『ポケモンの潜在能力は なにによって引き出されるか?」
ポケモンの力を引き出すのは!それも最大限に引き出すのは
トレーナーとの絆なのか、それとも別の手段なのか?
あなたとポケモン達を見て、是非ともお話を聞きたかったのです!」
クリームイエロー?薄金色?そんな不思議な色の瞳を細めて
私を立たせた後、その人は自分が怪しい者じゃないって感じで話し始めた。
「潜在能力って計り知れないからこそ、そう言われてるんじゃないですか?
それこそ、卵が先かポケモンが先かって話になると思いますよ。」
「成程、あなたのご意見もあなた自身も大変興味深いですね!
ですが、それを追求するのが科学者としての使命なのです!
人的力でポケモンをどこまで活性化できるのか?限界はあるのか?
非常に興味深いと思いませんかっ!?」
その顔が、ネイティのいた研究所の研究員とダブってしまう。
自分の研究のためならどんな犠牲も構わない。そんなの許せるわけがない。
「そして、沢山のポケモン達を犠牲にするんですよね?
そんな事をして、本当に彼らの能力全てを引き出せると?
ポケモン達の力の原動力は何か?まずはそこからじゃないんですか?
そこにポケモン達の個性が加わって初めて能力が引き出されるのでは?
引き出された力が暴走してしまう様じゃ本末転倒です。」
「…あなたの考察は非常に興味深いっ!なかなかのものです!!
各地のジムリーダー逹、あるいはポケモンリーグにいる四天王と
チャンピオンの様にポケモンを大切にする事でその強さを引き出す…
あなたは、そういったタイプの人達に似ているようですね。
成程…これは対象をひとつに絞り込むべきでしょうか…」
「理想を追い求めるのは勝手ですが、周囲を巻き込まないで欲しいですね。
貴方逹科学者って連中は、目的の為には手段も倫理もありませんからね。」
「これは手厳しい!ですが、理想を追い求めるには犠牲も必要でしょう。」
やっぱり私はこういうタイプが一番嫌いだ。
自分の為なら他はどうでも良いってのは人間誰でも持ってるんだろうけど
それでも貫き通すなら、その先は色んな犠牲の血の海しか広がらない。
肉体的にも、精神的にも傷つけなきゃわからない真実なんて必要なのかな?
そんなに極論に達する必要があるのかな?
「理想を追い真実を追求するのは、今までの科学の発展を見ればわかります。
犠牲なくして現在の功績が成り立たない事例もあるでしょう。」
私はここで一旦言葉をきった。
器用に片眉を上げて、眼鏡越しに私を見るその人にとって
私も研究対象のひとつでしかないんだろうな。
だけど、ここで私も引き下がるわけには行かない。
私にとっての理想、真実、そして信念は誰にも曲げる事が出来ないんだ。
「理想を追い求めすぎて、すぐそばにある真実を見落としてはいませんか?
百聞は一見に如かず…どれだけ頭の中で仮説を並べ立ても意味がない。
真実はひとつとは限りませんよ?世界は案外簡単かもしれませんし?」
これ以上話をすると、色々とめんどくさくなりそうだから
私はリザードンの背に乗って、ネイティを出した。
傷だらけのネイティを見て、その人の瞳が丸くなる。
「そのポケモンは…」
「貴方にお話することは、これ以上私には何もありません。
仕事があるって言ってるのに、すっかり足止めされて正直迷惑なんですよ。
なのでこれで失礼します。」
「あぁ、失敬!
お時間を取らせすぎましたね。申し訳ありません。
ですが、あなたとは是非ともまたお会いしてお話をしたい!」
「私は貴方と話す事なんて何もありませんから、会いたくないです。
そういう事ですので、さようなら。リザードンお願いね!」
私の指示に、リザードンが大きく羽ばたく。
地上が遠くに見えても、その人は私達を見続けている様だった。
リザードンの頭の上にのったネイティが心配そうに私を見る。
こんな事でいちいち動揺するなんて、私もまだまだだね!
大丈夫だよって笑いかけると、安心したのかネイティは
リザードンに進行方向の指示を出すために前を見る。
ついつい熱くなって語ってしまったけど、これで私もターゲット?
それだけは勘弁して欲しいんだけどなぁ…
もも、誰も巻き込みたくはないんだけど
あの人にしたら、どれも格好の研究材料になりそうだし…
ため息をついてたら、ギアステの屋上が見えた。
速度を落として近づけば、そこに見慣れた白黒のコートが
ゆっくりと屋上に降りる私に駆け寄ってくる。
「おかえりーってか、遅い!もしかして迷っちゃった?」
「だから、私達もご一緒すると言ったのです!
あぁ、おかえりなさいまし。疲れているようですが、大丈夫でございますか?」
変わらない笑みが私に向けられる。
大好きだと言ってくれる大切な友人。こっちの世界でのはじめての友達。
まさか、私がサブマスと友達になるなんて思ってもいなかったけどねっ!
「ただ今戻りましたー。軽く目的地を行き過ぎてたり?
でもネイティが方向修正してくれたんで、助かりましたー!」
「あはは、ネイティお疲れ!リザードンも大変だったね!!」
「本当にお疲れ様でございました!温室で少し休んでくださいまし?
あ、は早速仕事でございますよ?が待っております。」
頭の上にネイティを乗せた白ボスが温室を指させば
うちの子たちは嬉しそうにしてる。
あの場所は目の前の二人にとっても、暖かくて居心地が良いもんね。
「ネイティもリザードンも行っておいで?
午後休憩になったら迎えに来るから、それまでゆっくり休んでて良いよ。」
白ボスがリザードンの手を取り、温室に出発進行!って向かった。
それを黒ボスがお母さんみたいな顔で微笑みながら見てる。
穏やかで優しい光景に、なんだか胸が締め付けられる。
「?!…何かあったのですか?」
黒ボスが私を見て、慌てて近づいてきた。
どうしたんだろうとビックリしてる私の頬に手袋を外して触れる。
反対の頬を触れば濡れてる…うわわ、何泣いてるのー!
慌てて目を擦ろうとしたら、怒られてハンカチを渡された。
黒ボスが、マジお母さんに見えた私は間違ってないと思う。
「?」
「あー、すみません。なんだかすっごく長い時間ここを留守にしてた…
そんな錯覚になってて…戻ってきたんだ、帰ってきたんだって思ったら
急に安心したっていうのか、なんて言うのか…」
うん、ホントに安心したって言葉が一番ピッタリくると思う。
今まで、こんな気持ちになった事がないんだけどなー。
やっぱりイッシュに来てからの私はちょっとおかしいんだと思う。
未だにグスグス言ってる私を見て、黒ボスが柔らかく、嬉しそうに笑う。
「ふふっ、それは貴女がここを大切な場所だと思ってるからですよ。
ギアステは家で私達は家族、以前からそう申しておりましたでしょう?
貴女の帰る場所はここ。それでよろしいではございませんか。」
家族とか家とか…昔の私には関係ない物だった。でもずっと欲しいと思ってた。
私は自分の居場所を無意識に見つけてたのかもしれない。
大切なポケモン達、そして大切な場所、大切な人逹。
「大切なものは全力で守らなくちゃ…ですよねー。」
「?? …えぇ、それはもちろんでございますが、どうしました?」
あんな事でいちいちワタワタしてらんないんだ。
大丈夫、私の気持ちは変わってない。私の信念は揺らいでない。
「うーん、初心忘るべからずって感じですかねー。
うっし!ギアステの平和と安全の為にすっごい仕事を始めるぞー!」
「ただいまーって、うわわビックリした!張り切ってる?
ボクも!ボクもすっごいバトルをする!頑張る!」
「二人共、その意気や良し!でございます!!
えぇ、勿論私も皆様の安全をお守りしつつ参りますとも!」
出発進行!と言って、入口に向かう二人の後ろ姿を見て私も走り出す。
立ち止まってなんていられない。
何があっても、誰が相手でも私は自分の意思を通すんだ。
ホドモエで出会ってしまった人の姿を思い浮かべて、私は目を閉じる。
会いたくないなんて言っても、多分これから何度かは会うだろうなぁ…
今度会ったらあのすっごい前髪?を思い切り引っ張ってやろう
それか、あの前髪にリボンをつけてあげるのも良いかもしんない。
わかってたけど、その位強烈なインパクトでしたよ?アクロマさん!