二章・強者達の夢の競演編 -医務室にて-

二章・強者達の夢の競演編

医務室にて



クダリと二人、眩暈の発作を起こしたであろうが心配で

医務室へ向かえば、ドアの前にはが立っておりました。



「二人共、は中?は大丈夫なの?」



「おう、今が診察してる。」



「もー、ちゃんってば無理しすぎ!

ポケモン命のちゃんらしいって言えば、そーなんだろうけど

見てるこっちは寿命が3メートル位縮んだお!」



が私達に向かって片手を上げている隣で、は怒っていました。

それについては私も同意見でございます。

ですが寿命はメートル単位では縮まないと思うのですが…。



「ねぇ、が会場に入ってたけど、どーして?」



「あ、それは私が…つーかダーリンのギーマさんに頼んだお!

だって、ちゃんのアレを治せるのはたんでそ?

でもちょーっとゴタゴタしちゃったんだよねー。」



、アレをちょっとと言えるのか?」



「あははー、たんの口撃にドクターさん涙目だったもんねー。

でもさ、言ってる事は間違ってないと思うよん?」



「ドクター泣かしたって…ちょ、ってば何を言ったの?!」



クダリが聞かなければ、私が聞いておりました。

一体彼は何をドクターに言ったのでございましょうか?



「んー?ド正論を間髪入れずに??

そだ、の得意技で教えてあげれば良いっぽ!」



「あー?まぁ覚えてるが…二人共ドン引きするなよ?」



の脇を肘でつつくと、は苦笑いをした後に

の口調を真似て、話し始めました。



『君が担当なのはわかるけど、ではBPPVの治療が出来るんだね?

彼女の症状はどちらの耳に由来するものなのか診断ができるんだね?

そして、正しい手技が行えるんだね?

下手な投薬は今後のバトルに支障が起きてしまうからね

勿論そんな事はわかってるだろうから、言わないでおくけど

自分は、それら全てを迅速に行えるけど、それ以上の治療が出来るとでも?

どの症状にも迅速に対応できなければドクターとして、恥ずかしくないかな?

救急医療というものは、そういう事なんじゃないのかい?

君は現場で一体何を学んできたのかな?』



なまじ従兄弟だからなのでしょうか?

声もによく似た感じで彼の口調そのままに、おっしゃられた言葉には

相手への配慮という物が欠如しておりますね、これは涙目にもなります。



「うわー、ってば容赦なーい。」



「でそ?でもその後で、ちゃんと見て覚えろって言ってさー

現在そのドクターさんと一緒に、ちゃんの治療中って感じ?

でも、久々にの丸暗記聞いたわん!すごい特技っぽ。」



そういえばは以前、総務部長のオリエンテーションと新人研修を受け

それらを全て、口調も真似て話す事が出来ると言ってました。

あの時は冗談だと思っていたのですが、この様な芸当ができるとは



「まぁ、必要に駆られてっつーかな。別に驚く様な事じゃないだろう?」



「あのね、普通の人はそんな事できないと思う。」



「そうか?」



クダリがを指差して言っております。人を指差すのは駄目だと

言いたい所でございますが、私も同じ気持ちでおりますので…。

なんでしょう、改めてが凄すぎて…私、息をするのも辛い!でございます。



「外が随分騒がしいと思ったら…てめぇら、場所を考えて話せ!

ったく、ノボリもクダリも心配で様子を見に来たってクチか?」



医務室のドアが開いて、白衣を脱ぎながらが出てまいりました。

その後ろには…彼が涙目になったドクターなのでしょう

何やら必死になって手帳に書き込んでおりました。



「この症状は初めてじゃなきゃ、患者が一番わかってるから問診をする事

ここは病院じゃないから眼振検査なんてできないからね。

左右を確認するのも、本人に聞くのが良いと思うよ?

結構な確率で、この症例は再発を繰り返すからね。」



「…成程、わかりました!」



脱いだ白衣をドクターに渡しながら、色々と説明する

普段の事務員としての顔ではなく、ドクターの顔をしておりました。

グリーン様が凄腕と申していたのも納得致しますね。



は?」



「眩暈の発作は落ち着いた。ただ吐き気がまだ残ってるんで安静中だ。

吐き気止めの治療をしたから、後少しで元に戻るんじゃねぇか?」



大事には至らなかった様で、私もクダリもひと安心いたしました。

静かに中に入れば、上部を起こした状態のベッドの中で

目を閉じたままのがおりました。

がそばに近づき、の手を取るとゆっくりと目を開いてから

緩やかに微笑まれます。



ちゃんがを連れて来てくれたんだってね?

色々迷惑かけちゃってごめんね?ありがとう。」



「ごめんも、ありがとも、私にはいらないっぽ。

すっごいバトルに会場総立ちとか、超目立ちまくりだったお?」



「うわーい、マジですか!ってかさー、トレーナーなら普通でしょ?

どんな時でも勝利を目指すなんて珍しい事じゃないと思うけどなー。」



「まぁな、だが最近は娯楽重視の楽しむバトルしかしないトレーナーも

結構多いみたいだから、そういう連中には衝撃的だったのかもな。」



「それはバトルなんざ呼べねぇだろうに。

バトルは真剣勝負じゃねぇと面白くねぇだろ?」



やはり逹も私達と同じ意見でございましたか。

クダリの口癖でもある、バトルは真剣じゃないとつまらない…

それは私も同感でございます。



「うし!復活したから控え室に戻るね。

、ありがとね。皆には心配かけてゴメンネ?」



ベッドから出て、ゆっくりと背伸びをしたはいつもの様子に戻り

笑いながら、私達を見つめました。



「んじゃ、私達も観客席に戻るっぽ。

ちゃんもマスターさん達も残りのバトル頑張ってねん!」



「あまり無茶はやらかすなよ?ノボリもクダリも残り2戦、頑張れよ。」



「なんにせよ、もう少しでこのバカ騒ぎも終わるからな。

てめぇら、無様な負けだけはするんじゃねぇぞ?」



口々に私達への激励の言葉をかけると、三人は医務室から出て行きました。

残ったはどこか所在無げに私とクダリを見ております。



、どーしたの?」



「あ、いや…えっとですね?私てっきり説教食らうと思ってて

でも、お二人ってば何も言わないし

もしかして、これはもう勝手にしろって事なのかなって…」



「では、は私達が何か言ったらやめるのですか?」



「うっ…」



「でしょう?私達が凄く心配しても、はやめる気はございませんよね?

それでしたら、私達が何を言っても詮無い事でございます。」



私の言葉に、捨てられたポケモンの様な表情をは見せました。

あぁ、これは私達が貴女を見捨てたと思ってるのでしょうか?

そんな事は絶対にないと何度も言っておりますのに



「そんな置いてきぼりくらったポケモンみたいな顔しても駄目でございます。

だいたいですね、その顔をしたいのは私達の方です。

何を言っても、どれだけ心配しても、は私達の気持ちを知ってても

その様に突っ走ってしまう。そして自分が傷ついてしまう。

その時の私達の気持ちを、貴女は考えた事などありませんでしょう?」



「ノボリ言い過ぎ!」



クダリが私を制止しようと袖口を引っ張っておりますが無理でございます。

自分の言葉の足りなさにを傷つけてしまった。

それでも、貴女は私達の気持ちを全ては理解していない…いえ、理解していても

自分の意思を変えるつもりがないのです。それは私も同じです。

えぇ、その度に何度でも苦言を呈しましょうとも。



、勘違いしないで?ノボリが言葉が足りないのはいつもの事!

こんな事でノボリを誤解しないで?ちゃんとノボリの顔を見て?

ノボリの事を嫌いにならないで?」



「クダリさん?」



「あのね、ノボリ本音でにぶつかってる。

だから口調も言葉もキツくなってる。でもちゃんとノボリを見て欲しい。

それだけじゃないって、ならわかるよね?わかってくれるよね?」



私がこの即物的な言い方と口調で、過去に人間関係をこじらせてしまったので

クダリは心配しているのでしょう。



「ノボリ、ボクはいっつも言ってる。もっと言い方を考えてって。

自分の気持ちを正直に話す事は悪い事じゃない。だけどそれは言葉の暴力。

そんなんじゃ、どっちも傷ついちゃう。ノボリが誤解されちゃう。

そんなのボクは見たくない!」



私との間に立ち、クダリは私の方を見て声を荒らげました。

あぁ、貴方はいつも私が傷つくとその様な顔をしておりましたね。

手袋に包まれた手を固く握り締め、とうとう下を向いてしまいました。



「クダリさん、大丈夫です。ノボリさんの言いたい事はわかってます。

ノボリさんが自分から誰かを傷つけるとか、有り得ないでしょう?

これだけ優しい人を怒らせてるのは、私が馬鹿な事をしたからでしょう?

ノボリさんの気持ちはちゃんと伝わってます。

何度も、これからも同じ事をしそうな私を心配してくれてるのでしょう?」



クダリの背中を赤子をあやすように叩くと、私の方を見て肩をすくめます。

に私の気持ちはちゃっと伝わってる…のですね?



「私が友達だから、言ってくれるんだってわかってます。

むしろ、こうやって真正面からぶつかってもらえて嬉しいです。

でも、こんな事ばかりしてるとノボリさんも傷ついてしまいますよ?

私が言うのもなんですけど、もっと自分を大切にして欲しいです。」



「…ノボリ、それにも言われた。」



「あはは、も回りくどいのは好きじゃないですからねー。」



あの時のの言葉にどれほど救われた事か、自分を理解してくれる人が

目の前に現れた事にどれほど喜んだ事か…。

に言われた事を、今度はの口から聞くとは思いませんでした。

も私をちゃんと見て、理解してくれているのですね。



…すみません。私もっと別な言い方をしたかったのですが…」



「謝る必要はありません、学習能力の無い私が悪いんだし?

それに、パーティの時にも言ったじゃないですか。

ノボリさんは目で物を言いますよねって、だから目を見ればわかりますよ。

友達になって短いけど、すっごく濃い付き合いじゃないですか、当然でしょ?

クダリさんも、そんな心配はするだけ無駄ですよ?」



「うん…うん!そうだったよね、ボク達すっごく濃い友達だった!」



「えぇ、濃い付き合いでございましたね。

も私達に遠慮は必要ございません。体当たりしてくださいましね?」



「言いましたね?言質取りましたから、後で取り消しは無しですよ?

私も遠慮はしませんけど、お二人も遠慮しないで下さいね?

そーいう事をされると、逆にすっごく悲しくなるんですからね!」



笑いながらは私達に拳を握って差し出されました。

女性として、その様な振る舞いはとも思いましたがでございますしね。



「うん、わかった!」



「えぇ、その通りでございますね。」



私とクダリはお互いに顔を見合わせてから頷いて、同じ様に拳を作ります。

そして、の拳にコツンと合わせました。