二章・強者達の夢の競演編
チョロネコとレパルダスの乱舞
パーティ会場のあちこちで、人の集まりが出来ているのに
主要人物のであるはずのは、一人で壁に持たれておりました。
表情は誰もそばに近づくなと、雰囲気はこの場から一刻も早く去りたいと
これでは誰が見ても、その様に受け止めてしまわれるでしょう。
「さーん!」
トウヤ様が人の間を縫うよに近づく様を、は無表情に見ておりました。
そして、その後ろの私に気がついたのでしょう。
、貴女は他人を近づけたくないのでしょうが、トウヤ様まで
同じ様に遠ざけるのですか?これ程貴女を慕ってる彼を無碍にするのですか?
もし、そうならば友人として忠告させていただこうと思いましたが
私の視線に気が付き、その意味を理解した様でございますね。
今までの表情を和らげ、肩を竦めながらトウヤ様に話す様子に
少なからずとも安堵いたしました。
「トウヤ君、お疲れ。いやー、人混みって苦手だからしんどいわー。」
「オレもです!でもさん、なんだか辛そうですよね、大丈夫ですか?」
「…動くとね、ちょっとふらつきが酷くなってるんだ。
だからどうしてもノボリさんばりの仏頂面になっちゃうんだよねー。」
「失礼な、私はそこまで酷くはございません!
仏頂面の称号は、今後にお譲りする事にいたしましょうか?」
そんな会話をした後で、トウヤ様が達の部屋に同行を申し出ました。
彼の口から出る名前を聞いて、は目を閉じて首を振ります。
「ホントは行くつもりだったんだけど、正直しんどいんだよね。
だから、パーティが終わったら早々に休もうと思ってるんだ。
勿論、トウヤ君もトウコちゃんも行っても良いと思うよ?
だけど、お酒は飲んじゃダメだからね!二人はまだ未成年なんだから。」
「オレ、結構イケるクチなんだけどなーって冗談ですよ!
そんな睨まないでくださいよ、冗談、冗談ですって…あはは…
でも、大丈夫ですか?なんだったら今からオレ、部屋に送りますよ?」
「それはさすがに出来ないでしょー?一応私もチャンピオン代理って事で
ここに参加させてもらってるからねー。
だから、こうやって壁に寄りかかりながら、ご飯食べる事に集中しとくよ。
トウヤ君、ここはもう良いから皆の所に行って?
凄い人逹ばかりだから、話を聞くだけでも勉強になるよ?」
「トウヤ様、には私がつきますのでご安心くださいまし。
それと申し訳ありませんが、その様にクダリに伝えていただけませんか?」
「えー、オレもそっちが良い…って、冗談です!わかりました。
さんホントに具合悪くなったら、いつでも言ってくださいね!」
尚も心配そうに何度も振り返るトウヤ様を、は手を振って見送ります。
それから、この場を動かない私を見て苦笑いをされました。
「ノボリさんって、ほんと目で物を言いますよね。
さっき、トウヤくんが声をかけてきた時も後ろですっごい睨んでたし
んで、具合が悪いってのが嘘だってのも…バレてますよね?」
「えぇ、短い付き合いでございますが、貴女のやせ我慢は嫌という程
身近で拝見しておりますから、その位はわかるようになりましたとも。
ところで、今日は一段と沢山のチョロネコを背負われてますよね?」
確かに顔色は化粧の為わかりにくいですが、瞳の輝きは問題ございません。
私もそうそう何度も貴女に騙されっぱなしではいられませんからね。
先ほどのエレベーターの中の様子を思い出して、意趣返しのつもりで言えば
また無表情に戻り、それでも口調はいつもの通りという器用な真似をします。
「あははー、クダリさんはちょっと困ってましたよね。
お二人には悪いと思ったんですが、そうそう器用に切り替えられないんでー。
もうチョロネコ総動員で、更に進化したレパルダス付きですから。
背負いきれないんで背後に待機、ステイ!ですよ?」
「、私はカントーとホウエンの代表の方々と話をしましたが
皆様とても良い人でございますよ?そう身構えなくても良いのでは?」
「…良い人なのはわかってるんです、でもダメなんですよ。
皆さんには悪いけど、こればっかりはそんな簡単には治らないです。」
「まぁ、私もに言える様な立場ではございませんけどねぇ…。」
通りかかったウェイターから、サイコソーダの入ったグラスを二つ受け取り
1つを差し出せば、は目元を少々和らげて受け取ります。
近付くなオーラーは健在の様で、私達を他の代表の方が見てはおりますが
一向に傍に来て話しかけようとする方はいらっしゃいません。
「そうだ、ノボリさんはこの衣装見るの初めてですよね?
これ、シンオウでチャンピオン代理をしてた時に来ていた物なんですよ。
いやー、この間の衣装で出なきゃなんないと思ってたから安心しました!」
「おや、そうなのでございますか。とても良くお似合いでございますよ。」
露出的にはかなり抑えられておりますが、あちらの衣装も似合っていたので
拝見できないのは少々残念でございますね。
ですがその…こちらの衣装も胸元あたりが少々目のやり場に困るのですが…
「基本、シロナさんと対っぽくしてるんですよ。
だからどーしても胸元全開?ホントこれさえなければ良いんですけどねー。」
思っていた事を見透かされた様なの言葉に苦笑いしながら
私はそれに関するコメントは避けさせていただきました。
女性の外見を評価するのは色々と問題がございますから…ね。
話を変えるという意味も含めて、私はさっきの話の確認を再度とりました。
「、先程トウヤさまに言っておりましたが
パーティが終わった後、貴女は逹の部屋には行かないのですよね?」
「はい、すみませんが私は部屋でポケモン逹とのんびりさせてもらいます。」
「では私がご一緒しますから、挨拶だけでもされてはいかがですか?
知らない間柄では無いのでしょう?彼等の口調を聞いていれば
それなりのお付き合いがあったと見受けられますし、その位しなければ
ではございませんが、筋が通らないのではありませんか?」
サイコソーダを飲もうとする手を止め、は眉間に皺をよせました。
そうするべきなのは、自分でもとうにわかってらっしゃるのでしょう。
本当に他人との関わりを徹底的に嫌われているのですね。
「やっぱりそうですよねぇ…、後からやの説教喰らうとか
それだけは勘弁して欲しいんだけどなー。」
「でしたら、パーティもそろそろ終わりそうでございますし
部屋に戻る途中という形で、少しでも話をされてはいかがですか?
それでしたら、もも文句は言わないでしょう。」
「ノボリさんって何気に世渡り上手さんですね。そっか、その手があるか…
それじゃあ、その時一緒に行ってもらって良いですか?
一人であの場所に入り込むのは怖いし、ちょっと自信がないんですよ。」
「…貴女は私を何だと思ってらっしゃるのでございますか?
こう見えてもバトルサブウェイのトップでございますからね
処世術はそれなりに身につけなくてはなりません、当然でございます。
あぁ、パーティ終了の放送が流れましたね、では参りましょうか。」
会場内にパーティの終わりを告げるアナウンスがあり
私はに手を差し伸べました。
ですが、一向に私の手を掴もうとせずに視線を彷徨わせております。
恥ずかしさもあるのでございましょうが、そこは押し通させてもらいますよ?
えぇ、掴んでもらえないのなら自分から掴むと宣言しましたので!
「一応貴女は体調不良という事になっているのですよ?
それにイッシュでは、この様に女性をエスコートするのは当然の事
ですから、私が恥をかかないためにも協力してくださいまし。」
「あーそっか、異文化の差が辛いかも…そう言う事なら、お願いします。」
この場で初めて、普段と同じ様に笑ってから、は私の手を取りました。
そして、あれからずっと色々と話をしていたのでございましょう
クダリ逹の所へ、いつもよりゆっくりと…体調の悪いを気遣うという
姿勢を崩さぬまま、近づきました。
「、トウヤから聞いた!それってこの前のが治ってないから?
明日からのバトル大丈夫?呼んで診てもらう?」
「バトルは問題ないです。ちょっと緊張したせいもあると思うんですよ。
だからゆっくり部屋で休みたいので、今日は達の所には行きません。
なんだか心配かけてしまってごめんなさい。」
「ううん、そんなの気にしないで!ゆっくり休んで?」
「はい、そうさせてもらいますね。
皆さん、お久しぶりです。ご挨拶が遅れてしまってすみません。
お聞きしてると思いますが、ちょっと体調が悪いので私はこれで…
ノボリさん、ここからは一人でも大丈夫です。
手を貸してもらえて助かりました、ありがとうございます。」
「友人でしたら当然の事でございます。
あまり気負わずに、今日はもう休んでくださいましね?」
「はい、部屋でポケモン達とのんびり休ませてもらいます。
トウヤ君、もう一度言うけどお酒は絶対ダメだからね?」
「わかってますってば!さんもしっかり休んで体調を戻して下さい。」
「あははー、私もわかってるから大丈夫だよ。
それでは皆さん、明日は素晴らしいバトルをしましょう。失礼します。」
はそれぞれに挨拶をすませると、改めて頭を下げて
エレベーターに乗り込まれました。
その姿を見送っていたら、クダリが傍に来て私に耳打ちしました。
「主演女優賞をあげなきゃなんない?ってかどんだけチョロネコいるんだろ?」
やはりクダリも気づいた様でございますね。
えぇ、全ては彼女の演技。そしてチョロネコの成せる技でございましょう。
クダリを見れば、仕方ないという感じで肩を竦めております。
「年季のはいったレパルダスも総動員させたそうでございます。
もっとも、私達に効果はございません。そうでございましょう?」
「あはは!そっか、そーいう所はボク達も見習わなきゃだね。
うん、ボク達に効果は無い。ってか、そんなの気にしない。
さーてと、今度はとのチョロネコ達を見に行こっか。」
クダリが可笑しそうに、口元に手を当てて私にしか聞こえない様に言うと
皆様を先導するように、エレベーターへ向かって歩き出しました。
とには彼等も同行することを敢えて告げてはおりません。
普段の、私達に接する状態の二人を、皆様にも見て欲しいのです。
今はまだ、のんびり酒を酌み交わしてるだろうとを思い浮かべ
人数の増えた来訪者を前に、慌ててチョロネコとレパルダスを背負う
二人を想像しながら、私も皆様と一緒にエレベーターに乗り込みました。