二章・強者達の夢の競演編 -英雄と白黒車掌、友人達の誤解を解く。-

二章・強者達の夢の競演編

英雄と白黒車掌、友人達の誤解を解く。



ボク達がホテルの部屋に入って、荷物整理が終わった時に、

エキシビジョンマッチの参加者は会場入りして欲しいって内線が入った。

耳をすませば、周囲のドアが開いて参加者が出て行ってるんだろうな。

エレベーターの中で一緒になっても、何を話せば良いかわかんないし

時間はまだあるからって、ボク逹はかなり遅れてから部屋を出た。


エレベーターに向かって歩いてたら、先客がいた。

ウェーブのかかった長い黒髪って、すっごく見覚えがあるんだけど!

でも、現チャンピオン代理が用意したって衣装じゃなくて

全身真っ白で、裾の方が薄い水色になってるコート?マント?を着てる。



「……でございますか?」



ノボリの声に振り返ったのは、やっぱりだった!

前にギアステに集まってきたマスコミを騙した時と似たようなメイクをして

ボク達を見ると、ちょっとだけ目を細めてから頭を下げた。



「私で最後だと思ってたんでビックリしました。

明日からのバトル、お互いに全力を出し切って頑張りましょうね。」



なんだか、いつもと雰囲気が違っててボクとノボリは顔を見合わせちゃった。

この感じは、前にシロナが来た時と同じ。

にとって、この大会は楽しむ為のものじゃないのかな?


エレベーターはボク達三人を乗せて、会場のあるフロアーに向かう。

狭い空間は沈黙の重苦しい空気がいっぱいで、息苦しささえ感じてきた。

結局何も会話が無いまんま、エレベーターのドアが開いて

それじゃあお先にって、はボク達の前を歩いて行った。



「クダリ、は本当に公の場に立つ事が嫌で仕方が無いのでしょうねぇ。

私も人の事を言えませんが、あの気の張り方は異常でしょう。」



「それ、ボクも思ってた。ホントは話しかけたかったんだけど

そんな事をしたら視線だけで一撃で倒されそう。

が自分のテリトリーに人を入れるなんてって言ってたけど

やっと意味がわかった!これって完全に自分のパーソナルスペースに

入れたくないって意思表示だよね?」



だけじゃない、も同じ事を言ってた。

それだけ、は人付き合いっていうか自分のテリトリーに誰かが入るのを

拒否して遠ざけてたんだって、やっとボク逹は今の状況を見て知る事ができた。


運営係の進行役の人達から、パーティの流れの説明を受けて

事前に参加する各チャンピオンや、トレーナー達の自己紹介があったんだけど

はその時でも誰とも視線を合わせようとしなかった。

それはパーティが始まって、マスコミの人達が色々聞いてきても同じ

一言二言答えると、頭を下げて別な場所へ移動する。

ボク達も色々と聞かれたりしてて、全部を見てたわけじゃないけど

大体がそんな感じで時間が過ぎるのをただ待ってるみたいだった。



「ノボリさん、クダリさん!」



大勢の人の輪の中から、トウヤがボク達に向かって手を振りながら傍に来た。

その顔はさっきまでの緊張した感じはすっかり無くて、スマイルだったから

ボクもノボリもちょっと安心した。



「いやー、変に緊張してたオレが馬鹿でした!

色んな人と話をしてたら、なんだか目から綺麗なウロコが剥がれた状態で

凄く考えされられたり、勉強になってます。

それでですね、今カントー地方とホウエン地方のチャンピオンの人達と話してて

ノボリさん達とも話してみたいって言われたんですよ。

お二人が良かったら、オレと一緒に来てもらえますか?」



「私達とでございますか?それは一向に構いませんが」



「ホウエンのチャンピオンなら仕事で取引してるからわかるけど

どーして、カントーのチャンピオンが?ボク達面識ないと思うんだけど?

まぁ、いいや!トウヤ、ボク逹は別に構わないから一緒に行く!」



トウヤの後ろについて行けば、雑誌やテレビなんかで見た事がある人が結構いて

ボクもノボリもちょっと身構えちゃった。

今ならの気持ちも、ちょっとだけわかるかもしんない。



「ノボリさん、クダリさん、こちらがホウエンの元チャンピオンのダイゴさんで

こちらがカントーのチャンピオンのグリーンさんと、パートナーのレッドさん

後、そちらが現ホウエンのチャンピオンのミクリさんです。」



「初めまして、私、サブウェイマスターのノボリと申します!

皆様の事は雑誌やテレビで拝見して、存じております。

こうして実際にお会いできて嬉しく思います。」



ノボリってば、なんだかトレインでのセリフが微妙に混じってるよ。

顔つきがいつもの仏頂面をもっと酷くした感じになってるけど

この面子相手だからって訳じゃなくって、初対面だからなんだろうな。



「初めまして、ボク、クダリ。ノボリと一緒、サブウェイマスターしてる。

明日からのバトルを楽しみにしてる!ヨロシクね?」



「本当に双子でそっくりなんだね。ぼくはダイゴ。

会社の方でそちらにはお世話になってますね、よろしく。」



「わたしはミクリ、ダイゴのパートナーです。

ホウエン地方ではジムリーダーを経由して、先代チャンピオンのダイゴが

事業が忙しくなったのをきっかけに、チャンピオンに着任しました。

バトル施設の人達は全員がバトルに特化していますからね。

ワンダフルでエレガント、そしてグロリアスなバトルを見せて欲しいです。」



「おれはグリーン、一応チャンピオンとか言われてるけど

本当ならこいつ…レッドがチャンピオンになるべきだから代理みたいなモンだ。

ほら、レッド!お前もクソ難しい顔ばっかりしてないで挨拶しろよ!」



「…宜しく。」



「かーっ!マジでそういう所直せっていつも言ってるだろう!

えっとノボリとクダリで良いよな?おれにも敬称はつけなくていいからさ!

話は変わるんだけど、そっちの職場にがいるってマジ?」



「グリーン、三人はこの二人が経営してるバトルサブウェイに

作業員として働いてるって、さっきから言ってるのに信じてないのかい?」



「…作業員?」



「あ、レッドも話し聞いてなかったんだろ!

そうだよ、あの三人がバトルトレーナーじゃなくて作業員で働いてるって

お前と同じ位のバトル狂がだぜ?そう簡単には信じられないよな!」



「彼等は元々仕事の合間に旅をしていたと聞いています。

わたし逹生粋のトレーナーとは違えど、バトルは大変美しかったです。」



皆、逹を知ってる…ってか、割と仲が良かったって感じ?

でも、思ったよりも気さくな感じでちょっと安心したかもしんない。



「あのね、も委託業者だけど

バトルサブウェイの職員として働いてもらってる。すっごい優秀!

はバトルトレインにも乗車してもらってるけど、負け知らず。

そっちでもすっごく優秀!後ね、三人共ボク達の大切な友達!」



「「「「え?」」」」



四人ともすっごくビックリした顔してるけど、ボクは変な事言ってないはず。

なんでそんなに驚かれるんだろ??



「ちょーっと待ってくれよ、クダリ…だっけ?顔だけ見てるとわかんねぇな!

はわかるんだが、が二人の友人とか、マジで?」



「これは驚きですね、も他人を寄せ付けない

近寄るなという雰囲気を常に周囲に張り巡らせていましたから。

現にあそこにがいるけど、誰も近づこうとしないでしょう?」



「「「あ…」」」



今度はボクとノボリとトウヤが驚いたけど、今のを見てだったら納得!

確かに…と言ってるノボリと、それに頷くボクとは違って

トウヤだけが、四人に向かって反論を始めた。



「オレ、さんにはシンオウでも、ここイッシュでもお世話になってます。

だけど、いつもはあんな感じじゃないんですよ?

もっとよく笑うし、すっげー優しいし…さんもそんな感じだから

ミクリさんの言ってる事の方がオレには信じられないです。

ノボリさんもクダリさんも、そう思いますよね?」



「えぇ、も、同様大変優しく愛情深い方逹でございます。

私達は上司でもありますが、プライベートでは友人として共に食事をしたり

大変仲良くさせていただいております。」



「ノボリさん…だよね?が優しいって本当かい?

彼は仕事でもバトルでも自分をしっかり持ってるし、二人と比べれば

確かに気さくだけど、一線を引いて周囲と接していたと記憶してるんだけど。」



「ダイゴさん…オレはそっちの方が信じられないです。

現にさっきも、すげー緊張してた俺を二人と一緒に励ましてくれてました。」



「…が来てるのか?」



「うん!だけじゃない、も来てる。仲間のが手配してくれて

ボク達と同じフロアーに部屋をとってる。

ボク達、このパーティが終わったらと一緒に合流する予定!」



トウヤの言葉にレッドが食いついた。っつーか、他の人逹もだけど。

だからボク、この後三人と一緒に部屋に集まるって言ったんだけど

横からノボリの肘鉄食らっちゃった!いったいなー、なんで?



「あの二人も来てるんだ!なぁなぁ、おれも一緒に行っても良いか?

どうもおれ逹の知ってるあの三人とイメージが違うから、確かめたい。」



「ぼくもと直接話をしたのは最初の材料請求の時だけだし

他の二人にも会いたいな。ね、ミクリもそう思うよね?」



「そうだね、わたしも良いかな?」



「…行く…。」



「ノボリさんとクダリさん、そんな大事な事を俺とトウコに内緒にしてるし!

俺達も行きますからね!そうだ!ちょっとさんの所に行ってきます。

んで、今の話をしておきますね!」



「トウヤ様、お待ちくださいまし!私もご一緒させていただきます。」



ノボリがボクの顔を見てる。うん、トウヤだけで行かせちゃダメ。

さっきのまんまのを前にしたら、トウヤきっと凄く困惑しちゃう。

あんまり頼りになんないかもしれないけど、それでもいないよりマシ?

ボクが頷いたのを見て、ノボリは急いでトウヤの後を追った。


前にがボクに話してくれた。

ボク達みたいに自分に初対面から馴染んで付き合える人がいなかったって。

それは、逹の過去が原因だったりしてるんだと思う。

別な世界からきて、こっちの世界で生きれるようになる為のミッション。

そんなのがあったせいで、逹は誰とも深い付き合いをしてなかった。

ボクはそう思ってる。だから、ボク逹の知ってるのが多分本当の逹。


目の前の人達はすっごく良い人たちばかりだと思う。

そんな人逹と知り合ってたのに、友達にならなかった…ううん、違う

なりたくてもなれなかったのかもしんない。

色んな事をそうやって突っぱねて、ミッションをクリアしたのかも。

だけど、はミッションをクリアしたんだから

これを機会に色んな人逹ともっと友達になっても良いと思う。


沢山大切な人を作っていく事が、にもにもにも

必要な事なんじゃないのかなってボクは思ってる。

だからその為だったら、ボクもノボリも協力を惜しまない。

大好きな人逹だから、大切な友達だから、変な誤解をされたくない。