二章・強者達の夢の競演 -課長の掌-

二章・強者達の夢の競演

課長の掌



ゲンナイ達がユノーヴァに戻ってしばらくして、

ギアステはいつも通り、変わらぬ業務の日々を送っておりました。


地上ではそろそろエキシビジョンマッチの話が持ち出され

テレビでも大々的な宣伝が始まりました。

流れる映像には各チャンピオンは映っておりますが、その相棒については

黒く塗りつぶされており、特別枠の私達も同様の扱いでございます。



「この塗り潰れてる感じって、ラスボスっぽいよね。

ボク達ももそんな感じになってて、ちょっと面白いかもしんない。」



食堂で遅めのランチを摂りながら、備え付けのテレビから流れる映像を見て

クダリがそんな感想を申しております。



「まぁ確かに、謎の部分?を持たせたほうが盛り上がりますからね。

期待外れだと言われないように、私達は頑張るだけでございます。」



特Aランチのデザートを食べながら、そんな事を言っておりましたら

午前中に有給をとっていた保全管理課の面々が食堂に入ってまいりました。



「ボス達、今頃ランチですか?

今日はチャレンジャーさんが多かったんですねぇ、お疲れ様です。」



、その前に言う事があるだろうが。

ボス達、急に有給を取らせていただいてありがとうございました。」



の言う通りだな。てめぇらがアララギ研究所がわからねぇから

結局は俺も有給使っての道案内になったんだからな。

ボス達、無いとは思うけど変わった事は?」



急に前日の就業時間後にが午前中だけでも有給が欲しいと

私達に申し出たときは驚きました。

ですが、それが旅立ちのポケモンを受け取るという理由でございましたので

快く了承した次第でございます。



「三人共おかえり&ご苦労様!変わった事は何も無し!

ねぇねぇ、旅立ちのポケモンをゲットしたんだよね?見せて見せて!」



「うっふっふー、見てその可愛さに倒れないでくださいよ?

私の新しい家族のポカブですよー!ポカブ、出てきてご挨拶してね?」



満面の笑みののボールから出てきたのはなんと色違いのポカブでした。

通常、一般のトレーナーには色違いは与えられないはずなのですが

これは、何かあったのでございましょうか?



「本来なら一般トレーナーには色違いはNGらしいんだが

俺等だったら問題ないだろうって事で、アララギ博士から頼まれたんだ。」



お前も災難だったなぁと言って、ポカブの頭を撫でるをみて理解しました。

あぁ、確かに一般のトレーナーに譲渡した場合、珍しさから他のもっと強い

ポケモンと簡単にトレードをしてしまう可能性もあるからでしょう。

ですが、でしたらその様な事は絶対にしませんので

アララギ博士もそれを見込んで、ポカブを託されたのでしょう。



「そっか、でものポケモンって感じがするよね?

初めましてポカブ、ボクはクダリ。よろしくね?」



「えぇ、のパートナーになるべくしてなった子でしょう。

ポカブ、私はノボリと申します。仲良くしてくださいましね?」



私達の挨拶に、ポカブが少々恥ずかしがりながらも答えます。

その様子がとても愛らしくて、私もクダリも微笑まずにはおれませんでした。



「そう言えばの子は?貴方は水タイプをいつも選ぶのでしょう?」



私がに向かって聞くと、彼は困ったように肩をすくめてしまいました。

隣でも苦笑いをしております。



「なんて言えば良いんですかね…結論から言えばもらえなかったんですよ。」



「ミジュマルがいた事はいたんが、その子がのパートナーに

なりたくねぇって駄々をこねちまって、あげくに泣き出しちまってな…」



「「え?」」



同様にポケモン達への愛情が深い方なのに信じられません。

ですが、よくよく話を聞けばその子は男性…そして大人が苦手とわかって

私達も納得いたしました。

ポケモン達にも選ぶ権利がございますから、今回は仕方がないでしょうね。



「それじゃあどーするの?代わりの子が見つかるまで待ってるの?」



「それが、俺等の申し出が急だったから、それも難しいみたいで

困り果ててたら、博士の助手だっていうベルって子が

トウヤ君がタマゴを持ってるって言って連絡をしてくれたんです。

それで、その子を譲ってもらう事に話がつきました。」



「トウヤ様のダイケンキの子でしたら、素晴らしい子でございましょう!

研究所では残念でございましたが、ポケモン達も選ぶ権利がございます。

それを責める事は誰にもできませんからねぇ。」



「えぇ、俺も嫌がる子を無理やりパートナーにしたくないですから。

その子とは縁が無かった…それだけの話です。」



確かにポケモン達との出会いはその一言につきるでしょう。

縁…それはポケモンだけでは無く、全ての出会いにも言える事でございます。



「あ…トウヤ、こっち、こっちにいたよ!皆さん、こんにちは!」



「こんにちは!ノボリさん達も一緒だったんですね。

さん、これが話してたタマゴです。大切に育ててくださいね?」



元気よく挨拶をされた後、トウヤ様がタマゴを渡しました。

ありがとうと言って受け取ると、はタマゴを優しく撫でて微笑まれます。



「ミジュマル…俺がお前のパートナーになるだぞ。

こっちの世界は辛い事もあるかもしれないが、俺と一緒に乗り越えような。

それ以上に楽しい事や嬉しいことも沢山あるから、早く生まれてこいよ。」



「うわー、さんってばお父さんみたいな顔になってる!

でも、そんな顔もとっても素敵です!」



さん、その子が生まれるまでにはまだまだ時間がかかりますよ?

今からそんな事言っても、まだわからないと思うんですけど。」



トウコ様の言う通り、タマゴを見つめる顔は我が子を慈しむ様な表情で

なんと言いましょうか、見てるこちらも神聖な気持ちになりました。

トウヤ様はに、タマゴは生まれてすぐにボックスに預けていたと

説明しておりますが、は笑いながら二人に向かって話し始めました。



「二人共、子供ってのは生まれる前でも、大切なひとつの命だ。

その命に向かって、色々と話しかけたりするのは当たり前の事だろう?

わからないって、どうしてそうやって決めつけられるんだ?」



「トウヤ君もトウコちゃんも、タマゴに話しかけたりしないのかな?

俺達は結構孵化作業をしてる時でも、無事に生まれておいでって

話しかけたりしてるよ?そうする事で、生まれてきた子はなんだか

普通より懐くのが早い様な気もするんだよね。」



「私は孵化作業ってした事がないから、よくわからないんだけど…

タマゴでもポケモンは皆可愛いと思ってる。

だから、私もタマゴに向かって今日は暖かくて天気が良いよとか

バトルが終わった時に、凄い音とかしてびっくりさせてゴメンネとかって

普通のポケモン達と同じ様に話しかけてるよ?

そうやって話しかけてから抱きしめてるとね、なんだかタマゴの中から

中の子の気持ちが伝わってくるって感じる時も結構あるんだ。」



三人の言葉に私は胸が熱くなりました。

ポケモンを愛する事に、私もクダリも誰にも負けないと思っておりましたが

今の話を聞いて、私達は脱帽するしかございません。

クダリも同じ様に感じたのでございましょう、隣で苦笑いをしております。



「ボクもノボリも、そして多分トウヤもトウコも忘れてた事かもしんない。

あのね、最初にポケモンのタマゴを受け取った時を思い出して?

達と同じ様な事をしなかった?早く生まれておいでって思わなかった?」



「「あ…」」



トウヤ様達も気づいた様でございますね

これはどんな時でも忘れてはならない事でございましょう。



「二人共、ポケモンもタマゴも全て愛すべき存在でございます。

孵化作業を何度も繰り返して、慣れて忘れておりませんでしたか?

私達には見慣れた誕生の景色でも、生まれてくる子には初めての事

いつでも、その時の気持ちを忘れずに接してあげたいものでございますね?」



「私、すっかり忘れてました。

そうですよね、タマゴから出てくる子は全部が全部初めてなんだもの

私達がようこそ!って言ってあげなきゃならないですよね。

こんな大事な事忘れてたなんて、トレーナーとして失格です。」



「俺も、生まれてきたら厳選して、それ以外の子達をちゃんと育てて

野生に返さなきゃって、先走ってて肝心な事を忘れてました。

ポケモンは大事なパートナーだって言ってるくせに…」



下を向いてすっかりしょげかえってしまわれた二人にが近づき

肩に手を置いてから二人に視線を合わせるように前屈みになりました。



「気がついて反省したんだったら、今度から直せば良いんじゃないかな?

孵化作業とか厳選作業とか言われてるけど、本当は作業じゃないんだ。

そういう気持ちで、これからのバトルを考えてみると良い。

そうする事で今までと違う面が見えてくるかもしれないよ?」



「ボクもノボリもそれで結構悩んだ時期がある。

勝利を目指す時にこれは絶対にぶつかる壁かもしんないけど

二人なら乗り越えてくれるって信じてる。」



やはり二人共素晴らしいトレーナーでございます。

私達の言わんとする事をきちんと理解して、自分達を反省しております。

二人の言葉を聞いて、トウヤ様とトウコ様はお互いを見つめ頷きました。

どうやら、自分達がこれからどうするべきかが理解できたのでございましょう。

これからの二人のバトルがどう変化していくのか、楽しみでございます。



「さーて、まずはエキシビジョンマッチまでに生まれてくる様に

頑張らないとならないな、ボックスからマグカルゴを出しておくか…」



「そーだね、それじゃないとこの時期に旅立ちのポケモンを

ゲットした意味がなくなっちゃうもんねー。

頑張れー、生まれたらうちのポカブとバトルしよーね!」



が拳を突き合わせて笑いながら話しておりますが

その意味を理解できなかった私とクダリ、トウヤ様とトウコ様は

それを見て首を傾げてしまいました。

それに気がついたが私達に向かって、その理由を教えてくださいました。



「やっぱり良いバトルを見せる事が、その子の成長にも影響を与える。

エキシビジョンマッチは、まさにうってつけだよね。」



「あー、そうですよね!うっし、私も育成中の子連れて行こう!

きっと皆ワクワクしながら見るんじゃないかな?」



「オレも!って、オレは参加する方だから無様な負けは見せられねぇええ!

うわー、これってすげープレッシャーじゃねーかっ!」



もそーいう所が凄いよね。

流石はマスターランクのトレーナー?ボクも育成中の子連れて行く!」



「私も、育成中の子がおりますので連れて行きますとも!

そして次の時代を担う子達に、最高のバトルを見せてあげましょう!」



全員がそれぞれに育成中の子がいる為、どの子を連れて行こうかと

話をしているのを見ながら、は笑っておりました。



「ミジュマル、お前のライバル達はどれも強敵になりそうだぞ?

お前も生まれてきたら俺と一緒にバトルをして、強くなろうな!」



生まれる前からこの様に愛されているミジュマルはきっと強くなる事でしょう。

優しくタマゴを撫でながら、大切に育てるからなというのつぶやきに

彼の愛情深さを思わずにはいられませんでした。

私も、全てのポケモンに同じ様に愛情を向けたいものでございます。