二章・強者達の夢の競演編 -旅立ちは目前に-

二章・強者達の夢の競演編

旅立ちは目前に



バトルトレインの乗車も一段落して、執務室で書類整理をしていたら

ノックと共に、書類を手にしたが入ってまいりました。



「失礼しますー。すみません課長は戻ってきてますか?」



部屋の中をキョロキョロしておりますが、今は私とクダリのみで

何事かと目線を送れば、は書類を高々と上げて私達に見せます。



「じゃーん!この前の熱絶縁施工技能士の試験結果が来たんですよー。

結果はこの中に…ってか、書類が届いた時点で受かってるんですけどね!」



「うわー、二人共無事に合格して良かった!」



「えぇ、ゲンナイはこれでユノーヴァでの仕事の基盤ができますね。

どちらにしろ喜ばしい事でございます!」



二人共仕事の合間に試験勉強を懸命になさってたので

その努力が実られて本当によろしゅうございました!

クダリと二人で自分の事の様に喜んでおりましたら

丁度仕事を終えて、とゲンナイが執務室に入ってまいりました。



「ただ今戻りました。ゲンナイ、今の現場の報告書の作成を任せる。

後は、こっちの見積についてなんだが、最後に計算の確認をしたか?

ここな…ほら、この部分をダブって請求してる事になってるぞ?」



「マジっすか?!ちょっと見せてもらえますか?

…あちゃー、申し訳無いっす!どっちの書類もすぐにやります!!」



入ってきてすぐに仕事の話をしている二人の傍に寄って

がゲンナイが見ている書類を横から覗いてから、難しい顔をしました。



「ちょっと待って、ゲンナイ君…この書式はちょっと問題有りだよ?

ほら、ここの表記が凄くわかりにくいでしょ?

だから、見積がゴチャゴチャしててこういうミスを起こしちゃうんだよ。

それと、何度も確認が必要だって前にも言ったよね?

うちらの仕事は信用第一、一度の失敗で次の仕事を無くすんだよ?

人を使って、頭をはってるならもっと自覚しないと駄目でしょう!」



「うっ…返す言葉すら無いっす…。」



「当たり前だ、お前のやってる事は昔の下っ端時代のまんまだ。

今はもう違うんだから、そういう所を自覚しなくちゃ筋が通らないだろう?

人を使うなら尚更だ。そいつの生活はお前が背負ってるって自覚しろ。

書類の書式については、うちので良ければ参考に使え。」



「はい、俺ちょっとそういう自覚が足りなかったかもしれないっす。

書式については、すみません…そういうの苦手なんで参考にします。」



の両方からの叱責に、すっかりしょげてしまわれました。

ですが、二人の言い分は当然でございましょう。

ゲンナイはまだ若いですが、すでに独立されてらっしゃるのですから

トップとしての自覚をもっと持った方が良いでしょうね。


手の中の書類に承認のサインをして、処理済みのボックスに入れて

ふと、私は考え込んでしまいました。

いつの間にか、他人にトップとしての自覚云々と言える様になってたんですねぇ…

以前と比べれば、私も多少は成長しているという事なのでございましょうか?

もしそうならば、嬉しいですね。

尚もから色々と指摘を受けているゲンナイを見て笑ってしまいました。

それに気がついたのでしょう、どこかバツの悪そうな顔をしております。



「ノボリボスぅ…そこは笑う所じゃ無いっすよー!」



「ふふっ…これは失礼いたしました。

ですがゲンナイ、貴方はユノーヴァに戻って保全管理のトップとして

業務全般をしなくてはならないのでございますよ?

あちらは徹底して効率重視、ミスは許しませんのでお覚悟くださいまし。」



私が指をピッピの様に振りながら言えば、とうとうゲンナイは

借りていたのデスクに突っ伏してしまわれました。

えぇ、あちらの連中は更に情け容赦は無いのでございますからね。

が苦笑いしながら、手にした書類でゲンナイの頭を叩いております。



「責任重大な所、さらに追い打ちかけさせてもらうよー。

ほい、ゲンナイ君と…あとは課長、試験の合格通知がきましたよー。

二人共おめでとう&お疲れ様!んでもって、これからももっと仕事に

精を出して頑張りましょー!って感じ?」



「おう、これで色々と動きやすくなるな。

ゲンナイ、お前もこれだけじゃなく他の資格をとる事も視野に入れておけ。

手に職さえあれば、仕事は選ばない限りいくらでもある。

家族がいる、下に若い奴がいるのなら尚更だろう。」



「それはアニキにしっかり叩き込まれてるんで、わかってるっす!

うし、これで仕事に幅が出る。若い奴らにも色々やってやれる!」



試験に合格したと聞いて、ゲンナイはやおら立ち上がり

両手を握り締めてガッツポーズをされました。



「おめでとう!ゲンナイは一人じゃない

支えてくれる人もいるけど、支えなきゃいけない人もいる。」



「おめでとうございます!そうでございますよ?

あちらの…ユノーヴァのバトルサブウェイの委託業者に抜擢された事に

慢心する事なく、さらに上を目指してひた走ってくださいまし!」



以前、休み時間にゲンナイと話す機会があり

彼の、の下で仕事をする前の凄惨な過去を聞かされておりました。

幼い頃に両親を亡くし、施設を出てからは学も後ろ盾も無く

どんどん悪事に手を染めたと、他人事の様に話す内容に驚きました。


と出会い、弟子として仕事をする日々の中、生まれ変わったのだと、

自分にも出来る事はある、誰に恥じる事なく胸を張って生きていける

その全てを教えてもらったのだと嬉しそうに言っていた

ゲンナイの顔は今でもはっきりと思い浮かべる事ができます。



「クダリボス、ノボリボスにも色々とお世話になりました!

二人のお互いを思いやって、支えあってる姿が大好きなんです。

俺も、カミさんとそうやっていきたいなぁって思ってるっす!」



恐らく、これまで非常に苦労する事もあったでしょうに

それを感じさせない、一点の曇りのない笑顔を見ていると

こちらまで心が晴れやかになりますね。

そして、私とクダリの繋がりをその様に思っていただけるとは

少々気恥ずかしくもありますが、嬉しくもございます。


私とクダリが少々照れながら、ゲンナイに向かって頷けば

が苦笑いをしながら、彼の頭を小突きました。



「ゲンナイ、取り敢えずおめでとうと言っておくがな

これで終わりじゃないんだ、むしろこれからが始まりだと思え。」



「アニキ…はい、俺は…昔の俺みたいな奴に手を差し伸べたいっす。

そして、そいつらにもアニキや俺と同じ様にしていって欲しい…っす。」



「あまり気負うなよ。こっちでいくら手を出したって

本人が掴もうとしなきゃ始まらない、それは覚えておけ。」



「了解っす!でも、アニキは強引に俺の手を掴んでましたよ?」



「お前が本当はどうしたいのかってのが、なんとなくわかったからな。

意地を張ったってどうしようも無いが、そうしなきゃやってられない

そう言う事もあるのは俺も知ってるんで、放っておけなかっただけだ。

さぁ、覚悟を決めろよ?これからお前が向かう現場は思っている以上に

シビアだが、あの連中は出来る奴には相応の態度を取るんだ。

お前の真価が問われるだろうが、良い職場だと思うぞ?」



らしい考え方でございますね。

決して人を否定しない、有るがままを受け止めて、手を差し伸べる。

必要以上甘やかす事は無くても、完全に突き放す事も無く

いつも、遠くから見守る様子はゲンナイにとっても心強かったでしょう。

傍でが腕組みしながら頷いておりました。



「うんうん、インゴボスもエメットボスも冷血漢とか言われてるけどさー

仕事の出来ない連中には、うちらだって同じ態度をとるんだし?

つまりはそーいう事なんだから、自分の仕事をすれば良いだけ。

どこに行ってもやる事は変わらないんだから、それをすれば良いんだよ。」



「あっちのボス逹のやり方は、俺は嫌いじゃないっすよ?

こっちの意見とか考えをキチンと聞いてくれますからね。

その上で、それじゃあこうして欲しいとかって要求が来るだけっす。

出来ない事は要求しないし、無理難題も言わないし

下手な元請けよりもずっとやり易いっす!」



「えー、ゲンナイはあの二人をそんな風に見てたんだ?」



クダリがゲンナイの、あの連中に対する評価に驚いておりますが

私も同じ意見でございます。

ですが、彼の言う通り出来る範囲の限界までは要求いたしますが

出来ない事を要求する事はありませんね。

そう考えれば、冷血漢、唯我独尊、ワンマン経営という言葉も

些か語弊があるのかもしれません。



「俺等は自分の仕事をすれば良いんだから、怖がる必要も無いだろう?

、ユノーヴァに連絡を入れてくれ。

必要があればゲンナイと話させれば良いし、そうじゃないなら

お前が帰る段取りをして構わない。」



「ほいほーい、了解でっす!

さーて、これからまたちょっと忙しくなるぞー。楽しいぞー。」



「姐さーん、そこは俺達がいなくなると寂しいって言う所っすよ?」



「えー?可愛い弟分が成長して旅立つんだよ?

寂しいって言うよりも、よく頑張った、これからも頑張れ!って方が強いよ。

うちら職人の繋がりって、そういうモンでしょ?

んじゃ、仕事場に戻ってあっちと話をしちゃいますね。失礼しましたー!」



そう言うと、書類をに預けては仕事場へ戻って行きました。

は自分のデスクに座って、受け取った書類を眺めながら

のデスクで書類作成に四苦八苦されてるゲンナイに声をかけました。



「さぁ、ゲンナイもさっさと書類を片付けろ。

後、こっちの諸々の用事が落ち着いたら、俺かが一度ユノーヴァへ

仕事ぶりを見に行くからな、半端な事していたらぶっ飛ばすぞ。

これが終わらないと、俺等はジム巡りを始められないんだ。

さっさとケリをつけさせてもらう。」



諸々の用事とはエキシビジョンマッチも含まれているのでございましょう。

そして、ユノーヴァへのどちらかが行くのは

事前にあちらから要求されていた事でございますから、仕方がありませんね。



、その前にアララギ博士の所に行かないと駄目。」



「ジム巡りの前に旅立ちのポケモンを受け取り、しっかり育てなくては…

全てはそれから…で、ございましょう?」



「その辺はこの状態が落ち着いたら動くつもりです。

こちらの業務に支障はきたしませんので、安心してください。」



規約にて、業務中でもジム巡りが許可されておりますのに

は、それは自分の仕事のポリシーに反すると言われて

あくまでも業務優先を譲りませんでした。

まぁ、そういう所が二人らしいと言えばそうなんでございますけどねぇ…

頬杖をついてを見れば、彼は既に業務に専念しており

書類を見ながら、キーボードを叩いて何やらされておりました。


二人がジム巡りをすると宣言した朝礼から、色々と手持ちポケモンをどうするか

その様な事も二人は既に考えている様でございます。

主力メンバーのポケモン以外はゲットしないと言っておりますから

その子達の厳選も必要になってくるでしょう。


ゲンナイが旅立つという事は、その後もそれぞれに旅立つ

そういう事になるのでしょうね。

離れていても繋がっている…それは職人同士だけではありません。

友人でも同じ事が言えるでしょう。

私逹も、その様なしっかりした繋がりを持ちたいものでございます。