二章・初志貫徹編
譲れない思いを抱えて、ひた走れ!
とが泊まって一緒に早めに出勤してから
私達は施設設備に関する修繕改修状況を聞くとともに
今後の業務計画の書類を受け取り確認させていただきました。
「あー、そろそろも出社してくるかも?
、悪いんだけど作業部屋のドアにコレ貼っておいてくれる?」
コピー用紙の裏に書かれた文字は
〈へ、着替え終わったら執務室まで来てね!▲▽〉
…せめて私達の名前位はキチンと書けと…
それを受け取ったが使いパシリとはいい度胸だと言いつつも
席を立ち、笑いながら部屋を出て行きました。
「三人共凄いよね。あれだけあった修繕とかの要望を殆ど終わらせてる?
それだけじゃないよね?色々と各企業との連携とかの企画も出してるでしょ?
今回は特にが提案して動いてた、人身事故とかそういう時のための
怪我人の搬送の連携が役に立ったし、安全管理のマニュアルだって
が見直しして、提案したって聞いてる。」
病院との連携につきましては、まだ試験段階ではありましたが
今回の事件でその重要性が判明したので、このまま実現するでしょう。
緊急時の一般客への誘導や立ち入り禁止の対応も
今回の事件で素晴らしい功績を挙げましたので、これも同じくでしょうね。
「俺等は色々な施設を見てますからね。だから色々と気がついた事を
ここでもやってはどうかと提案したに過ぎません。」
コーヒーサーバーのセットが終わって、淹れたてのコーヒーを持ってきて
が笑いながら私達に渡して下さいました。
火傷に気をつけながら一口飲めば、独特の風味が身体に染み渡ります。
「私達は恥ずかしながら、ここの施設しか存じません。
なので、貴方逹の様に他地方の施設を知っておられる方の意見というものは
とても参考になりました。サブウェイマスターとして、感謝いたします。」
「うん、それ以外にもボク達が未熟だった事も叩き直してくれた!
ここの皆も、色々と今回の件で考える事があったみたい。
三人のやった事は、確実にここで生かされてる。ありがとう!」
「はは…そう手放しで褒められると照れくさいな。
お二人のトップとしての姿勢が部下にも行き渡ってるからなんでしょうね。
俺等こそ、そういう職場で働ける事を嬉しく思います。」
感謝の言葉を述べると、逆に私達や部下の皆さんが褒められてしまいました。
それが嬉しくもあり、なんだかくすぐったい気持ちになります。
今回の件で、私達は多少でも三人に近づく事ができたのでしょうか?
もしそうだったのなら、とても嬉しいですね。
「ただ今戻りました。ついでにお騒がせな部下も連れてきたよ。」
「主任、それは酷すぎる!おはようございます、お話があるって事は
例の件について…なんですよね?」
コーヒーを半分程飲んだ頃に、がを連れて戻ってまいりました。
さて、これから色々と言わせてもらうといたしましょうか。
まずはクダリが口火を切ります。
「うん、からの辞表を受け取った。
あのね、結論を言う前にボク達色々聞きたい事があるんだけど良い?」
「えぇ、構いません。辞表についてはお騒がせした責任って事だけじゃなく
私がジム巡りをしたいからって個人的な理由もあるんです。
申し訳ないとは思いますが、どうかそのまま受理していただけませんか?」
ジム巡りの理由を敢えて言おうとしないという事は、
やはりミッションが絡んでいる為だからなのでございましょうか?
ですが、それにつきましても私達は言及する所存でおります。
「、単刀直入に聞かせていただきたいのでございますが
急にジム巡りをと言い出したのは…ミッションの為でございますか?」
「…えぇ、私のミッションをクリアする為にはどうしても殿堂入り…
まぁいつも通り辞退させてもらいますけどね、が必要なんです。」
やはり、私達の知らない伝説級のポケモンが絡んでいるのでしょうか?
そうでなければ、殿堂入りが最低条件等有り得ないでしょう。
から受け取った紅茶を一口飲んで、更に言葉を続けます。
「本来ならまだまだ仕事が残っている状況で、中途半端な形で
ここを辞めなくちゃならないってのは、したくなかったんですけどねー。
今回は図鑑埋めをするつもりは無いんですけど、やっぱり無理です。」
「図鑑埋めをしないって事は、手持ちを増やしたくないって事なの?」
「えぇ、ミッションにはその必要はありませんからね。
だから、最低限の主力メンバーだけを集中して育てて挑むつもりです。」
「もし辞めるとすれば、すぐにでもと言う事なのでございますか?」
「いえ、エキシビジョンマッチが終わってから…そう思ってました。」
「うん、取り敢えず聞きたかった事は全部わかった。
、今日の朝礼に一緒に来てもらうから。そこで皆の前で話す事がある。
も、そしてもちゃんと聞いてね?この話はそれからにする。」
「、一応職員の皆様はあの状況を知っております。
ですが、貴女も直接色々とお話されたいでしょう?
朝礼が始まってその様に進行させますので、そのつもりでいてくださいまし。」
私達の言葉に首を傾げながらではございましたが、は了承しました。
丁度時間になりましたので、さっそく朝礼へ向かえば
ミーティングルームには既に皆様が集まっておられました。
私達は最初にそれぞれの本日の業務予定を聞いて、それから一歩前に出ます。
「先日の事件で療養していた保全管理課のが、本日より復帰いたします。
まだ体調面で少々問題がございますので、皆様フォローをお願いいたします。
では、貴女からもお話をしてくださいまし。」
私が促して、が隣に立ち皆様にむかって深々と頭を下げました。
頭の傷はいつものタオルで隠れて見えませんがまだ縫合されたままとか…
全員が、痛々しい表情になられてしまいました。
「私の独行で事態を大きくしてしまった事を深くお詫びいたします。
ですがこれだけは言わせて下さい、皆さんは自分達の職場をもっと誇るべきです
ここはバトル施設としてだけではなく、ポケモン達への配慮も素晴らしい。
それはサブウェイマスターのボス達と皆さんの努力の結果です。
周囲の理解を得る事で、この施設が一層の発展をとげると私は思ってます。
一介の委託業者ではありますが、各地方のバトル施設を見てきた私の
率直な意見を述べさせていただきました。
今回の件、私の処遇は全てボスにお任せして従うつもりでおります。
皆さん、大変お騒がせして本当に申し訳ありませんでした。」
やはり、退職する前提で話をしてきましたか…。
の発言で職員に動揺が走ります。それを今度はクダリが前に出て
皆の顔を見渡しながらいつもより大きめの声で話し始めました。
「あのね、ボク達はサブウェイマスターに就任した時に言ったはず
バトルの廃人だけじゃない、ポケモンを好きだって事と職場が好きだって事
その全部でも廃人になる位になろうねって。
ボク逹はその意見のまとめ役なだけ。皆と一緒に頑張ってきただけ。
ギアステは家で、皆は家族ってずっと言ってきた。」
「えぇ、その点に甘すぎる、机上の空論と批判された事もございました。
ですが、私達はそれでも貫き通しましたよね?
その結果バトル施設初の事例が上がる程の功績に繋がりました。
つまり、私達は間違ってはいなかったのでございます。」
「ボク逹はこれからエキシビジョンマッチでそれを証明するつもり。
だから皆も、やる事はいつもとおんなじだけど頑張って欲しい。
ボク達の職場はすっごい職場なんだって、色んな人に知ってもらって
そして、ポケモンもトレーナーもどっちもスマイルになる様なバトルを
沢山して、みんなでスマイルになろうね!」
私達の話が終わった後に、職員の皆様方の歓声があがりました。
皆様も同じ考えでいらっしゃるのがわかって、私も嬉しく思います!
未だざわついている状況で、クダリが片手を上げて皆様を制します。
さて、ここからは別な事で歓声を上げていただきましょうか。
「、、もう一度前に出てきて?」
今まで後ろに下がっていた二人は急に呼ばれて驚いておりましたが
そのまま私達の隣に並びます。それを確認して私は口を開きました。
「委託業者ではございますが、今回との二名が
イッシュのジム戦にチャレンジする事になりました。
何分少人数の部署でそれも二名同時の事ではございますが
二人なら無事に終える事が出来ると私達は確信しております。」
私の言葉に職員のあちらこちらから、おぉ!とか声があがります。
もも何が起きているのか理解できていないのでしょうね。
クダリが私の言葉につづいて、確信に触れます。
「ここでは久しぶりの業務とジム巡りの並行になる。
でも、過去にもそうやって頑張ってきた人達が沢山いるんだからオッケー!
皆、二人に協力してあげて?そして旅の成功を祈って欲しい。」
「私達からの話はこれで終わりでございます。
皆様、本日も素晴らしいバトルを目指して出発進行してくださいまし!」
朝礼の終わりを告げれば、職員達は一斉にとの周囲に集まります。
旅立ちのポケモンは何にするのか?そして、ジム戦のルートなどを
口々に二人に告げる様子は、見ていても微笑ましいですね。
「うわわ、ちょっと待ってください。ボス達!これはどーいう事ですか?!」
「あぁ、その点は問題ありません。はい、そちらも並行して行えます。
ボス達、俺等は全然話が見えてないんでわからないんですが!」
「あはは!それは執務室で話させてもらう。」
「ふふっ、私達は先に戻りますので落ち着いたらいらしてくださいまし。」
そう言って私達は一足先に執務室へ戻りました。
インカムで内容を聞いていたが、どういう事かと私達に詰め寄った時に
疲れきった表情をしたとがミーティングルームから戻ってきました。
「ボス達…やらかしてくれましたね?!
ってか、私達は委託業者ですよ?そんな特例使うとか職権乱用でしょーが!」
「流石は廃人施設って言うべきなんだろうけどな。マジでビビったぞ!!」
「…てめぇら、俺にもわかる様に説明しろ!」
三人が困惑している表情を見れるなんて、してやったり!という所でしょうか?
クダリと二人顔を見合わせて親指を立てて喜んでしまいました。
「あのね、ここは業務と並行してジム戦にチャレンジする事を許可してる。
その為の旅費とかは免除できないけど、その間は特別有給扱いになる。」
「えぇ、一般のトレインの方がバトルトレインへ転属されたりして
ジムバッジが必要になった事も多々ございましたので
私達がサブウェイマスターに就任してから、その様に改善いたしました。」
「二人共委託業者って言ってるけど、待遇は正社員と同じって忘れてる。
だから、二人にもそれが適用されるのは当然の事。」
「後、育成につきましても希望があれば各種アイテムを無償で提供します。
努力値振り分けにつきましても、それぞれトレーナーの手持ちに
丁度良い子が勢ぞろいしておりますので、フィールドでの育成は不要。
全て、当施設内で可能となっております。」
「後、業務計画を見せてもらったけど、どれも緊急を要するものじゃない。
遅らせても問題はないから計画書を書き直して?
二人がジム巡りをしながらでも仕事が出来る様に調節して欲しい。
だからが辞める事も、がジム巡りを諦める事も全く必要ない。」
「えぇ、何かご意見がございますのなら聞かせてくださいまし?」
三人を見る私達の顔はきっと悪タイプの様でございましょうね。
えぇ、ここは色々な意味で廃人施設なのでございます!
「うははははは!、、逃がしては貰えねぇみたいだぞ?
これは腹を括って、一蓮托生でさっさと殿堂入りまで済ませちまえ。」
「しっかし、こんな待遇とかマジか!一体どこまで福利厚生が凄いんだ?」
「あーもう!廃人施設は伊達じゃねぇって感じ?
ダメだ、色々と抜け道を考えたけど全部手が回ってるとか勘弁してー!」
三人が色々と言っておりますが、その顔には笑顔がありました。
えぇ、私達は優秀な部下で友人である貴方達を手放す気は毛頭ございません。
その為には持てる手札は全て使わせていただきますとも。
「、この退職届けはもう意味が無いから返す。
三人に言っておく、ボク逹は上司としても友達としても一緒にいたい。
その気持ちは出会った時から変わんない。だから諦めて?」
クダリがに辞表を返しました。
はそれを受け取ると私逹の目の前で真っ二つに破りました。
その行動に二人で驚けば、ニヤリと音が聞こえそうな笑みが帰ってきました。
「もう、こーなったら自棄ですよ!すっごいバトルをして
リーグ制覇最短記録作ってみせますからね!、今度有給取ろう。
んで、アララギ博士から旅立ちのポケモンもらってこよう!」
がとハイタッチを交わして、怖い事をいっておりますね。
ですが、その表情は以前の独りになろうと私達を避けていたものとは違い
とても明るく見えました。
ジム戦…果てはチャンピオンとのバトルを想定して
とが、先に撃破したと意見を交換している様子を見て
私とクダリはやっと全てが終わって落ち着いたのだと感じました。
今回の事件を機にそれぞれの貫きたい事がわかりました。
そして、私達も自分達の貫くべき事を再確認いたしました。
クダリと二人で目の前の光景を見て、そしてお互いに顔を見合わせて頷きます。
譲れない思いは誰にでもございましょう、ですがそれらが反発するのではなく
お互いを高めあえる様に、そうして共に歩ければ素晴らしいですね。