二章・初志貫徹編 -一難去ってまた一難?-

二章・初志貫徹編

一難去ってまた一難?



スーパーマルチをたっぷり堪能して、執務室に戻る途中

保全管理課の仕事部屋からなんだか話し声が聞こえてきたから

ボクとノボリは好奇心からちょっと覗いてみた。



、外にまで声が聞こえてたけどどーしたの?」



「あ、ボス達お疲れ様です。バトル三昧で満足したって顔してますねー。

この分だとトウヤ君とトウコちゃんは勝利できなかった?」



「えぇ、ですが一戦毎に強くなられてますよ?

はゲンナイと…書類のお話をしておられたのですね。」



うん、ボク達に勝つってのはもうちょっと先になるかもしんないけど

それでも、油断は出来ない感じになってる。

部屋の中に入れば、ゲンナイがデスクに突っ伏してる。

そして、その後ろにはインゴとエメットが二人のやり取りを見てた。



「えぇ、自分で上に立って仕事をしてるから

以前よりは書類とかも結構見られるようにはなってるんですけど

まだまだ改善する部分があるんで、それをちょっと…ね?」



「ちょっと…ね?じゃないっすよー!

うわー、オレの今までやってきた事全否定とか凹むっす…」



「ゲンナイ、諦めた方が良いと思うヨ?は仕事ニハ容赦ないからネ!」



の意見は全て当たり前の事でゴザイマス。

ユノーヴァに戻るのデスカラ、しっかりと頭に叩き込みナサイ。」



うわー、このメンバーに囲まれてとかゲンナイじゃなくてもへこむよ!

ボク達が見てる間にも、はゲンナイの作った書類にラインを引いて

なんだか色々説明してるし。



「この部分の表記はうちら職人には通じても、普通の人には無理だよ?

書類は誰が見てもわかるように!読ませる相手を子供だと思って

表現を簡潔明瞭、手短に!これが基本なんだからね。」



「ふぁい…」



「読ませる上司を子供扱いとか、らしいヨネ!」



「オマエは十分子供だから、この位しなくてはならないデショウ。」



の書類はすごくわかりやすいのは知ってたけどさ

子供に読ませるつもりで作られたとか…読んでる上司ってボク達なんだけどな。

確かに達の仕事って専門用語が多くて大変だけど、それでも…ねぇ?


ゲンナイに頑張れって言って、ボク逹は執務室へ戻った。

暫く書類の整理をしていたら、一人が戻ってきたんで

あの連中は?って聞いたら、自分達のやる事は終わったからって帰ったとか。

来る時も帰る時も突然なのは今更なんだけど、ホント勘弁して欲しい!


応接スペースのソファーで、リグレーがネイティに擦り寄って甘えてるのを

まるでお母さんみたいな顔しては見てから、のデスクの上にある

書類のいくつかを取り出して、なんだかと話し始めた。

仕事を始めるのは明日からって言って、着替えてもいないんだけど

これじゃ、仕事してるのと変わんないと思うのはボクだけじゃないと思う。

仕事が一段落したが執務室に戻ってきたんだけど

がまだ残ってるのにちょっとビックリしてから、帰れって言ってるし。



「ほいほーい、んじゃネイティとリグレー!お家に帰るよー。」



呼ばれた二匹がの元へ駆け寄る途中で方向転換して、ボクとノボリの

デスクの方に近づいてきた。

ネイティがボクの頭の上に乗ったから、リグレーに手を差し出してみる。

あれだけ人間に酷い事をされちゃってるから、抱っこさせてくれないかもって

不安をよそに、リグレーは何の迷いもなくボクの腕の中に飛び込んだ。



「リグ?」



「あは、ホント可愛い!リグレー、ボクはクダリ。ネイティの友達。

だからリグレーとも友達になりたいんだけど、どうかな?」



平均の半分くらいしかない体格と重さは、無理な交配がされた証拠。

でも、こうやって生まれてきたんだから幸せになって欲しい。



「リグ!リグリグー!」



ボクの言葉にしばらく考え込んでから、片手を上げてなんだか話しかけてきた。

これは見ればわかる、オッケーなんだよね?うわー、すっごく嬉しい!



「うん、ネイティもリグレーもボクの大切な友達。これからよろしくね!」



「クダリばかり狡くはありませんか?リグレー、私はノボリと申します。

同じくネイティとも友達でございますよ?そしてあなたとも…ね?」



ノボリがボク達の様子を羨ましそうにして、慌てて傍に近づいてきた。

頭の上のネイティを優しく撫でてから、リグレーも同じ様に撫でたノボリに

ボクと同じ様に話しかけてから、リグレーはノボリの腕の中に行っちゃった!

ノボリはしっかり抱きとめて、いつもの仏頂面はどこ?って感じで笑ってる。

ボクもだけど、ノボリもポケモンが大好きだよね!



「リグレー、お友達が出来て良かったね!人間嫌いにならなくて良かった…

これもボス達がポケモン達を大切にしてるからです、ありがとうございます。」



が嬉しそうに、そしてもその後ろで安心したって感じで

ボクとノボリ、ネイティとリグレーをそれぞれ見てる。



「お礼なんて必要ない。ボクが友達になりたいって思ったからしただけ。」



「えぇ、全てのポケモンは愛すべき存在でございます。

生まれてきたからには幸せにならねば…人間もポケモンも同じでしょう?」



抱っこしたままリグレーの頭を何度も撫でながら、ノボリはの傍に行って

リグレーを渡した。それと同時にボクの頭の上からの腕の中に

ネイティも飛んで行っちゃった。



「…そうですね、リグレーとネイティ、一緒に沢山に幸せになろうね!」



そうしては今日はこの辺でって言って、帰っていった。

後に残されたノボリは苦笑いしながら、もなんだけどって言ってる。

ずっと考えてたんだけど、が一人で幸せにならないなら

が大切にしてるポケモン達と一緒に幸せになってもらえば良い。

ボクはそうやって動こうと思ってる。


就業時間が終わって、ちょっと残業してから家に帰った。

例の事件の後処理がやっと終わったから、これで本当に通常業務に戻れる。

シャワーを浴びて洗濯物を干してたら食事に呼ばれたんで、リビングへ向かって

遅めの食事を食べてる最中に玄関のインターフォンが鳴ったから、出てみれば

がウィスキーの大瓶片手に立っていた。

そのまま中に通したんだけど、二人共なんだか深刻そうな顔をしてる?



「二人共何かありましたか?」



「あぁ、本当は明日にすれば良いんだが渡しておく。」



が胸ポケットから封筒を取り出して、心配そうにしてたノボリに渡した。

ノボリはその封筒を見ると眉間に皺を寄せて一気に機嫌が悪くなった。



「これをは黙って受け取ったのでございますか?

ふざけないでくださいまし!今回の件は貴方達への処分はなかった。

それで十分、よろしいじゃありませんか!!」



受け取った封筒をに叩きつけるとかどうしたの?!

ボクは立ち上がるとキッチンから移動してその落ちたままの封筒を拾う。

真っ白な封筒の表書きは退職届けで、書いたのは

これはノボリだけじゃなく、ボクだって納得できない!



これを受け取ったって事は課長として認めたって事?

委託業務の内容的にはは資格保持者が必要だからって来てもらった。

今回が試験に合格すれば、その役目は終わる。

でも、一人であの施設全部を請負きれっこないよね?

それでもこうしてボク達にコレを見せるって事ははもう必要ないの?」



「勿論、から退職理由については聞いてるのでしょう?

にとっても本意ではないというのは顔を見ればわかります。

貴方を納得させた理由を私達にも聞かせてくださいまし!」



は何も言わない。いや、言えないのかもしんない。

やっとこれから元のギアステに戻る。一緒にまた仕事をしていけるって時に

この仕打ちは酷すぎるんじゃない?



「二人共、こいつを責めないでやってくれねぇか。

あいつの退職理由はポケモンリーグへの挑戦の為なんだよ。

ミッションクリアにはチャンピオン撃破が必須なんでな。」



「…まさかこんなに早く動く事になるとは思わなかった。

やはりそれに関する俺等の記憶が曖昧になってきてるんだろう。

ノボリ、クダリ…この件については俺はを止められない。

仕事の効率は落ちるが、俺一人…場合によってはが手伝うが

それでも出来ないわけじゃないんで、理解してくれ。」



「それは、のミッションが近づいているという事なのですか?

でも、それがなぜわかったのでございます?

今までそんな素振りを見せておりませんでしたよね?

それが退院後すぐにこの状況とか、有り得ないでしょう!」



のミッションが始まる?ボク逹はそれがなんなのか聞かされてない。

未来に関係することだからって三人共教えてはくれなかった。

でも、もしそうだったら…ボク逹は黙ってを行かせなきゃならないの?



「クダリ、トウヤ君とトウコちゃんは実家に戻ってたんだよな?

幼馴染がジムリーダーになったと言っていたが、新設された場所だろう?」



「え?うーんっと確かヒオウギタウンって言ってたかな?

そこのジムはポケモンスクールの中に併設されるって聞いた。

ちょっと待って、それがのミッション始まりの合図なの?」



いきなりに聞かれたけど、それが合図なの?

そんな急に言われても、ボク達もどうしていいかわかんない。

協力したいけど、こんな状態じゃ動く事なんて出来ない。



がミッションの為にリーグ挑戦が必要なのはわかりました。

ですが、既に彼女は委託とは言え契約をしている身でございます。

あぁ、勘違いなさらないでくださいまし。リーグ挑戦に反対なのでなく

仕事をやめる事に反対なのでございます。その必要はございません。」



ノボリはそう言うと、ボクの手の中にあった辞表を取ってテーブルの上に置く。

それから、キッチンへ戻ると氷とおいしい水とグラスを持って戻ってくると

達が持ってきたウィスキーと水をグラスに注いでそれぞれに手渡す。



「そう言えば、貴方もリーグ参加を考えておられましたね。

丁度良い機会でございますので、お二人でチャレンジしてくださいまし。」



「いや、それは無理だろう?

あいつのポケモンの育成の仕方は仕事をしながらは難しい。

それに俺も仕事の合間にと言っても、の抜けた穴を埋めるから

そうそう動く事は無理だろう。元請けであるギアステに筋が通らなくなる。」



の育成につきましては、多分問題ないかと思います。

お忘れですか?貴方逹の職場はバトル施設の中でも廃人達のひしめく施設

そう呼ばれているのでございますよ?」



あ、ノボリの言いたい事がわかった。

ってか、ノボリってばやっぱり言葉が足りない、これじゃ二人には通じない。

でも、それはここで二人に言っても二度手間になるから言わない。



「あのね、この話はも一緒に聞いて欲しいんだけど、は?」



「あぁ、あいつは飯食った後に疲れたって言って寝ちまったよ。

流石に病み上がり…違ぇな、病み最中の身体だから仕方がねぇ。」



そうだよね、退院してポケモンセンターでも色々身体を痛めちゃったんだし

疲れてない方がどうかしてる。

そう言う事だったら、もうこれ以上この話を続ける必要は無いからやめる。



「二人…ううん、は明日ちょっと早めにギアステにこれるかな?

と一緒に話す前に色々と仕事の事で確認したい事がある。

何度でも言うけど、ボク逹はこの辞表は受理しない。

その理由も明日、ちゃんと説明するからそれまで待ってて欲しい。」



「てめぇら、俺をのけ者にする気か?」



「いえ、そうではございません。ではも早めに出社してくださいまし。」



にすっごい目で睨まれて、ノボリは慌てて言い直してくれた。

そうだった、この事は皆で動くって決めたから説明しなくちゃ駄目。

どーせ職場も部屋も一緒なんだからって、二人には泊まってもらう事にした。

辞表の話はそれからは一切なくて、お酒を飲みながら色々話をした。


せっかくこれから元通りになると思ったのに、そうはさせてくれないとか

神様はどSってが言ってたけど、その通りかもしんない。

ため息をつきながら、普段はあまり飲まないウィスキーをチビチビ舐めて

そんな事をボクは考えていた。