二章・初志貫徹編 -少年少女の影踏み-

二章・初志貫徹編

少年少女の影踏み



「え?あのリグレー、さんの手持ちになったんですか?」



スーパーマルチのチャレンジャーはトウヤ様とトウコ様でございました。

今回もバトルは私達の勝利でございましたが、一戦ごとに確実に

強くなっておられる様子に、私もクダリも嬉しく思います。



「うん、すっごく怯えてて誰かが傍に近づくだけで攻撃する位だったのに

ってばそんな事気にしないで近づいて抱きしめたんだって!

ホント無茶しすぎだよね、二人はそんな真似しちゃ駄目。」



「私には無理ですから!でも、なんだか納得しちゃうかも。

さん、ポケモン達の事になると突っ走っちゃいますからねー。

シンオウでも、雪崩に巻き込まれてたヒメグマを

リザードンに乗って上空から助けた事があるんですけど

あれだって、下手したら巻き込まれてたかもしれないんですから。」



…これは執務室に戻った時に再び説教をしなくてはならないですね。

ですが、トウコ様の言葉に私もクダリも妙に納得してしまいました。

彼女はポケモンが絡むと周囲が見えなくなってしまうのです。

それは大変愛情深く素晴らしい事でもありますが、それでもいけません。



「だけどあの時のさんとリザードン、すげー格好よかったよな!

リザードンはさんが指示しなくてもちゃんと動いてて

さんを腕に抱えて雪崩が起きてる雪面ギリギリを飛んでたし。

なんていうのかな…ああいう絆っていうか信頼関係って初めて見た!」



「うんうん、人とかポケモンって枠を超えてる感じだったよね!

私も自分の手持ち達とそういう絆が持ちたいなって思ったもん。」



お二人の言葉に、普段はの部屋にいるリザードンを思い浮かべます。

風呂上がりの彼女の髪を優しく乾かしている姿は

トレーナーとポケモンではなくまるで本当の家族の様に見えておりました。



「そう言えば、はポケモンは家族だって言ってた。

だからの事をポケモン達はお母さんみたいに思って甘えてる。」



「あ、それわかります!でも手持ちにだけじゃないんですよ。

野生のポケモンとか、他のトレーナーのポケモン達にも同じなんですよね。

オレ、今回の事件でポケモン愛護とかって色々考えたんですけど

愛護ってのがピンとこなかったんですよねー。」



「私も!確かに進化前の子達は小さいから守らなきゃって思う事もあるけど

それでも、能力的に言えば人間よりずっと上だし?

そんなポケモン達を愛護とかおかしいんじゃないかって思いました。」



「あぁ、二人も漠然とではありますがその事に気が付いてらっしゃるのですね。

そうなのです、ポケモンは元来私達よりも能力的には上の存在なのです。

そのポケモンが、人としての私達にゲットされて指示に従う意味は?

それをキチンと理解する事が大事なのでございます!」



私の言葉にお二人が同時に首を傾げてしまいました。

その意味を理解してはいらっしゃらないのでしょうが、それでも二人共

実際にポケモンと対峙して感じているのでしょうね。



「ノボリ言葉が足りない。それじゃ二人には伝わらない。

あのね、ボク逹はポケモンをゲットするとか言ってるけど、それは違う。

ポケモン達がボク達トレーナーを選んでる。

だから自分を任せてもオッケーなのか?ってバトルして決めてる。

ボクもノボリもパートナーになるって事はそういう事だと思ってる。」



「レベルの高いポケモンが指示をきかないのも、自分を任せられないから。

ポケモン達が私達にレベルをつけており、このレベルの人間には従えないと。

元々レベルというものは、私達人間が勝手に付けたものでございますから

ポケモン達ならではの定義もあるのではと、私達は常々思っております。」



この話をすると時間がいくらあっても足りません。

これはあくまでも私達の考えであって、一般的な方達の定義とは違います。

ですが、まだまだ未知の部分の多いポケモンの生態を考えれば

この様な説があってもおかしくはないと思うのです。



「うわー、オレって頭悪いかもしれねー!

でも、ノボリさん達の言いたい事はなんとなくわかります。

ポケモン達にも選ぶ権利があるって事ですよね?」



「そっか、うちらってポケモン達に試されてるって事?

でも、そうやって信用してもらって一緒にバトルするのは楽しそうだよね!」



「だな!ポケモン達に信用してもらえる、ゲットして欲しいって思える様な

そんなトレーナーになって、一緒に頑張っていきたいな。

そして、二人に勝ってもっともっと強くなろうぜ!」



そう言いあってハイタッチされる二人を見ると、こちらも笑顔になりますね。

お二人共、十分にポケモン達との絆を結ばれておられるのです。

ですが、それに慢心する事なく前を見て進む姿は賞賛に値するでしょう。



「ボク達だってこの子達と一緒にそうやって頑張ってきた。

だからそう簡単に負けるつもりは全然無い。」



「私とクダリの絆とコンビネーションと、ポケモン達との絆は

そうそう簡単に破られるものだとは思っておりません。

先輩トレーナーとして、そしてサブウェイマスターとして

お二人の前に壁となって立ちふさがってみせましょう。」



そう言って笑い合っているうちに、電車がホームに到着しました。

乗車口近くには普段とは違う、私服のが立っております。

彼女の正式な出社は明日からで、今日は挨拶に寄っただけ…と言いながら

自分の不在分の仕事のチェックをしたいと言い出してましたね。



「「さん!!」」



私達との挨拶もそこそこにトウヤ様とトウコ様はに向かいます。

トウコ様がを抱きしめて、その肩口に顔をうずめてしまいました。

トウヤ様はの手を握って、やはり俯いてしまわれております。



さん、オレ達本当に心配したんですよ!

もう…もうさんに会えなくなるんじゃって…マジで心配したんです!

あの時はノボリさん達に見せられないからって追い返されるし

病院に行っても、具合が悪いからってナースさんに見舞いを断られるし

散々だったんですからね!!でも良かった、無事で良かったー!!」



さん、私あの時、本当に死んじゃった…って

うう…さ…ん…さんっ…!!」



後半の部分は二人共泣きじゃくられて、言葉になっておりませんでした。

が困った様にそれでも、二人を優しく抱きしめます。



「あの時の車両に二人共乗ってたんだってね?ビックリさせちゃったね。

二人が心配する様な事にはなってないよ?でもゴメンネ?」



「「謝るくらいなら、あんな無茶しないでください!」」



「その言葉はここに来るまでに、他の職員さん達からも言われたし。

すっごく耳が痛いかも…でも、ホントにごめんね。」



「…こうやって、さんが元気になったの見て安心しました。

でも、マジであんな思いはもうしたくないんです。

オレ、さんになんにも恩返しできてないんですからね?

だから置いてかないで下さい、取り残さないで下さい。いいですね!」



「そーだそーだ!今回の事だって、私達もなにかお手伝いしたかったのに!

いつもいつも仲間はずれとかもう勘弁してください!

ってか、今度また仲間はずれにとか絶対にさせませんからね!

ダメだって言われたって聞きませんよ?お手伝い&お節介しますからね!」



「二人共…うん、わかった。置いていったりしない。

今度なにかあった時は手伝ってもらう。でも危ない事はさせないからね?」



「「危ない事した人が何言ってるんですか?!」」



二人の勢いに、も私達にした様な対応がとれない様子でございますね。

ですが、この位真正面から自分の気持ちをぶつけた方がにとっては

効果はあるのかもしれません。現にが困った様に頷いております。



「ノボリ、二人の気持ちが凄すぎてが困ってる?

でも、これでもわかったんじゃないかな?はもう勝手に動けない。

こっちでボク達やトウヤ達みたいな人ができたんだもん。

それって、根っこをはるきっかけになるかもしんない。」



「今の状態ではまだそこまででは無い様でございますが

いずれはここに…イッシュに三人共根をおろしてくださると良いですね。

あぁ、二人共!その様にを揺さぶっては駄目でございます!」



「うわわ、トウヤとトウコ!二人共実は馬鹿力?

、今日退院したばかり。まだ病気も治ってない!」



なおも何か言いながら、その身体にしがみついてる二人ですが

支えきれずにふらついているを見て、私達は慌てて近づきました。

その光景を見た職員たちが全員笑いながら通り過ぎております。



「よーし、今日はまだまだいけるぞ!ノボリさん、クダリさん

これからちょっとリベンジしますから、待っててくださいね!」



「よく言ったトウヤ!私もさんからパワーもらった!

今日はうちの子達が許す限り、何度でも乗り込むからね!!」



「おう!目指すは勝利だよな?」



「勿論、出発進行!凄いバトルしちゃうからね!」



そう言って私達に向かって親指を立てて笑うと

お二人は再びスーパーマルチにチャレンジすべく、受付へと走って行きました。



「二人共ボクのセリフ取っちゃうとかいい度胸してる。」



「あはは!でもボス達凄く嬉しそうですよ?」



「当然でございます、あのお二人とのバトルは心躍るようで

いつも楽しみにしているのですから、何度でも対戦しとうございます。」



「うん、待機要請がすぐくるのはわかってる。だから、このまま乗車する。」



「了解しました。それじゃ預かってる書類はデスクに置いておきます。

ボス達、勝利目指して頑張ってくださいね?」



そう言っても私達に親指を立てて笑われると、ホームを後にしました。

あぁ、やっと三人がギアステに来てからの日常の光景が戻ってきました。


この時間がいつまでも続く様に、私は願わずにはおられません。

そんな事を考えながら、いつもと同じ様に私達は車両に乗り込みました。