二章・初志貫徹編 -執務室の中の懲りない面々-

二章・初志貫徹編

執務室の中の懲りない面々



昨夜はインゴ達はボク達の部屋に泊まって達はの部屋に泊まった。

は夜遅かったんだけど、ライブキャスターで連絡したら

ギーマさんが子供逹と一緒にわざわざ迎えに来たんだよね。

遅くまでゴメンネって謝ったら、いつもの事だって笑ってたけど

はもうちょっと人妻って事を自覚して動いた方が良いと思う。


執務室のドアがノックされてから開き、インゴとエメットの後ろから

黒のニットキャップをかぶったが入ってきた。

それと同時に、今までボクの頭の上にいたネイティがすっごい勢いで

の腕の中に飛び込んだ。

うん、ネイティも寂しかったよね?ボク達も寂しかった!



「失礼します、ボス達には色々とご迷惑をおかけしました。」



部屋に入って早々に思いっきり謝る姿は前にも見た事があるかも?

でも、それもいつもの光景なんだなって笑っちゃった。

だけど頭を下げる横に、を待ってたが並んで

同じ様にボク達に頭を下げて謝ってきてビックリした。



「今回の件は本部からは俺等の処遇はありませんでしたが

大部分の責任は俺等にあります。こうして揃ってからと思ってました…

ボス達、俺等の処遇をキチンと決めてください。」



「…その事につきましては、私達は言いたい事がございます。

三人共、シンゲンがこの件について貴方逹に相談した時に

この様な状況になるかもしれないと、想定してませんでしたか?」



は最初はボク達に言うつもりでいたって言ってたよね?

それをやめた理由って、本部が絡んでくるかもしんないからでしょ?

だから、三人共メインで動いて本部が出てきた時の対策をとった。

委託業者の独断で動いた事ってすれば、こっちの処分は軽くなる

…最初からそれを狙ってた。そういう事だよね?。」



これは昨日、部屋に戻ってからエメットに言われて気がついた事。

ボク逹はが本部の人に責任を取るって言ってビックリしたって

二人に話したら、直ぐにそれは変だと思わないのかって言われた。

それから色々考えて、もしかしたらって思った事だけど、多分あってる。

だって、三人共ボク達を見て苦笑いしてるんだもん。



「あちゃー、ってばバレちゃってるよ?策士策に溺れる?

つーか、ボス達の方が今回は上手だったのかもしんないねー。」



「うるせぇよ。ついこの間までは気が付いてなかったんだ。

後からわかるんだったら、別に問題はねぇだろう?」



「二人共、ここで言い合っても仕方がないだろう?

えぇ…今回の事はボス達の考えている通り、ギリギリ想定内の出来事でした。

しかし、そうだと言ってもこちらにご迷惑をかけた事には変わりありません。

そこはキチンと筋を通すべきでしょう。」



うん、やっぱり三人共先読みして動いてたとかホントに凄いよね!

でもギリギリ想定内って事はどんだけのパターンを想定してたんだろ?

聞くのが怖いから、聞かないけどね!



…貴方逹もその様に自分を犠牲にするのは、おやめくださいまし。

三人共、何度でも言わせていただきます。三人の気持ちは嬉しく思います。

ですが、私達は貴方達を犠牲にしてまで何かをやり遂げようとは思いません。

それで私達が喜ぶと思ってらっしゃるのでございますか?

、貴女もです。

自分を犠牲にしてポケモンを助けたとしても、彼等は喜ぶでしょうか?」



ノボリの言葉に三人…特にの瞳が揺れる。

うん、そんな事をしてもポケモン達は喜ばないってわかってると思うんだ。

だから、もっと別な方法をちゃんと考えて欲しい。

ポケモン達の事、そして友達になったボク達の事をもう一度考えて欲しい。



「自分を犠牲にしてって中々出来ない凄い事。

でもそれで例え世界が救われて、世界中の人が感謝の言葉を送っても

残された人の悲しみは絶対に残る。凄い傷になってずっと残る。

三人共、今回の事でも色々と先読みして色んなパターンを想定したよね?

今度からは、そういう自分を犠牲にするってのは外して欲しい。

そういう考え方をもうしないで欲しい。それがボク達が三人へ出す処分。」



「ですが、ボス達…「反論は認めません。」…黒ボス…」



の言葉をノボリが打ち切った。

うん、ボク達は譲れない。そうでもしないと、今後も同じ事をしそうだもん。

ノボリがの傍に近づいて、腕の中のネイティを撫でる。

ネイティは泣いてた。いつもなら、ノボリに撫でられたら凄く嬉しそうなのに

泣く事をやめないで、必死になってに擦り寄っていた。



、貴女は今後も同じ様な事があれば、今回と同じ行動を取る。

そうおっしゃられましたが、ネイティを見て何も感じませんか?

この子は貴女が病院へ運ばれて、私達が預かるまでボールの中で泣き通しで

その後も、暫くは食事も摂ろうとしない程だったのでございますよ?

もし、万が一の事があれば…最悪、ネイティは貴女の後を追ったでしょうね。

それは貴女の望んでいる事でございますか?違いますでしょう?

、このネイティは私達でございます。

貴方逹がその様な行動を取った時の、私達の姿だと思ってくださいまし。」



「ネイティ…ごめん、ごめんね。

私、またネイティに辛い思いをさせるところだったんだね。」



がネイティを抱きしめて、その体に顔をうずめた。

肩が細かく震えて、それからすぐにしゃくり上げる声が聞こえてきた。



…」



今まで後ろに立って、黙っていたインゴが近づいてきてを抱きしめた。

その傍で、エメットが赤子をあやすようにの背を叩いてる。



には守らなきゃならないモノが、こうやってあるんダヨ?

だから簡単に死を選んじゃダメだって、気がついたヨネ?もう大丈夫ダヨネ?」



「貴女のポケモン逹への思いハ、愛情以外の何物でもゴザイマセン。

与えるダケが愛情では無いはずデス。受け取る事も覚えるべきデショウ。」



この二人が誰かにこんな態度をとるとは思わなくてビックリした!

でも、二人のこの顔は見た事がある。

小さい時、ボクとノボリが喧嘩して泣いてる時に、慰めてくれた顔と同じ。

すっかり忘れてたけど、小さい時は二人共すっごく優しかったっけ。


それはノボリも感じたみたいで、なんだか懐かしい顔をしてる。

インゴもエメットも、お父さんが亡くなってから変わっちゃってたけど

根っこの部分は変わってなかったのかもしんない。

ボク達も両親が死んで色々あって変わっちゃったから、気がつかなかった…

それだけの事なのかもしんないね。



「皆さんに凄く心配をかけちゃってごめんなさい…

私は…私には守らなきゃならないものがあったのを忘れてました。」



乱暴に袖口で目元を擦るのを、ノボリが慌てて止めてハンカチを差し出した。

その顔はまだ涙に濡れてたけど、ネイティを見る目は笑ってた。

ボク達の嫌いなあの諦めたような笑い方じゃない、凄く綺麗な笑い顔。



は以前、守られるよりも守って戦う方が良いと言ってましたが

守るものを泣かすのは駄目絶対!でございますよ?」



もだよ?今後また同じ様な事をしたら今度こそホントに

キミ達にはここの正社員になってもらうから、覚悟してね?」



「三人共いざという時は予想の斜め上を軽々といきやがるのですから

私達も負けぬ様に更に上をかっ飛ばしますので、ご了承くださいまし。」



怖い怖すぎると言って笑う三人を見てボク達も笑っちゃった。

執務室の雰囲気が、やっと元のボク達の好きな穏やかな雰囲気に戻ったみたい。


それで安心したのか、ネイティがやっと泣き止んで、今度はの腰…

丁度ボールホルダーのある場所をなんだか気にしだしたんだけど、何?



「あぁ、ちょっと待ってね。ネイティ、新しい家族が出来たんだ。

お兄ちゃんになったんだよ!この子を守ってあげてね?」



そう言ってはいつもはムウマのいる場所にあるボールを取り出す。

そして、そこから出てきたのはあの時ホームに投げ込まれたリグレーだった。



「リグ?」



「リグレー、ここの人達は私の大切な仲間なの。

絶対にあなたを傷つけるような事も、辛い事もさせたりしないから安心して?」



がネイティと一緒にリグレーも抱っこして頬擦りして笑ってる。

それに答える様に、リグレーもに手を伸ばして甘えてる。



、これってあのリグレーでしょ?

ポケモンセンターで聞いた話だと、回復してからもすっごく怯えてて

傍に行くだけで攻撃されちゃうから困ってるって聞いてたんだけど?」



、貴女もしかして…」



「え?ちょ、ちょーっと様子が気になって、ポケモンセンターに寄ったら

凄く寂しそうにしてたんで、うちにおいでって説得しただけ…ですよ?」



あー、これってまたまたやっちゃった?ノボリがすっごい顔で睨んでて

それを見たが説明してるけど、目が泳いじゃってるし。

隣にいたインゴとエメットも眉間に皺を寄せながら溜息ついてるけど?



「AHー、インゴ…アレって説得っていうのカナ?」



「Hmm…何度もサイコキネシスを受けて飛ばされてマシタネ。

壁に叩きつけられて一瞬呼吸が出来なくなる程だったノデ

流石にワタクシ逹がリグレーを止めようとしたのデスガ

手を出すなと怒鳴られマシタ…トハ、ワタクシには言う事は不可能デス。」



「ダヨネー!退院してスグに今度はポケモンセンターで治療されたトカ?

そんな事があったナンテ、ボク達は見てないヨネ?言えないヨネ?」



ちょっと待って!さっきのごめんなさいはどこへ行ったの?

ってか、あれはその事が起きた後か…あー、ノボリが怒ってる。

すっごく怒っちゃってるけど、ボクは知らないもんね。

それだけじゃない、も怒ってるよ?うん、それもボクは知らない。



…貴女と言う人は本当に学習する気がないのでございますか?!

よろしい、私が何度でも言って差し上げます。そこへお座りなさいまし!!」



「えー、病み上がりだからできればソファーが良いなぁ…なんて

スミマセン、何でもないです…ごめんなさい。でもですね?」



「でももへったくれもねぇんだよ!あれか、無駄口叩くのはこの口か?

いいか?前庭神経炎の眩暈は収まったが、まだ完治はしてねぇんだぞ!」



「頭の傷だってまだ縫合されたままだろう?

その状態でそんな事をして、傷口が開いたらどうするつもりだったんだ!!」



ホントはボクも一緒に怒りたかったんだけどさー

ノボリには床に正座しろって言われてるし、

にはすっごい笑顔で頬っぺた摘まれてるし

は腰に手を当てて凄い顔で見下ろしてるし?

一緒になって怒るっていうのは、ちょっと可哀想になったからやめておく。



「三人共、は今日退院してきたばっかりダヨ?

そんなに怒ったりしたら可哀想デショ?その辺でやめてあげなヨ。」



「放っておきなサイ。、イッシュに嫌気がさしたナラ

ユノーヴァに来なサイ。いつでも歓迎いたしマス。」



「インゴさんとエメットさんの背中に天使の羽が見えるかもしんない…」



…反省する気無いでしょ?どーいうつもりでいるの?

いつもいつも怒られてるから平気とか、ふざけないで欲しいんだけど?」



二人共どさくさに紛れて変な事言わないでよね!

も、インゴとエメットに何助けを求めてるの?普通、そこはボクにでしょ?

前言撤回する、ボクも参加してすっごいお説教始める!


ボク達のお説教は部屋の外にも響いてたみたい。

こっそりとドアを開けて、シンゲンと総務部長が覗いてたってのは

後から書類を届けに来たゲンナイから聞かされた話だったりする。


それからスーパーマルチの待機要請が来るまで、ボク達のお説教は続いた。

うん、すっごいお説教は続いたったら続いた。

それもいつもの風景に戻った気がして、には悪いと思ったけど

なんだかすっごく嬉しくなった。