二章・初志貫徹編 -上司達の成長っぷり?-

二章・初志貫徹編

上司達の成長っぷり?



のお見舞いから帰ってきたノボリの様子が変だった。

どーしたのかなって思ってたんだけど、

トレインの待機とか、それぞれの会議とかですれ違いで

やっと話を聞けたのは午後休憩になってからなんだけど……



「…あのねノボリ、それって愛の告白って感じ?」



ゴンッって、凄い音がしたのはノボリがデスクに突っ伏したから。

ちょ、そこまでする必要があるの?ってか動揺してる?



「あー、黒ボス…取り敢えず脳みそ大丈夫かな?」



「で、黒ボス…実際のところはどうなんですか?

本気だっていうなら全面協力しますよ?いやー、あいつにも春が来るか!」



は取ってつけたようにノボリの心配をしてるけど、肩が震えてて

口元が微妙に歪んでる…笑いたい時は我慢しない方がいいのにね。

んで、は二人の仲を取り持つ気満々?ですっごいスマイルになってる。



「…私も病室を出て、自分の発言を振り返ってみてそう思いましたとも!

ですが、実に情けない話なのでございますが…よくわからないのです。」



「「「はぁ?」」」



うん、ボクと達がそろって呆れちゃっても仕方ないと思う。

いい年ぶっこいた成人男性が、恋愛感情か違うのかがわかんない?

それってどーいう事なのさ。実の兄なんだけど情けないよ、ノボリ!



「確かに私はに対して好意をもっております。

ですが、それが恋愛感情なのか友人としての感情なのか、わからないのです。

言わせていただきますが、私とて今まで恋愛をした事がございますよ?

それでも過去の女性達に対する感情と、に対する感情は違うのです。」



あ、それってボクもちょっとわかるかもしんない。

ボクもが好きだけど、恋愛してきた女の子達とは違う好きって気持ち。

だからこの気持ちは友達としての好きって気持ちなんだと思ってた。

ボクは頬杖をついて、まだデスクに突っ伏したまんまのノボリを見る。



「まぁ、ノボリがぶっちゃけちゃった気持ちもわかるかも。

ってば、ホントに学習能力が無いよね!

っていうか、学習する気が無いって言った方が良いかもしんない。」



ボクは膝の上のネイティを撫でながら、ため息をついた。

が病院に行ってから、ネイティはボクが預かってる。

傷を避けて撫でるのが難しい位、沢山の古傷があるその身体が

なんだかとダブって見えた。



「大切に思ってる人達がいなくなって心の拠り所を無くす恐怖…

そんな思いは繰り返したくないのだと、それならば置いて行く方を選ぶと

そして、ポケモンに貰った心も身体も彼等の為に使いたいのだと…

その様な事、ポケモン達が喜ぶわけがございませんのに!!」



デスクの上に、白くなる程強く握られた手を叩きつけてノボリは顔を上げた。

普段はこんな風な怒り方を見せた事がないのにどうしたんだろう?



が病室のベッドで横たわっているのを見た時に両親を思い出しました。

彼等はと違い、私達と会った時には既に冷たくなっておりましたがね。」



「あぁ…それでノボリ怒ってる?確かにとボク達の両親って似てる。

ポケモン達が大好きで、守る為だったら身体が先に動いちゃう所とか。

そのせいで、ポケモンを助けて事故にあって死んじゃった…。

ちょっと待って、それは絶対に止めさせなくちゃ駄目!」



両親が死んだって聞かされたのは旅の途中だった。

旅立ちの時に見た笑顔がボク達の中では最後の記憶。

あの日から、暫くはボクも笑う事ができなくなってたっけ。

あの恐怖はもう味わいたくない。喪失感?そんなのも、もういらない。



「えぇ、一瞬にして穏やかな日々を失ったその喪失感は

が体験したものと通じるのかもしれません。

ですが、私は大切な人を置いていこうとは思えません。

最悪その様になる事があったとしても、最後まで抗い続けるでしょう。」



「うん、ボクもそうする。あんな辛い思いを誰にもさせたくない。

ノボリを置いてくなんて考えられない。

大切な人達の為にも、ボクも最後まで悪あがきしちゃうと思う。」



向かい合ったデスク越しにノボリと拳を突き合わせて笑った。

うん、双子だから、兄弟だからってだけじゃない。

もっと色んな事でも、お互いが大切なパートナーなんだから。

どっちが欠けてもダメなんだからね。



「…なんだか、二人はそういう所が凄いよな。」



「全くだね、だから二人の周囲には素敵な人達が集まるんだろうね。」



今まで黙ってボク達の話を聞いてたが其々に頬杖をついて

笑いながらそう言ったんだけど、その笑顔は初めて見たかもしんない。

なんて言えばいいのかな、がよくする諦めの笑い方に似てるけど

そういう感じだけじゃない、周り全部を包み込むような笑い方。

どこかで見たことのある様な笑い方。



達はその様には考えないのですか?

私はてっきり貴方逹も私達と同じ様に考えていると思っておりました。」



「俺は…そうだなぁ、そういう事になったら多分そのまま受け入れる。」



「俺もだね、別にそうなっても構わない。」



二人の言葉にボク逹は驚くしかなかった。

一番こういう事に抗って、悪あがきする様なイメージがあったんだもん。

どんな時でも最後まで絶対に諦めないで、何か他の方法を探して…

そういう風にすると思ってたのに。

ボクもノボリも納得できないって顔してたんだと思う。

が目の前で指をピッピみたいに振って笑った。



「おっと、勘違いしないでくれよ?

勿論出来る事全てはやるよ、当たり前だろう?

それでも尚且つ、そういう事を選ばなければならないんだったらって事で

俺はそうなっても構わないって言ってるんだよ。」



「その様な事をして、守られた人逹が幸せになれるとでも?

そんな事があるはずないではありませんか!」



ノボリの言う通りだと思う。

そんな事をしたって誰もスマイルになんかなれない。

そんな事を選ぶって考える事自体、最初から間違ってる。



「自分を犠牲にしようって思うのは凄い事だと思う。

でも、それじゃ誰も幸せになれない。

二人共そういう考え方だから、人と付き合う事を遠ざけてたんでしょ?

ねぇ、それじゃあボク逹はどーすれば良いの?

ボク達もキミ達が大切、守りたいって思ってる。同じ事をすれば良いの?」



そんな事をしてもらいたくてボクは友達になったんじゃない。

ボク逹は確かに今まですっごく未熟で、それは今も同じだけど

いつまでも、守ってもらうとか絶対に嫌だからね。



「クダリ、どうするもございませんでしょう?

私、もう守られるだけとか真っ平でございます!

私は貴方逹の隣に立ちたいのであって、庇護されたいとは思っておりません。

これはと友人になった時から思っていた事でございます。」



「二人共落ち着け、俺等は別にお前達を守るとか思ってないぞ。

一緒に並んで突っ走りたい、そう思ってダチになったんだからな。」



「俺はまぁ、放っておけないって思ったけどね。

だからといってベタベタに甘やかしてはいないはずだよ。」



「でも、ボク逹はまだ一緒に並ぶ事は出来てない。

ノボリも言ってるけど、ボク逹は友達として支えあいたいんだからね。

とっちかにおんぶにだっこなんてしてたら疲れちゃうでしょ?

そんなのは友達って言えない。ボク逹は本当の友達になりたいんだし

そういうつもりで、今までやってきた。それはこれからも変わんない。」



二人から見ればボク達なんてまだまだだって、そんな事わかってる。

でも、口では甘やかしてないとか言ってるけど、結局は同じ事。

そりゃ嬉しい事だけど、それだけじゃ嫌なんだからね。



「ともかく、ボク逹はこの事については絶対に引かない。

も、全員ボク達の大切な友達。

その友達が危ない目にあいそうだったら、ボク達だって助けるからね。」



「それは無理でしょう。二人はここの企業のトップとしての立場もある。

そんな簡単に投げ捨てて良いものじゃないはずだよ?」



「あのな、俺等は根っこをおろしてないからそういう行動をとれるんだ。

お前等とは違うんだ、気持ちは嬉しいがそんな風に言うものじゃない。」



根っこをおろすって…そっか、そういう事でもあるんだ。

自分の気持ちだけで動く事ができなくなる。何かに縛られる事でもあるんだ。

だから二人はがミッションをクリアするまで、しないつもりなの?

でも、それを聞いちゃったらボク逹は黙ってる事は出来ない。



「成程…よろしいでしょう。そういう事をおっしゃるのでしたら

お二人には…いえ、を含めて三人でございますね。

バトルサブウェイの正社員になっていただきましょうか。」



「あ、そうだね!三人共これだけ色々実績を残してる。

職員の推薦もボク達がしなくたって、総務部長さんとか喜んで引き受ける。

次の試験の時に書類を出しちゃえば、後はボク達でなんとでもできる。」



「「は?」」



「元々上層部からも貴方逹を正社員にとの声がございましたからね。

次の募集時に、書類を揃えて提出させていただきましょうか。

そうすれば、貴方逹はここに根をおろす事になりますでしょう?

無茶な事はできなくなりますよね?」



「ちょっと待て!それは職権乱用以外の何物でもないだろう?!」



「一企業のトップが人事に私情を挟んじゃ駄目だね。」



「二人共、ボク逹は私情なんか入れてない。

ここは廃人施設、優秀な人材はどんな事をしたって手放さない。

キミ達はここの皆全員が認める優秀な職員なんだからね。

は目的の為には手段を選ぶなって言ったし、手札はボク達が持ってる。」



「えぇ、私達はサブウェイマスターでございますからね。

勝利の為に全力を尽くさせていただきますとも!」



「……はぁ…ちょっと前まではバチュルみたいに震えてたのになぁ」



「化けるとは思ってたけどここまでとはね…フフッ、大化けしすぎだよ。」



そう言ってボク達をみて笑う顔はなんだか両親を思い出した。

ボク達がどんな事をしても、両親はこうやっていつも笑ってたっけ。

久しぶりに思い出した両親の笑顔と目の前の笑顔が重なる。

あぁ、ボクは…ボク逹は本当に欲しかったものを手にしたのかもしれない。

ノボリもそれがわかったから、こんなに必死になってるんだ。

もう二度とこの笑顔をなくしたくない、こうやってスマイルになって

気持ちがあったかくなる空間をなくしたくない。



「それでも、ボク逹は二人に比べたらまだまだ。

でもいつか必ず隣に並ぶまで追いついてみせる。そして一緒に歩く!」



「えぇ、だから二人…いえ、三人とも、お覚悟くださいまし。

私達はこの思いを貫き通させていただきます!」



観念してよねって意味も込めて、ボクとノボリは二人に向かって

親指を立てて笑ってみせた。

それを見て、も同じ様に親指を立てる。



「ははっ、凄ぇおっかないけど楽しみにさせてもらうぞ?」



「勿論、俺達だって成長し続けてるんだからね。

そっちこそ、しっかりついてこれる様に覚悟しなよ?」



達と出会ってボク逹は色んな意味で成長したと思う。

でも、それに満足なんてしてない。

だって、二人はもっと先にいるんだ。満足なんてしてらんない。

だからボクもノボリも二人でこれからも走り続ける。


大切なものを守れる様に、大切な人達を支えられる様に

そして、誰かが目指してくれる様な人になりたい。

それはずっと前から思ってた事、目標に向かって走る道のりは

未だ途中で、終着駅はまだ見えていないんだけど

ひた走り続ければ、いつかは見えてくると信じてる。