二章・初志貫徹編
全てをぶちまけた上司達
執務室のドアがノックされて、総務部長が入ってまいりました。
その後ろには、本日の記者会見に立ち会う為に本部の方もいらっしゃいます。
「失礼するよ。ボス達、こちらは本部の事業部から来たジョシュアだ。」
私達は立ち上がり、ジョシュア様と呼ばれた本部の方と握手を交わします。
「初めまして、ノボリでございます。この度は態々すみません。」
「ボク、クダリ。ボク達の無理なお願いを聞いてくれて本当にありがとう。
この記者会見で、どうしてもボク逹は言いたい事がある。
それが終わったら、ボク逹は本部の意向に全部従う。」
「初めまして、ジョシュアです。
本部としては度重なる事態を大変遺憾に思ってます。
ですが、お二人がサブウェイマスターとして、とられた行動は評価してます。
迅速な判断で被害を最小限度に留めた事には賞賛を送ります。
委託業者の代表の方は?ポケモンを救った勇気ある行動に感謝を。」
ジョシュア様と名乗られた本部の方は私達よりも多少年上でしょうか?
ですが、それ以上に大変落ち着いた雰囲気のある方でした。
委託業者という言葉に、私達は傍に待機していたを呼びます。
「初めまして、こちらで委託業者として施設設備の保全管理を担当してます。
代表のと申します。この度はうちの部下の独行でこの様な事になり
大変申し訳ないと思っております。
イッシュのバトルサブウェイに何らかのペナルティが降るようでしたら
どうか、その前に私共の責任も取らせていただきたいのです。」
「?!やめて、キミ達は何も悪くない!」
の言葉に私達は驚いてしまいました。
何らかの責任という事は、つまりはここを立ち去るという事でしょうか。
「いいえ、俺等はエントランスの件とトレイン乗車口の件両方に関係してます。
俺等のとった行動が、結局は事態を大きくした様なものなんです。
ですから、今回の件では俺等に責任の大部分があるんですよ。
むしろボス達、ギアステの皆さん達はそれを最小限に食い止められたんです。
当事者は俺等、被害者は貴方達と言ってもおかしくないんですよ?」
の言葉を聞いて、ジョシュア様は頷いておられます。
あぁ、彼の言い方だけを聞けば確かに今回の件全ての責任があるのだと
その様に受け止められても仕方がないのですが、そうでは無いのです!
「でしたね?その話は記者会見が終わってからにしましょうか。
私達本部は、貴方達三人の事を聞き及んでます。
それはここ、イッシュの仕事だけではなく、他地方での仕事ぶりもね。
特に、貴方は他地方の鉄道関連の仕事にも携わってましたよね?」
「…ご存知でしたか。いや、別に知られて困る事じゃないので構いません。」
二人の話についていけない私達と総務部長は顔を見合わせてしまいました。
の過去の職歴は履歴書に書かれており、確かに他地方の鉄道会社でも
委託業者として勤務経験があったと記載されてた様に記憶しておりますが
その内容までは存じません。それをジョシュア様はご存知なのでしょうか?
「さて、あまりマスコミを待たせてもロクな事にならないでしょう?
行ってください、サブウェイマスター。僕はここで待機させてもらいます。」
「わかりました、では行ってまいります。」
「うん、ボク達の言いたい事、伝えたい事を全部ぶちまけてくる!」
「ボス達、お二人は何も間違ってはいません。
自分の思うように行動して、発言すべきです。きっと理解してもらえますよ?」
は私達が何を言おうとしているのか、わかってるのでしょうか?
仕事の時の顔ではなく、普段の友人としての笑顔で私達を送って下さいました。
総務部長とシンゲンを伴って、私達は用意してあった会場に入ります。
この時点でたくさんのフラッシュが瞬いて、目が痛くなりますね。
席についてからは、まず事件について謝罪の言葉を述べました。
目の前のマスコミの方に向かって、私とクダリと部長二人が頭を下げます。
一番初めに、怪我をしたの話が出ました。
やはり、彼女がシンオウの元チャンピオン代理という事はバレましたか。
そしてと、あろう事かもマスターランクのトレーナーだと
そこまで調べ上げたのは流石と言うか、やはりと言うべきか…
「その件につきましては、彼女の職歴がそうだったと言うしかできません。」
「うん、実際バトル職員として契約してない。
彼女は委託業者で、作業員として契約してる。彼等もそーいう事。
実際、凄く優秀でボク達は凄く助けられてる。それだけの話。」
私達がこれ以上その件については話すつもりがないというのがわかったのか
その後、孵化作業や厳選、そして捨てポケモン達の話になりました。
「この会見をご覧になってる全てのポケモントレーナー様に
私達はどうしても伝えたい事がございます。
何度も申しておりますが、私達も、当企業の職員も厳選育成をしておりますが
それから漏れたポケモン達を捨ててはおりません。
全て、一人で生きれる様になるまで育ててから野生に返しております。」
「後ね、捨てられたポケモン達の保護もしてる。
それだけじゃない、そういう事をしないでって活動もしてる。
だけど、それでもこんな悲しい事は全然減ってくれない。ボク達も悲しい。」
クダリが胸のあたりを両手で押さえて目を閉じて言葉を切ります。
そして、その後で真正面を向いてハッキリ宣言しました。
えぇ、これが私も言いたかった事なのでございます。
「あのね、こーいう事をする様なトレーナーがどれだけチャレンジしたって
ボク逹には絶対勝てない。ボク達が負けるわけがない。」
一斉にフラッシュがたかれて、会場がどよめきました。
「能力、個体値、それも勝利の為には重要でございましょう。
ですが、それだけが全てではございません。
同じ種で全ての能力が同じ場合は引き分けになりますか?違いますでしょう?
勿論トレーナーの力量も問われるでしょうが、それだけではございません。
勝利する為、最後のここ一番という時にはポケモン達の底力が関わります。
それは、トレーナーとポケモン達との間の信頼関係の成せる技…。」
「うん、ポケモンとトレーナーが信頼しあって出来た絆は、
そー言う時にすっごい力を発揮する。ボク逹はそれを何度も見てる。
上辺だけの育成をして、いらないってポケモンを捨てる様なトレーナーと
ポケモン達は本当に信頼しあう事なんて絶対無理だと思う。
そんな人達に、ボク達とポケモン達の絆が負けるわけがない。」
私達の発言に一瞬会場が静まりました。
その後、ではチャンピオンとのバトルでは?という質問がありました。
これは、これから行われるエキシビジョンマッチの事を聞きたいのでしょう。
「チャンピオンの人達とのバトルは、やってみなくちゃわかんない。
だって、ポケモン達もよく育てられてて当たり前。
すっごい信頼関係だってある。チャンピオンってそーいう立場でしょ?」
「勿論、私達も自分のポケモン達の能力と絆を微塵も疑っておりません。
この勝負、勝つにしても負けるにしても皆様方の心に、なにかしらを残す
素晴らしいバトルになる事は間違いはないと思っております。」
「うん、ボク逹はサブウェイマスター。
すっごいバトルをお客さんと一緒にする為に存在するんだもん。
だからって負けるつもりは無いよ?そーいうバトルをするつもり。」
「私達は、スーパーでは常勝する事が当たり前の立場におります。
ですから、お相手がチャンピオンであってもそれは変わりはございません。」
えぇ、廃人施設と呼ばれ、バトルに特化した施設からの出場に
未だに異論を唱える一般の方々がいらっしゃるのは重々承知
その方々には私達のバトルを見ていただく良いチャンスでございます。
「私達のバトル施設には様々なご意見があると思いますが、まずは
エキシビジョンマッチでの私達のバトルをご覧いただきたいのです。」
「うん、ボク達もポケモンが好き、バトルが好きって気持ちは同じ。
どーして、色々皆が言うのかがわかんない。
だからボク達のバトルを見て?どー思ったか教えてほしい。
ボク逹はお客様と一緒にスマイル出来るバトルが好き。
きっとエキシビジョンマッチのバトルはそういうバトルになる。」
そう言い終わり私とクダリが、再度来場した皆様に一礼して
記者会見は終わりになりました。
執務室に戻れば、がの病室から戻ってきてコーヒーを
ジョシュア様と一緒に飲まれておりました。
「ボス達お疲れ様、良い記者会見だったと思うよ。
後、俺達の事を庇ってくれてありがとう。別にもっと公表しても良かったのに。」
「、ボク達前に言ったよね?友達を手札にしないよって。
三人共ボク達の友達って事もあるけど、大切な部下。
部下を守る事もサブウェイマスターの仕事。このくらいは当たり前。」
が私達と部長達にコーヒーを渡して、微笑まれております。
その顔をみて、私達は間違った事を言ってないのだと改めて実感しました。
「私達は自分の思った事を言ったまででございます。
そして、自分達のやってきた事にも信念を持ってやってまいりました。
それを皆様方にお話しただけ、それだけの事でございますよ?」
「例ノ愛護団体ノ代表ハ 過去ニモ問題ガアリ 厳重二処罰サレルソウデス。
ソレニ従ッテ 団体モ解散ニナルト 警察カラ連絡ガアリマシタ。」
「なんでも相当な数の元プラズマ団がいたそうじゃないか。
彼等についても、警察は今後も監視を続けるそうだよ。
この件はこれで、終わりになる。ボス達お疲れ様、よく頑張ったね。」
シンゲンと総務部長が私達を見て微笑まれております。
その顔がなんだか父親が子供を褒める…その様な表情に見えてしまい
私とクダリはなんだか気恥ずかしくなって、俯いてしまいました。
「べ、別にボク達は当たり前の事をしただけ!
むしろ最初の方は仲間外れにされて、しょーじきムカついて怒ってたし…。」
「えぇ、元はといえば以前の自分達が余りにも不甲斐なかったのだと
つまりは、そういう事だったのでございますけどねぇ…」
私達の話をそれまで黙って聞いていたジョシュア様がいきなり吹き出しました。
その顔は先程から見せていたものと異なり、なんだか親しげな雰囲気ですね。
ですが、本部との話は終わってはいないのです。
「ジョシュア様、それで本部の当施設への処遇は?」
私の問いに一瞬部屋の中に沈黙が広がりました。
えぇ、監査が入る事は覚悟しております。ですが達への処分だけは
なんとしてもやめさせなければなりません。
「バトル施設初の、ポケモンだいすきクラブからの優良企業の認定
今までの業務実績、経営実績、それに加えて、同じくバトル施設初の
公式な、それもチャンピオンを相手にバトルをする機会を得た事
これらを踏まえれば、今回の件は厳重注意…そういう事になります。」
「ボク達はそれで良いけど…それじゃ、達への処遇は?」
「なにも?に特化して言わせてもらうなら
彼は各地方でも色々と問題のあった施設に介入して、それを解決してる。
それが大きな悪事を働く組織が相手だったり、色々とね。
今回の事もそういう絡みでの活躍なんだと、本部では思ってるよ。」
部長達が一斉にを見ております。えぇ、私達も初めて聞いた時は驚き
そして、なんだかやっぱり?と思ってしまいましたから仕方がないでしょう。
本人は肩をすくめて笑うだけとか…そこは流石でございますね。
「そうそう、本部の全員から君達サブウェイマスターへの伝言だよ。
エキシビジョンマッチの相手はチャンピオンなんだろうけどね
バトルをするからには無様な真似だけは許さない。だそうだよ?」
その点につきましては私達はハッキリ断言させていただきますとも!
「ボク逹はサブウェイマスター。勝利目指してひた走るだけ。
それはチャンピオン相手にだって同じ事。」
「えぇ、ましてバトルは私達の最も得意とするマルチバトルでございます。
私とクダリの二両編成、そうそう簡単に撃破されるなど有り得ません!」
「フフッ、その言葉を聞いて安心したよ。それでは僕は本部へ戻ります。
そうだ父さん逹、たまには休暇を取って遊びに来てくださいよ。
孫逹が、じいちゃん逹に会いたいって言ってますよ?」
「ふむ…そう言えば以前の件での謹慎処分がまだだったね。
近いうちに取らせてもらって、そっちに妻と遊びに行くとしよう。」
「コチラモ カナリ落チ着イタノデ ボクモ孫逹二会イタイデスネ。」
「え?父さん逹って?」
「孫逹って…いや、まさかでございましょう?!」
「あれ、父さんは話してないのかな?僕は総務部長の息子です。
そして、僕の妻はシンゲンさんの娘さんなんです。
だからシンゲンさんはお義父さんになるんですよ?」
「「「「はぁ?!」」」」
その場にいた、私達ととが驚きの叫びをあげてしまいましたが
それは仕方がないと思います。えぇ、その様な話は初耳でございます!
「別に今言う必要もないからね、それに親子であっても仕事では別だ。
こんな事で私情を挟むような育て方を、私はしていないんでね。」
「えぇ、本部でもそれを指摘されましたがね。
誰にモノを言ってるのかとやり込めてやりましたよ。非常にくだらないね。」
「うわー、総務部長さんが二人いる?怖すぎるかもしんない!」
「この親にしてこの子有りでございます!」
私達の驚いた顔を見て、したり顔で微笑まれるこの親子と義父…
流石というか、ハンパねぇ!というか…
記者会見の疲れすら吹っ飛んでしまいましたとも!