二章・初志貫徹編 -戦い済んで、日が明けて-

二章・初志貫徹編

戦い済んで、日が明けて



事件が起きた翌日の朝、やはりギアステ内にはマスコミの方々が大勢で

私もクダリもその対応にグッタリしてしまいました。



「ともかく、今は警察に話をしたばかり。

今後どうなるかなんて、ボク達が知りたいくらいだから!」



クダリがヤケ気味に叫んでおりますが仕方がないでしょう。

これは、お客様のご迷惑にならない様にしなくてはなりませんね。

朝礼で、昨日起こった事のあらましとその後の説明をした後で

マスコミの方々への受け答えは、控えるように皆様にお願いします。

朝礼を終え戻る途中にも、やはりコメントを求める方が大勢で

私逹はかなり辟易しておりました。



「ボス達、これはキチンと今の状況をお話すべきでしょう?

こちらに非は無いのですから、事実を言えば良いんです。」



隣を歩いていたが苦笑いをしながら、私達にそういうので

仕方なく、執務室へ戻る足取りを止めて対応させていただきました。

エントランスの被害程度、その時の対応の説明をしていると

ポケモンとバトルをした人物…について

どういった人物なのかという質問が多数あがりました。



「二人共ボク達の大切な部下、そして凄く優秀なトレーナー。

その二人が、どんな思いでポケモン達の相手をしたかわかる?

ポケモン達も、部下達にどんな思いで攻撃したかわかってる?」



「許されるはずのない、人への攻撃の指示に戸惑うポケモンを前に

彼等も業務を全うさせる為とはいえ、それに応じざるを得ませんでした。

その後、彼等はトレーナーに置き去りにされたポケモン達に対して

速やかに治療をと、ポケモンセンターへ搬送させたのです。

このバトルは、本来であればあってはならない事でございます。

私達はトレーナーと、彼等の属する団体を許す事はできません。」



「だからお願い、彼等の事はそっとしておいて欲しい。

ポケモン達はトレーナーの指示で、部下逹は自分の仕事の為にした事

面白おかしく話して良い事じゃない。こんなのバトルじゃない。」



「彼等への直接の質問は、ご遠慮していただきとうございます。

更に、ここは公共施設でもございます。他のお客様のご迷惑にもなりますから

今後なにか質問がおありになるのでしたら、広報を通してくださいまし。

私達が答えられる事でございましたら、対応させていただきます。

皆様方もお仕事なのでしょうが、理解の程お願いいたします。」



は自分とを手札にして構わないと言いました。

ですが、私達はそうするつもりは毛頭ございません。

私とクダリはマスコミの方々に深々と頭を下げて頼みました。

えぇ、それで大切な友人でもある彼等を守れるなら、安いものでございます。


その後更に何か言い集う方々に、業務が滞る事を理由にその場を離れ

私達は精神的に酷く疲れながらも、執務室へ戻りました。



「ただいまー、置いてくとか酷過ぎる!って、お客様…」



「ただ今戻りました、これは失礼を…」



執務室に入れば、応接スペースに座った男女がこちらに手を振っております。

一瞬誰かわからなかったのですが、声を聞いて私達は驚いてしまいました。



「ボス達お疲れ様。やっぱりマスコミが騒いでるみたいだね。」



「テレビでも放送されてましたよー。トツカさんが出てたんですけど

ギアステ褒めまくりで、聞いててなんだか嬉しくなっちゃいました。」



「嘘、なの?うわー、二人共別人?!」



…その格好は一体どうされたのですか?」



えぇ、目の前の人物は普段のとはまるで別人の様で

は前髪をウェーブさせておろしているし、眼鏡も外しております。

は普段のウェーブのある長髪をストレートにしておろし

かなりキツめの化粧をされているのでございます。



「これから警察に行くので、マスコミ対策としての変装だよ。

流石にいつもの格好じゃ、もみくちゃにされそうだからね。」



「色々と騒がれるのは仕方ないんですけどねー。

なんていうか、自衛出来るところはやっておかないと。」



それじゃ、すっごい事情聴取されてきます。など冗談を言いながら

二人は警察へ行かれましたが、本当に大丈夫なのでしょうか?



「うわー、ホントだ。ノボリ、監視カメラの映像見て!

マスコミの人達ってばが歩いていても全然気がついてないよ!」



エントランスの監視カメラの映像には出口に向かうの姿が

映し出されておりますが、マスコミの方々は全く気が付いておりません。



「これだけのマスコミの包囲網を簡単にくぐり抜けるとは…

ある意味痛快でもございますねぇ。流石はでございます!」



「うん、二人共探偵とかの素質あるんじゃないの?

これで、しばらくは二人へのマスコミの干渉もないから安心した。

ボク今のうちに、ちょっと広報にマスコミ対策を頼んでくる。」



「それじゃあ、俺も自分の仕事に戻らせてもらうかな。

ゲンナイにもマスコミへの対応を説明しておきますね。」



二人が執務室を出て、私は一人デスクに向かって書類整理を始めます。

いつも以上に呼び出しがかからずに、結構な時間をデスクに向かい

書類整理をしながら、考えるのはギアステのこれからについてです。

先日職員の懲戒解雇の件で、バトルサブウェイの本部に報告書を

提出したばかりなのに、またもや今回のこの騒動でございます。



「本部が動かれても…仕方がないでしょうね。」



溜息混じりに呟けば、ドアが開いてクダリが戻ってまいりました。

私の方を見て、ちょっと顔をしかめてからコーヒーを淹れて手渡してくれます。



「ノボリ、すごく難しい顔してるけどもしかして本部の事考えてる?」



「えぇ、先日職員の懲戒解雇に関する報告書を送ったばかりです。

そして、またこの様な事態でございますからね。

流石に、お咎め無しと言うわけにはいかないのではないでしょうか?」



「うん、でもボク達にはなんの落ち度も無い様にしてみせる。

実際問題、然るべき対応をとっただけだもん。大丈夫、オッケー!

報告書も、今度はボクが作る。ちょっと考えがあるんだよね。」



コーヒーを一口飲んだ後で、椅子から立ち上がり私のそばに来ると

一枚の書類を手渡してきました。

なんでしょう?と思い、目を通せばそれはポケモン協会のイッシュ支部からで

記事にも書かれていた、優良施設の認定が確実になったというものでした。



「これは…本当でございますか?」



「うん、さっきトツカさんから連絡があった。

まだ発表するのは先の事になりそうだけど、ほぼ確定だって。

バトル施設で、だいすきクラブの優良施設の認定を受けるなんて

うちが初めてになる。これを使わない手は無いと思う。

後ね、エキシビジョンマッチだってそうでしょ?

バトル施設から選ばれたなんて、ボク達だけ。これも使える。」



「成程、もっともエキシビジョンマッチの方は、良い戦績を残さねば

使うことも出来なくなりましょうが…ねぇ?クダリ。」



「うん、ボク達はマルチが一番得意。誰に負けるつもりもない。

いつも通り、すっごいバトルをすれば良いだけ。勝利を目指せば良いだけ。」



相手がチャンピオンであろうとマスターランクの方であろうと

その様な事は瑣末な問題でございます。

私達は常に最高のバトルを提供する事を求められており、応えているのです。

フィールドが変わろうとも、私達のすべき事に変わりはございません。

私は自分のデスクの鍵付きの引き出しを開けて

エキシビジョンマッチの最新の書類を取り出して、広げます。



「それでは、使用ポケモンはこの前話した通りでよろしいですね?」



「うん、いつもレベルフラットでしかバトルしてないけど

きっとすっごいバトルをしてくれるはず。ボク達も頑張らなくちゃね!」



一枚の書類を取り出して、二人で顔を見合わせて笑ってしまいました。

それは使用ポケモンを記入する用紙で、既に完成させております。



「それでは、こちらは協会の方に発送させていただきます。」



「うん、ボク達の本気を一般のお客様だけじゃなく、本部にも見せる。」



返信用の封筒に書類を入れ、封をして発送用のボックスにいれてから

私とクダリはお互いに拳を突き合わせて頷きました。

これで、この件は問題ございませんでしょう。


何度かそれぞれにトレインに乗車して、執務室に戻れば

警察からが帰ってきておりました。



「二人共お疲れ!帰ってくる時もマスコミにはバレなかったんだ。」



「お疲れ様でございました。それで警察は何と言っていましたか?」



コートと制帽をかけて、デスクに戻ればがコーヒーを手渡してくれました。

この様な光景もゲンナイが来てからは久しぶりで、新鮮に感じますね。



「安全管理課が頑張ってくれてるみたいで、マスコミの数は減ってるよ。

もっとも、俺達に気づくような連中はそうそういないと思うしね。」



「警察の方は事前に主任が、色々と被害状況とか、今回の事件の前に

こっちが相手の情報を掴んで警戒してた事とか、その辺の対応なんかを

すっごい書類にまとめあげてたおかげで、あっけなく終わりましたよー。」



「うわー、ってばそんな書類作ってたの?」



、その書類の内容を私達にも報告してくださいまし。」



私達の言葉に、それは当然でしょう?と、苦笑いしながら

デスクの引き出しから書類を取り出して、私達へ提出します。

その内容は、愛護団体からの抗議文が来た事から始まり

彼等の抗議活動内容の詳細と、それを知った私達の、施設での対応、

警察には、問題が起きるとは確定できなかったので通報できなかった事も

含めて書かれておりますね…そして、本来であればボケモンを使用しての

阻止活動するつもりが、相手の滅茶苦茶な挑発と、施設被害の甚大さに

仕方なく対応してしまった事と、その後の事態への対応と処理についてが

かなりの枚数をかけて書かれておりました。



「フフッ…これを受け取った警察の方は、大変困られたでしょうね。」



「あはは!これは凄すぎるってば。

だって、これ見たら事情聴取の必要なんて無い!

ってか、この書類をそのまま警察で使ってるかもしんない。」



相変わらずの用意周到さに、私もクダリも笑うしかありませんでした。

当の本人は、何を当たり前の事を言ってるんだという様な顔をして

ニヤリと笑った後、自分の仕事を始めてしまう始末でございます。



「そのおかげで私も早めに仕事ができるんで、オッケーです。

でも、流石にこの変装は今回限りにして欲しいかも。

なんせ皮膚呼吸できないって位に、塗ったくりましたからねー。」



応接スペースで化粧を落として、髪をいつもの様にアップにして

すっかり、普段通りに戻ったが苦笑いをしております。



「うん、これって後は向こうの出方を待つだけ…ってか

向こうが潰れるのを待つだけって感じかもしんない。」



「ですが、油断は禁物でございますよ?

何分、とんでもない事をしでかす連中でございますから。」



「それについては俺も賛成だね。

相手は自作自演を平気でするような、非常識な連中なんだから。」



「まぁ、いつでも油断をする事なく臨機応変に素早く対応する。

これって、バトルでも安全管理でも同じ事ですからねー。

最後の最後で気を抜くなんて、ここの人達がするわけがないし!」



の言葉に全員が頷きますが、当然でございます。

私達の部下は、皆様全員が大変優秀で猛者揃いなのですから。


昨日はどうなる事かと思っておりましたが、

一夜明けてみれば、既に勝利は目前に迫っている状態になっております。

もっとも、攻撃の手を緩めるつもりは毛頭ございません。

廃人施設とはバトルだけではない事を、思い知らせて差し上げましょうとも!