二章・初志貫徹編 -平社員、事後処理にため息をつく。-

二章・初志貫徹編

平社員、事後処理にため息をつく。



エントランスへ戻る途中に、総務部長さんとシンゲン部長さんに会った。

二人共、書類を抱えてお互いに何か言い合ってる所を見ると

今回の騒動についての後処理を担当してるんだろうなぁ。

会釈をして通り過ぎようと思ったんだけど、そうはいかなかったしー!



、もしや事務室の帰りかね?ボス達と向こうの連中の様子は?

馬鹿な事を言ったりしてはいないだろうね?」



「総務部長さんとシンゲン部長さん、お疲れ様ですー。

向こうでは相変わらずのお決まり文句を並べ立ててましたけど

ボス達はポケモン愛を叫んで真っ向勝負してましたよ?」



私がヤブクロンを連れて行った事を含めて事情を話すと

二人共吹き出して笑っちゃったよ!

何気にこの二人仲良しさんなのかな、お互いの肩を叩きあって

涙を流して笑ってるし。



「あの二人は昔からそういう所は変わらない。ふふっ、相変わらずだね。

一にポケモン、二にバトルと私達職員で一番最後が自分達だ。」



「ククッ…ソウデスネ。ポケモンノ待遇改善デ 貴方二真ッ向カラ

バトルシタノハ 後ニモ先ニモ アノ二人シカ居マセンカラ。」



うわー、なんだかその光景が目に見えるかも?

でも、両ボスらしくて私も思わず笑っちゃった。



「あ、そう言えばシンゲン部長…ボス達に時期を見て報告するって言ってたけど

それをしなくて、結局はこんな事になってしまってすみませんでした。」



私は頭を下げて謝る。シンゲン部長は驚いて頭を上げるようにって言ったけど

これはこっちが悪いから、そう簡単には上げられないんだよねぇ。



、君達は元よりボス達に報告するつもりはなかったんだろう?

ボス達だけじゃなく、部下もこの位の処理を臨機応変にやらなければ

いつ何時もっと大変な事があっても動けないだろうからね。」



「ボクモ ソウ考エテイマシタ。

貴女達デアレバ、モット上手ク 状況解決シテイタデショウ?

ソレヲ 敢エテ、ボク達ノ指示デ 動イテイタンデスカラ。」



「あら、バレてました?」



やっぱり伊達に歳はくってないって事なんだろうな。

今回、私達が中心にならなかったってのはそういう事なんだよねー。



「私達はどうもボス達に甘いからね。企業のトップとしてしっかりしろと

表面上では言っているが、こうやってちょっとした事であれば

彼等のメンタル部分に負担をかけたくないと思って、独断してしまう。

それは企業運営としては致命傷にもなりかねないからね。

今回の件で、それを嫌という程痛感させてもらったよ。」



さすがは総務部長さん!ホント、その通りですよー。

だって、ここの職員の人ってボス達の事になったら目の色が変わるんだもん。

上司を尊敬とか好きって事は、悪い事じゃないけどちょっと行き過ぎてる。

まぁ、馴れ合っちゃ駄目だって事で。



「アノ二人ハ 以前ト比ベテ 格段二 成長シテイマシタ。

私達ハ ソレニ気ガツケナカッタ。 彼等ハ素晴ラシイ上司デス。

モウ ボク達ガ教エル事ハ 何モアリマセン。」



「それは違うと思いますよー。これから先、きっとボス達は壁にぶつかったり

判断を迷う事だってあるはずです。そういう時こそ皆さん方の出番でしょう?

経験的にはどうしたってまだまだなんですから、そこをフォローしつつ

支えあっていくってのが、理想の形なんじゃないですか?

普通の企業じゃそういうのって青臭いって言う人もいるけれど

私…ううん、課長も主任もですけど、ここはそういう企業理念なんだろうなって

そう思ってましたけど、違ってましたか?」



「…確かに、ボス達は就任当初からそう言っていたね。

それにしてもも言えるけど君の考えは老熟しているね。

実は年齢を誤魔化しているんじゃないのかい?」



うわーい、それは確かに実年齢的に言えば部長さん達との方が近いよね。

でも、そんな事言えないからここはジョークで切り返しちゃおうか。



「部長、それって失礼ですってば。私はシンオウで満腹状態のカビゴン並に

動かない部下を持って色々大変だった経歴持ちなんですよ。

そんな中で業務改善とか色々やってましたからねー。

課長や主任もずっと上に立ってましたんで、そのせいですよ?」



人を指差しちゃいけないんだけど、敢えて眉間に皺を寄せつつ

二人を指差しておどけて見せれば、すまないって笑われちゃったよ。

そんな感じで話を終わらせると、部長さんコンビは事務室へ向かった。

きっとすっごい完璧に処理するんだろうなぁ…愛護団体さん、ご愁傷様?


まぁ、この件はこれで落ち着くからいいやとのんびりした気持ちで

エントランスに戻ってきてみれば、がすっごい顔してたよ。

うわーい、ついでに私もご愁傷様?



「いつまでヤブクロンを届けるのに時間をかけてるんだ!

ラッシュ前にここの立ち入り禁止を解除するんだから、さっさと仕事に戻れ!」



「うわわ、すみません!んじゃ私はこっちの壁のブルーシート張りを

ルカリオと一緒にやって、それが終わったら天井に取り掛かりますー!」



こういう時のに逆らっちゃ駄目だってのは、長年の付き合いでわかってる

これはさっさと仮養生をしちゃって、とっとと修繕しなくちゃ。










「突貫突貫確定でー、やる事ドッカン嬉しいぞー」



「…姐さーん、その歌笑えないっすよー?」



ギリギリだったけど、ラッシュ前に仮養生を終わらせて。

私は作業場に戻って、自分の仕事分の事務作業をしていたんだけどさー。


作業場のパソコンに送られてきた、修復の作業工程表(作)に

こんな歌を歌っても仕方が無いと思うんだよねー。

ゲンナイ君が苦笑いしてるけど、仕事の量を知ってるから笑い事じゃない?


パソコンから工程表をプリントアウトして、ホワイトボードに貼り付ける。

エントランスの空調調整の為の保全は、もう見張りを必要としないから

営業時間内にやる必要が無いってんで、これも夜間作業に変更されてる。

日中は通常業務もあるし、がいないと駄目だから

私が夜間メインになってるんだけど、結局は二人共突貫なんだよねー。

作業工程表を見てたゲンナイ君が顔をひきつらせてるけど、こんなもんだよ?



「姐さん、俺も夜間業務に入りますよ?

元々向こうでも、結構やってたし戦力になると思うんすけど?」



「気持ちだけもらっとくよー。ゲンナイ君は試験勉強もあるんだからね。

むしろ、これからはそっちをメインにしてもらわないと困る。

一発合格出来なかったら、私が色々大変な事になるんだからそれは避けたいしー

私が夜メインになる分の、日中の保温の保全作業を任せたいんだよねー。」



労働基準法、何それ美味しいの?状態な工程表は

それでも、うちらのペース配分をきちんと考えられている。

ただし、全力を出し切らないと終われない配分なんだけどね。

こういう所がが鬼畜眼鏡と言われる由縁なんだよ!ハンパねぇだよ!!


ベロアちゃんが入れてくれたココアをチビチビやりながら、今日の分の

作業工程を頭の中でシミュレーションする。

予定より、もうちょっとは先に進ませられそうかもしんないね。



「ゲンナイ君もさ、向こうのギアステはここより更に効率重視だから

ペース配分とか、作業人員の配分を徹底しないといけないと思うんだ。

この状況は結構良い勉強になると思うから、しっかり見て頭に叩き込んでね?

人数的にはそっちの方が余裕あるから、色んなパターンが出来ると思うけど

決して予定より遅らせない事、余裕を持たせた計画出すのが利口だから。」



「所謂大人の駆け引きってヤツっすよねー。俺苦手でしたけど

人を使う様になって、やっとそれが大事だってわかったっす。」



うんうん、そうやって大人になるんだよねー。

ベロアちゃんがから言われてやってる書類をチラッと見れば

ちょっと改善した方がいい場所を見つけたんで、声をかけて指摘する。

根が素直だから、ちょっとしたアドバイスでもすぐ吸収するのが

彼女の強みかもしんない。ゲンナイ君良い子を嫁にもらったね!



「二人はこれからも定時上がりで構わないからね。

毎朝、デスクに試験用の模擬問題を置いておくから、帰りに提出する事。

それの添削と次の問題を翌日また置いておくからね。

実技については問題ないと思うから、一応自分で復習だけはしておいてね。

うん、今日はちょっと遅くなっちゃったけど帰っていいよ。お疲れ様!」



「了解したっす!それじゃ姐さんもアニキも頑張ってください。

それではお先に失礼させてもらうっす。お疲れっした!」



「身体二気ヲツケテ 頑張ッテクダサイネ? オ疲レ様デシタ。」



二人を帰してから、再びパソコンの画面を見てため息をつく。

からのメールは添付された工程表だけじゃなかったんだよね。



「突貫作業中の事務処理は執務室でやれって?

いやいや、私はそれをするつもりはないからね。その必要もないんだし。

これはハッキリ言っておかなきゃダメかもしんないねぇ。」



微温くなったココアの残りを飲みながら、一人呟く。

それだけじゃなく、今回の事での私達の処遇も聞かないとならないしー。



「あー、めんどくさい。」



空になった紙コップをゴミ箱へ投げ入れて、席を立つ。

作業場のドアの施錠をしてから、執務室へ歩き始めたけど、足取りが重いよ!


色々と言われるんだろうなー。特に黒ボスとか黒ボスとか?

今夜の作業の為に、手短にお願いしますって言いたいけど

これを言うと墓穴を掘りそうだからやめておこう。

うわーい、私も随分学習したもんだわ!