二章・初志貫徹編
上司達、ポケモン愛を熱く語る。
ボクとノボリは事務室の奥にある、一般のお客様の待機場所とは違う
暴れるとか、問題のあるお客様専用の部屋の中に入っていった。
そこには縛り上げられた結構な人数の人達が一固まりになって
カーペット敷の床に直接座っていた。
一応ベンチもあるんだけど、座りきれないだけの人数だからなんだろうな。
「皆様方が何故当施設にて問題行動を起こされたのか、
それにつきましては部下より説明を受けました。
愛護団体として、初めに抗議文を提出してらっしゃいましたのに
何も応対をしなかった事につきましては、謝罪をさせていただきます。」
うん、これはこっちの落ち度になっちゃったと思う。
然るべき対応をしていたら、相手は行動を起こさなかったって
そう言われても仕方ないんだもん。
もっとも、ボク逹はエキシビジョンマッチへの参加を取り消さないから
結果は同じだったと思うんだけどね。
やっぱりって感じでここにいる人逹が口々に、ボク達施設への
抗議とか存在そのものを否定する言葉をいってるけど、だからなに?
「あのね、ボク逹は確かにバトル施設の職員であり、トップにいる。
でも、施設そのものの歴史は皆が望んで出来た。その事を忘れないで欲しい。
それにポケモン達を無理やりバトルなんてさせてない。
そんな事したって、つまらないバトルにしかならない。
厳選育成も色々言いたい事があるかもしんないけど、ボク達の企業は
それをしなくちゃ成り立たない。これだって認められてる事。
キミ達のやった事は営利妨害以外の何物でもない。」
「私達も皆様と同じ様にポケモン達を愛しております。
ですが、私達はただ愛護するだけでなく、ポケモン達と共に
バトルをする事に魅了されたのです。バトルをしている時の
ポケモン達の美しさ、その姿勢に感銘を受けて共にありたいと願ったのです。
ポケモン達への負担が全くは無いと言い切れません。
ですが、それを最小限にする為の努力はもちろんさせていただいております。」
こういう人逹にいくら言ってもお互いに水掛け論だってのはわかってる。
それでも、ボク逹は機会があれば何度でも言わせてもらう。
やっぱり、目の前の人逹はそれは偽善だとか自己満足だとか言ってる。
だけどさ、愛護するってこと自体がポケモン達にとってはそうなんじゃないの?
愛護って言うのは、弱いものを護るって意味もあるんだから。
ポケモン達が弱いわけないでしょ?立場的に人間が上なんておかしいと思う。
いつも思う事なんだけど、ボク達の気持ちをどうやったらわかってくれるかな?
だってボク達も愛護団体の人達も、根っこのポケモンが好きって部分は同じ。
ギアステの職員の皆だってそうなんだって、わかって欲しいな。
不意にドアがノックされて、が入ってきた。
その腕の中には、ノボリのヤブクロンが抱っこされてる。
ヤブクロンはノボリの姿を見つけると、の腕から飛び出して
ノボリに向かって走り出してきた。
「お話中申し訳ないと思ったんですが、温室で昼寝から目が覚めたヤブちゃんが
黒ボスの姿を探して泣いちゃってたらしいんで連れてきましたー。」
「あぁ、余りにも気持ちよさそうでしたのでそうしてしまったのです。
ヤブクロン、もう大丈夫でございますよ? 安心してくださいまし。」
ノボリに抱っこされて嬉しそうにしてるヤブクロンを、
この人逹は愛護しようって感じの目では見てなかった。
それに気が付いてないのかな?がちょっとスミマセンと言って
ノボリからヤブクロンを受け取って、縛り上げられてる人逹に向かって見せた。
「このヤブクロン可愛いでしょう? 性格もいじっぱりって言うけど
どこが?って感じですっごく甘えっ子なんですよー。
あれれ?どうして皆さん後ずさりしちゃうんですかー?
ホラ、ヤブクロンが傷ついたみたいで悲しそうな顔しちゃいましたよ?」
「!ヤブクロンを傷つける事は許しません!!
この子はとても心優しい子なんですよ?それにまだまだ子供でございます。
世間一般の評価に耐えられるわけがないでしょう!貸してくださいまし!」
違う。これは絶対ワザとやってるんだと思う。
悲しそうな顔をしたヤブクロンをノボリと二人で一生懸命に慰めてる。
あー、二人共頬ずりとかしてメロメロになってるし。
ボクは後退りをして離れちゃった人逹の前にしゃがみこんだ。
皆が、ボクの顔見てビックリしてるけど仕方ないよね?
一応スマイルはしてると思うけど、ホントはすっごく怒ってるんだから。
「ねぇ、皆は愛護団体の人逹なんだよね?
なのに、ヤブクロンが傍に来たらどーしてそんな態度を取るの?
あのポケモンは愛護して、このポケモンは愛護しない。
それってすっごくおかしい事だと思うんだけど、違うかな?」
「全てのポケモンは愛すべき存在でございます!
一部の心無い方々はこの様に区別…いえ差別してしまいます。
ですが、その様な事は許されるべきではございません!」
ボク達の言葉に全員が何も言えなくなるってのも、どうかと思うんだけど。
って、そう思ったら捨てポケモンの話がでたよ。
丁度いいや、この際だからはっきり言わせてもらおうっと。
「確かに、ここの施設利用をする人達の中にはそういう人がいるのを知ってる。
でも、ボク達も職員も絶対にそんな事しない。ここの規約にも書いてある。
ちゃんと一人で生きれるまで育ててそれから、野生に返してる。
それは当たり前の事でしょ?キミ達の団体はそういう活動とかしてないの?」
「当施設でも、積極的に捨てられたポケモン達の保護をしております。
この場合はポケモン救済センターに協力をしていただいておりまして…
そうだ!皆様方の愛護団体でも、是非保護の協力をしていただけませんか?
勿論、その際の資金についてはそれなりに提供させていただきますよ?
ポケモンを愛する者同士、不幸なポケモンに手を差し伸べるのは当然!
そうでございますよね?」
「…ボス達ー、ちゃんと現実見てくださいよ?
こんなポケモン達を差別しちゃう団体さん達と提携を結んじゃダメですってば!
それに、その件はちゃんとだいすきクラブさんの承認をもらわないとですよ?」
だいすきクラブって言葉に、ここにいる何人かの人達が反応した。
そうだよ、ボク達のポケモンが好きって気持ちは、だいすきクラブの人逹は
皆知ってる事だもん、何も後ろ指さされる様な事はしてないんだからね。
「後ですね?皆さんはトレインに乗車しましたか?
バトル中、サブウェイマスターだけじゃなくてバトルトレーナーの皆さんを見て
ポケモンを蔑ろにしていたりしていましたか?違うでしょう?
凄くお互いを信頼し合って、楽しそうにバトルをしていませんでしたか?
ここの人逹はポケモンに無理強いをさせていませんよ?
ここの施設がそんな事してたら、あなた逹はこんな危険な事をしないで
そっちを盾にして徹底的にこの施設を叩いているはずですよね?
それが出来ないから、こういう事をしちゃったんじゃないですか?」
え、そういう事なの?
の言葉に全員が下を向いちゃったし。
そっか、少しはボク達のポケモンへの気持ちがわかってくれてるのかな?
ボクの隣に、ノボリがヤブクロンを抱っこしたままでしゃがみ込んだ。
「皆さんはこの騒動を起こす為に、事前にこちらに何度もいらっしゃいました。
バトルトレインに乗車して、ポケモン達と心を通い合わせて勝利した時に
心躍りませんでしたか?お互いの絆が深まった様に思われませんでしたか?」
その隣でがたったままノボリの言葉に頷いていた。
「私はイッシュ以外のバトル施設を知ってますけど、
ここ以上にポケモン達の事を考えてる施設はありませんよ?
なんてったって、職員同様に福利厚生が充実してるんですからねー。
むしろ職員より待遇が上?そんな風に思っちゃうくらいなんですよ?」
「、それは当たり前。ここバトルサブウェイで一番頑張ってるのは
ポケモン達なんだもん、その位して当然。」
「えぇ、ポケモン達がいるからこそのバトル施設でございますよ?
彼等に負担を強いる事は絶対あってはなりませんとも!」
ボク達の言葉に、クスクスと笑いながらはハイハイって言ってるけど
本当の事だもん、それ以外にどう言えばいいの?
「ね?サブウェイマスターさん達も、貴方達も根っこは同じなんですよ?
価値観が違うだけで責めるのはおかしいでしょ?
私に言わせれば、どっちも筋金入りのポケモン馬鹿にしか見えませんよ?」
言葉が過ぎるってノボリに注意されたは、相変わらず笑いながら
すみませんでしたーとか言ってるけど、悪いとも思ってないでしょ?
でも、の言葉でここにいる人逹の雰囲気がちょっと柔らかくなった。
インカムから、を呼ぶの怒鳴り声が聞こえてきて
慌てては部屋を出て行っちゃった。
ボク達は言いたい事を全部言わせてもらった。
後は企業としての事務的な事を言えば良いだけになったんだけど
総務部長とシンゲン部長が戻ってきて、ここは任せて欲しいって言うから
今まで話していた事を説明して、ボク達も部屋を出る。
一般用の事務室に戻ってから、どっと疲れてボクもノボリも
傍にあった椅子にもたれ掛かる様に座り込んじゃったけど、仕方ないよね?