二章・初志貫徹編 -勃発!手出し無用の異種格闘戦-

二章・初志貫徹編

勃発!手出し無用の異種格闘戦



エントランスで問題が発生してるから、急ぎたいんだけど

だからと言ってバトルを中断するって選択は、ボク達にはなかった。

これって、企業のトップとしては駄目だってわかってる。

でも、向こうはボク達が到着するまでなんとかしてくれる。


部下逹を信じて、バトルを勝利で終わらせた途端に

目の前のチャレンジャーがボク達に飛びかかって来た。



「お客様、車輌内ではポケモン以外のバトルは禁止されております!」



「うん、先に手を出したのはそっち。これは、正当防衛!」



殴りかかってくるチャレンジャーを、交わし際に腕を掴み捻り上げる。

そのままうつ伏せになった状態で押さえつければ、前の車両から

職員が入ってきて、二人を縛り上げた。



「色々と言いたい事がおありでしょうが、それは事務室でお聞きします。」



「あのね、ボク達も聞きたい事がある。でも、ちょっと待ってね。」



バトル中に既にホームに戻って走ってた電車は、思ったより早くに到着した。

縛り上げたチャレンジャー達を部下に任せて、ボク逹はホームに降りる。



「ノボリでございます。今ホームに到着、状況を説明してくださいまし!」



『こちらクラウド、あきまへん!もうどっちも手がつけられん状態で

わしらは見てるだけになっとります!!』



インカムからクラウドの悲鳴じみた応答が聞こえるだけじゃない。

インカムと乗車受付の向こう側から同時に破壊音が聞こえてくる。



だけなら大丈夫…だと思うのですが…」



長いホームを急ぎ足で現場へ向かう途中、ノボリが呟いた。

うん、は前に混乱状態で暴れていたコジョンドを力ずくでねじ伏せた。

その時の顔はすっごい笑顔だったってキャメロンが言ってたっけ。

でも、問題はもう一人だ。



が心配、本気で止める!」



ホルダーからボールを取り出し、いつでも準備オッケーにする。

ノボリも、もうボールを取り出しているから考えてる事はおんなじだと思う。

職員が取り囲んでる場所に到着して、状況を見て驚いた。



「クダリ… 私、夢でもみているのでしょうか?」



「ノボリの気持ちもわかるけど、これは夢なんかじゃない。

ねぇ、これってダブルバトル?マルチバトル?」



目の前でバトルをしてるのは、ナゲキとダゲキ。

結構高個体値?よく育てられてる方だと思う。

そして、対戦してるのはとかちょっと待って欲しいんだけど!



「くっ…ナゲキ、ジャンプからのいわくだき!」



「ダゲキ、雷パンチだ!」



「「!!」」



向こうのトレーナーの指示に2匹がに向かって技を繰り出そうとしてる。

だけどはそっちをチラッと見て、ニヤリと笑ったまま動かなかった。



「はーい、ごめんなさいよ っとー!!」



呑気な声がして、の前に小柄な影が飛び出してきた。

そして、電気を纏うダゲキの腕を横から掴んで地面へ叩き伏せる。

それと同時に、がその影の正体…ってか、の腰を引き寄せて

抱え上げると、ジャンプしてナゲキの攻撃を避ける。

避けられた攻撃はそのまま倒れたダゲキにあたって、ダメージを与えてる。



「ナイスフォローだ。感電は…してねぇな。

ボス達のお出ましだから、そろそろケリつけるとするぜ?」



「ギアステ支給の絶縁グローブは伊達じゃないわー。うん、遊びすぎた?

…じゃないや、課長ー、ボス達にさっきの映像見せて下さいねー。」



二人はボク達を見つけて手を振ったりしてるんだけど、何その余裕?

勿論、その間もは着地に失敗したナゲキに踵落としを決めてるし。

も、フラフラしながら立ち上がったダゲキに二度蹴りして攻撃中

これははっきり言って、ボク達が手を出す隙すらないかもしんない。


ノボリと二人でボールをホルダーに戻していると、が傍に来て

ボク達にライブキャスターの画像を見せてくれた。


エントランスの壁とかを壊してるダゲキ、ナゲキを止める様に言う

トレーナーがとんでもない事を言ってる。

ポケモンを使わないで止めてみろってどういう事?

弁償するって言ってるけど、そんなの無理だろうって顔が映ってる。

うわー、止めれたら一括で弁償してやるとか言って、更に挑発してるし

それを聞いてるの顔がすっごい怖い、

クラウドが挑発に乗るなって止めてる横で、

絶対に手を出すなって釘を刺す、その笑顔がすっごく怖いよ!



「…これは十分に証拠として成立致しますね。

何故誰も、二人を止めないのか不思議でしたが、これで納得でございます。

二人共、勝利に向かってひた走ってくださいまし。」



「うん、音声も画像もバッチリ、オッケー!」



このバトルの行方なんて、もうわかりきってる。

有利に進めてるのはで、今もすっごい余裕なんだもん。



「お前等、ボス達の許可も降りたんだ、いい加減ケリをつけろ。」



が二人に声をかけると、こっちを見て頷いた。



「んじゃ、そろそろいきましょうかねー。マナーを守って施設利用 っと。」



「安全管理で皆さんスマイル ってか?

そろそろ引導渡さねぇと、こいつらの負担も大きいしな。」



「「ボスに確認、準備オッケー」」



「…どこかで聞いたセリフでございますねぇ…」



「ノボリ、それって天然ボケ?二人共ボクの真似してる!

うん、ここまできたら、後の言葉はもうアレしか残ってないと思う。」



二人の絶え間ない攻撃を受けて、ナゲキもダゲキももうHPは真っ赤。

立ってるのがやっとって感じになっちゃってる。



「「目指すは弁償!バトルで勝利!!」」



の蹴りが2体の急所に当たって、そのまま戦闘不能になる。



「ナゲキ、ダゲキ、共に戦闘不能にございます!」



「このバトル、の勝利!」



ガックリと膝を付いたトレーナー達に、ボク達の声は届いてないみたいだった。

暫く呆然としてたんだけど、いきなり戦闘不能になってるポケモン達を置いて

急に出口に向かって走り出す。ポケモンを置いてくとか、信じらんない!


だけど、こんなとんでもない事をする人達を逃がすわけがないでしょ?

最初から待機してた駅員達が行く手を塞いで、逃亡劇は失敗。



「お客様、これから破損箇所の見積もりをしてお渡しします。

勿論、弁償していただけますよね?証拠はあるので、逃げられませんよ?」



取り押さえられた二人に、が声をかける。

施設設備の取り扱いにはは凄くうるさい、それがこんだけ壊されてるんだ

顔は笑ってるけど、目は全然笑ってないよ!

二人共お客様だったけど、今はもう違う。優しくなんてできっこない。



「ポケモンを置いて逃げるとは…トレーナーの風上にもおけません!

お仲間が待っておりますので、事務室にてしばしお待ちいただきましょうか。」



「キミ達はギアステと他のお客様にすっごい迷惑かけた!

色々聞きたいし、言いたい事がある。ボク逹はこんな事を絶対許さない。」



二人を職員が縛り上げて、事務室へと連行していった。

立ち入り禁止にしたエントランスに静かさが戻ってきたのは良いんだけど

この事態の説明を、ボク逹はまだ聞いてないんだよね。



「いやー、終わったのは良いけどコレどーするのー?

壁とか天井とかはブルーシートで覆って、大至急修復しなくちゃでしょーが!」



「うるせぇよ!そもそも、あいつらに壊させた場所は修繕で取り壊す部分で

こっちには痛くも痒くもねぇって説明しただろうが!

流石に床へのダメージはマズイから、どっちかを下敷きにさせて

クッションがわりにしたけどな、だから床の被害はないはずだろ?」



「お前等やりすぎだ!これは突貫で修繕確定だからな。

向こうが動くのが思ったより遅かったから、授乳室の受け渡しまでいけたがな

いくら経費が弁償で浮くって言っても、これはないだろう!」



三人で仲間割れ?してるけど、ボク達がまだ残ってる事を忘れないで欲しい。

ノボリがすっごい顔して三人に駆け寄る。怒ってる?当たり前だと思う。



、怪我はございませんか?!

全く、貴方達はどうしてこうも想像の斜め上をかっ飛ばしやがるのですか!

そもそも人とポケモンがバトル等、有り得ないでしょう!」



「うわわ、黒ボス落ち着いて?

向こうのポケモン達はトレーナーの指示だからって嫌々従っただけです。

元から本気で私達に対戦する気は、あの子達にはありませんでしたよ?」



「そうそう、だから俺達もバトルしながらポケモンに協力をお願いしたしね。

見た目は派手なダメージを与えた様に見えるけど、戦闘不能でもないんだよ?

あの子達はこっちに協力して、壊して欲しい所を壊しただけで罪はありません。

これからここの修繕に取り掛かる場所だけを壊してくれたんだから

うちとしては経費節約が出来て大助かりだったりするんだよね。」



あのバトル中にそんな事までしてたなんて、二人共絶対おかしいってば。

それと、やっぱりって感じでこの騒ぎは三人共予測してたっぽい。

んで、ボク達以外の職員もそれを知ってたって事は間違いないって確信した。

その現実を突きつけられて、ボクとノボリが怒っても仕方ないよね?



「二人共、あのバトル中にそんな事をしてたの?!

あー、もう!ボク達すっごく心配した!バトルを見てどうしよって思った!

こんな騒ぎが起きるって、皆知ってたんだよね?

どーして、ボク達に教えてくれなかったの?そんなにボク達頼りない?!」



ボクが問い詰めたら、三人共困ったような顔してる。

だけど、ボクはこの件に関しては一切の譲歩も妥協もする気はないからね。



「クダリ、落ち着いてくださいまし。

三人共、そこまでおっしゃってはいないでしょう?

三人がギアステに不利益な事をしないのは重々承知しております。

ですが、私達に報告がなかった事に関してはキッチリ説明していただきます!」



「えぇ、その説明をしないとあの連中の処遇を決めれないでしょう?

シンゲン部長が直々に説明すると言ってます。

俺等は、ここの仮修復をしなくてはなりません。後から色々と聞きますから

まずは事務室へ行って、この事態になった原因と経緯を聞いてください。

二人共、作業場に行ってゲンナイ呼んで来い。ブルーシートも忘れるな。」



「「了解。」」



の指示で二人がこの場を離れた。

ボク達はもっと色々言いたかったんだけど、それを手を挙げて静止しながら

困ったように笑って、が言葉を続けた。



「俺等に言いたい事は、あの連中の処遇をお二人が決めた後で聞きます。

ボス達がこの件についてどう考えて、どう動くのか…

企業のトップとしての力量を、俺等部下達にしっかり見せて下さい。」



企業のトップとしての力量ってどーいう事なんだろ?

確かにこの事態を収拾させるのはボク達の役目、それは当たり前の事。

だけど、それだけじゃないって感じのの言葉が気になって

ボクとノボリはお互いに首を傾げながら顔を見合わせた。