二章・初志貫徹編
廃人上司達、ポケモン愛を語る。
バトルトレインの最終運行を終わらせて、執務室にて書類を整理してたら
ドアをノックして書類を手にした総務部長さんが入ってきた。
「失礼するよ。ボス達、ポケモンだいすきクラブから取材の要請がきてるんだが
ちょっと検討してみてくれないかね。」
そう言ってデスクの上に置かれた書類を手に取って読む。
バトル施設でのポケモン達の管理…ボクは管理って言葉は好きじゃないな。
ポケモンは大切な仲間で友達、物なんかじゃないんだ。
ノボリも同じ気持ちだったみたいでちょっと眉をしかめてる。
「ポケモン達を私達バトル施設の人間がどう扱っているのか…
それを取材したいという事でございますね?」
「えー、それってボク達がポケモン達に辛く当たってないかチェックする
そう言う事なんじゃないの?ボク達そんな事しない!」
「そんな事はここの職員なら全員知ってる事。
だけどね、他から見ればわかってない事だろうからね。
こちらには見られて困る様な事はないのだから、受けるべきではないかね?」
総務部長さんのいう事にボクもノボリも考え込んじゃった。
確かに、ここにはだいすきクラブの人達に見られて困る場所も事も無い。
「あのね、ボク達が心配してるのは取材が来る事でポケモン達にストレス?
そんな感じで負担がかかるんじゃないかって事。」
「えぇ、ポケモン達には最高のバトルをしていただきたいのです。
それを妨げる要因から少しでも遠ざけて差し上げるのが私達の役目。
ふむ…やはりこの取材はお断りした方が良いかと…。」
「「うははははははっ!そっちかっ!!」」
うん、ボクもそう思うって言おうとした時に後ろからすっごい笑い声が聞こえた。
ビックリしてそっちを見れば、とが机を叩いて大笑いしてる。
え?ボク達何か変なこと言った?
「いや、ボス達のポケモン愛が半端ないって改めて思ったんですよ。
そこは普通企業秘密があるのでっていう所でしょう?」
「そうそう、それをポケモンのコンディションに影響があるからって…
フフッ、流石はボスって言えば良いんだろうね…」
意味がよくわかんなくて、ボクとノボリで首を傾げちゃった。
それを見て部長さんまで口元に手を当てて笑いを我慢してるし…。
「横から口を出すようで申し訳ないけれど、俺はこの取材を受けるべきだと思うよ
これはギアステだけじゃない、バトル施設への一般人の印象を変えるには
良い機会だと思うんだけどね。」
「の言うとおりだ。丁度ボス達はエキシビジョンマッチに参加するからね。
そうなるとアチコチでくだらない事を言い出す連中もいる。
一般人に変なイメージを植え付けられる前に、実態を知ってもらう事
それは、バトル施設に対する偏見を減らす事にもなるだろう。」
あ、そっか…確かにボク達は以前から愛護団体とかから色々言われてる。
今回、大会に参加する事になったらもっと騒がれるかもしんない。
ボク達が、どれだけポケモン達を大切にしてるか言ってもわかってくれない。
今までは、わかってくれる人が来てくれれば良いって思ってたんだけど
今度からはそうはいかなくなるかもしれないんだ…。
「それに、取材を要請しているのは子供でも知っているだいすきクラブだ。
この取材でどれだけ、うちの施設がポケモン達を大切にしているのか
記事にしてもらう事は無駄ではないと思わないかね?」
「うーん、確かにそうかも。そう言う事だったら受けてもいいと思う。」
「そうでございますねぇ、だいすきクラブの方々はこちらの
バトルトレーナーとしてご協力してくださっておりますし
私達もその位は協力して差し上げなくては…。
わかりました、この話、取材を受けるという方向で話を進めてくださいまし。」
相手はポケモンだいすきクラブだもん、変な記事を欠かれる心配もない。
取材日時についても問題ないから、それでオッケーって事にした。
取材はそれから2日後に行われた。
マスコミ嫌いで有名な(確かにその通りだけど、そういう風に有名とかビックリ)
ボク達の気が変わらないうちに急いだっていうから、笑っちゃった。
まずは各バトルトレインで、ポケモン達の連戦を禁止してる事に驚かれた。
「いくらバトルが好きな子達でも、連戦する事は心身によくありません。
ポケモン達が最高のバトルを出来る様にする為、
少しでも長く共に過ごす為には当たり前の事でございます。
ですから、私達は同じ性格、特性、技のポケモンを複数体所持して
チャレンジャー様方との連戦に対応させていただいております。」
それから、やっぱりって感じだったんだけど
孵化作業と厳選についても聞かれた。
これはボク達には必要な事で、一番誤解を受けてる事だ。
「あのね、ボク達は利用してくれるチャレンジャー…
お客様に最高のバトルを提供する事が仕事。そして、そう簡単に負けちゃ駄目。
だから、それにはどうしても必要な事だってわかって欲しい。」
「私達は厳選に一番時間をかけます。
それは最高の個体を得る為と言う理由だけではございません。
厳選後の他の子達の育成、私達はこれに一番時間をかけます。」
ボク達の言葉に、大好きクラブの人達は首を傾げる。
「中にはその子達をバトルで使うってトレーナさんもいるから
そういう人に大切に育ててもらう事もあるけど、それ以外がほとんど。
全員が野生に戻しても、生きていける様にしなくちゃいけない。
でも、それって当たり前の事。」
「これは、職員を始めトレーナー様方にも徹底させております。
それが出来ない方は当施設の職員の資格はございません。
ポケモンは道具ではないのです、大切なパートナーでございます。」
「廃人って呼ばれる人逹の中には、そういう子を捨てちゃう人もいる。
ボク達はそれがわかんない。一番悲しい、許せない。
ポケモンは道具じゃない。例え厳選で選ばれなくたって皆素敵な子逹。
ポケモンも人も関係ない、すっごく大切な命。
それがわからない人がいるって事が信じらんない。」
「娯楽施設として、当施設は存在しております。
ですが、娯楽とは決して人だけが楽しめば良いのではないのです。
共に成長したパートナーであるポケモンと共に楽しい時を過ごす場所。
それが本来の娯楽施設の意味ではないでしょうか?」
ボク達の答えに、なんだかだいすきクラブの人逹は目をキラキラさせてる。
うん、根っこの部分ではボク達もだいすきクラブの人も同じなんだ。
「ボク逹は廃人って言われてる。でもバトルだけじゃない、ポケモンが大好き
大好きなポケモン達と大好きなバトルをして勝利する事が好きなだけ。
後ね、バトルが嫌いな子にはどれだけ優秀でもバトルをさせない。
だって、嫌いな事を無理やりさせたって楽しくない、スマイルになれない。
それじゃあ、その子が可哀想。でも、それって当たり前だよね?」
ボクとノボリの話に何度も頷く取材の人逹を前にして思った。
うん、サブウェイマスターになる前からその気持ちは全然変わってない。
目的は勝つ事だけじゃ駄目。ポケモン達とスマイルできるバトルをする事
だから、勝っても負けてもスマイルでいる事が出来るんだ。
その後、いくつかの質問に応えた後、ポケモン達のケアについて聞かれた。
食後とバトル後のチェックは当たり前。後は体調だけじゃなくて
メンタルのチェックも大事だから、いつも気にしてるって言った。
その後で施設の中の設備についても案内しながら説明する。
最新式の回復装置と、それでも対応できない時のポケモンセンターとの連携
バトル職員に関しては全員が応急手当のできる資格を持ってる事も説明する。
皆、すっごく驚いてたけど大切な仲間の事を考えたら当たり前だと思うんだけど?
でも、一番驚かれたのは屋上の温室に案内した時だった。
「ここは常に温度や湿度、光度を一定に保って、この状態にしております。
ポケモンによって好む環境は様々でございますが、生体を研究しておられる
色々なポケモン博士からご意見をうかがった所、全ポケモンに共通して
春の様な穏やかな気候と環境は、嫌わない事がわかっているそううでございます。
なので、その様な環境を人工的にではありますが作り上げて
ポケモン達が少しでも良い状態でいられる様にと配慮しております。」
「ホントはそれぞれの好きな場所を再現してあげたいけど、どうしても無理。
バトルだけじゃ心も身体も疲れちゃう。だから、色々調べて考えて作った。
ボク達がわかってる限りだけど、ここを嫌う子はいない。
ポケモン達だけでのんびりさせても喜んでるけど、
パートナーの人間と一緒にのんびりしてるともっと喜んでる。
ボク逹は、そんな様子を見るとすっごく嬉しい。作って良かったって思う。」
この施設は、ボク達がサブウェイマスターに就任する前に通した企画だった。
その前にも、ちょっとした癒しのスペース?そんなのはあったんだけど
もっと広い所で、伸び伸びさせた方が良いんじゃないかなって思ったから。
必死で文献とか調べて、どうやれば低予算で建設、運営できるかって
シミュレーションを重ねて、資料をかき集めて作ったっけ。
すっごく大変だったけど、それはここが出来て嬉しそうにしてる
ポケモン達をみたら全部吹っ飛んじゃったっけ。
最後に一言お願いしますって言われたんだけど、何を言えばいいのかな?
ボクが色々考えてたら、ノボリが先に口を開いた。
「私達はポケモンを愛しております。
共に絆を深め、共感できる場としてバトルを選んだだけなのでございます。」
あぁ、そうだった。ボク逹はポケモンとの絆を一番感じられるから
バトルを選んだんだよね。そしてこうやって仕事にしちゃっただけなんだ。
「ポケモン達との絆を深める事は、他のトレーナーさん逹だって同じはず。
ボク逹はそれをバトルをする事に選んだだけ、これからもそうするつもり。
皆も、色んな事で一緒に絆を深めてあってスマイルでいて欲しい。」
こうしてだいすきクラブの取材は終わった。
いっぱい写真とかも取られて、慣れないインタビューなんかもしたから
すっごく疲れたんだけど、言いたい事は全部言った。
特にこういう事が苦手なノボリが、すっごく頑張っていっぱい話してた。
ボクも、ノボリが伝えたいって思ってる事がわかったし、同じ気持ちだった。
だから、いつも以上にスマイルをして、たくさん話をした。
娯楽施設の中でも、廃人施設なんて呼ばれちゃってるし
ポケモン達をないがしろにしてるって、とんでもない噂があるのも知ってる。
廃人なのは認める。でもそれはバトルだけじゃないって知って欲しい。
ポケモンを大好きで大切だって気持ちでもなんだよって知って欲しい。