二章・初志貫徹編
カナワタウンにて
俺が持ってきた中央管制室からの意見報告書を見て、ボス達は顔色をなくした。
ジャッキーの意見書にはシステム総入れ替えについてと
ウィルスの範囲についてが細かく資料付きで書かれていて
最後に、車輌基地の協力を要請して終わっていた。
「こんなウィルスがまだ残ってたって事も問題。
でも、今はこれを早くなんとかしないと駄目。」
「えぇ、これは車輌基地の協力を頼んで早急に対応していただきましょう。
、カナワタウンへは私達も同行いたします。」
業務用のライブキャスターからカナワタウンの車両基地に
ボス達が直々に連絡をする。
「こちらライモンシティのギアステーション、ノボリでございます。
カナワタウン車両基地施設長はいらっしゃいますか?
はぁ…そうでございますか。いえ、少々システムに問題が発生いたしまして。
車輌運転システムにも関係がありますので、お話があったのですが…。
あぁ、結構でございます。これから私とクダリがそちらに伺いますので。
その時に、お話させていただきます。
…そうでございますね、システムエンジニアの方もご同席くださいまし。
それではよろしくお願いいたします。」
「ノボリ、おじいちゃんどこかに行ってるって?」
「えぇ、転車台の整備をされているので邪魔はできないと…」
「あはは、相変わらずなんだ!でもやっぱり第一線で仕事してるのが
おじいちゃんらしくて、安心した!」」
施設長自らが未だに整備作業をしてるって事は、人手不足かその人の主義か…
おそらく、この場合は後者の部類に入るだろうよ。
だとしたら、これは相当な職人気質の人物かもしれねぇな。
「そういえば、達は車輌基地をご存知ありませんでしたね。
バトルサブウェイの全ての車輌の守護神達が集う場所でございます。」
カナワタウン行きの列車に乗り込む為にホームに向かう途中で
黒ボスが冗談交じりに説明をしてくれた。
たしかに、ライモンシティじゃ全ての整備と点検は難しいだろうしな。
俺も旅の途中で行った事があるが、のどかで良い町だった。
ホームには既にが俺達を待っていた。
その手には、ジャッキーから預かったという封筒があった。
「おやぁ、サブウェイマスターさん達も同伴とか?
いやん、逆ハーレムで出発進行とか、なんてウマーな展開!」
「さん、そこはhshsしなくちゃ!
でも、ボクは頭数に入れなくて良いですからね?
あー、それにしても緊張するなぁ…カナワタウンの人達って
なんていうのか職人気質でオラオラ系じゃないですか?
ボク達も仕事に誇りは持ってますけど、ベクトルが違う…みたいな?」
同行するのは、SEの主任か…それにしてもと普通に渡り歩くなんざ
俺的には信じられねぇんだがな。
思えば中央管制室のSEの連中はジャッキーを筆頭に普通にと関わってたな。
「ベクトルが違っても、皆職人っぽ。
ね、カナワタウンの職員さん達もイケメン?」
「施設長は最古参の筆頭でございますねぇ…
車両設備…特に転車台や旧式の電車の整備では現在も重要な位置におられ、
尚且つ、後進の指導に貢献されている素晴らしい方でございます。」
「うんうん、でね、ギアステの整備班主任のおじいちゃん!
皆からもグランパって呼ばれてる。すっごく良い人!
他の人達もすっごい人ばかり、そして良い人ばっかり!」
へぇ、二人がこれ程懐く人物がいるんだ。
それにしても、やっぱりここは部下のひとりひとりが際立ってるな
それが、この二人が最高責任者として就任してからなのか
元々なのかは知らねぇが、どっちにしてもいい事だ。
電車がきて、それぞれに乗り込んで
と主任は両ボスに今までの経過をざっと説明している。
そして、目的地に到着したんで俺達は車輌基地の中に入る。
「わぁお!すっごいメカメカだらけ!
んで、皆の仕事してる姿が萌え萌えだおー!なにこのイケメンの集団!
ちゃんが、ここにきたら絶対悶えまくるわーん!」
俺達に気づいた職員は挨拶をして、すぐ仕事に戻る
その動きには技術分野に疎い俺でもわかる程、一切の無駄がねぇ。
キレっキレの動作で黙々と仕事をこなす姿は、職人以外の何者でもねぇな。
事務室に入れば、そこには結構な歳の老人と
彼を取り囲むようにして、数名の職員が既に待機していた。
「最近は仕事に精を出しとる様じゃな。二人共元気にしておったか?」
ニヤリと笑う老人…彼が施設長なんだろう。
ボス達が嬉しそうに頷いているのを見ると、孫とじいさんって感じだな。
「おじいちゃん、久しぶり!元気そうで安心した。」
「えぇ、私達は変わりありません。突然の話に集まっていただき感謝します。
ですが、かなり深刻かつ、急を要しますので…
こちらは中央管制室のシステム関連のオブザーバーでらっしゃいます。
、皆様に状況の説明をしていただけないでしょうか?」
「ほいほーい、ご紹介に預かりましたでっす!
もう単刀直入にズバズバ言っちゃいますんで、質問は後で宜しくですよん。
まずはですね、事の始まりが…」
が持ってきた書類を広げて、説明を始める。
その間に施設長は俺がもってきた要請書を受け取り目を通してる。
このじぃさん、只者じゃねぇな。
この歳でシステムだなんだと言われたら、大抵はわからねぇだろうが
全部把握してる様に、時々頷き、顔を顰めている。
全ての説明が終わった後、施設の職員が一斉に施設長を見た。
「成程のぅ…随分と舐めた真似をしてくれる。
車輌に何かあってからでは話にならんのだから、協力も何もないじゃろう。
トール、この件はお前がやれ。車輌に傷一つつけるなよ?」
「了解、グランパ。そろそろ整備の時間でしょう?
後は引き受けたので、そちらに向かってください。
皆さんも他の点検作業も押してきてしまいますので、解散です。
作業工程については追って連絡します。」
トールと呼ばれた男は、そういって他の連中を仕事に戻らせる。
それから、改めてこっちに向き直すとニコリと笑った。
「車輌システムを担当してるトールです、後、各車輌担当エンジニア達です。
なんだか色々ヤバそうだけれど、やる事はいつも同じ。
車輌とお客様と職員の安全を守るのが俺達の役目…使命ですから。
こちらでもシステムの入れ替えに向けて、動きます。
…ついでにアップグレードもしちゃいましょうか。うん、そうですね。」
こいつは驚いた。この話を聞いてさぞや慌てるんだろうと思ったが
誰もそんな素振りも見せねぇ、むしろ余裕たっぷりに笑ってる。
ついでにアップグレードだぁ?総入れ替えってだけでも大変だろうに
それがどうしたって顔してやがる。
「流石はトールですね。グランパの孫は伊達じゃねぇ!でございます。」
「うんうん、これでこの件は大丈夫!
、ここの皆の技術はライモン…ううん、イッシュでもトップだから。
色々と心配してるみたいだけど、安心して欲しい。」
あぁ、そうだな。これだけドッシリと構えていられるのは
自分達の技術に絶対の自信をもってるからなんだろうよ。
これでこの件はなんとかなる。強力な助っ人を得た事はこっちにかなり有利だ。
「…そうだね、じゃあ俺も仕事に戻らせてもらうかな?
、俺は戻って仕事をしておくからな。後で報告頼む。」
「りょーかいだお!ついでにここの中も見せてくれるって言うから
社会見学させてもらってから、私はそっちに戻る。
マスターさん達もお仕事頑張ってねん!」
と主任が残り、俺とボス達はカナワタウンのホームに戻ってきた。
「が見つけたウィルスがすっごく怖い物だったけど
これで、決着がつきそうだから安心した!」
「えぇ、貴方が見つけていなければと思うとゾッとします。
今後、この様な事が無いようにより一層チェックも徹底させねば…」
流石に同じ過ちはしない、確かにそう思うだろうよ。
まぁ、それについちゃあとっくに俺達で動いてるんだがな。
「それについては、が色々やってくれてるみたいだよ。
そのレクチャーを管制室のSEに伝授しているからね。
それにしても、車輌整備の総本山?は凄いね。
いや、ここの技術屋は皆がそれぞれに凄いよね。改めて思ったよ。」
「うん、皆すっごい人ばかり!だからボク逹は皆にいつも助けられてる。」
「私達は彼等と共に仕事をしてる事を嬉しく思います。
彼等が部下でいる事に誇りをもっております。
上司として、企業のトップとして、彼らはまさしくここの宝。
もっとも、それは職員の皆様全てに言える事なのでございますけれどね。」
「ボク達も皆に恥ずかしくない様に頑張らないと!ね?ノボリ。」
「えぇ、皆様が私達を助けて下さってる。私達は皆様をお守りしなくては。
さぁ、戻りましたら一層仕事に励まねば!でございますよ?」
そう言って笑い合う二人を見て微笑ましくなる。
驕り高ぶる事なく、ひたすらに真摯に職員に、業務に向き合う姿は
企業のトップとしちゃあ少々青臭いが、仕方がねぇだろう。
ギアステーションに戻る電車に揺られて、いい職場に当たったもんだ
そんな事を考えながら、これからについて考える。
使えるモンは何でも使ってやる。
大事なダチの大切な場所だ、そうするのがダチとして当然だしな。