二章・初志貫徹編 -広がる波紋-

二章・初志貫徹編

広がる波紋



色々とグダグダだった午後休憩も終わって、仕事を再会するのに

エントランスへ向かえば、がすでにいた。



「あ、来た来た!たーん、ちょっと仕事の前にデートしてちょ?」



「はぁ?てめぇはシステムチェックが残ってるんじゃねぇのか?

大体、フリーダムすぎるんだよ。

ここの連中は皆常識人なんだからな、てめぇのぶっ飛びっぷりには

誰もついてこれねぇってのを、いい加減わかりやがれ!」



マジでといるとこっちのペースが崩されるからやりにくいんだよ!

なんではこいつと親友なんてやってたんだか、不思議だ。



「だーかーら!ちょっとジャッキーたんの所までデートしてって

キュートな人妻、ちゃんが言ってるんだよん?

ちょっと色々たんの策士の頭を借りたいっぽ。」



「キュートっつうよりは、脳みそがキューっとなってるんだろうが!」



上手い事言った!って冗談は置いといて

真面目に、ちょっとジャッキーさんの所に行ってくれる?

なんだか色々と、めんどくさい事になりそうらしいんだよね。」



が材料を自分で段取りしながら、真顔で俺に向かう。

めんどくさい事ってのは例のウィルスなのか?

そう言えば、隔離してからその後の進展を聞いてなかったな。



「めんどくせぇが、そう言う事だったらつきあってやる。

だが、俺もここをそんなに長くは抜けられねぇのは、知ってるよな?」



「うん、色々報告したい事あーんど相談したい事があるだけだお。

ちょっとシリアスにならないと駄目っぽかもしんない。」



情報収集は遊びだ!って豪語するこいつにしては珍しい。

だが、自体がそれだけヤバイって事なのか?



「そう言う事だったら、とっとと行くぞ!

、俺が不在の間に何かあったら、にすぐ連絡しろ。

ジャッキーの所から俺が駆けつけるよりは、そっちのが早い。」



「りょーかい、んじゃちゃん、色々大変だけどお願いね?

も、ここは私にまかせてそっちをなんとかしてね?」



そう言うと、は脚立に上がって点検口から天井へ入っていった。

作業が俺の不在分遅れちまうから、早いとこ用事は済ませねぇとな。

の頭を引っ叩いて、俺はジャッキーのいる中央管制室へ向かった。



「やほー!皆さんお待たせ、策士様を連れて来たおー。」



俺が中央管制室に入れば、そこには主だった職員が勢揃いしていた。

一番奥のデスクではジャッキーがパソコンを操作しながら

俺の方を見て手を挙げている。



「なんだかすごい歓迎でちょっと驚いているんだけど、どうしたのかな?

ジャッキー、相談したい事ってのは例のウィルスかい?」



そのまま、ジャッキーのデスクへ進んで傍にあった椅子に腰掛ける。

ジャッキーが苦笑いしながら頷くと、が俺の隣に座り

ノートパソコンを開くいて、色々説明を始めた。



「例のウィルスは、やっぱり解除コードっての?それは無理っぽ。

だから、発症する前にシステムの総取り替えをしちゃうよん。

んで、ここからが本題。

総入れ替えしたいんだけど、ちょっと色々めんどくさい。」



システム関連でがお手上げするなんざ初めての事じゃねぇか?

それにしても、めんどくさいってのはどういう事だ?



「あのね、こっちの路線関係の操作とかの方は問題ないっぽ。

だけど、各車輌のシステムも総入れ替えした方が良いと思う。」



「このウィルスは車輌の運転システムの指示系統に深く関わってるんです。

両方のシステムの総入れ替えをして、それを点検する必要がでてきました。

で、さんが言うには出来るだけ急いだほうが良いらしいんです。」



路線の操作と管理システムの他に車輌の方もとか、勘弁しろってんた。

だが、そんな事も言ってられねぇんだろう。

もジャッキーも、そしてここにいる連中全員の目がマジだ。



、急ぐ理由ってのはなんだ?」



「その説明は、愛護団体さんの話をこっちに説明してからにしてちょ。

あのね、このウィルスに関わった人物がその団体にいるっぽ。」



「…なんだって?」



さん達がトレーナー統括部と組んで色々やってるのは知ってます。

ですが、それはこっちの方にも関係しそうなんです。

そっちの状況を教えてください。場合によってはシステム入れ替えまで

不眠不休の対応をしなくてはならないかもしれないんです。」



これはちょっと想定外だった…いや、詰めが甘かったと言うべきか。

そうだよな、例の愛護団体に元プラズマ団の団員がいるってわかった時点で

もっとこっちの方も警戒しておくべきだった。

俺は、ここにいる全員に、今起こっている事と、これから起こる事

その後、どういう対応を取るつもりかを説明する。



「わかりました。やはりこちらも急いだ方が良さそうですね。」



「ジャッキー室長、これは通常の仕事とそっちのシステム変更で

チーム分けする事を提案します。その方が効率があがりそうですよね?」



「メインシステムと車両のシステムも分けたほうがいいかもです。

系統が違うので、それぞれ得意不得意が出てきます。」



ジャッキーが俺の説明に頷くと、すぐに職員が色々提案してきた。

流石、中央管制室勤務なだけあるな。緊急時の対応がしっかりしてる。

これは上に立ってるジャッキーが徹底して指導してるんだろうな。



「通常業務については、職歴の浅い者を配置します。

皆さん、これを期に運行状況とダイヤの管理、緊急時の対応等を

徹底的に頭と体に叩き込んでください。

システム変更チームはメインと車輌で分けます。

後は、カナワタウンの車両基地の協力も必要になると思うので

そちらの調整とチーム振り分けについては後日連絡します。

それまでは両立する形をとって業務を行ってください。」



ジャッキーがあっという間に部下にそれぞれ指示を出す。

その指示を受けて、職員達が各自の受け持ち部署へ移動を始める。

全員が持ち場についたのを確認してから、ジャッキーは書式を呼び出し

なんだか書類を作り始めた。



さん、車輌が絡むとここでだけの話になりません。

車輌のメインメンテナンスは、カナワタウンの車輌基地が担当してるんです。

そしてシステムチェックとメンテナンスも、そちらでやっています。」



「成程ね、それじゃあそっちの車輌基地に行って話をしないとならないかな。

それについては、ジャッキーがまずボス達に許可を取ってくれないかな。

そして、オブザーバーのと俺とここから一人連れて行って

向こうに状況の説明と作業の協力を要請してくるよ。」



話をしながらでも、ジャッキーは凄い勢いで書類を作成してる。

その間でも、各部署への指示出しも抜かりなくやってるとは凄ぇな。



「本当ならボクが直接行くべきなんでしょうけどね…申し訳ないです。

後、システムの総入れ替えについては日程は未定でボス達に提出します。

正直、これだけ大掛かりなものだと見通したが立たないんです。

でも、この意見書を見ればボス達は早急に動くと思いますので。」



「システム全体の調整は私がやるっぽ。

でもね、まずはそれぞれの新しいシステムが出来てこないと無理。

多分、その愛護団体さん達は最終手段みたいな感じで

こっちに手を出してくるんじゃないかって思ってるんだけど

たんはどう思ってるん?」



の予想通りじゃねぇか?だが、それはさせねぇ。

その前に、こっちも完全攻撃態勢をとるとするか…。

そうだな、その団体にはつぶれてもらう事にしようかな。」



俺の言葉にここにいる全員が驚いているが、当たり前じゃねぇか。

不安要素は小さいうちであっても完全に潰した方が良いんだ。



「このウィルスがバトル路線のみに関わってるのが不幸中の幸いです。

一般路線にも関わられていたらと思うとゾッとします。」



ジャッキーがもう書類を完成させたみたいで、プリントアウトを始める。

確かに、一般路線も巻き込んでとなればパニック状態だったろうよ。



「これがボス達に見せる意見書です。

そしてカナワタウンの車輌基地への書類がこちらになります。

申し訳ないんですが、さんにお任せしても良いですか?」



「私は、ちょっとこっちで仕事してるねん。」



ジャッキーから書類を受け取り、俺は部屋を出た。

何の気なしに見つけたウィルスがこうもデカイ面倒事になるとはな。


まぁ、プラズマ団が置いていったウィルスだから仕方がねぇだろう。

ポケモン絡みのバトル路線のみってのが唯一の救いってか?

連中もそこまで悪逆非道じゃねぇって事なのかもな。



「世界は美しいってか、ムズ痒くなってくるぜ。」



これが俺達の元の世界だったら、そうはいってないだろう。

毎日ニュースで流れてた、無差別爆破テロなんかがいい例だ。

主義主張の為なら、他はお構いなしなんてのはザラだった。


改めて、向こうの世界とこっちの世界の違いを見せつけられた気がする。

悪役にすら良心が残ってるとか笑っちまうだろうが。

こっちの世界の温さはわかってたが、ここまでとはな。

俺達が悪役に回ったら、あっという間に世界征服できるんじゃねぇか?


執務室に向かいながら想像して、その可能性の高さに笑っちまった。