二章・初志貫徹編 -優しさの違いを知る上司達-

二章・初志貫徹編

優しさの違いを知る上司達



用件は終わったと言って、シロナ様はお帰りになられました。

執務室に残された私とクダリは、例えようの無い感情を持て余して

そのままソファーに身体を沈めます。



「ねぇ、シロナが言った事がホントなら

達って、シンオウですっごく大変だったんじゃないかな?」



「でしょうね…はともかく、はつい最近まで

その状態の中で、しかも渦中でもある協会内で勤務されてたのです。

その心労たるや、私には想像もつきません。」



本当に、その様な周囲の中で業務改善までやり遂げる姿勢は

私達も見習うべきでしょう。

同じ大きな職場の上に立つ身でありながら、今更ながらに

自分達は恵まれているのだと感じてしまいました。

私達は一人ではなく、二人なのです。

そして、部下達も職場に愛情を持ち、進んで仕事をされる方ばかりです。

今まで私達はそれが当たり前だと思っておりましたが、違いました。

の目には私達の甘さや馴れ合いは、さぞや歯痒かったでしょうね。



「三人があんな態度を他の人に取るとか初めて見たけど

あの話を聞いたら仕方が無いっても思う。でも、ここでは許されない事。

わかってるとは思うけど、ボク逹はちゃんと言わないとダメだと思う。」



クダリの言う事は正論でございます。

いかに三人とシロナ様との間に確執があろうとも、彼等の態度は

ギアステにお客様としていらした方にすべきものではございません。

私はインカムの通話をオンにして、三人を呼び出す事にしました。



「こちらノボリでございます。保全管理課の全員にお話がございます。

至急、執務室までいらしてくださいまし。」



通話を切って待つ事しばし、程なく三人が揃って執務室にまいりました。



「失礼しますー。シロナさんは帰りました?

いやー、相変わらずのお色気でクラクラしちゃったい!

ボス達もメロメロになっちゃったんじゃないですか?」



「失礼します。どうせバトル好きな彼女だから

ボス達のどちらかと対戦したんでしょうが、どうだったかな?」



「失礼します。お、もう帰ったか。

それにしても、再会していきなり文句言われるとか勘弁してほしかったぞ。

ボス達も何か言われませんでしたか?

彼女は結構直球勝負でくるんですが、決して悪気は無いですから。」



入ってきてからの三人のそれぞれの言葉に、私とクダリは戸惑いました。



「えっと…ボク、さっきの三人のシロナへの態度について注意したかった。

ねぇ、どういう事?今の感じだと三人はシロナを嫌ってはいないの?」



クダリの言葉に今度は三人が戸惑った様な表情をされます。

お互いに顔を見合わせてから、苦笑いをすると揃って首を横に振りました。



「シロナさんって凄い人なんですよー。ポケモン達への愛情もです。

凄い努力をして、学者とチャンピオンを両立させてるんです。

私は、そのお手伝いをしたいなって思ったから代理を引き受けたんですよ?

つーか、二人は最初から引き受ける気ないし。私しかいなかった?」



やはりその様な理由で引き受けたのでございますね。

粗方予想はついておりましたが、本当に貧乏くじを自分から引くのですね。



「俺等はシロナには何の遺恨もありません。

ただ向こうでは色んな目で見られてる俺等と、チャンピオンが親しくしちゃ

色々彼女の立場も不味くしてしまいますからね。」



がコーヒーをそれぞれに渡しながら苦笑いを続けております。

成程、確かに色々な目で見られ、警戒されている人物とチャンピオンが

懇意にされていれば、その立場も危ういものにしてしまうでしょう。



「それだったら、最初から憎まれ役に徹したほうが良いでしょう?

俺達は人からの干渉が大嫌いだからね。

その辺を徹底させてしまえば、向こうが勝手にそう思うんだ。

一々それを弁解する必要もない事ですから。

わかる連中は最初からわかってくれる、それで十分と思いませんか?」



なんと言いましょうか…大人の対応と言うのでしょうか?

ですが、その様にして他人を遠ざける事は手段はともあれ

以前の私達に通じるものがあり、理解する事はできます。



「でも、は大変じゃなかった?

ちょっと前までそんな場所で仕事をしてたなら、色々辛かったよね。」



クダリの言葉に、一瞬目を見開いてからは例の…諦めたような笑いをして

肩をすくめて話し始めました。

貴女の笑う顔は私達は好きですが、以前クダリも言った様にこの笑いは別です

一体どの位この笑いをして、色々と諦めておられたのかと考えると

なんだか胸が痛くなってまいります。



「自分の周りの人全員に理解してもらおうとか、好きになってもらおうって

それは理想論にしか過ぎないですからねー。

確かに毎日がしんどかったですけど、それもちゃんとわかってくれる人がいたし

その人達の為に頑張れば、それでオッケーってやつですよ。

勿論あまり深入りは表立ってはできません。

それでも、私は四天王の皆やジムリーダーさん達の何人かとは

とっても仲良くさせてもらいました。うん、それだけで十分ですよ。」



「俺も今でもたまに四天王のオーバやジムリーダーのデンジなんかとは

連絡を取り合ったりしてるしな。それが普通でしょう?

俺はボス達の家に最初に泊めてもらった時、白ボスに言ったはずです。」



「あ…うん、人付き合いを厳選しちゃうのをどう思うって聞いた時だよね?」



その辺の話は私は存じておりません。

ですが、そうですね…私もクダリも達と知り合うまではそうやって

人付き合いを厳選と言うのでしょうか、避けておりました。



「そうです、それは普通だと俺は言いました。

嫌な奴は自分の近い所に置きたくないが、どうしてもって場合も無い訳じゃない

そういう時はこっちもバリケードでガシガシ固めて守りに入ればいいんです。」



あぁ、確かにの言う通りでございます。

仕事上、その様な状況は往々にしてございました。



「そうそう、俺達は誰でも面倒をみるつもりはないからね。

それも当然の事でしょう?そんな事一々やってなんていられませんよ。」



「ボス達、だから私が前に言ったでしょ?この二人は唯我独尊なんだって。

おかげでどれだけ私が迷惑被ったか…。

相手を突き放しても、面倒見ても、それは変わんないとか勘弁してよねー。」



がおどけて言えば、もそれが役目だろうなどと言って

お互いに笑い合っております。

そうでしたね、三人とも掛け値なしに優しい事だけは間違いありませんでした。


たとえ突き放しても、それは相手を思っての事

面倒を見る事につきましては、私達が一番良くわかっている事でございます。

そのどちらも、根本的な部分には三人の優しさがあるのです。



「シロナには悪いけど、ボク逹は三人のホントの気持ちを知れて嬉しい。

でも、どっちでもやっぱり三人共優しいんだなって思う。」



「甘やかすだけが優しさではございませんからね。

その点はシロナ様も十分に理解されておられた様でございますよ。

その様な理由があってのあの態度であれば、私達も納得致します。

ですが、ここは職場でございます。お客様が全てなのですから

今後は例え知人でいらっしゃっても、あの様な態度はおやめくださいまし。」



私の言葉に、三人がそれぞれに頷かれました。


えぇ、元よりこの様な事を言わなくてもわかってらっしゃる方逹なのです。

それでも、釘を刺さねばならないのは私達が最高責任者だからでございます。