二章・初志貫徹編 -上司の目を盗んで動く部下逹-

二章・初志貫徹編

上司の目を盗んで動く部下逹



を残して一足先に仕事を終わらせた俺は

そのままのマンションに向かう。

合鍵を使って中に入れば、ソファーの上に毛布が置いたままになっている。

この状態で考えられるのはひとつ、あいつはベッドで寝てねぇのか?

毛布をクローゼットにしまって、キッチンに向かえば食器を使った形跡もない。



「あいつは、いつまで同じ事を繰り返しゃあ気が済むんだ?」



この間の一件以来、あいつの態度が変わったのは馬鹿でもわかるだろうよ。

昔の方がよっぽどうまく誤魔化せたんじゃねぇのか?

まぁ、ここ何日かはいくらかマシになってるから

俺もも何も口出しはしねぇが、飯を食わない事と寝ない事は別だ。



「まずは問答無用で食わせて、例の話はそれからだな。」



冷蔵庫の中身をチェックして、賞味期限のやばそうな物を出して

それらを見てから、今晩作るメニューを決めて支度を始める。

一通りの準備が出来た頃に玄関で物音がして、二人が入ってきた。



「うわーい、いい匂いがすると思ったらのご飯とか?

冷蔵庫の中身がやばくて、作らなきゃって思ってたけど

ラッキーだったかもしんない。」



「最近頭も使うわ、身体も使うわでやたらと腹が減るから助かるぞ。

、例の話は飯の前か後か?」



「てめぇら、帰ってきて開口一番がそれか?

もっと俺を労わりやがれってんだよ。その話は後だ、まずは飯を食うぞ。

二人共さっさと手を洗って準備を手伝いやがれ!」



ソファー横にカバンをおいて、二人が洗面所に向かっている間に

料理を盛り付けてテーブルに運ぶ。

その後、が来て取り皿や箸を出してから、テーブルにつく。



「「「いただきます。」」」



それぞれに好きな物を取りながら、飯を食い始める。

俺は、の前に座ったんで合間に顔色なんかのチェックをする。

取り敢えず顔色も悪くねぇし、目の下に隈も出来てねぇから一安心だ。



、ソファーの上に毛布が置いてあったって事は寝てねぇのか?

後、昼は例の食券があるから食ってるみてぇだが、朝と夜は?」



、ご飯が不味くなる話はやめよう…ごめんなさい、なんでもないです。

眠りが浅いのは確かなんだよねー。ご飯は朝はそんな感じで起きれなくってさー

正直食べる暇がないだけ、晩御飯はデリを活用させてもらってる。

前みたいに馬鹿な事はしてないから、安心してよねー。」



昔みたいに全く食わない眠らないって訳じゃねぇみたいだな。

だが、それでも安心できるレベルじゃねぇだろう。

案の定、が眉間にしわを寄せてやがるし。



「昔に比べれば大した進歩だと思うがな、それでも馬鹿な真似はするなよ?

ノボリとクダリが言ってたぞ?もっと友達として信じて頼って欲しいってな。」



「あー、そうなんだよね。ちょっと前に晩ご飯ご馳走になったんだけどさ

その時に、私が二人に線引きしてるって言われてさー。

あの二人の傍って、なんだか凄く居心地が良いから距離感がわかんなくってさ。

それを言ったら怖がるな、勇気を出せときたもんだよ。耳が痛かったわー。」



確かに、あの二人の言いそうな事だ。

それにこいつがそうやって自分から誰かの傍に近づくってのもなかった事だ。

自分の気持ちを誤魔化さねぇで、ぶちまけるなんて奇跡だろうよ。

イッシュに来てからのこいつは、確かに変わってきてるみてぇだな。


飯を平らげてから、が食器を洗っている間にそれぞれにシャワーを浴びて

リビングのテーブルにノートパソコンを出す。

まずはがシャワーを浴びている間に、俺達で打ち合わせだ。



「ルカリオに例の団体さんの顔写真を全員分覚えさせたからね。

んで、向こうのやり口っていうの?それはどんな感じかわかったの?」



グラスに入ったおいしい水を酒みてぇに一気に煽ってから

俺に聞いてきたんで、カバンからファイルを取り出す。



「今まで、向こうの団体が抗議活動としてやってきた内容だ。

まずは警告文を出す。これはすでにこっちにも来ている。

シンゲン部長が破り捨てちまったらしいんで、中身は把握できてないがな。」



「うわー、あのシンゲン部長さんが?なんだか信じらんないし。」



「真っ二つに破ったあとに丸めてゴミ箱に投げ込んだらしいぜー。

ギアステ職員は全員がボス好きだが、トレーナー部門は更に上をいくしな。」



有事の時の団結力についちゃあ、前の大掃除の件で見せてもらってるからな。

その辺の協力体制は完璧だから、こっちとしちゃあ大助かりってもんだ。

そんな話をしていたら、もリビングに戻ってきたから本格的に話を進める。



「まず、特筆すべき点ってのは、こいつらはマスコミやネットを上手く使う

映像の演出ってのか、見せ方?まるでポケモンを虐待してる様に見せるらしい。

そして、それを大義名分よろしく振りかざしやがるんだ。」



ファイルから書類を取り出し、写真とマスコミ関連が書いた記事

そして、この団体がとった行動をまとめたそれを見せる。



、そのやり方はギアステでは通用しないんじゃないのか?

あそこはバトルトレイン内以外の施設内は撮影禁止になっているだろう。」



、だから向こうは何日もかけてエントランスを彷徨いてるんだよ。

禁止になってたって、やらないとは限らないでしょ?

盗撮…ってこの場合も言うのかな?それができる場所を探してるんだよ。」



「エントランスは人通りが一番多い場所だからな

そこで騒ぎを起こせばあっという間に人だかりが出来る。

奴らはそれに紛れて映像を取るつもりなんだろうが、そうはさせねぇ。」



俺はコピーしたエントランスの図面をテーブルに広げる。

そこには、監視カメラの位置や出入り口迄の距離を予め書き込んである。



「まず第一に監視カメラに映らない場所、やつらはそれを探してたんだろうよ。

ここの監視カメラはレンズが固定されてるからな、必ず死角が出来る。」



図面に赤丸で囲んだ部分を指差して、俺は更に言葉を続けた。

ここ数日の奴らの行動ではじき出した、奴らが計画しているであろう事を

目の前の二人に説明してやろうじゃねぇか。



「この部分が監視カメラからの死角だ。そして外への通路も近い。

逃走経路も考えればここから、なにかを盗撮するつもりじゃねぇかね。」



次に図面に青で囲んだ部分を指差す。

それは赤丸で囲んだ部分を更に囲むように広がっている。



「この赤丸の部分から撮影可能な場所ってのが、この青の部分だ。

連中の今までのやり口を考えれば、必ずポケモンを複数使ってくる。

それらを指示して、使えるだけのスペースが確保できる部分ってのは

この広いエントランスでもこの部分しかねぇんだよ。」



俺は胸ポケットからボールペンを取り出して、その部分を囲んだ。

これを調べるのには苦労したんだ。

だが、実際に俺が自分の目で確認したんだから間違いはねぇ。



「連中がマルチに乗る理由がわかったな。これを確認したかった…そうだろう?

ここはマルチの乗車口近くだ。そしてポケモンを使ってどうこうするなら

マルチのチャレンジャーになれば複数で事が起こせる。」



「成程ねー、でもここって丁度天井の点検口の近くなんだよねー。

つまりは、何か事が起きたら私とで動くって事でしょ?

向こうがマルチで来るなら、こっちもマルチで対応しないとだしね。

そうなったら、のタッグじゃ無理だわ。」



耳が痛ぇが、事実だから仕方がねぇ。

俺とがマルチで組んだら周囲の被害は甚大になるし

お互いのポケモンを潰し合うわで、目も当てられねぇからな。



「それだけじゃねぇんだよ。

この場所はが仕事をしてる授乳室の現場からも近いんだ。

俺逹が対応している間に、と他の連中で盗撮してる奴を探してもらう。

禁止事項をやってる奴なんだからな、ちょっと事務室に連れて行く事だって

そんなに難しいモンじゃねぇだろう?」



テーブルに広げられた書類や図面を片付けながら話終われば

なんだか二人が複雑な顔をして顔を見合わせていた。

俺の計画になんか問題があるのかと思えば、そうじゃねぇ。

もうひとつの問題をこいつらは心配していやがった。



「相変わらずの策士っぷりにドン引きだよ!

って、冗談は置いといてー、この件はボス達には言わないんでしょ?

これだけ大きな事やっちゃうと、後々大変だと思うんだけどなー。

私またノボリさんに正座付きの説教とかやだからね!」



「まずはお前とが前線に出るからな

危険な真似はどうこうと文句が出るだろう?

それから、この件を許可した俺にもとばっちりがきて、

更に、俺に相談したトレーナー統括部にまで火が回る…目に見えるな。

クダリの口を挟む隙の無い位の容赦ない攻撃は勘弁だぞ。」



「てめぇらの心配はそれかよ!あの二人については俺に任せろ。

そんな事位、最初から想定範囲内に決まってるだろうが。

この件についちゃあ、あの二人に落ち度は全くねぇんだからな。

むしろ、その団体を前にしてどうするのか楽しみだ。」



これだけでかい企業のトップにいるんだ。

いくらこの世界が甘ちゃんでぬるくたって、そればっかりじゃねぇだろう。

現にそのせいで、あの二人だって色々と余計なモンを腹に抱えてたんだしな。

その辺の采配をじっくり見せてもらおうじゃねぇか。



「で?ここまで説明したって事は、連中がいつ動くのかわかったんだろう?」



の目が弧を描いて細まる。こいつは戦闘モードに入ったな。

も同様にテーブルに手を組んで俺の言葉を待っている。

勿論、そっちの方もネタは掴んである。これは経由だがな。



「少なくても1週間以内に動くだろうよ。

詳しい日にちは未定だが、近くになれば監視をしてるから連絡が来る。

それまで、はその点検口以外の場所の修繕をしてくれ。

も直ぐに動ける様に作業工程を組み直しておいてくれ。」



「「了解。」」



がバトル中と同じ顔をして、俺に向けて親指を立てる。

俺の顔も恐らくは同じになってるんじゃねぇだろうか。

準備オッケー、目指すは勝利ってか?


最近グダグダと考える事が多かったんでな、連中には悪ぃが

ここは俺達の鬱憤ばらしの材料として動いてもらおうか。