二章・初志貫徹編
人妻の攻撃!効果は…?
スーパーマルチを勝利で終え、執務室に戻る途中で
大きめのバッグを抱えたとお会いしました。
今日はシステムチェックの日ではなかった様に思うのですが
何かトラブルでも起こったのでございましょうか?
「あれ、?ひとりとか珍しい。子供達は?」
「お、サブウェイマスターさん達がお揃いで?
相変わらずのイケメンっぷりでテンション急上昇だわーん。
今日はギーマさんがお休みで、子供達とラブラブしたいってんで
自宅警備員してもらってますよん。」
相変わらずの口調に私もクダリも笑ってしまいます。
この方が既にご結婚されて、しかも子供までいるなどとは思えません。
達の話を聞いた後で、改めてを見ますが
もそうでございますが、ミッションクリアした方は
皆この様にこちらの世界に溶け込まれるものなのでございましょうか。
「自宅警備とギーマさんって繋がらない。
はとラブラブするんでしょ?でも、仕事中は程々にして欲しい。」
「それはわかってますよー。ちゃんは仕事の時はその辺の男より
ずーっとイケメンさんになりますからね、うん、それにすら惚れるっぽ。」
「は本当にが好きでございますよねぇ…
もし、が男だったらどうしてました?」
私が何気なく聞いた言葉に、普段のふんわりとした雰囲気がなくなりました。
そして、固く目をつぶってから私とクダリに向き合います。
「そこは押し倒して既成事実に持ち込んでゲットですよん?
でも、サブウェイマスターさん達…ちゃんが男だったらとか
本人の前で口にしたりとか、してませんよね?
もししてるんだったら、この場で往復ビンタしちゃいますかんね。」
「それは言ってないから、往復ビンタとかやめてね?
でも、に聞いても良い?って恋愛とか極端に遠ざける。
嫁が欲しいとかは言うけど、自分の事だと一切受け付けない。
それって何かあるの?向こうの世界でとか何かあった?」
それは私も聞きたかったので、もしが教えてくれるのでしたら
聞いてみたいのですが…は首を横に振ります。
「黙秘権を行使する!ですよん。
でも…もし、お二人のどっちかがちゃんにマジ惚れして、
どーしてもゲットしたいって気になったんなら、話は別っぽ。」
つまり、友人としての立場でいる限りは教えては頂けない
そう言う事なのでしょう。
今の状態では、私もクダリもそれ以上問い詰める資格はございませんね。
「ホント、ちゃんが男だったらここまで傷ついてなかったっぽ。
お二人さんが色々聞いたってのは知ってますけれどー
むやみにちゃんのテリトリーに土足で踏み込むのはダメ絶対。
ホントはすっごく臆病で脆くて危険が危ないんです。
取り扱い注意な飴細工みたいに繊細な女のコなんですからねん?」
こう言っては非常に失礼なのでしょうが、初めてがまともに見えました。
えぇ、確かにの言うとおりでございます。
普段が普段なので私もそれを最近は忘れてしまうのですが
今後はもう少し気をつけて接したほうが良いのかもしれませんね。
それはクダリも同じだったようでございます。
「そうだったよね。いっつも達と一緒にいるから
ついつい忘れちゃってたりしてたけど、はやっぱり女のコ。」
「戦略と先読みが売りのダブルのサブウェイマスターさんが
そんなに簡単にちゃんの戦略に引っかかっちゃ駄目っぽ。
あ、でもお友達で仲良しでいたいんだったら別に大丈夫だ、問題無い?」
「そうですねぇ…今は良い友人でありたいと思っております
ですが、先の事はわかりませんよ?」
えぇ、今はそうであってもその感情が恋愛に発展しないとは
私にもはっきりと言う事が出来ません。
共にありたいと思うこの気持ちは本当ですが、それが友人としてなのか
行き着く先はまだわからない。と、いったところでしょうか。
「ふむふむー?終着駅は未だ不明なんですかー。
でも、しっかり釘はさしておきまかんね。急な変化はダメですよん。
早くて雑なテクニックの男は嫌われるんですからね?」
何の話だと突っ込めば、色々ですとドヤ顔するには敵いません。
そのまま一緒に執務室に入れば、中にはとが図面を広げて
何やら話し込んでいる所でございました。
「両ボス、お疲れ様で…って、?
てめぇが来るのはまだ先じゃなかったのか?」
「お疲れ様です。どうせ例の件で俺等に言いたい事があるんだろう?
だが、今は仕事中だからダメだぞ?」
「やほーい、丁度ふたり揃っててオマケにちゃんがいないのは
好都合以外の何もんでもないっしょ?
それに、今はもうお昼の休憩時間で仕事の時間じゃないしー。
つーわけで、動かないで座ったまんまこっちを向いて歯を食いしばれ!」
がそう言い終わった瞬間に、執務室に二回乾いた音が響きました。
それは彼女がとを平手打ちした音で、私とクダリはその光景に
ただ、唖然とするしかありませんでした。
「力の乗った良い平手打ちだったぞ。」
「てめぇはこれで満足したか?」
叩かれた二人は別に気にするでもなく、じっとを見つめておりました。
は顔を歪めると首を何度も横に振ります。
「満足?ふざけないで!別に話した事にここまでキレたんじゃないんだかんね。
一番怒ってるのは、ちゃんにこっちに来たときの事を言わせたから
そうやって、あの時の気持ちを思い出させるとかどーなのさ?!」
をここまで怒らせている原因は向こうの世界での事でしたか。
ですが、話してくれたは別に変わった様子はなかったのですが
なにか問題があるのでございましょうか?
私もクダリも、三人を諌めようとは思いましたが、それすら許される様な
雰囲気ではございませんでしたので、そのまま静観しておりました。
「だが、が自分から話すと言ったんだ。
それに、あいつはもう乗り越えているから大丈夫だろう?」
がを宥めようと肩に手を置こうとしましたが
はその手を叩き落とし尚も言葉を続けました。
「、マジでそう思ってるなら甘すぎ、蜂蜜より甘いってば。
忘れたの?ちゃんのあっちでの壊れっぷりを?
んで、来た時には私達まで信じてくれなくなってたでしょ?
どうしてあのまま死なせてくれなかったのって、詰め寄られたでそ?
そんな状態を簡単に乗り越えられる?そう思うのが信じらんない!」
「だがな、…」
「、の言うとおりだ。それは…悪ぃ…軽率すぎた。」
「言ってしまってから、謝ったってしょーがないっしょ。
結局、こっちに連れてきたってちゃんの心はボロボロのまんまで
いくら私達が手を差し伸べたって、拒んで、赤ちゃんみたいに身体を丸めて
もう嫌だ、死なせてって、そればっかり繰り返し言いながら
ずっと震えて泣いていたのを、見てなかったわけじゃないでしょう!!」
流れ落ちる涙もそのままに、両手を白くなるほど握り締めたまま
はそれでも二人から視線を外しはしませんでした。
話のあまりな内容に、私は胸が苦しくなり思わず手で押さえてしまいました。
なぜ…なぜはそこまで傷ついたのでしょうか?
大切な仲間の手を振り払い死を望むような原因など、私には想像もつきません。
不意にドアが閉まる音がして、そちらを見ればが立っておりました。
あぁ、昼休憩ですから仕事を終えて戻ってきたのでしょう。
以前にも見た事のある、今にも消えてしまいそうな顔で微笑んでおりました。
「ちゃん…」
「ちゃん、二人を責めないで?私は大丈夫だよ。
あの時は皆をすごく心配させて、迷惑かけてごめんね?
大丈夫、私は死ななかったでしょう?ちゃんと今、ここにいるでしょう?」
そう言って、に向かって両手を広げて笑みを深くします。
そしてはに抱きつく様にして、駆け寄りました。
「こんな時まで、謝んないで!
ちゃんは悪くない、なにも悪い事なんてしてない!」
「昔の私のせいでちゃんが泣いてるのに?
でも、ここで言って欲しくなかったかな?ボス達は知らなかったんだもん。」
「あ…ゴメン…ちゃん、ごめんなさい。」
が話さなければ、は恐らくこの事を言うつもりはなかったのでしょう
ですが、私達はもう聞いてしまいました。
がバツの悪そうな顔をして謝りますが、は首を横に振りました。
「いいんだ、それは結局昔の話だから。
だからちゃん、とをもう怒らないでね?
すみません、ちゃんがこんな感じだからちょっと席を外します。
んで、作業部屋に行ってそこでランチしちゃいますから。」
の頭を優しく撫でながらを見てが言います。
確かにこの状況でしたら、そうした方がお互いの為には良いのかもしれません。
が頷くと、はボールからネイティを出しました。
「過去をどうこう言ったって仕方がないんです。
ボス達も、知りたいと思いますよねー、私にはそれは止めれませんけど、
休憩後こっちに戻ってきますんで、その時はもうこの話は無しですよ?」
ネイティを中心に視界がぼやけた瞬間、ふたりの姿は部屋から消えました。
それにしても、この話はこれ以上の口からは聞けないのでしょう。
ですが、その心の傷は癒えているのでしょうか?答えは恐らく否。
ならば、私はその悲しみや傷を分かち合いたい。癒したいのです。
友人として、そう思うことすら許しては頂けないのでしょうか?
「両ボスはどうして?とは聞かないけれど、本当は聞きたいのでしょう?
あの言い方だと、言っても良いと思うんで話そうかい?」
「、ボクは…ううん、ボクもノボリもの苦しみ?
そんなのを癒す事が出来る?ボク達がそれを聞いて、が苦しむなら
辛い思いをするんだったら、ボク逹は聞かない。」
の問いに、暫く考え込んでからクダリが答えました。
えぇ、その通りでございますので私もクダリの答えに頷きました。
「それは、話さなけらばわからないだろう?
原因を言う事は出来ないが、その時のの状況なら言えるんでな。
その辺を察しながら、どうしたいか考えて欲しい。
だが、俺等も飯を食わないとだな…。
食堂からこっちに持ってきて食いながらになるが、それで構わないか?」
時間が時間ですし、恐らくこの機会を逃せば二度と聞けないのでしょう。
私とクダリはお互いの顔を見てから二人に頷きました。
私達の分も持ってくると、とは揃って出て行きました。
部屋の中は重苦しい空気で満たされていて、なんだか息苦しさまで感じます。
これからの話を聞くのが怖い…そう思う自分がいるのも確かでございます。
ですが、大切な友人の持つ傷を癒したい。そう思う気持ちも確かなのです。