二章・初志貫徹編
とある夫婦のふたりごと
子供たちを寝かせた後、お風呂に入り終わってのんびりしていたら
ライブキャスターがメールの着信を伝えた。
こんな時間にメールをくれるのはあの人達しかいないから
開いてみたら、頼みたい事があるからライブチャットに出て欲しいって
これは例の愛護団体さんの事かなって思いながらパソコンの電源を入れる。
すぐにライブチャットの招待が来て、開通させれば
そこにはとたんの姿が映った。
「やほー、頼みたい事って例の団体さんでそ?
それは色々やってるから、もうちょっと待ってて欲しいっぽ。」
軽口を入れれば、相変わらずだって笑われちゃった。
でもさ、性格なんてそうそう変えられないんだし仕方無いでしょ?
『いや、その愛護団体が特定できたんだよ。
それで名簿と顔写真を手に入れてぇんだが、出来るか?』
ほほー、そこまで調べてたとか流石はたん!
団体さんの名前が出たんでメモっておこうっと。
後でその辺から色々潜り込まなきゃだしね。
部屋の感じをみれば、ちゃんの家っぽいんだけど
ちゃんの姿が見えない。
「あれ?そこってちゃんの家でそ?マイハニーはどこー?」
私の質問に、今迄苦笑いしてた二人が急に真剣な顔になった。
なんだろ、二人がこういう顔をする時ってロクな話じゃない。
『あいつは今、風呂に入ってる。
取り敢えず、には報告しておく。こっちのサブウェイマスターと
その従兄弟のサブウェイボスに俺達がハイリンカーもどきで
こっちに来た原因やら、以外の俺達のミッションやら
イッシュに関係する事以外は話しておいた。
だから、も次にギアステに来た時はそのつもりでいて欲しい。』
「う…そ… ねぇ、嘘でしょ?
ちゃん、あんなに話すの嫌がってたんだよ?それが急にとか
ねぇ、何かあったんでしょ?まさか無理矢理…」
の話に足元が掬われた様な感覚になった。
ちゃんが自分からいう事なんて絶対に有り得ない。
もし、あったとしても多分ミッションをやる直前位しか考えらんない。
「黙ってるって事はそうなんでしょ?どうして!二人がいて
どうしてそんな事をちゃんにさせたの?!」
『きっかけはそうだが、結果はオーライであいつもスッキリしたって
そう言ってるからいいじゃねぇか。はそう思わねぇのか?
俺達はもっと早くに打ち明けさせれば良かったと思ってる位だ。』
『それで否定されればそれまでの話で、俺等は出て行くつもりだったしな。
最悪の事態は免れた…いや、それ以上にあの連中はを
こっちの世界に引き留める事に全力を尽くすだろう。
それは今迄ミッションを諦めていたあいつの気持ちを変えたんだ。
それだけでも大きな収穫だと思うぞ?』
その時の話を教えてくれて二人はそう言ってるんだけど…
違う、違う違う違う!!結果がオーライだったらそれでいいの?
そうじゃないでしょ?二人はすごく強いからわかんないのかな?
「そーやって、ちゃんの逃げ道を塞いじゃうのは駄目っぽ。
最悪ギラティナたんに頼み込んで、また反転世界に篭っちゃうよ?
そーして、ミッション切れになる日まで出てこなくなっちゃう。
そんな事、わかんない様な付き合いじゃないでしょう!」
私があんまり大きな声を出してるから、ギーマさんがビックリして
部屋を覗きに来たけど、今はそれどころじゃないんだ、ゴメンネ。
子供達が起きるかもしんないから、少しトーンダウンしたけど
私はまだすっごく怒ってるんだから。
そして、私はちゃんが私達にも秘密にしていた事を聞いて
すごく驚いたんだけど、それ以上に悲しくなった。
「だから、ちゃんってばいつも以上に諦めモードだったんだ…
そっか、二人も大変だったね。でも、私はこの件は許さないかんね。
次に会った時は平手打ちさせてもらうから、覚悟しておいてちょ!」
『仕方ねぇな、1発位なら無抵抗で受けてやるよ。
だがな、俺達だってあいつを救うんだったら全部捨てる覚悟がある。
それだけの恩があるからな。仇じゃ返さねぇよ。』
『がどれだけ拒もうが、俺等はあいつを一人にはしない。
それだけは、にもわかって欲しい。』
この三人の繋がりには、敵わないって素直に思っちゃう。
でもね二人共…それじゃあホントにちゃんは幸せになれないよ。
でも、これを言っても三人にはわからないから言わないけどさ。
「それはわかってるっぽ。
たんのお願いは、そっちに行く時迄には叶えてあげられると思うよん。
今はちゃんの顔見たら泣いちゃいそうだから、これで落ちる。」
そう言って、ライブチャットをオフにしたときには
とうとう我慢ができなくて、涙が止まらなくなってた。
「…ひとりでそんな泣き方をするなんて、悪い子だね。」
「ギーマさん…ギーマさん、ギーマさんっ!」
後ろから抱きしめてくる大好きな人の声に、そのまんま泣きじゃくる。
あー、明日目が腫れて大変かもしんないけど…いいや、泣いちゃう。
私を抱えるようにしてそのままソファーに座り込んで
優しく私の頭を撫でてくれるその手に力が抜ける。
「早く…早く、誰かちゃんに私のギーマさんみたいな人が出来て欲しい。
私みたいにっ、ちゃんにも幸せになって欲し…っ。」
「それは凄い褒め言葉で殺し文句だね…。ねぇ、か
そのどちらかがを愛する事はないのか?
キミは有り得ないって言うけれど、一番それが近道じゃないのか?」
「何度でも言うけど、あの三人ってちょっと異常な繋がりなんだ。
普通男女の幼馴染なんてさ、一番恋愛に発展しそうでしょ?
でも、そんな雰囲気にすらなった事がないんだよ。
なんていうのかな…魂の兄妹みたいな感じなんだよね。」
ギーマさんにはわかんないかもしんない。
あの二人とちゃんは近すぎるんだよね。だから恋愛にはならない。
は…ううん、もたんもちゃんの為なら
自分を犠牲にする事なんて全然気にしないのはわかってる。
でも、それは恋愛感情じゃなくて家族を守る為って感じなんだ。
放っておくと、あの二人のイケメンは揃って危険に突っ込んで行く。
そんな事してもちゃんが悲しむだけなのにね。
だから、この世界の誰かがちゃんを愛して欲しい。
「ギーマさんに子種だけ頂戴って言ったのはさ、
私が介入出来る様な人じゃない、そんな事をしたら世界を歪ませちゃうって
そう思ったからなんだよね。でも、貴方の子供がどうしても欲しかった。」
私はギーマさんに会うまでは、異世界の人間だし面白おかしく暮らせれば
それで良いって思ってたけど、やっぱり寂しかった。
そして、ギーマさんに会ってこの人の子供が欲しくなった。
理屈じゃないそれは、今でも言葉でうまく説明ができない。
でも、その時は結婚とか考えてなかったし、有り得ないって思ってた。
「、何度でも言うけど、オレは愛し合う者同士が結ばれるのは
世界の真理だと思ってる。それで世界が歪むなんて有り得ないし
現に、世界は歪まなかった。俺達は世界に認められたんだぜ?」
ちょっとおどけた様に言うギーマさんには敵わないや。
だから、私はちゃんにも誰かまるごと受け止めて愛してくれる
そんな人が早く現れて欲しいって願わずにはいらんない。
色々とすっごい傷を持ってて、ボロボロになってる心を全部包んで
癒しながら、支えてくれる人が出来て欲しい。
それは、今迄頑張っても出来なかったたんやじゃ無理なんだ。
こっちの世界の人じゃないと、きっと世界は認めてくれない。
実際にこっちの世界の人とこうやって結ばれて幸せになった
向こうの世界の私が思ってるんだから間違いないんじゃないかな?
私が落ち着いたから、二人で子供達の眠っている部屋に様子を見に行く。
良かった、あんだけ大きな声を出してたけど、ぐっすり眠ってる。
ギーマさんに良く似た、私の大切な宝物…大切で素敵な家族。
「オレはさ、を妹みたいに思ってる。
だから、幸せになってもらいたい。あの子は過去に囚われ過ぎだね。
そんなものはこっちでは無用なんだから、早く捨てれば良いのに。」
ギーマさんにはちゃんの過去を話してある。
ちゃんも私の大切な人にだったら知られても良いって言ったから。
その話を聞いた時から、ギーマさんの中ではちゃんは
妹みたいな感じになってるんだよね。口はともかく、優しい人なんだ。
「こっちの世界の人達って、絶対あっちの世界じゃ生きていけない。
向こうにも綺麗な物は沢山あったけど、嫌な物の方がずっと多いし。
人もこっちの人と同じ様に綺麗じゃいられなかったし、欝で乙だよ。」
「オレはこの世界しか知らないからね。
でも、世界はいつだって素敵な事に溢れているんだぜ?
それを見ようとしないだけで、それは勿体無いじゃないか。
人生は一度だけなんだ、泣くよりも笑って楽しむ方がずっと良いだろ?」
二人で、それぞれに子供達の頭を撫でながら笑い合う。
そうだよね、全くギーマさんの言うとおりだと思うよ。
「色々ミッションだとか言ってるけどさ、一番大事な事は
こっちの世界で私達全員が幸せになる事だと思うんだよね。
実はそれが本当のミッションなんじゃないかって、最近思うんだ。
私はギーマさんのおかげで幸せいっぱいだから
その幸せをお裾分けしながら、そうやって皆が幸せになるように
協力していこうって思ってる。」
ギーマさんに抱きついて思った事を口に出したんだけど
言ってから、案外それは当たってるんじゃないかなって思ってきた。
「そういう所がらしくてオレは好きだぜ?
それじゃ、おすそ分けしても減らない位オレ達はもっと幸せになろう。」
しっかりと私を受け止めながらギーマさんはいつもの調子で笑う。
その顔は四天王のギーマの顔じゃない、私しか知らない顔。
あの三人は私がこんな事を思ってるなんて想像もしてないんだろうな。
いつもぶっ飛んでるって言われるけど、私だって考えてるんだかんね。
絶対にバッドエンドにはさせない。
そう思いながら、私はギーマさんとベッドに潜り込んで目を閉じた。