二章・初志貫徹編
優しき友人達の答え
私の言葉に力強く頷いたを見て、二人が満足そうに笑っております。
やはり、彼等の弱点というか一番の気掛かりはだったのでしょう。
そのままの表情でが私達をみて、口を開きました。
「さて、俺等の話したい事はこれで一応話した。
お前達は何か聞いておきたい事ってのはあるか?」
隠していた事を話したと言う言葉に偽りはないのでしょう。
その証拠にが疲れきった様に、ぐったりとにもたれております。
真実を語るという事は、これほどまでに気力体力を消耗するものなのでしょう。
「あのね、皆の手持ちの神ポケモンの事を聞かせて欲しい。
ももも、こっちの世界?に来た時に手持ちでいたんだよね?
それじゃあ、元々こっちにいた神ポケモン達はどうしたの?」
あぁ、そう言えばそうでございますね。
世界に神と呼ばれる同名のポケモンが複数存在する事自体
歪みの原因となってしまうと考えるのは当然ではないでしょうか。
クダリの質問にが挙手する形をとったので
私達は一斉そちらを見て、次の言葉を待ちました。
「実はな、俺達は今の手持ちにいる他に伝説級のポケモンを持ってたんだよ。」
「最初のやり込み要素はポケモン図鑑の完成だったからなぁ…
初代のミュウゲットは半端なくしんどかったぞ?」
の発言もでございますが、の発言にもツッコミを入れたくなります…
そもそも図鑑完成や伝説級のポケモンゲットなど通常のトレーナーでは
ほぼ不可能と言っても過言ではございません。
「平たく言えば融合?そんな感じで俺達の持っていた伝説級のポケモン達は
こっちのポケモン達として存在してる。
ミッションではねぇが、俺達は出来る限り世界の歪みを無くしたかったから
全部の地方でそうやって自分がデーターとして持っていたそいつらを
こっちの世界に溶け込ませる事をしたんだよ。」
「大体各地方の伝説級のポケモンに出会う条件っていうのはリーグ制覇でな
だから俺等は主人公達よりも先にリーグ制覇をしなきゃならなかったんだ。
ぶっちゃければ、それが一番大変だったぞ。」
「Ahー…そんな事は大変ッテLevelじゃ無いと思うんだケドナ…
キミ達が全員Master Rankなのがコレで納得したヨ。」
「エメットさんがツッコミたい気持ちわかりますよー。
今手持ちとしている神様ポケモンも私達がデーターとして持っていた子達と
融合?そんな感じをしたこっちの世界のポケモン達なんです。
元々のこの子達も私達に凄く共鳴していたんですけれど、手持ちと融合して
それが一層強まったみたいで、開放するつもりでいたんですけど、嫌だって…
少なくても、私のミッションを見届けるまでは一緒にいるらしいです。」
彼等がこの世界へ来る原因になっているのです、それは当然でしょう。
元々手持ちとしていたからなのでしょうか、彼等は神ポケモンに対して
畏怖や敬うといった感情ではなく、他のポケモンと同じ様に接して
愛情をかけている様にみえますし、それが心地良いのかもしれませんね。
「他のDataとして持っていたポケモン達はどうしたのデスカ?」
インゴがクダリの膝の上ですっかり熟睡しているネイティを撫でながら
三人を見つめております。
そう言えば彼は人間には高慢で酷い態度しかとりませんが
信じられない事に、ポケモンに対しては愛情深く接するのです。
その事を疑問に思いハッキリさせたいと思っても仕方がないでしょう。
「あー、結論から言えば向こうの世界でゲットしたポケモン達は
全員こっちの世界に一緒に連れてきたんだ。
だから、最初にこっちの世界でやった事はそいつらを野生に返す事だな。
自分で生きていける様にってのはそれ程手間取らなかったんだが
バトルや旅パの連中はそれを嫌がってな…現在も手持ちでいるんだ。
俺は旅立ちのポケモンを水ポケで統一しててな、全員今も手持ちだ。」
の旅立ちポケモンは水でございますか…なんとなく納得でございますね。
恐らく今現在バトルトレインや、私達とのマルチバトルで使用している子は
そのポケモン達ではないでしょうか。
「俺は草ポケだ。俺もも図鑑埋めのポケモン達は野生で進化前や
最終進化した子達をゲットしてそのままパソコンに入れてたから
それほど懐かれてるわけでもねぇし、結構野生に返してやったぜ。
問題は…てめぇのポケモン達だよな?おい、寝てんじゃねぇぞコラ。」
がそう言ってを小突いております。
寝てないよ!と反論してはおりますが、なんだか気だるそうにしておりますね。
が草ポケという事は、は火ポケになるのでしょうか?
「うー、ちゃんと話は聞いてるってば。
私は進化前ポケモンをゲットしたら、最終進化まで育て上げてたんですよ。
アイテム持たせてとか、通信とか条件付きの進化をする子達は別ですが
それ以外は最終進化まで育て屋さんとかに頼まないで自分で育てました。
お陰で私の手持ちは野生に戻るのを嫌がる子達が多かったんですよねー。」
シャンデラの腕の中で眠っているムウマを優しく見つめる様子は
彼女らしいと言ってしまえば、それまでなのでしょう。
やは厳選等をする話をよく聞きますが、彼女は聞いた事がありません。
どの子達も全てに深い愛情をもって接する姿は好感が持てますね。
では、その子達と別れる時はどうだったのでしょうか?
少々聞く事に躊躇いがございましたが、敢えて聞いてみました。
「貴女達はこちらにきてから、かなりの年月を過ごされておりますが
中には寿命を迎えたポケモン達もいたはずです。彼等はどうなったのですか?」
それぞれの顔に翳りがさして、暫く沈黙の時が流れました。
やはりこの様な事は聞くべきではなかったのでしょうか?
「それぞれの世界での最大の違いはそこだろうな…
向こうの世界ではポケモン達はデーター上の生き物だから寿命が無いんだ。
だが、こっちの世界ではそうはいかない。当たり前の事だろう?
どの世界ででも生きている限り、必ず死は隣り合わせにあるんだ。
だから、こっちに来た時から俺等の子達も例外なく時は動き出した…」
沈痛な面持ちで黙ってしまったの言葉を受け継ぐように
同じ表情をしたが目を閉じたまま、口を開きます。
「最大の違いはそれだけじゃねぇ、何よりコッチの方が俺は堪えた…
野生に戻る事を拒んだ子達は寿命が来ると存在そのものが消失するんだ。
こっちの世界にきてからゲットした子達は寿命が来ても亡骸は残るが
向こうの世界での子達にはそれすら許されねぇんだ…
だから寿命が尽きた時点で亡骸すら残らねぇ…最初から無かったものとして
影も形も残らず消えて、残るのは俺達の記憶の中だけとか勘弁してくれ…」
二人のあまりにも衝撃的は告白に私達は返す言葉がございませんでした。
情の深い彼等にその事実は余りにも過酷すぎる事でございましょうに。
が両隣の肩を優しく叩いて言葉を繋げました。
「弔いって、残された方への意味が強いと思うんですよ。
でも、それすら私達には許されない…それはこっちの世界に来た代償?
そんな感じでもあるんでしょうね。だからといって割り切れないですから
その度に、私達はどうしようもない喪失感と罪悪感に襲われました。
向こうの世界であればそんな事なかったのに、ごめんなさい…って。」
「確かに、お墓に葬ってあげる事も出来ないとか辛い。
でもね、ポケモン達はそれでもキミ達と一緒にいたかったんだと思う。」
「クダリの言う通りダヨ。ポケモン達にとって、野生になる事ヨリ
大好きなキミ達の傍にいたかったカラ、そっちを選んだんジャナイ?」
クダリとエメットの意見に私も同意いたします。
だから私も自分の思った事を、この場面で言わせていただきましょうか。
「もし、私が貴女達の手持ちであったのならば同じ選択をしたでしょう。
そして、その事を後悔する事は絶対にございませんでしょうね。」
私の言葉に他の三人も頷きます。えぇ、そうでございましょうとも。
むしろ彼等の手持ちでいられた事に誇りを持ち、最期のその時まで
共にある事を望んでいたはずでございます。
「オマエ達に意志があるのダカラ、ポケモン達にもあるはずでゴザイマス。
カレ等が自分で決めて意思を貫き通した…その姿勢を尊重すべきデショウ?
罪悪感を持つノハ、オマエ達のポケモンに対する侮辱デスネ。やめなサイ。」
私と同じ様に思っていたインゴの言葉を聞いて三人の瞳が揺れました。
あぁ、それ程にその事が貴女達の心を傷つけていたのでございますね。
「本当に…そうなの…かな?
そうだったら、うん…悪かったと思う事自体が傲慢ですよね。
そんなんじゃ、逝ってしまったあの子達に怒られちゃう。」
の瞳から涙が頬にこぼれ落ちます。
泣く事をあれ程嫌がっていた彼女ですが、それは強がりであって
本来の彼女は愛情深いだけでなく、繊細な感情の持ち主なのでございましょう。
「そうだな、俺達がこんなザマだったらあいつらも死にきれねぇだろうよ。
ははっ…こんなんじゃトレーナーとしては失格モンだろうが。情けねぇ。」
いつもの口調を保ってはいますが、の瞳にも涙が光っておりました。
ですが、そんな二人を見て微笑むの目に涙はありませんでした。
むしろ私達の言葉を聞いた後では、スッキリとされている様にも見えます。
「だから俺が言っただろう?ポケモン達にも意志はあるはずだって。
大事なのは嘆く事じゃなくて、全部受け止めて前を見て歩く事なんだ。
もっとも、それは俺の希望がそう思わせてるかもって気持ちもあったがな。
お前達と同じ立場の俺が言っても、なんだか偽善にしか聞こえなかったろう。
だから、今こうやって四人が同じ事を言ってくれて嬉しいぞ。」
には敵わない…とがそう言っておりますがその通りでしょう。
全てを受け止めても、それを重荷にすらせずに前に進む事が出来るのです。
「取り残されるより、置いていかれるより、共に在りたいと思うのは
大切に思う人が傍にいるなら当然の事だ。
俺は二人よりも、そういう気持ちを少しばかり知ってるんでな。
逝ってしまった子達の気持ちもわかるんだよ。
もっとも、残された方の気持ちってのも嫌ってほどわかってる。
だがなそういうものを全部ひっくるめて、それが生きるって事だろう?」
本当にには叶いませんね…私もどちらの気持ちも良く知っております
両親を亡くしたという事で私達だけでなく、インゴ達も状況は同じはず
ですが、この様に考えられるか聞かれれば返答に困るでしょう。
「うん、ボクやっぱりが凄すぎて息をするのも辛いかもしんない。」
「Precisely!その通りダヨネ。ボクも悔しいけど、敵わないって思うヨ。」
「あ、やっぱりクダリさんとエメットさんもそう思います?
私ももなんですよ、なんなのこの悟りきった人はって感じですよねー。」
それぞれの言葉に以外が頷くのを見て、当人は驚いておられますが
私にしてみれば、驚くのはそこじゃございませんとツッコミを入れたいです。
そして、そんな部分も含めてという大切な友人でございます。
何度でも言いましょう。私達…私にとって三人はかけがえのない友人で
そして、共に高みを目指しあえる素晴らしい仲間なのだと。
今更ながらにその事を再認識して、私は笑い合う彼等を見つめました。